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「花」の物語コミュの「桜」の物語

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古文で「花」といえば一般に桜を指すように、日本を代表する花の一つ。
山桜をはじめ多くの品種が自生しており、園芸品種も300種以上ある。春の季語。

コメント(40)

■梶井基次郎「桜の樹の下には」

「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」
という一文ではじまる有名な短編。
桜の美しさに潜む、妖しさ、禍々しさをあますところなく描ききっている。

+ + +

青空文庫で読むことができます。↓
http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/427_19793.html
■太宰治「春昼」

「桜は、こぼれるように咲いていた。」

武田神社での春の大祭の一コマが桜と共に書かれている。

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随筆なので反則かとも思いましたが、桜を見て○○を思い出すといった話がずっと続くので載せてみました。
これも青空文庫で読むことができます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/43573_17939.html
■今市子「魔の咲く樹」(『百鬼夜行抄8』収録 朝日ソノラマ)

山の中に引越してきた也実の一家。古い日本家屋の西側には大きな桜の木があり、お化け桜と呼ばれているようだった。
また、一家で町内会長に挨拶に行った際に、その桜の木は咲かないことと、古めかしいしきたりを聞かされて……。

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桜の樹の下には屍体が埋まっているという伝統(?)をうまく引き継いだ短編です。別に主人公のいるシリーズものの一篇でもあるので、これだけを読んだら少し分かりにくいのでご注意を。
桜=魔・妖のイメージは、坂口安吾の「桜の森の満開の下」とも近いかもしれません。
■本居宣長『玉勝間』

巻六「花のさだめ」より

「花はさくら。桜は、山桜の、葉あかくてりて細きが、まばらにまじりて、花しげく咲きたるは、又たぐふべき物もなく、うき世のものとも思はれず。葉青くて、花のまばらなるは、こよなくおくれたり、大方山桜といふ中にも、しなじなのありて、こまかに見れば、一木ごとに、いさゝかかはれるところありて、またく同じきはなきやうなり。また今の世に、桐が谷八重一重などいふもやうかはりていとめでたし。すべて曇れる日の空に見あげたるは、花の色あざやかならず。松も何も、青やかに茂りたるこなたに咲けるは、色はえて、ことに見ゆ。空きよく晴れたる日、日影のさすかたより見たるは、にほひこよなくて、おなじ花ともおぼえぬまでなむ。朝日はさらなり、夕ばえも……(以下略)」

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ジャンルは随筆です。
■樋口一葉「闇桜」

隣同士に住む、園田家と中村家。
園田家の良之助と中村家の千代は本当の兄妹のように仲がよかった。ところがある日、千代の知り合いに二人でいるところを冷やかされた日から、千代は良之助への恋心を自覚してしまう……。

「風もなき軒端の桜ほろほろとこぼれて、夕やみの空鐘の音かなし。」
(『全集 樋口一葉1 小説編一』p.15)

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はかなく消えゆく少女の命と、散る桜が重ねあわされています。
■『平家物語』灌頂巻・大原御幸

西の山のもとに一宇の御堂あり。即ち寂光院これなり。旧う作りなせる前水、木立、由あるさまの所なり。
「いらか破れては霧不断の香をたき、とぼそ落ちては月常往の灯をかかぐ。」とも、かやうの所をや申すべき。
庭の若草茂り合ひ、青柳糸を乱りつつ、池の浮草浪に漂ひ、錦をさらすかとあやまたる。
中島の松にかかれる藤波の、うら紫に咲ける色、青葉交りのおそ桜、初花よりもめづらしく、岸の山吹咲き乱れ、八重たつ雲の絶え間より山ほととぎすの一声も、君の御幸を待ち顔なり。
法皇、これを叡覧あつて、かうぞおぼしめし続けける。

  池水に汀の桜散り敷きて波の花こそ盛りなりけれ

+ + +

後白河法皇の歌が映像的で美しいです。
水辺に散り敷く桜を詠んだ歌。
■『伊勢物語』第八十二段

むかし、惟喬親王と申す親王おはしましけり。山崎のあなたに、水無瀬といふ所に宮ありけり。年ごとのさくらの花さかりには、その宮へなむおはしましける。その時、右のうまの頭(かみ)なりける人を、常に率ておはしましけり。時世へて久しくなりにければ、その人の名忘れにけり。狩はねむごろにもせで、酒をのみ飲みつつ、やまと歌にかかれりけり。いま狩する交野(かたの)の渚の家、その院の桜ことにおもしろし。その木のもとにおりゐて、枝を折りてかざしにさして、上中下(かみなかしも)みな歌よみけり。うまの頭なりける人のよめる。
 
