お題はコレダ！コミュの第1回お題はコレダ（作品投稿トピ）

第1回作品投稿用トピです。ストーリーはこちらにお書きください。投稿後に誤字脱字など確認した場合は、管理人まで訂正前、訂正後を添えてご連絡下さい。

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■キーワード

　・ファミレス
　・ホットコーヒー
　・愛

★必ず最後に、主人公が「コーヒーお替り」と言う

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※キーワードの言葉は何回入れてもＯＫ
　文字数制限は特にありません

　募集期間：9月14日～9月28日まで

コメント(6)

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[1] mixiユーザー 09月21日 04:29

参加させていただいた直後に投稿しちゃって良いのでしょうか？
しかもまだ誰も投稿ないですか、もしかして。
・・・キーワード見た瞬間に（ほぼ）勢いで書いてしまいました・・・
こんな感じで良いのでしょうか？

↓以下本文
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　実は僕のファミレスデビューは遅い。
特に理由なんてない。あえて言うなら
『機会がなかった』
その一言でカタがつく。
そもそも僕の故郷は田舎でファミレスなんてものは近所になく、いざ、都会に出て一人暮らしを始めてみると一緒に行く相手がいないときた。
・・・田舎者の習性か単に僕が貧乏性なだけなのか、ファミリーだろうとなんだろうと『レストラン』なんて名のつくところにはそもそも一人で入っちゃいけない、と思っていた。
誰に言われたわけでもないのに。

まあ、そんなわけでなかなかファミレスデビューしなかった理由を無理やりつけて、僕は窓の外を見る。
ふと、思う。
「初めてファミレスに入ったのはいつだっけ」、なんて。

・・・確かあれは『彼女』が理由。
知らないうちに僕の友人と付き合っていた彼女は、やはり知らないうちに友人と別れていた。
『友人の彼女』という枠組みを越え、いつの間にか僕の友人の一人となっていた彼女はある日、零すように言った。
「倦怠期ってやつかな。・・・付き合ってるだけなのに、年とった夫婦みたいな言葉だね」
くるくるとスプーンを回していた彼女は思い出したようにコーヒーに口をつけた。
「・・・ぬるい」
「そりゃあ、あれだけ無駄にかき混ぜてりゃね」
そのとき僕は試験を控えていて、正直、彼女の話に付き合っているのも面倒だった。
実際、僕は猫舌で、おそらくそれは感情も。温くなければ疲れてしまう。
故に・・・かどうかは分からないが、恋もコーヒーも熱くなければ味を感じられない彼女の性質は正直、よく理解できない。
にもかかわらず、僕を彼女は感情の捌け口に選んだ。・・・案外、たまたま僕がその場に居合わせただけだからかもしれないけれど。
それにしても。
終わってしまった恋の感傷に付き合わされる僕はいったい彼女にとってなんなのだろう。
僕の代わりに彼女の前にトーテムポールを置いておいてもなんら問題はないんじゃないか、そう、思い始めた瞬間だった。

「冷めてくホットコーヒーってまるで愛みたいだね」

　そう呟いてうっすらと笑みを浮かべた彼女に不覚にも僕は、グラついた。
だから思わず、フォローなんて入れてしまった。
「ぬるくならなきゃ飲めない人もいると思うし、熱いのが欲しくなったらお替りを頼めばいいんだよ」
果たして，それがフォローなのかどうかは自分でも分からないけど。
冷めたコーヒーを一口すすって僕は続けた。
「それでも多分、味は変わらないと思うけどね」

あれから結構な時間が経ったと思う。
おそらく、僕たちはホットコーヒーが冷めていく時間よりももっとスローなペースでカップを温めてきたのだと思う。
僕は何度目かの視線を窓の外に投げた。
もうそろそろ彼女が店に飛び込んでくる頃だろう。
僕は温かなコーヒーが飲みたくなってウェイトレスを呼んだ。

「コーヒーお替り」

[2] mixiユーザー 09月26日 23:00

二番手でちょっと書いてみます。

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「お待たせ致しました」
声がしたかと思うと、目の前にホットコーヒーが置かれていた。
ぼーっとしていたので、店員が立ち去ってから注文間違いに気が付いた。

