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「花」の物語コミュの「菊」の物語

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桜と共に日本を象徴する花。
秋の花といえば、この花をすぐに思いつくほど、日本人にはなじみ深い。

コメント(12)

■『伊勢物語』第十八段

むかし、なま心ある女ありけり。男近うありけり。女、歌よむ人なりければ、心みむとて、菊の花のうつろへるを折りて、おとこのもとへやる。

  くれなゐににほふはいづら白雪の枝もとをゝに降るかとも見ゆ

男、しらずよみによみける。

  くれなゐににほふが上の白菊は折りける人の袖かとぞも見ゆ

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「菊の花のうつろへる」は、白菊に赤みがかかってきたものらしいです。確かに盛りを過ぎると、色が変わるときがあるような。
「しらずよみ」は、女の歌の意味が分かっているのに、知らないふりをして歌を詠んだということ。返しの歌だけを見ると、白菊の美しさを詠んでいるように思えますね。
(『日本古典文学全集 8』(小学館)を参考にしました。)
■『伊勢物語』第五十一段

むかし、男、人の前栽に菊植ゑけるに、

  植ゑし植ゑば秋なき時や咲かざらむ花こそ散らめ根さへ枯れめや

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前栽は庭の植え込みのこと。「前栽」を「せんざい」と読むのは、昔から疑問でした。贈った菊に添えられた歌が上記の「植ゑし植ゑば……」です。秋が来ると菊が見事に咲くことを歌ったもの。
(『日本古典文学全集 8』(小学館)を参考にしました。)
■岡本綺堂『半七捕物帳』より「菊人形の昔」

今度の事件は文久元年の九月、団子坂で忠臣蔵の菊人形が繁昌したときに起こった。三人連れの外国人が菊人形の見物にやって来たところ、外国人の男の一人がある女からポケットの紙入れを抜き取られたのだ。油断していなかった男はその女を取り押さえたが、どこを捜しても見つからない。しかも、女が濡れ衣を着せられたと訴えたので、たちまち外国人たちは周りから殴られたり、石を投げつけられたりとひどい被害を受けた。
逃げるよりしかなかった彼らだが、馬を置いてきてしまったことに気づき、あとでその場所に別のものが行ったところ、馬が二匹消えている。それを探すのを頼まれた半七は……。

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青空文庫で読むことができます。↓
http://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/987_15035.html
■『奥の細道』より「山中温泉」

温泉に浴す。其功有明に次と云。

  山中や菊はたおらぬ湯の匂

あるじとする物は久米之助とていまだ小童也。かれが父誹諧を好み、洛の貞室若輩のむかし、爰(ここ)に来りし比、風雅に辱しめられて、洛に帰て貞徳の門人となつて、世にしらる。功名の後、此一村判詞の料を請ずと云。今更むかし語とはなりぬ。
曾良は腹を病て、伊勢の国長嶋と云所にゆかりあれば、先立て行に、

  行行てたふれ伏とも萩の原 曾良

と書置たり。行ものゝ悲しみ残ものゝうらみ隻鳧(せきふ)のわかれて雲にまよふがごとし。予も又

  今日よりや書付消さん笠の露


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山中温泉の匂いがすばらしいので、菊を手折る必要もないと詠まれています。菊の効能は長寿でもあるので、この温泉にはそういう効き目もあるのかもしれません。「有明」温泉は「有馬」温泉の誤りだそうです。
■花郁悠紀子「菊花の便り」(『幻の花恋』収録)秋田書店

養父にかかってきた電話は、彼の実の息子・文(あや)の死を知らせるものだった。墓参りに行くことになった養父と共に出かけた司郎は、養父が後悔の気持ちに襲われていることを知り、彼に静養をすすめる。

しかし、文の母親の実家に近い旅館に泊まった養父のもとへ、文からの手紙が届き始めて……。

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「菊慈童」をモチーフにした短編です。
■新釈雨月物語「菊花の約」石川 淳

