Project "C" ( Hold'EM)

アメリカのテキサス州に在学中の男がオンラインポーカーに出合った。彼の名前は河南Yu。彼の夢は英語を巧みに操り、誰もが認めるBIGな男になることであり、オンラインポーカーという新世界は彼にとってあつらえ向きな自己鍛錬の場。躊躇することなく彼は足を踏み入れる。

新世界に降り立った彼が掲げた目標は$1000を稼ぎ出し、仲間に高級ステーキを振舞うこと。定まった矛先と共に彼の孤独な戦いが幕を開ける。

一日三時間以上は戦場に赴き海千山千の兵たちと、運命と思考の刀を交え、戦場から戻れば５００ページ以上ある書籍を読みふけポーカーにおける戦略を学ぶ日々が続く。現実世界の課題、身体の疲労、そして時間の経過すら彼にとって大きな問題ではないのだ。

彼を知る誰しもが考えた、その熱意の対象を勉学に変えることができないのかと、彼の行動は正気の沙汰ではないと。周囲に冷笑され疑惑の目を向けられても、彼はひとり戦い続けた。

そして運命的な出会いから三週間後、当初の目標には足りなかったものの彼は見事$700という大金を手に入れることに成功する。

彼が勝ちに酔いしれタバコを吹かしていると、彼の友人Nが話しかける。

　N「どうせなら、UTSAで伝説つくんね〜？？」

　YU「何だよ？？伝説って？？」

　N「おめぇ〜よ〜、ここでみんなに内緒でリムジン頼んで、みんなでリムジンに乗ってステーキ食いにいったら最高じゃね〜？」

友人の唐突な提案に一瞬うろたえるYU。しかし、友人Nから詳しい話を聞いてみると$300でバスより長い２０人乗りの純白なリムジンを借りることができると知る。

かねがね、世界に名を轟かせようと構想していたYUにとって、オンラインポーカーでUTSA（テキサスサンアントニオ大学）に伝説を作ることなど赤子の手をねじるより簡単なことに思えた。

　Yu「やべ〜、それマジ最高じゃん！！！だって、たった$300だろ。俺がUTSAで伝説を作ってやる。」

しかし、彼の意気込み茶化すかのように、その日以来彼は負け続けた。そんな彼を見て、「人生は、ギャンブルは、そんなに甘くはない。」と感じたのは私だけではないだろう。

繰り返される敗北で彼は$700を失い、利益が0になると、彼は今までの気勢がまるで幻であったかのようにポーカーから身を引いた。言葉を交わさずとも、しょ気る彼を見た仲間は、彼が二度と戦場に戻ることは無いことを察した。

動物と人間の違いとして「道具をつかう」「本能より理性で行動する」「すぐに理性を捨てることができる」などがよく挙げられるが、考えてもらいたい、凡人と偉人の違いとはなんだろう。私は一つの答えとして「復元力」を挙げたい。言うまでも無いが、失敗や挫折を経験しない人間はいない。負の状況から復元できるか否かがその人物の人生を定義し、力足らずにと淘汰された凡人は夢を夢で終わらせ、奈落のそこから這い上がった偉人たちのみが一般常識では無謀と考えられる夢を現実として具現できるようになるのではないかと思う。

そう、彼は復元しようとしている。500ページ以上ある書籍を読破し、二巻目のポーカーの戦略書と共に彼はオンラインポーカーという戦場の舞台に舞い戻ってきたのである、CORVETTEを購入するという新しい目標を携えて。

当たり前のことだが、CORVETTE（高級スポーツカー、中古で約$20,000）を購入するということは、ポーカーだけで2百数十万円以上を稼ぐことを意味し、$という物差しで達成難易度を計れば前回の目標の20倍である。彼は今、あなたがこの文章を読んでいる最中もポーカーのことを考えているであろう。彼の熱意と共に、将来BIGになろういう夢のほんの足掛かりとなるだろう、挑戦が始まる。

「彼は偉人なのか。それともただの異人なのか。」という疑問は彼の人生を一部始終知らないと答えを求めることはできない。しかし、このコミュニティを通して、少なくともあなたは彼の挑戦の軌跡を知り、伝説の証言者となるだろう。(文：ゆーいちろー,Tutty)