『頼んだのは確かアイスコーヒー・・・』

訂正しようにも店員は既にテーブルから離れており、訂正せずにそのまま口をつける。
ほろ苦さが口の中に広がる。

雪のちらつく中、２人でファミレスに入った時を思い出す。
『あの時も２人でホットコーヒーを飲んだっけ・・』
あれからどれくらい経っただろうか。
事故で逝ってしまったあの人を思い出すのが辛くて飲むのを止めていたけれど、久し振りに思い出に浸るのも悪くない。

ふと外に視線を移すと、照り返る日差しの中、若いカップルが腕を組んで歩いている。
カップルに目をやりながら、また一口、コーヒーを飲む。
ほろ苦い味が広がれば広がる程、当時のことが思い出される。

あの頃、初めて愛というものを知り、ずっと一緒にいようと誓った。
今となっては幻となってしまったけれど、二人の将来を夢見ていたことは確かだった。

「大丈夫ですか？」

我に返ってみると、店員が不思議そうに顔を覗き込んでいる。
どうもコーヒーを飲みながら泣いていたらしい。

「有難う、大丈夫です」
そう言って俯くと、手元のコーヒーが空になっていることに気が付いた。
怪訝そうな顔をして店員が見ている。

あの人とのことを大事に想っているのなら、もう少し思い出しているのも良いかもしれない。
そして、店員に微笑んで言ってみる。

「コーヒーお替り」

[3] mixiユーザー 09月27日 03:54

三番手いきます。長くなっちゃいました…。

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「いらっしゃいませ。お一人様ですか？」
「あ、はい…」

　天使のようなスマイルでウェイトレスが出迎えてくれたが、それに反応する余裕はなかった。

「こちらの席へどうぞ～」

　案内された席に座るや否や、注文をした。

「ホットコーヒーひとつください」

　ここは学校から二駅ほど離れたファミレス。来るのは初めて。実はとある目的のためここに訪れたのだ。

「お待たせ致しました、ホットコーヒーでございます」

　そう、これを飲むために、わざわざこんな所まで来たのだ。いや、別にこのファミレスのコーヒーが特別美味しいという事ではなく、ただ単に知り合いに見られたくないという意味で、少し離れた場所に足を運んだのだ。

　この墨汁を温めたような液体を、僕は一度も飲んだ事がない。なぜ飲んだ事がないのか、なぜまた、今それを飲もうとしているのか。それには少し説明をしなければいけない事がある。
　我が家では、何をおいても緑茶を飲むという習慣がある。朝起きた時、寝る前、団欒の場など。ありとあらゆる状況下において、緑茶の姿が見えなかった事はない。それが家の家訓なのかは知らないが、とにかく緑茶以外の飲み物は、飲み物じゃないと言わんばかりに緑茶が登場するのだ。そんな家庭に生まれてしまったが故、緑茶以外の飲み物に関して恐ろしく造詣が浅い。
　コーヒーを一滴も飲まなくても、生きる上では何も困る事はない。そんな発想すら起こることなく過ごしてきたが、そうもいかなくなってしまった。

『男の人がコーヒー飲んでる姿って、私大好き』

　水野さんが昨日帰り際に言っていたセリフだ。水野さんは同じクラスであり、僕と同じ華道部でもある。そして何より、今一番気になっている人でもある…。
　コーヒーを一度も飲んだ事がない僕にとっては、非常に高いハードルだが、それは今だけの事。攻略しさえすれば、これは今までにない強力な武器になるに違いない。そう確信している。
　そう確信はしているが、このコーヒーという飲み物は得体が知れなさ過ぎる。まずはこの色だ。僕にはゴキブリの色にしか見えない。本当に奴らから出汁を取ってるんじゃないかと思える程だ。見た目で飲む気が失せてしまう。しかし…飲まなければいけいないのだ。
　よ、よし…飲むぞ…。でも、これどうやって飲むんだろう？お茶のように作法はないのだろうか？周りのコーヒーを飲んでいる客達の様子を伺ってみる。一通り観察をすると、このコーヒーという飲み物は実に多様な飲み方が存在するものだという事がわかった。白い砂(塩じゃないと思う)を入れたり、白い液体(牛乳？)を入れたりと、随分賑やかである。なによりの収穫が、この小さなスプーンは飲むための道具ではないという事だ。あぶなかった…それを使って飲もうと思っていたところだった…。
　ラーメンでもそうだけど、まずは何も入れずに本来の味を楽しんでみよう。カップを両手で持ち、ゆっくりと口元に運ぶ。色を見ると飲み辛くなるので、目を閉じて口に含んでみた。