  世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
 
となむよみたりける。また人の歌、
 
  散ればこそいとど桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき
 
とて、その木のもとは立ちてかへるに、日ぐれになりぬ。

+ + +

桜を詠んだ有名な和歌が入っています。今の季節にぴったりですね。
伊勢物語には他にも、

  あだなりと名にこそ立てれ桜花年にまれなる人も待ちけり

  けふ来ずはあすは雪とぞ降りなまし消えずはありとも花と見ましや
  
  花にあかぬ嘆きはいつもせしかども今日のこよひに似る時はなし

などといった桜を詠んだ歌が頻出します。
■坂口安吾「桜の森の満開の下」

鈴鹿峠は桜の森の下を通らなければならない道があり、しだいに人はそこを通らなくなっていった……。
そこに住みつき悪事を働いていた山賊と、彼が出会った女、そして桜の物語。

「そして桜の森が彼の眼前に現れてきました。まさしく一面の満開でした。風に吹かれた花びらがパラパラと落ちています。土肌の上は一面に花びらがしかれていました。この花びらはどこから落ちてきたのだろう? なぜなら、花びらの一ひらが落ちたとも思われぬ満開の花のふさが見はるかす頭上にひろがっているからでした。」

+ + +

桜を描いた短編です。
桜の怖ろしさ、美しさを存分に堪能できます。

梶井基次郎作「桜の樹の下には」と並んで有名ですね。

青空文庫で読むことができます。↓
http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42618_21410.html
■山口美由紀「夢幻桜」(『ひとゆり峠』収録)白泉社

不思議な力を持ってうまれたために、家族にもうとまれ放浪の旅を続ける男が主人公。
彼は桜の盛りのある日、ひどい嵐にあって古い絵馬堂で暖をとることになった。先客の二人と話をしていると、子どもがひとり彼のあとをたどるようにやってくる。

その子どもは目が見えない代わりに、自分に優しい心を持つ人間を光として感じることが出来るという。母親とはぐれて絵馬堂に迷い込んだと言った子どもの首には、指のあとがくっきりと残っていて……。

+ + +

「目隠し桜」という特別な桜の場所が出てきます。
天から降るように花びらが舞う……見てみたいですね。
■わかつきめぐみ「ONE WAY」(『黄昏時鼎談』)白泉社

体の弱い妻の看病をしていた男のところに、不思議な生き物が現れ問いかけた。
妻はこの先もずっと寝たり起きたりをくり返すつらい日々を送ることになる。少しでも早く終わらせてやりたければ……と。

それに対して男が答えた言葉とは?

+ + +

8ページの短編ですが、心に残ります。
■山口美由紀「花異国(はなとつくに)」(『フィーメンニンは謳う5』収録)白泉社

小さいころキャンプ登山で道に迷った隆は、従兄と共に桜の花が咲く不思議な村へと迷い込んだ。そのままそこに残った従兄は結局戻ってくることはなく、隆だけが麓の村へと無事に姿を見せ、桜の咲く村は子どもの見た夢として片付けられてしまう。
それから十年後、桜の咲く村で出会った少女と再開した隆だが、少女は何か秘密を抱えているようだった……。

+ + +

桜と鬼の悲しい物語です。
■小沢淳『プリマヴェーラの葬送』講談社

旧家に家事手伝いとして雇われた娘、晴美。彼女から叔母に宛てられた手紙には、「殺される、助けてください」とだけ書かれていた。
弓削家の館に踏み込んだ人々が見たものは……?

