ソーシャル・キャピタル(SC)とは、人と人の関係性の中に蓄積されている規範やネットワーク、信頼関係といった、いわば知恵のようなもの。効率を追求する市場経済において、見えにくかったSCは、長いこと軽視されてきた。しかし、このSCの研究が進むにつれ、その経済効果が徐々に明らかとなり、注目を集めている。そして、短期的な成果や利益を期待せず、自分の家族や友達など、人の役に立つこと(投資)によって、長期的には自分自身に恩恵(配当)が返ってくることが、実証されつつある。これは、古くから人間が伝えてきた様々な宗教や格言が、単なる迷信ではなく持続可能な社会を構築する上での智恵であることを示している。
人間同士の関係が希薄になるにつれ、長い歴史が育んできた寄り合いなどの村社会の伝統が廃れ、言い伝えや慣習が持つ本来の長所が見えなくなっている。土地と関係の薄い工業の発展につれ、生活の場(地縁・血縁) と働く場(職縁)、趣味の場(好縁)は極端に分化してしまった。グローバリズムによる分業は、循環サイクルを大袈裟なものにし、解決すべき問題までが遠くの見えない世界へと追いやられている。臭いものに蓋をし、問題自体が存在しないように振舞うには、もう限界がある。地球規模の問題を考えるが故に、足元にある地域社会、人と人のつながりや、土地と人とのつながりを、再び見えるようにする。それこそが、お互い様という智恵を今に伝える
日本人の使命であり、次世代につなぐべき日本の社会的伝統である。そしてかつて日本が追い求めてきた「全員の中位の幸福」こそ、世界に誇る新しい村社会を形成するのではないだろうか。
★参考★
「コミュナルな知恵と力の再生――見えなくなった日本の伝統を見えるようにする」嘉田由紀子氏
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「ご縁に応じる--竹藪に見る東洋的関係性モデル」玄侑 宗久氏
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「『ソーシャル・キャピタル』『リレーショナル・アセット』という概念」山内直人氏
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「経済・産業活性化とソーシャル・キャピタル」藤沢久美氏
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「国際協力とソーシャル・キャピタル──活発化するNGOアプローチの中で」佐藤寛氏
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「『日本らしさ』とは何か」中西輝政氏
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「『競争社会』のあり方──共同性の視点から」石川九楊氏
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