「に、苦い…」

　口一杯に、何かこう漢方薬のような苦味が走った。そして苦味が走った後に、ゆっくりと広がる更なる苦味…。不味い、思いのほか不味いぞ。これがコーヒーなのか！？水野さんは我慢強い男が好きって事なのか？水野さんがわからない…。それともこれがコーヒーの当たり前の味なのだろうか…。

「あの、お客様？」

　ふいに声をかけられ驚いた。最初に会ったウェイトレスが少し遠慮気味に話しかけてきた。

「な、なんです？」
「コーヒーのお替りはよろしいですか？」

　お替り？一口飲んだだけで、黒々としたものが並々と残っているのに…。

「えっと、まだ残ってますけど…」

　彼女はニコっと笑いながら僕にこういった。

「当店のコーヒーは、熱いうちに召し上がった方がより美味しいんです。お客様のコーヒーは冷めてしまっているように思えましたので、よろしかったら入れたてをお持ちしようと思いまして。あの、お持ちしてもよろしいでしょうか？」

　ここで初めて天使のようなスマイルに反応した。

「お、お願いします…」

　彼女は最後に、もう一度ニコっと笑いトタトタと駆けていった。

　今、この店に雷が落ちたのがわかっただろうか。正確に言うと僕のハートに稲妻が走ったのがわかっただろうか。いや、見えない事はわかっているけど、思わずそう聞きたくなるくらいの衝撃が走ったのだ。心臓の鼓動が止まない。水野さんに挨拶をしようとした時もドキドキするけど、それとはまた別次元だと思う。彼女の行動には愛を感じる。何も思ってない男に、あんな笑顔ができるのであろうか…そんな錯覚さえ沸いてくる。

「お替りお持ちしました」

　彼女の声は、柔らかな妖精の歌声のように聞こえる。

「あ、ありがとうございます！！」
「いいえ、どういたしまして」

　彼女は笑顔を絶やさない。ひょっとして笑顔しか知らないんじゃないだろうかと、変なことを思ってしまう。彼女とのやり取りが心地よい。まるでビバルディの四季「春」の中に迷い込んでしまったような感覚だ。

「では、ごゆっくりどうぞ」

　ああ…行ってしまわれた…。

　不味いぞ…。いや、コーヒーが不味い訳じゃなくて、この状況がまずい。どうやら完全に彼女の事を意識してしまったみたいだ。どうしよう…もっと話がしたい。いや、それよりも名前が知りたい。でも、名前はなんと言うんですか？なんて聞ける訳がないじゃないか。どうする？どうすんだ？落ち着け、まずは落ち着くんだ。そうだ、コーヒーでも飲んで心を落ち着かせるんだ。

　ふーふーと二回息を吹き、一口含んでみた。口の中に爽やかで心地よい刺激が伝わり、同時に鼻の奥になんとも言えない香気が拡がる。

「ふぅ…なんて落ち着くんだ…」

　そしてあっという間にカップは空になってしまった。もっと飲みたいな…。ん？そうだ！お替りを頼めば良いじゃないか。これほど完璧な既成事実はないぞ。しかもウェイトレスの服には名札が付いているから、そのついでに確認をすれば完璧だ。よし、早速呼ぶぞ。とは思いつつも、中々タイミングが掴めず周りをキョロキョロしていたら、ウェイトレスがやってきた。

