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「花」の物語コミュの「フロックス」の物語

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■横光利一「榛名」

考えることからせめて一週間逃れたいと思い、都会を逃げ出してきた私は、汽車の隣に座る代議士を追いかけるようにして、本来自分の降りる駅ではない場所で降りてしまった。しかし、しばらく代議士の後を追ううちに、その目的さえも忘れてしまい、「忘れる」ということに安堵している自分に気づく。
その後、私はかつて友人が推賞していた榛名へと向かうことになる。その山頂にある円い湖を私は思い浮かべていた私は、そこに着いてからは、宿の女中と話をしたり、湖畔を散歩したりと静かな日々を過ごすことができた。

「木の枝をへし折る音、四肢をときどき慄はして眠つてゐる犬、腹を干した岸のボート、ぼつりと一つ芝生の上に見えるキャムプ。森の中に生えてゐる丈長い蘆。白い樹間を絡りながら流れる煙。淡紅色に塊つた花魁草の花の一群。絶えず水甕へ落ちる水の音。」

私の短い休息の日々を描いた短編。

+ + +

榛名湖畔の様子が細部まで描かれ、特に自然描写が詳しいです。花の名前が延々続く箇所があって、「私」がその花のトンネルを抜けるところが何とも恐ろしく美しい。
よくこんなに花の名前が分かるものだ、と別の意味でも感心してしまいました。

青空文庫で読むことができます。↓
http://www.aozora.gr.jp/cards/000168/files/4655_15559.html

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