19世紀後半に欧州の自殺率の急上昇が話題になる中、デュルケームが39歳の1897年に公刊された『自殺論』には「社会学研究」というサブタイトルがあり、先述の「社会的事実」を客観的かつ実証的に分析し、その実態を具体的な事例によって明らかにしようとしたデュルケームの意欲作である。
当時のヨーロッパ各国での自殺率が短期間ではほぼ一定値を示した統計資料などから、各社会は一定の社会自殺率を持っているとし、社会の特徴によって自殺がどのように異なるかを明らかにしようとした。デュルケームは、この研究において自殺を個々の人間の心理から説明するのではなく、社会的要因(社会的事実)から4つに類型化している。
公刊の2年前に著書『社会学的方法の基準』においてデュルケームは、「社会的事実の決定要因は、個人の意識ではなく先行した社会的事実にもとめねばならない」という説明の公準をたてており、その適用を本書で試みている。
なお、デュルケーム研究者のアンソニー・ギデンズは、論文『自殺の理論』の中で、「本書は膨大な数に上る自殺未遂の問題を無視してしまった」と批評している。
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