「お客様、何か御用でしょうか？」

　確かに用はあるんだけど、あんたじゃないんだよ。

「あ、あのトイレは、ど、どこですか？」

　行きたくもないないのにトイレに行かなくてはならなくなってしまった。一応、一人作戦会議をしてみたが、妙案なんて浮かびやしない。再びテーブルに座り考え込む。

「あの、お客様？」

　こ、この声は！

「コーヒーのお替りお持ちしましょうか？」

　突然やってきた好機に慌てふためく。でも、神様…あなたは本当にいらしてたんですね…。

「お、お願いしますっ！！」
「はい、畏まりました」

　彼女はくすっと笑いテーブルを後にした。もちろん僕は自分の仕事は果たした。まさかこんな事があるなんて。神様…あなたってお方は…なんて気まぐれなんだ。

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「どうもありがとうございます…」

　彼女の名は「水野」さん。天空まで舞い上がっていた魂が、一気に零気圧まで下がってきた。

「はぁ～」

　深い溜息をつき、コーヒーを一口すする。罪悪感に似たような感情が心を支配していく。また一口すする。まったく…自分の馬鹿さ加減に嫌気がさす。一体何のためにここまで来たと思ってるんだ僕は。やってる事が支離滅裂だ。仕方がない、今までの事は一旦チャラにしよう。そしてもう一度最初からやり直すぞ………何をやり直すんだっけ？まあいいや、時間はまだあるし、ゆっくり考えよう。

「すみませーん、コーヒーお替り」

[4] mixiユーザー 09月28日 10:37

締切日最終日、飛び込みでスミマセン!!
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『悪いけど、ファミレスのコーヒーまで割り勘だなんて
シケた男と話してる程、暇じゃないのよ。アタシ。』

泣きっ面の面目躍如に言っておくが、僕は一言も割り勘で･･･などと口にはしていないし、ファミレスでお手軽に済ませようなどは微塵も思っちゃいなかった。

3日前の晩。
会って話したいのだがと久方ぶりに電話をした僕に
「ちょうどいいわ。買い物に付き合って」と彼女は返した。

いつだってそうだ。
僕の発する言葉の未来は彼女の抱える現実に、需要が有るか無しかで決まる。
そしてそれは彼女にとって絶対のバロメーターでありそれを覆す事に成功して僕の意に添った回答を得た事など一度も無かった。

だから答えた。
「いいよ。どこへ行きたいの？」と。

受話器越しにスルスルと呪文のように横文字の店の名を並べる声が響く。
澁谷か、代官山あたりだろう。
４-５時間は歩く気だろうか。
うんざりを気取られないよう相槌を打ち、電話を切った。
話しさえ出来ればそれでいい。
それくらいの免疫は、充分すぎるほどに出来ている。

後ろ向きな心の予感ほど的中するモノで、みっちり４時間表参道周辺を歩き通した。
似たような店で似たような物を見ては「ワーカワイイ」を連発し、やはり似たような物を買う。
毎度の事ながら、よくも飽きないものだ。
僕には一体何が楽しいのかわからない。

カフェを目にする度、少し休んでいこうと提案してみたけれど
物の見事に却下され続けた。
９月も中過ぎとはいえ、両手に大荷物を抱えさせられて歩き徹すには、いささか暑い。

あれは一体何軒目の店だったのだろう。
ドアを開け、表に出た途端出し抜けに
「もういらない」と、彼女の口が放った。
眉間にキュッとしわを寄せ、ゼンマイの切れた人形のように
仁王立ちになった彼女の姿に、ふと可笑しさがこみ上げる。
疲れたでもない。歩けないでもない。
モウイラナイ。

この感覚だったよな、と思う。

誰もが認める美しい顔立ちや、愛らしく舌っ足らずな物言い。
けれどそれ以上に僕を引きつけたのは、何に臆する事も無く自由自在に変化する彼女の心の行方だった。
そして彼女はそれを優美な顔も体も全てを使って雄弁に語る。

雁字搦めの柵に、気が付けば窮屈さも感じられなくなっていた僕の瞳に彼女はとても眩しく、彼女と共に居られるならば、僕も僕の人生も何か色味のあるものに変わるのではないかと思えた。

だから･･･。

だけど･･･。

食事時を控えた夕暮れのファミリーレストラン。
いくつかのテーブルをはさんだ向こうから女子高生の笑い声が聞こえてくる。

テーブルには冷めるままの味気の無いコーヒーが二つ。

「魅了され虜にされて、気が付けば首までどっぷり君に溺れた僕は、ただ君に翻弄されるしかなかったんだ。だから・・」

僕は僕の声を聞いている。君の顔を見れずに。

彼女がいつものように機嫌を損ねいつものように啖呵を切る。
誰もが見とれるその綺麗な瞳に僕を侮蔑する色だけを乗せて。
そしてそれを僕が宥めさえしなければ、すべてが終わる。
僕たちは終わるんだ。

