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石楠花プロジェクトコミュの石楠花物語・高1時代のシナリオ、その1

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小丸1白樺高原
   健司、麻衣、磨子が湖岸にいる。健司がバイオリンを弾き、麻衣と磨子がフォークダンスを踊っている。

   終わると三人、笑って拍手

磨子「麻衣ちゃん、楽しかったわね。」
麻衣「えぇ、もう一曲…如何?」
磨子「お、いいねぇ。」
健司「ほの前にさ、二人とも。」
二人「ん?」
健司「何か、俺ワクワクするなと思って。」
麻衣「何?MMC?」
健司「ほ。ほいだって人生初のコンクールだもん。緊張しちゃうよ。」
磨子「しかも日本最大級の大型新人戦ですものね。」
健司「ほんなのにさ、麻衣のやつはすげぇーよな。大した女だぜ。」
磨子「そうそう。」
麻衣「へ?何が?」
健司「声楽だよ。ほいだってお前、まだ去年の6月に声楽習い始めたばかりなんだろ?ほれなんに…一時審査に通っちまうだなんて。何て女だ!天才としか言いようがないよ。」
麻衣「嫌ね、ほんなこんないに。やめて、健司。」
磨子「本当の事よ。だから麻衣ちゃん、そんなに腰を低くしなくてもいいわ。堂々としてて。」
麻衣「磨子ちゃん…」
磨子「さ、もう一曲踊る?健司、伴奏して。」
健司「了解ですっ!!」

   健司、バイオリンを弾きながらステップを踏んで湖岸をくるくると踊りだし、麻衣と磨子は組んで踊っている。誰もいない早春の湖


   (ブザーがなる)
   ステージ上にアンネンが出てきて御辞儀をする。審査員席にはタニア・ロイス(26)、マルセラ・チフス(30)がいる。二人とも厳格な顔で無表情。

アンネン「それではお待たせいたしました、第二部に参りたいと思います。ナレーションは引き続き、このアンネンがお送りします。それでは参りましょう、エントリー…」
   タニア、咳払い。
アンネン「え?何でしょう…タニア…ロイス」
   タニア、もう一度咳払い。アンネン、察する。
アンネン「あ、失礼いたしました。重要な審査員をご紹介致します。」
   会場、クスクス。タニア、頭を抱える。
アンネン「ヴェネツィア歌劇場の女会長であり、現役メゾソプラノ歌手のタニア・ロイスさん。」
   大拍手。タニア、立ち上がってぶっきらぼうに一礼して座る。
アンネン「そしてもう一方、同じくヴェネツィア歌劇場の女会長。現役メゾソプラノ歌手のマルセラ・チフスさんです。」
   大拍手。マルセラも立ち上がってぶっきらぼうに一礼して座る。
アンネン「それでは改めまして、早速参りましょう。エントリーNo.一番。松本市よりお越しの桃枝るり子さんです。演目は…」
   るり子、鼻高々、しなしなと入場して歌い始めるが、サビに入ったところ。
タニア「るり子さん、桃枝るり子さん!!」
   演奏がやまる。
るり子「はい、何でしょう…タニア・ロイス…」
タニア「あなたは不合格よ。もう帰ってよし。」
るり子「えーっ…何でですか?せめてサビくらい歌わせてくださいよ。」
タニア「お黙りっ!!どこを聞いたって同じです。はいっ、次!!」
るり子「厳しすぎますよぉ、タニア・ロイスぅ…」
   るり子、むしゃくしゃと戻っていく。美和子、笑いをこらえている。るり子、美和子と麻衣をきっと睨む。


   (会場)
   磨子、身震いする。
磨子「うーっ…こわっ。何あれ、麻衣ちゃん大丈夫かしら?」
紡「大丈夫だに。あいつはああ見えてメンタル強いし…以外と何にも動じないでさ。」

   ステージでは、椿、百合枝、和泉が続いて歌うが、ことごとくるり子動揺、毒舌で途中退場させられる。アンネン、フレデリコ、マルセラ、いい加減呆れて、疲れきった顔をしている。