晴美を魅了した、弓削家の当主、葉月。艶やかな美しさを持つ、美春。二人の世話をする老人たち。謎の庭師――四季折々に姿を変える庭に建つ洋館を舞台にしたミステリ。

+ + +

大きな庭に囲まれた館が舞台の小説なので、桃や木蓮、藤などいろいろな花が出てきますが、やはり桜のイメージに彩られたお話です。
■上橋菜穂子『狐笛のかなた』理論社

人の心の声が聞こえる、<聞き耳>という力を持つ小夜は、ある日犬に追われている子狐を助けた。そして、怪我をした子狐を抱きしめたまま、里人の出入りを禁じた森陰屋敷へと仕方なく向かうこととなる。
そこで、小夜と子狐を助けてくれたのは、同じ年ぐらいの少年だった。その少年小春丸と親しくなる小夜だが、ある事情で会うことができなくなってしまう。

そして、数年後、小夜は彼らと再会する……。

+ + +

お家争いや呪者たちの攻防、恨みの連鎖など、読み応え十分です。
若桜野という「桜」の地名がついた場所が争いの焦点となっているのとは対象に、枝屋敷という名前の館の周りに植えられた梅が破邪の梅となっているのも興味深いですね。

桜の出てくるラストは美しいです。

(文章に間違いを発見したので、訂正再投稿しました。)
■川端康成『山の音』岩波文庫

信吾は、敗戦直後の鎌倉で、年上の妻、息子、息子の嫁と一緒に暮らしている。
彼は息子が外に女を作っていることを知り、嫁の菊子に哀れみとも何ともいえない感情を抱くようになるのだが……。

四季の移ろいの中、人間の心の揺れ動くさまが丁寧に描かれている。

+ + +

桜以外にも四季折々の植物が出てきます。
桜は、新聞に載った老人夫婦の家出の記事の前後に、「……。今が盛りで、散るものとは思えない。」(p.177)
しかし、確実に散っていくものとして書かれています。
■わかつきめぐみ『So What?』白泉社

祖父危篤の知らせに実家にかけつけた阿梨が見たものは、幽霊になった祖父と異世界の住人ライムだった。
祖父の研究タイムマシンのせいで、ライムは異世界から運ばれてきたらしい。
ライムを元の世界へ返すために、阿梨たちは?

+ + +

作中に出てくるのは八重桜です。いろいろなジャンルの本を書いていた阿梨の祖父が、彼女のために書いたものが「他の桜より遅く咲くのを嘆いてる八重桜の話」(p.112)でした。
■太宰治「葉桜と魔笛」

葉桜の季節になると思い出すことがある、と老婦人は物語る。彼女には、今から三十五年前、結核を患い、もう百日持たないと医者にいわれた美しい妹がいた。
妹の看病をしながら、彼女は妹に宛てて届いたある男性からの手紙を盗み読んでしまう。その男性は妹の病気を知り、妹に手紙を送るのもやめてしまったようだった。
ところが、妹を捨てたはずのその男性から、新たな手紙が届いて……。

+ + +

これが桜の花の下を舞台にした話でしたら、もっと幻想的だったと思います。わざわざ葉桜の季節にしたのは、現実感を出したかったのでしょうか。
葉桜のほうが何となく不気味な感じがしますけれど。

青空文庫で読むことができます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/42376_15545.html
■宇治拾遺物語 「田舎の児桜の散るを見て泣く事」

これも今は昔、田舎の児(ちご)の比叡の山へ登りたりけるが、桜のめでたく咲きたりけるに、風のはげしく吹きけるをみて、この児さめざめと泣きけるをみて、僧のやはら寄りて、「などかうは泣かせ給ふぞ。 この花の散るを惜しうおぼえさせ給ふか。桜ははかなきものにて、かく程なくうつろひ候なり。 されども、さのみぞ候」と慰めければ、「桜の散らんは、あながちにいかがせん、苦しからず。 我が父(てて)の作りたる麦の花散りて、実の入らざらん思ふが侘しき」といひて、さくりあげて、よよと泣きければ、うたてしやな。

+ + +

僧は児が桜が散るのを惜しんで泣いていると思って慰めたのですが、児は父の作っている麦のことを考えているという点が面白いです。桜は児にとっては農作物の収穫を占うものらしく、そのような風習は全国的に見られるとか。
■「鳥の町」より

「この御寺に桜の盛りとうけたまはりてまゐりぬ。何とぞ見物仕りたし。」と言い入れ、五、六人連れにて庭前を見歩き、中に一人の若者、一枝手折らむとせしを、和尚に見とがめられ、「これこれ、何ゆゑに桜を手折らむとするぞ。」としかられて、「はて、没義道にのたまふな。『見てのみや人に語らむ桜花』と申す歌もござる。」「いやいや、埒もないことを言ふ人よ。入相のころは鐘さへもつかせぬに。」

