名古屋市美術館で「20世紀のはじまり・ピカソとクレーの生きた時代」(註)を拝見する。数ヶ月前に担当学芸員のKさんからマン・レイの油彩が招来されると聞いて、楽しみにしていた訳。案内してもらい早速、作品と対面。歩みよりグイと目を近づける。不思議な赤い肌をした肖像。エジプトの壁画に描かれた赤、泥絵の赤かな、全体に暗いトーンだが、左肩の上辺りを遠景として明るい。---この部分の白が描き残しで筆遣いもぞんざい。へたくそなんだけど、良いんだよな。---マン・レイ独特の青色の夜空に白い絵の具を厚塗りした月、光が下方に届いているのかな。不安な雰囲気を醸し出すのは1938年の制作だから。この年のマン・レイ作品が一番好きだ、胸がキュンとなるんだよね。この作品は石膏像の頭部に毛糸が被してある写真を基にしたもの。マン・レイらしいアイデアだ。ミロとエルンストの大作に挟まれているが、十分に存在感を示している。タイトルは「詩人・ダヴィデ王」(油彩・キャンバス 55 x 46 cm)。作品解説のプレートが良かったので、転記しておこう。