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洋楽名盤・新譜 レビューコミュのフリートフォクシーズ「フリートフォクシーズ」

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Fleet foxes 「Fleet foxes」2008年US
フリート・フォクシーズ「フリート・フォクシーズ」
 
1. Sun It Rises
2. White Winter Hymnal
3. Ragged Wood
4. Tiger Mountain Peasant Song
5. Quiet House
6. He Doesn't Know Why
7. Heard Them Stirring
8. Your Protector
9. Meadowlarks
10. Blue Ridge Mountains
11. Oliver James
 
 
Robin Pecknold (G,Vo)
Skyler Skjelset (G)
Christian Wargo (B)
Casey Wescott (Key)
Josh Tillman (Dr)


聴きこめば聴きこむほど、味の出るアルバムだ。
 
 
2008年に、かのシアトルはサブポップから出たフリート・フォクシーズのデビューアルバム。
 
冒頭の2曲の明るい光に包まれた壮麗なゴスペルのようなバロック・ポップは、このバンドの代名詞。
 
アコースティックなギターが教会の高い天井にこだまするような透明感。
 
エコーのかかったウェットなボーカルとコーラスワーク。
 
3曲目以降も、以外に多彩な音の陰影で、様々な表情を見せてくれる良い曲が並ぶ。
 
浮遊感と多倖感を漂わせながら、迷いもないその声の強度・精度がその完成度の高さと共に、意思の決然とした様を写しているかのようだ。
 
そして、やはりどこか決然とした意思を感じさせるドラミング。
 
この浮遊感、多倖感にして、この明るさ、決然とした様は、新しい時代の到来を感じさせるものだといえるだろう。 
 
 
最も影響を感じさせるのはバーズだろうか、カントリータッチ、フォークロック、コーラスワーク、優れたメロディセンス、ある時期のビーチボーイズ、ソフトロック。
 
それらの影響を強く感じさせながらも、バロックポップと呼ばれるとおり、中世の教会音楽のような聖なる響きを取り入れた独特の透明感をたたえた音楽性は、ひとつの発明。
 
そして今の時代に、この音を鳴らすことに、どのような価値が与えられるだろうか。 
  
 
すくなくとも私には、単なる偶発的な発明品のひとつ、一過性の珍しいもの、として消費されて終わるには惜しいものを感じさせてくれる。そんな気になるアーティストの作品だ。
 

 
現在進行形のロック界は、ご存知のように多様化・複雑化を極めている。
 
インターネット、YoutubeやMyspaceの登場は、表現者と表現の場の裾野の拡大をもたらした。
 
 
あるいはグランジ以降のアンチロック、ポストロック探求の流れ。
 
人は言葉にならない時代の気分を代弁してくれるロックのあり方を求めて、ロックの表現形態の拡大を求め続けている。
 
 
または9.11を含めた8年におよぶブッシュ政権下において、ロックミュージックにも、暗い時代とアメリカにおける現状日常への違和感と自己批判の重さが間違いなく影響した。
 
そしてその反動、批判としての超パーソナルな世界感の確立と逃避、現社会との隔絶、桃源郷的なサイケデリアやシューゲイザー的な世界の表現、あるいは反現在的なものとしてのルーツミュージックへのアプローチという流れ。そのような批判的な視点からの現実逃避を是とする空気もあっただろうと思う。
 
あるいは意識的なダンス・ミュージックとロックの融合がニューヨークでもイギリスでもひとつの潮流となった。ストーン・ローゼスによってロック界に注入されたといってもいいこのフォーマットは、テクノやミニマルミュージックも巻き込んで引き続きロック界にひとつの山脈を形成してゆく。  
 
あるいは英国におけるここ数年のロックンロール・リヴァイバル、ポストパンク・リヴァイバル、ニューウェイブ・リヴァイバル、ニュー・レイブと呼ばれるイギリスのダンスロック、といった一連のリヴァイバルによる過去のロックの遺産の素材化、復刻。
 
 
これらを全てつなげてみたとき、過去の音楽遺産・世界各地の音楽、それらが等しくデジタルなフォーマットで、様々な意味と価値をもった素材として横並びに陳列されている状況だといえるだろう。
 
この60年代も70年代も80年代も、90年代ですら、等しく新鮮な素材のひとつとして、料理の対象に、ミクスチャーの実験材料になる。
 
それほどに00年代は、ロックがバラバラに解体された時代だった。 
  
表現者はそれらをつなぎ合わせ、色々な音で、新しい時代の音を模索する。
 
主役は、それを選ぶ側の我々に移ったとも言える。
 
選ぶ側の聞き手の数だけ、ロックが存在することになる。
  
2000年代の10年間、つまり00年代にはロック界にレジェンドと呼ばれるほどの巨人は現れることはなかった。
 
巨人は我々、聴き手、という言い方もできるかもしれない。
 
そんな10年間を、ロック界が迎えたことははじめてだろう。
 
 
  
そして、
 
80年代後半以降のこの20年、表現者たちは、どちらかというとネガティブな、暗い気分、自分たちを覆う社会や、前の時代の遺産などに対する批判、それらに影響されてきた自分への嫌悪や逃避、そんな場所から鳴らされている音が多かったのではないだろうか。
 
ニルヴァーナにしてもレディオヘッドにしてもREMもベックもコールドプレイも、グリーンデイにしても、パンクやロックンロールリヴァイバルにしても、快癒と批判の物語であり、出発点にはある意味の暗い想いがあるのだろうとおもう。
 
この20年以上、いやもっと長い間、50-70年代のロックも、私にとってのロックはほとんど、そういうものだった。
 
逆に屈託のない、あかるいロックは、あまり受け付けないほうだ。
屈託からの逆襲こそが、ロックだという気がしているし、それが反骨のエネルギーにもなるのだと。
 
 
しかし、本当に、ついこの1−2年だろうか、何か社会の気分が、若い表現者側の気分が、大きく変わってきている気がしている。 
 
簡単に言えば、暗い想いが、底をうった、とでも言うのだろうか。
 
  
サイケデリアも、アメリカーナいわゆるアメリカン・オルタナカントリーにも、ダンスミュージックとのミクスチャーロックにも、ここ最近、何の屈託もない、暗さの影や、寂しさを感じさせない、新しい感覚のものが出てきている気がする。
 
はじめの頃は、違和感に過ぎない、とおもっていた。
 
次には、何でロックをやっているのか、うわっつらか、と感じた。
 
やがて思うようになったのは、これは新しい気分であって、意識的・確信的な音なんだということだ。
 
彼らは、もはや90年代以降を生きているわけではない。
 
今を生きはじめている。
 
 
フリートフォクシーズは、間違いなく、これからのロックの行く先を示す、重要な作品を生み出した。
 
これは新しい音、そしてこれからどこへ行くのか、どうなるのか、まだわからない、今を生きる青春の音なのだろう。
 
そんなことを考えさせてくれたアルバムだった。 
 
"White WInter Hymnal"

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