「ひとのこころは変わりやすい秋ではなくても、菊の色の濃いのはきょうのみとはかぎりますまい。帰りくるまことさえあれば、空はしぐれに移って行こうと、何を怨むことがありましょう。奥に入って寝もして、またあすの日をお待ちなされ。」

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菊は繊細な品種でも濃色が多いので作者の上田秋成の慧眼には恐れ入ります。
■岩館真理子『冷蔵庫にパイナップル・パイ』集英社

父親の誕生日プレゼントにチューリップの花のついたネクタイを買おうと思ったやや。
でも、隣に置いてある菊柄も渋くて「おとさん好み」だと迷っていると……。

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「やや」を主人公にした連作短編集です。
花の好きな「おとさん」がいるせいか、花はよく登場します。
■伊藤左千夫『野菊の墓』

村の旧家に生まれた僕は小学校を卒業したばかりの十五歳、親類の民子は十七歳だった。兄弟のように母親に可愛がられた二人だが、周囲の人間がもう子どもではないと母親に告げ、母親も僕と民子にあまり会わないようにと言う。
そのときから、民子の様子も変わり、僕の民子への気持ちも変化していった。
しかし、二人の仲に疑いを持つ人々によって、僕は早々に別の場所にある学校にやられて……。

「まア政夫さんは何をしていたの。私びッくりして……まア綺麗な野菊、政夫さん、私に半分おくれッたら、私ほんとうに野菊が好き」
「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き……」
「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」
「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」

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りんどうも出てきます。
■市東亮子『BUD BOY 3』より「第八話 禁色戒」秋田書店

高位の花仙であるが、いたずらが過ぎたため人間界で暮らすことになった蕾のところへ、部下達がある報告をしにやって来た。
人間が青い菊を作ったというのだ。

青い菊は自然には存在しないものであり、蕾や彼の友人・東雲もその菊を処分しなければと考える。

夜中菊を処分するために研究室に忍び込んだ彼らが見たものは……?

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青い薔薇はもうできてしまいましたね。
ないから好まれるのか、元々人間は青い花を好むのか、どうなんでしょう。
■『枕草子』第八段

正月一日、三月三日は、いとうららかなる。五月五日は曇りくらしたる。七月七日は曇りくらして、夕がたは晴れたる空に、月いと明かく、星の数も見えたる。九月九日は、曉がたより雨すこし降りて、菊の露もこちたく、おほひたる綿などもいたく濡れ、うつしの香ももてはやされたて、つとめてはやみにたれど、なほ曇りて、ややもせば降り立ちぬべく見えたるもをかし。

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重陽の節供(九月九日)の前日に、菊に綿をかぶせて、九日に露に濡れた綿で身を拭うと、老いを忘れるという風習があったようです。
■こうの史代『さんさん録 2』双葉社

妻を突然亡くし、息子夫婦と同居することになった参平は、ある日妻が遺したぶ厚いノートを発見する。
「奥田家の記録」というタイトルのノートには、生活の記録や、奥田家の人々などの記録が詳しく書かれていた。そのノートを見ながら、参平は妻亡き後の生活を続けていくのだが、様々な問題が起こり……。

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息子の嫁がちょっとだけ預かることになった大きい菊の鉢植えが引き起こしたのは……?
■小野不由美 「レインコート」(『鬼談百景』収録) メディアファクトリー

テスト前の部活休みの日、中学二年のIさんはいつもより早めに学校を出た。細かな雨が降っており、空は憂鬱になるほど暗い。Iさんは英単語カードを見ながら、傘を持ち歩いていた。
足許でカチャンという音がして、そちらを見ると足許にはガラス瓶が転がっており、白や黄色の小菊が挿さったままだった。そこは大通りに面する交差点にある電柱の脇で、ガラス瓶の周囲にはお菓子やぬいぐるみが置かれている。 小さな女の子がここで事故に遭ったのだろうと思ったIさんは、ガラス瓶を立て直し、花を改めて挿したのだが……。

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『鬼談百景』に収録されているものには、そんなに怖い!と思うものはなかったのですが、何かの拍子にふと思い出すような、そんな怖さがあります。

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