僕が僕である事に嫌悪を抱かずに生きられる平坦な世界で、僕は心底安堵するだろう。

『悪いけど、ファミレスのコーヒーまで割り勘だなんて
シケた男と話してる程、暇じゃないのよ。アタシ。』

僕は彼女の声を聞いている。彼女の顔も見れずに。

すっかり冷え切ったコーヒーカップが彼女が抱えて立ち上がった紙袋に当たってテーブルを茶色く染めた。

怒りに震えた彼女の瞳の色を思い浮かべてみる。
さぞかし美しかったであろうと、これから二度と味わう事の無い世界のそれに後悔を味わう。

けれどこれでいい。

僕は僕の世界に帰る扉が欲しくて店員に声をかけた。

「コーヒーお替り。」

[5] mixiユーザー 09月28日 20:16

最終日にしかも２回目投稿てアリですか？
とりあえず・・・

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この場合、何を言えばいいのだろうか。
「……最低？」
「ひどっ」
思った通りのことを言ったらやはり彼女は吠えた。
「いや、でも、ねえ……」
とりあえず目の前のホットコーヒーに口をつける。
「最低、以外のナニモノでもないじゃない」
「いーやーっ　それ以上言わないでっっ」
大泣きしている彼女。女同士というのもあり、泣きっぷりも半端ではない。
化粧は崩れ、涙と一緒に鼻水まで流し、たまにハンカチで勢いよく洟をかむ。
彼女の前のホットコーヒーは容赦なく冷めてゆき、
（あれ、たぶん鼻水とか落ちてるな……）
淡々とそんなことを思う自分は友達甲斐がない、といったところか。
「……そもそもファミレスなんかで愛を告白する男になんでそこまで傾倒するのかが理解らないし」
「素朴な人なんだな、って思ったのよ」
「喫煙席で？　職持ってるのにデザート480円で？　素朴も色気もへったくれもあったもんじゃないし」
「しかもそのお金、私が払った……」
「普通に別れて正解でしょ」
そりゃあ、ファミレス。値段も手頃。お互い仕事してれば多少おごったところで懐にはあまり響かない。
が。
告白したその日にその場所の飲食費を女に持たせる男はどーよ、とか思うのは女故の偏見か。
「そーよ。阿呆よ。私なんかアホアホよ。それから何回もデートしたし、それなりにまあ、いい思いもしたと思うわ。でも、よりにもよってデートで入った同じファミレスの喫煙席と禁煙席の両方でデートかますことないと思わない！？」
　ずびぃっと彼女は洟をかむ。もうハンカチは濡れそぼって見る影もない。
「つまり……」
ポケットティッシュを差し出してやりながら私は彼女の言葉を自分なりに整理して要約した。
「喫煙席側にあんた座らせて、禁煙席側に奴の妻子が座って食事してた、と……」
　確かに禁煙席と喫煙席の位置は離れているし、仕切りもある。
が、愛人と妻子を同じ空間に置くなど、ある意味大胆な男である。
「彼がお手洗いに立ったから私も化粧直しに立ったのよ。そしたら仲睦まじい親子連れがステーキセット食べてんのね。仲いいな～っと思って見たら、その輪の中に彼がいて……彼の前にもステーキセット普通に置いてあるの。1580円よ。私におごったのなんて280円のファミレスの飲み放題コーヒーが最高額よ」
……値段の問題か。
と、いうより一年も付き合っていてちまちまたかられていることに何故気付かなかったのだろう、この女。
……まあ、ネックは『少額』だから、だろうが。
「で？」
「とりあえず席で彼が戻ってくるの待ったわよ。で、戻ってきた彼に『素敵な奥さんね』って言ったら『うん』て答えてから『あ』て。『あ』て何、『あ』て。騙されるのもムカつくけどこんなにあっさり口を割るのもどうなのよっ」
「単に阿呆でしょう、それは」
コーヒーを口に含む。
不味い、というより安い味がする。さすがに夕食を取るにはそろそろ遅い時間で、客足はめっきり少なくなっている。
おそらく、「おかわり自由」用に大量に作られているコーヒーだ。保温機上で長時間待機していたに違いない。
ゆっくりと煮詰まったような、限りなく安っぽい味。
「わかってるわよ、アホだって。でも、好きだったのよ～っ」
お～いおいおい、と相変わらず派手に彼女は泣き続ける。
「しかもあんな阿呆をっ　振るならまだしもそれにフラれたってのもムカつくの～っっ」
あ、相手の阿呆を認めやがった。
が。これだけ泣かれ倒すのもいい加減、鬱陶しくなってきた。
だから一気にコーヒーを飲み干す。
本っ気で安い味がする。
「あんたウザい。そんなに泣くならその安っぽい阿呆男を殺すか奪うかざっくり忘れるかはっきり決めなさいっ」
「忘れるけどムカついて～っ」
彼女は何度目かの洟を勢いよくかんだ。
「思わずアイツにコーヒーぶっかけて伝票押し付けてきちゃった。絶対スーツ染みになるから微妙に罪悪感あるけどクリーニング代なんて絶対払わないからね～っっ」
「………………」
さすが、やることはやってきたらしい。
とりあえず一年間女心を弄び、スーツ一枚で縁が切れたのだ。相手にとっては安い代償だろう。
「……ま、よくやったわ。自棄呑み、自棄食い、どっちでも今日は付き合ってあげるわ」
「もちろんそのつもりであんた呼んだんだけど～」
ようやく泣きつくしたらしい、目の前の彼女は生来の逞しさを取り戻しつつあった。
「けどその前に……」
私たちは勢いよく通りすがりのウェイトレスに視線を向けた。
その目つきの悪さと異様な勢いに一瞬、身を硬くするウェイトレス。
「な、何か……」
半ば脅えるような目つきのウェイトレスに二人そろって勢いよくカップを差し出す。