フレデリコ【タニア…又、今年も始まったよ…】
アンネン【ターニャ姉さんのエコけち審査ね…】
   二人、ため息。
マルセラ「(小声)ねぇ、タニア…ちょっと厳しすぎよ。もう少し緩くしなくちゃ、これじゃあ…」
タニア「お黙り、マルセラっ!!」
   マルセラも呆れてやれやれ。
マルセラ【もう勝手にして…私は知らない。】
タニア「次の方!!」
アンネン「(疲れきったやる気のない声)エントリーNo.11番…本日最年少です。茅野市からお越しの高校生で柳平麻衣さんです。」


麻衣「お、私だ!!」
美和子「(麻衣の肩を強く一発叩く)麻衣、頑張れよ!!」
麻衣「うんっ、しお!!行くに!!」
糸織「ほーいほい。」
   二人、ステージに入場。フレデリコ、かなり心配そう。

   タニア、もはやイライラとやる気をなくしているがチラリと麻衣を見て吹き出し、咳き込む。横井は寝入っているが目を覚ます。
横井「あー?…って…はぁ??」
すみれ「あれってひょっとして…麻衣!?」
八千代「いえ、ひょっとしなくてもまいぴうよ?」
すみれ「どうしてこのステージに?ねぇてつ。」
横井「ほんなの俺が知るかよ!!こっちが聞きてぇ…よ!!」
   磨子、紡は花を振って大歓声。



タニア「や…柳平麻衣さん…ですか?」
麻衣「えぇ、柳平麻衣さんですよ。」
タニア【何なの一体…このへんちくりんな格好をした子は…それに嫌に落ち着いている…不気味だわ。】
麻衣「あのぉ…」
タニア「で、では初めの演奏曲は…あら?(書類を見る)あなた、6曲とも凄く難曲で応募してあるみたいだけど…大丈夫なの?私の審査、知ってるわよね。歌える?」
麻衣「えぇ、勿論(笑い出す)何言わすんすか、タニア・ロイスはぁ!!態々歌えないアリア提出すると思いますか!?」
タニア「そ…それもそうね。では、早速…このディノーラの」
麻衣「ほっち来たかぁー!!(自分をこずく。)オフェリーかとばかり思ってたぁ!!」
タニア「何、オフェリーがいいの?じゃあ…」
麻衣「いえ、何でもいいですよ。ほれでは、まいぴうのディノーラ!!しお、スタンバイ!!」
   糸織に合図。
麻衣「ミュージックスタートですっ!!」
タニア【大丈夫かしらこの子…ま、きっと又明らかに審査対象では無いわね…】
   糸織、伴奏をはじめ、麻衣は歌い出す。タニア、寝そうになりながらいい加減に聞いているが、サビ辺りでふと顔をあげる。
タニア【何、何なのこの子は…屈託のないコロラトゥーラに狂いのない高音…今まで何年も色々な人を見てきたけれどもこんな完璧な人は一人も聴いたことがなかったわ。しかも彼女はまだわずか16歳…あり得ない。こんな歌声、…彼女は正に1000年に一人出るかでないかの天才だわ…】
   麻衣、歌い続けている。タニア、心地良さそうにうっとりと聞き入っている。
マルセラ【…タニア?】
アンネン【ターニャ姉さんが…】
フレデリコ【あのタニアが…】
マルセラ・アンネン・フレデリコ【歌を止めないっ!?】

