>>異界
日常とは隔絶された時間軸,空間軸の存在しない世界。
それは伝説の行者たちが分け入った山々であったり,曼陀羅空間において最大のコスモロジーを発する鬼門であったり,憑依という突然の現象で偶然に入り込む深層世界であったり,はたまたはるか宇宙の彼方であったり,あの世であったり。
しかし,戦後,突如として流れ込んできた現代文明により,人々の心に棲みついていたそのような'異界'は喪失しつつある。
平々凡々の日常とは'異界'を前提として成り立っている。
'異界'なるものを求め,現実を獲得している。
したがって,'異界'の喪失は必然的に人間的'生'の喪失を意味する。
日常の中で自分たちを成り立たせている様々なものを失い,それは自分たちで変化をするのではなく,気づかぬ内に変化させられ,曲折された常識に依存し,何も考えない人間を創出していく。
人は失った始源を取り戻すべく,日常の中で放棄した神々の存在を実感するべく'異界'を探し求むるべきである。