Julien Gracq(1910年〜2007年)。
現代フランスの作家。本名はルイ・ポワリエ。時代の支配的な文学傾向とは本質的に無縁な狷介孤高の作家とされる。
若い頃からドイツ・ロマン派やヴァーグナーの作品に傾倒し、エコール・ノルマル在学中にアンドレ・ブルトンの『ナジャ』に衝撃を受け、ブルトンから最後のシュルレアリストとして認知される。とはいえグラックの言語の持つ喚起力や暗示力を駆使する作風はシュルレアリズムとは大きく異なり、非現実的、超現実的で神秘的な傾向ながらシュルレアリズムとは一線を画している。
第二次世界大戦に動員され、ダンケルクからフランドルと北フランスを転戦するが、フランスの敗北によりドイツ軍の捕虜となる。独仏の休戦協定により捕虜収容所から釈放された後、エルンスト・ユンガーの『大理石の断崖の上で』を読み、深く魅了され、ユンガーへの「偏愛」を公言する。
フランスの作家でありながら、フランス文学よりも、ノヴァーリスやヘルダーリン、ユンガーなど、ドイツ文学との親近性が強く、また濃密な言語感覚の持ち主であり、フランス文学においては異質の存在といえよう。
2007年12月22日、仏中西部アンジェ近くで死去。97歳。
作品
●アルゴールの城
●陰鬱な美青年
●大いなる自由
●シルトの岸辺
●森のバルコニー
●偏愛の文学
●半島
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■エルンスト・ユンガーの時代
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