   歌が終わる。大拍手と大歓声。タニア、泣いている。麻衣、キョトンとする。
麻衣「…タニア…ロイス?」
タニア「…。」
麻衣「(大声)タニア・ロイスってば!!」
   タニア、ハッとして我に帰る。
麻衣「私の歌は?どうでしたか?はい、残念って感じです?」
タニア「ありがとう…(涙を拭う)いいえ。あなた、声楽は何年やっているの?」
麻衣「これで一年目です。」
タニア「い…一年目?本当に!?」
麻衣「えぇ、…ほれがぁ…何か?」
タニア【この子は…本当に天才娘なのね。こんな才能、決して無駄には出来ないわ。】
麻衣「おいっ!!」
タニア「ねぇ柳平さん、あなた…もう一曲歌ってくれる?」
麻衣「もう一曲?でも他の人たちは…」
タニア「いいから歌いなさいっ!!」
麻衣「は、はい…」
   麻衣、糸織の伴奏で歌い出す。

麻衣「…どうでしたか?タニア・ロイス…」
タニア「あなたは…あなたは…。最終審査まで待っていなさい…。合格です。」
麻衣「おぉっ!!」
   フレデリコ、美和子、アンネン、マルセラも驚く。タニア、誇らしげに目を閉じて微笑む。麻衣、踊りながら戻っていく。
麻衣「♪je suis Titania la blonde… 」
   タニア、ポカーンとして麻衣を見る。
タニア「♪je suis Titania la blonde …(M)でも不思議な子だわ…一体なんだったのかしら…」
   会場も湧きつつも麻衣の不思議さに包まれる。

   (ステージ裏)
   麻衣が戻ると美和子が泣いて麻衣に抱きつく。
麻衣「ちょっ、ちょっと美和子さん!!」
美和子「凄いに、あんた凄いわ…。ごめんな、あたい、正直あんたのこん高校生ごときがライバルにもならん、なんて思ってなめてたわ。お手並み拝見とかいって…恥ずかしい。あついは短大の二年なんに、あそこまで上手くは歌えんよ。あんたの聴いちまったらあたい、歌う自信なくしたわ…辞退します…」
フレデリコ「ちょい、困るって!!」
麻衣「何、美和子さんバカなこん言っとるんよ!!大学生なんずらに。私なんかよりもずっと専門的にやっとるんだだもん、こんな小娘相手にしちゃいけんに。」
美和子「ほいだって、ほいだって」
   ステージを飛び出そうとする美和子を必死で止める麻衣、フレデリコ、糸織。
麻衣「自信持ってに!!美和子さんはきっと出来る!!私、美和子さんの歌聞いてもっと勉強したいし、見習いたい。だで、な。」
美和子「(思い止まる)分かった…麻衣がほこまでおしてくれんならあたい、やるに。あんたには負けるかもだけど、全力出してあんたみたいにタニア・ロイスをぎゃふんと言わせてやるわ。」
フレデリコ「やれやれ、やっとやる気になってくれたか。」
糸織「よ、頑張れ!!」
麻衣「ほれでこそ美和子さん!!ほれでこそ短大生!!」
美和子「んむ。」
   アンネン、何度も美和子の名を呼んでいる。
アンネン「次の方ぁ…次の…大和田美和子…さぁーん…」
   タニア、イライラとする。
タニア「(イライラと)次の方っ、大和田美和子さんっ。大和田美和子さんっ!!早くおいでなさいっ。」
美和子「(はっとする)あ、やば。次あたいだ。(大声)今行くに!!今行くよぉ、悪いなぁタニア・ロイスぅ。」
   タニア、頭を抱える。会場、クスクス。麻衣、糸織もクスクス。フレデリコは恥ずかしそうに美和子とともに入場。


   美和子もタニアのご機嫌の中、二曲を歌い上げて戻ってくる。
美和子「良かったぁ、あたいも合格ラインだにぃ。」
麻衣「ほれ言ったじゃあ。良かったな、美和子さん!!一緒に帰ろうな。」
美和子「あぁ、勿論だともさ。あたいらへー友達だだもん。」
二人「なぁーっ!!!」
   糸織、やれやれポーズでため息。フレデリコ、ホッとしたように微笑む。

