東洋医学で人を診るコミュの専）『太極と太虚、人身一小天地』

テキストの総論
気一元の医学太極図説、人身一小天地などについて学びます。

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『先生、質問があります』

テキストの16ページの3行目、太虚というのは、太虚でいいんですか？
太極をみつめるまなざしが太虚ってことなんですか？

少し難しい話になります。
観るという行為を行うとき、
それを観ようとする心の位置が定まり
観ようとする物事（対象）が存在することから
観るという行為が始まります。

物事を観る、という心の働きが起こるときには、
物事につられて観てしまう場合がよくあります。

猫じゃらしを猫の前で動かすと、猫が飛びつくようなものです。
これは、物事に観させられている、気が奪われている状態です。

気が奪われているということは、心がそこに奪われているわけですから、肯定的感情が否定的感情などがそこに生まれることとなり、あるいはさらには価値判断などがそこに生まれる基になります。

ケーキが目の前にあると、「ケーキは甘くて美味しくて私の心を満たすものだからこれを食べると正しい。これを食べちゃだめだという先生は意地悪だ」ということが、瞬時に判断されるようなものもこれにあたります。

ほとんどの価値観が欲望に基づいて定められている理由がここにあります。

太虚の眼差しというのは、読んで字のごとく、そのような欲望や思い込みから離れた、リラックスした姿勢（虚）を己の内に定め、その位置から物事を眺める眼差しのことです。

対象となる物事にとらわれないため、偏りがありません。自分自身の心の動きに深い注意を払っているため、妄想がありません。物事の本質のみを深く見ようとする心の働きに順うため、全体とは何か、いま観ているものが関係している「場」がどれほどの広がりをもっているのか、その括りはどこにあるのかということが自然に観えてきます。

このようなものが太虚という言葉の中身となります。禅における止観〔伴注：観ようとする心を止めて、ただ観る〕と同じ意味で用いています。

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