  見てのみや人に語らむ桜花手ごとに折りて家づとにせむ
    (「古今和歌集」より)

  山里の春の夕暮れ来てみれば入相に鐘に花ぞ散りける
    (「新古今和歌集」より)

+ + +

お寺に桜の花を見に来た若者の一人が、一枝手折ろうとして、和尚に見咎められます。それに対して、古今和歌集の歌を引用して、眺めただけでは人に桜の美しさを語ることができるでしょうか(できるわけがないので、家へのみやげにしましょう)、と言うのです。しかし、和尚がそれに答えて新古今和歌集の歌をうまく使って切り替えしているのがうまいです。
■田村由美「BASARA」小学館文庫          

花だ……。こんなところに……

このあたりは大昔桜の名所だったといいます。

+ + +

砂漠の国が舞台の異世界ファンタジー。現実の世界の砂漠でもかつては花の名所と呼ばれた地域もあったことでしょう。
■高野文子「ふとん」絶対安全剃刀収録 白泉社

こぼれたしずくの五つから

五色のさくらの木が生えた。

赤、青、黒、黄、白

酒 咲け さくら

五色のさくら

天から落ちた。

足元散った

+ + +

あと、数ヶ月で桜の季節ですが今年は五色の桜が見れるかな(笑)
■吉野朔実「少年は荒野をめざす」集英社文庫     

二度と着ることのない
この制服の色を覚えていてね

桜が咲いたら思い出してね

……

桜迷路の宵闇に

白い未練の月が出る

想いをこらせて

立ち尽くす

+ + +

もうすぐで卒業式のシーズン。このセリフを言われてみたかった(笑)
■須藤真澄「このはなさくや」(『子午線を歩く人』収録)アスペクト

「ゆずの湯」の前で「まー坊」はご近所のおばさま方とばったり出会い、お花見に誘われる。連れて行かれたのは二丁目の空き地。
そこにはほそぼそとした小さな桜しかなく、憤慨する「まー坊」におばさま方が見せてくれたものは……?

+ + +

春の夜の不思議なお話です。
■柊あおい「ENGAGE」集英社

入学式

息のつまりそうな桜の中

彼女は

とても愛しそうに
ピンクの空を見上げていた

……

特別な…ってわけじゃないけどなんか1年ごとにいろんな気持ちで
この花を見てきたなあ…って  毎年 花はいつも同じように開くけど
見ている人の気持ちは違うのよね

……

散ってしまった桜の花も
彼の街ではまだ
咲いているかもしれません


+ + +

『星の時計のシルエット』の番外編。この作品が好きで毎年3月の終わりに読み返します。
■ 加納朋子『掌(て)の中の小鳥』東京創元社

とある事件の解決をきっかけに、「僕」はあまり乗り気ではなかったパーティに参加することにした。無性に人恋しかったのだ。
そこで僕は鮮やかな赤のワンピースを着た女性に出会う。
彼女は傍らの男にこう言っていた。

「きっかけなんて、大抵はつまらない偶然なのよ」

彼女に魅せられた僕は……。

+ + +

日常の謎を扱った連作短編集。
■高橋留美子『めぞん一刻』小学館

変わり者ぞろいのアパート「一刻館」。
いい加減に出て行くことに決めた浪人生・五代だが、新しい管理人となった女性を見たとたん、考えを変えてしまう。
しかし、彼女には複雑な事情があるようで……。

+ + +

久しぶりに読んでも、やはり面白かったです。
最後の数回に出てくる桜の場面は特に印象深かったですね。
■厦門潤「エデンの桜」(『密天の花園』収録)新書館

桜だらけの高校、桜台高校で今日は入学式が行われる。
そこで少年は少女と出会う……。

+ + +

桜だからこそというお話だと思います。
■こうの史代『夕凪の街 桜の国』双葉社

「広島のある日本のあるこの世界を
 愛するすべての人へ」(p.4)