小丸1同・トイレ
   男子トイレには横井、糸織、健司が並んでいる。
横井「しかし、驚いたぜ。急に麻衣のやつが出てくんだもんな。」
健司「だろ、麻衣は大した女だろ!!」
横井「てかお前、原の岩波健司だろ。いたのかよ。」
健司「失敬な!!いたのかよ、じゃねぇーだろう!!」
横井「ん、なんだ?まさかお前、この後の奴に出るとかじゃねぇーよなぁ?ガキの頃、バイオリンだとか?ピアノだとか、女の様なことやってたみたいだけどよ。」
健司「んだとぉ、(鼻を鳴らす)あぁ、出るよ。ほりゃ出るともさ!!」
横井「は?マジで?」
健司「マジっすよ。俺は、ほの女の様なことをまだ未だに続けてんじゃい!!文句あるか。」
   キザっぽく出てく。
健司「男の癖に、ピアノとバイオリンの併願だぜ。じゃな。」
   出てく。
横井「くっそぉー、いつからあいつはあんなにキザで生意気んなったんだ!!」
   入れ替わりに千里が駆け込んでくる。
千里「どいて、どいて、もれちゃう!!もれちゃうよ!!」
   横井、糸織、千里を見る。
糸織「ひょっとして…君も演奏者…だったりして…」
千里「(不安げに)そうなんだ…でも緊張しちゃって…さっきからトイレ近くて困るんだ…。」
糸織「大丈夫か?」
千里「うん、こまったな…どうしよう…」
横井「演奏中にもらしたりして…」
千里「縁起でもないこと言わないでくれっ…本気で悩んでるんだから…」
糸織「おい、時間だぞ。…君も早くしろよ…」
千里「だってぇー…うーん…」
   千里も渋々と手を洗う。そこへ小松が駆け込んできて個室に飛び込む。
千里「?」
   個室で吐いているような音。
横井「おい…なんかあいつ…大丈夫か?」
糸織「きっと彼も出演者で…緊張しちゃってるんじゃ…ってか、(横井を見る)どいでてっちゃんがここにおるだ?」
横井「知るかっ!!(鼻を鳴らす)ほんなのすみれと大寺に聞けっ!!」
糸織「ふーん、二人も来とるだだか。」

   (女子トイレ)
   紡、磨子が手を洗っている。そこへ個室からすみれと八千代が出てくる。

紡「あれ、あんたら確か…」
すみれ「柳平麻衣さんの三つ子のお姉さんの…」
八千代「つむ?」
紡「ほーよ。すみれと、やっちんだら。どいで?」
すみれ「そりゃ私の台詞よ!!驚いたわ。行きなり麻衣が出てきてしかも合格するんですもの。」
八千代「大学生たち差し置いてね。」
磨子「何、知り合い?」
紡「あぁ、東中の二人。金沢地区の伊藤すみれと玉川地区の大寺八千代。」
磨子「ふーん。私は麻衣ちゃんの幼馴染み。長峰中、宮川地区の田中磨子。宜しくなして。」
すみれ「宜しく。」
八千代「宜しく。」
紡「ってこんで、みんなで仲良く見まいか。」
四人「賛成ーっ!!」
   四人、トイレを出ていく。


   (男子トイレ)
   小松が個室からげっそりとして出てくる。
千里「だ…大丈夫か?君…」
小松「ん…だ、大丈夫…」
糸織「具合悪そうだね…」
横井「なんだよお前、吐いてたのか?悪いもんでも食ったか?」
小松「違うんだよ…。緊張しちゃって…。う、…僕は緊張するといつもムカムカしてきちゃって…う、」
   水道に駆け込む。横井、小松の背をさする。
糸織「本当に君、大丈夫か?」
千里「部門は?」
小松「(苦しそうに)ピアノだよ…」
千里「大丈夫?…出られるか?」
小松「どうしても出なくちゃ…(ヨロヨロ)この日のために、どうしても…二年間も練習してきたんだ。優勝したいなんて思っちゃいないけど…この努力は無駄には出来ないんだ…。大丈夫、いつもの事さ…」
   横井、千里、糸織、小松を支えながらトイレを出ていく。