「「コーヒーお替り」」

[6] mixiユーザー 06月17日 12:33

【コーヒーお替り】

「♪♪ドレミファソラシド、ドシラソ’ファミレス’って、でや。コレちょっと面白ないか。」
「あんた、何ショーモない事云うてんのぉ。」
「いやいや。今日は暑いやろ。外歩いてたら喉が渇いてきたよって、ファミレスでコーヒーでも飲みたいなぁ思て。」
「ほな、はじめからそない云うたらエエやないの。それを何やて『ドシラソファミレス』って、いつもいつもショーモない事ばっかり云うてからに。ほんまにアホちゃうか。」
「そないにポンポン云わんでもエエがな。ワイら夫婦やろ。せやのにお前には’夫へのいたわり’とか‘愛’っちゅうもんがあらへんのかいな。」
「あいあい。」
「それはあいづちやがな。」
「あんたにはこれぐらいの’あい’充分やワ。」
「何やとぉ。」
「あぁ丁度ええ。ここにファミレスがあるよってな、私もちょっと喉が渇いてきたさかい、ほな、コーヒでも飲んでいこか。」

「いらっしゃいませ、お二人様ですね、こちらの席へどうぞ。」
「はいはい。よっこいしょと。」
「ご注文がお決まりになりましたら、」
「もう決まってるねん、レーコー頂戴。」
「あんた、レーコーて何云うてんの。」
「何云うてるて、レーコー。あぁあぁ、レーコー云うのはな、これは大阪弁でアイスコーヒーの事やがな。決して高島礼子とかの事と違うで。やっぱりお前、ワシの事を愛してくれてたンか、ヤキモチなんか焼いてからに。」
「違う違う。そやのおて、レーコーやったら１杯しか飲まれへんやろ。ホットコーヒーやったらお替わり自由や。何杯でも飲めるよって得やねん。せやから、レーコーなんか頼んだらアカン『損をする』と云うてんねん。」
「何じゃいな。けど、これだけ暑いのにホットて･･･」
「イヤなんか。」
「そんな事はないねんけど･･･、『ほな、すいません。ホット２つ下さい。』」
「ねえちゃん、ねえちゃん、ちょっと待って。」
「はい。何でございますか。」
「ホットは１つでええワ。」
「はい、分かりました。ホット１つですね。ご注文はこれでよろしいでしょうか。」
「ホット１つて？お前はコーヒーいらんのか。」
「飲むで。」
「けど、それやったら･･･」
「これでええねん。」
「そらまた何で。」
「おねえちゃん、おねえちゃん。」
「はい。何でございますか。」
「ホット持ってくるときになぁ、そのとき一緒に、コーヒーお替り。」

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