+ + +

原爆投下十年後の広島を舞台にした「夕凪の街」と、「夕凪の街」に出てくる女性の姪を主役にした「桜の国」の二編で構成されています。
ここ数年で読んだコミックの中で一番読み返した本です。
■アンジェラ・ナネッティ『おじいちゃんの桜の木』小峰書店

「ぼく」には田舎に住むオッタビアーノおじいちゃんとテオドリンダおばあちゃんがいた。おじいちゃんたちの野菜畑には、「ぼく」のママが生まれたときに植えられた桜の木があり、フェリーチェと呼ばれている。
「ぼく」はあまり田舎に行く機会がなかったけれど、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きだった。でも、おばあちゃんが病気になってしまい……。

+ + +

外国文学に出てくる桜の木を読むと、逆に日本人の桜への思い入れを感じさせられます。日本文学での桜と全く描かれた方が違うんですよね。
■三浦しをん「残骸」(『私が語りはじめた彼は』収録)新潮社

政財界に影響力を持つ男の娘と結婚し、婿養子となった私。
何でも思いどおりにしようとする子どものような妻や、婿養子の私に何かと口を出してくる義父に囲まれながらも、私は幸福な生活を送っていた。気になるのは、自分たちの家の庭が首都高速道路の計画予定地に入っているため、庭の半分を売らなければならなくなるかもしれないことぐらいだ。庭に咲く桜の木はもうすぐ蕾をほころばせようとしている。

ところが、ある日、ある女性と妻の会話をたまたま耳にした私は、今まで知らなかった事実を知らされる。私の下した決断とは?

+ + +

連作小説の一部です。
■今西祐行「花のオルガン」(『一つの花』収録)岩崎書店

空の上にいる花の天使は、春が来たので、北の国に花を咲かせるために、北の国にやってきた。天使たちが息を吹きかけると、どんなに小さい花も花を開くのだ。
しかし、ある桜の木がなかなか花を咲かせない。天使たちは一生懸命みんなで息をふきかけ、やっと桜の木は花をちらほら開かせた。

ところが、春が過ぎ、夏が来て、天使たちが桜のところへ戻ってくると……。

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花の天使(作中では「花のてんし」と書いてあります)は、ミルク色の服を着ているので、私達には見えないそうです。
■森絵都『ラン』理論社

十三歳で両親と弟を、二十歳でおばさんを亡くした環は、しだいに生と死の境界があいまいになってゆくような感覚になっていた。
そして、自転車屋のこよみが死に、こよみの飼い主の紺野さんからモナミ一号をもらったことで、ますます死者の世界へと近づいていく。
自転車に乗っていたある日、信じられないような距離をこぎ続けた環は、ある場所へとたどりついたのだ。そこには、若返ったこよみがいて……。

「一面の白に埋もれた桜並木。
 前に見たのはいつ、どこでだっけ?
 思い出せない。でも、前に見たときに思い出したことなら思い出せる。」(p.137)

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とある理由で主人公の環はランニングを始めます。目標は40キロを六時間以内で走れるようになること。そのために、彼女はあるランニングチームに所属し、苦手な人付き合いをするようになっていくのですが……。
岡田 淳『雨やどりはすべり台の下で』 偕成社文庫

どうしてこの公園ってわかったかっていうと、サクラがいっぱいだってことでわかったんだって。

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現役の小学校の図工教師である作者の作品は子供たちに対する優しいまなざしに溢れています。
■桑田乃梨子「たとえていえばそれは」(『犬神くんと森島さん』収録)白泉文庫

学校の先生に恋して、卒業後結婚し、幸せな生活を送っている尚枝。
しかし、10歳年上の先生が今の生活に満足しているのだろうかと不安に思ってしまう。
先生は自分のどんな話でもにこにこ相手をしてくれるのに、自分は先生の話をただ聞くだけしかできない。

先生が学生時代の後輩と会うときに、尚枝は気を利かせて先生を一人で出かけさせたのだが……。

「家の中に
桜の木があって
いつも花が咲いている
そんなかんじです」(p.450)

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制服ウォッチングが趣味の怪しい高校教師森島恵子が出てくるシリーズの番外編的作品です。
■桜庭一樹『荒野』文藝春秋

小説家の父と住み込みの家政婦さんと一緒に暮らす荒野は、今日から中学生。入学式の朝を迎えていた。
その日、JR横須賀線に飛び乗った荒野はセーラーをドアにはさんでしまい、それを引き抜こうとして、ホックがはずれ白いスリップが見えてしまう。
助けてくれたのは文庫本を読んでいた少年だった。

後で、彼は同じクラスになった神無月悠也だと分かるが、荒野の名前を聞いたとたん、責めるような目で荒野を見たのだ。
家政婦の奈々子さんに彼のことを相談したところ、惚れたのでは?とからかわれてしまい……。

「濡れた石段の上に、ソメイヨシノの花びらがひらひらと舞い落ちてきた。」(P.24)

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桜も含めてたくさんの花が出てくる、鎌倉を舞台にした小説です。
■柏葉幸子『花守の話』講談社

お父さんは中国へ長期出張、お母さんは急なパート先の研修旅行。
五年生になる春休み、しつこい風邪をひいた瞳子の面倒をみてくれる人はなかなか見つからず、家政婦さんもうまく探せない。
お父さんは、お母さんの母親に頼んでみたらとお母さんに言うのだが、子どものころに別れた母親にはあまり頼みたくないようだ。

しかし、他に頼む当てもないため、結局やって来たおばあちゃんは、瞳子の想像するおばあちゃんとはまったく違っていた。朝からきれいにメイクをしており、少ししわが見えるがおばあちゃんと呼ぶのは悪いようだ。

その夜、10時過ぎても眠れないでいた瞳子のところに、おばあちゃんが顔を出し、いきなり「むかしむかし、あるところに」と話し始める。あっけにとられた瞳子だが、せっかく話を聞こうと思ったところに、おばあちゃんの携帯に不思議な電話がかかってきて……。

+ + +

桜には不思議な話が似合います。
■リンドグレーン『はるかな国の兄弟』岩波少年文庫

「ああ、その谷は、どこもかしこもサクラの花でまっ白でした!サクラの花と、緑あざやかな草とで、白く、また緑でした。」(p.38
〜p.39)

重い病気で学校に半年間も行けないでいるクッキー(本名はカール)は、自分がもうじき死ぬということを知っていた。
大好きな兄に、ぼくがもうすぐ死ぬのを知っているの?ときくと、兄は知っていると答え、死ぬことはすてきだと言うのだ。
なぜかというと、死んでしまっても土の下で寝ているのはぼくのぬけがらで、ぼく自身はナンギヤラというところに行くからだという。

兄と一緒のところに行けると聞いたぼくは、先にナンギヤラに行ってもしばらくなら我慢できると思っていたのだが、突然の火事で兄が先に死んでしまい……。
■杜野亜希『行方不明のシンデレラ』白泉社

銀座の老舗デパート竹屋では今靴の下取りセールが行われていた。古い靴一足につき千円の賞品券と引き換えてもらえるのだ。
ところが、ある日、下取りにした靴を取り戻したいという女性が現れる。彼女は祖母の古い靴を無断で持ってきてしまい、その靴は祖母にとってお守りだという。
竹屋のコンシェルジュを務める紅は、何とかその靴を探そうとするのだが……。
■荻原規子『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』角川書店

両親の仕事の都合もあり、泉水子は祖父と中学三年までずっと玉倉神社に住み続けていた。そこは、世界遺産に指定された熊野古道の玉倉山にある神社で、泉水子は世間とあまり関わらない生活を送っていた。

しかし、高校は東京の鳳城学園で寮生活を送ることになり、生活は一変する。先に編入していた相楽深行とはどうもうまくいかないことが多く、学校の始まる前の春休み、寮のルームメイトが来るのを泉水子は待つのだが……。

「日中暖かくなる日が三日続いた。なかば意地で図書館がよいを続けていた泉水子は、女子寮わきのソメイヨシノが、ついに咲きだしたことに気づいた。(中略)

208号室のドアを開けるなり、泉水子は、桜の木に起こったことがここにも起こっているような気がした。原因は、片側のいすから立ち上がった少女だった。鮮やかなぼたん色をした襟ぐりの広いセーターを着て、部屋が一気に明るくなっている。」(単行本版 p.45)

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ルームメイトの宗田真響の登場シーンです。桜と重ね合わせていることからも、真響がどんな人物なのか想像しやすくなりますね。

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