千里の声「ごめん、ちょっと先に行ってて!!僕、おしっこ!!」
糸織「又かよ、」
横井「(笑う)おいおい、早くしろよ。」
小松「こりゃある意味僕より災難かもね…」
   千里、トイレに戻ってきて急いで用を足す。

小丸1同・大ホール
   磨子、紡、すみれ、八千代が固まってボックス席で花を振っている。糸織と横井が並んでボックス席で座っている。別席で美和子も見ている。

   ステージ裏には50人前後の出演者。小松は胸を押さえて時々餌付く。麻衣は平然とした顔でジュースを飲んでいる。千里はガクガクと震えながらペットボトルのお茶を飲んでいる。麻衣、千里に気がついて肩をたたく。千里、神経質ぎみにびくりと麻衣を見る。
千里「…麻衣ちゃん…」
麻衣「小口くん、調子は?」
千里「最悪さ…マックスの緊張感…。どうしよう…(半泣き)」
麻衣「大丈夫よ、何弾くだ?」
千里「…これ。(麻衣にピースを渡す)本番は暗譜だろ…余計にプレッシャーだよ。」
   麻衣、楽譜を見て目を丸くする。
麻衣「嘘…あんた、これ弾くだ?」
千里「…そ、そうだよ。」
麻衣「今年で高1…よね。」
千里「そうだよ。」
麻衣「凄い、これって凄く難しい曲じゃないの!!あんたいつからピアノやっとるの?」
千里「五つ…」
麻衣「楽しみ!!あんたの演奏早く、聞いてみたいわ。この年でこの曲が弾けるなんて天才よ!!幼馴染みの健司よりも上手いかもね。(悪戯っぽく横目で健司を見る)」
健司「てっめぇー、麻衣のやろぉ。」
   千里、不自然に震え出す。
麻衣「ちょっ、ちょっと小口くん、どうしただ?大丈夫?」
千里「ま、又トイレ…もれそう…。」
   内股で中腰になり、もじもじとしている。
麻衣「えぇ!?順番は始まったとしてもまだ大丈夫だわ。早く行って来なさいよ!!最寄りのトイレはすぐそこだに。」
千里「あ、ありがとう…。」
   千里、よたよたと出ていく。
麻衣「色んな子がいるのね…」


   (ブザー)
   審査員席にはボスワニー・ロマノフ(52)、ユリアーネ・レニャーノ(39)、マイネ・ザビーヤー(48)がいる。高校一年生の演奏からどんどん始まる。麻衣、そわそわとしだす。

麻衣「小口くん、遅いわね…まだかしら…順番もう来ちゃうわ…」
アンネン「続きまして、エントリーNo.24番。ピアノ部門。松本市よりお越しの小松清聡君です。」

   小松、演奏が始まるがロマノフを意識して視線をちらりと写した瞬間緊張感が走り、手を滑らして間違える。

   ロマノフ、不合格の札を出し、小松は泣きながらステージ裏に戻ってくる。

アンネン「続きまして、エントリーNo.25番。ピアノ部門と弦楽・バイオリンの併願。原村からお越しの岩波健司くんです。」 
   健司、緊張した様子もなしに颯爽とステージに出る。バイオリンはツィゴイネルワイゼン。完璧な演奏に会場中が湧く。その後にピアノ。

ロマノフもユリアーネも合格の札を挙げる。健司、一礼して涼やかな顔で戻ってくる。

健司【でも、俺の演奏で驚いてちゃまだいけねぇーぜ。柳平麻衣っつー天才がいんだからよ。】
アンネン「続きまして、エントリーNo.26番。ピアノ部門。茅野市からお越しの柳平麻衣さんです。」

   麻衣も緊張知らずの顔で入場して弾き出す。

   ロマノフ、合格の札を挙げる。麻衣、ステージ裏に戻って健司とハイタッチをする。磨子、紡たちも大いに盛り上がっている。千里、ギリギリで戻ってくる。

千里「お待たせ。」
麻衣「あーよかった。何やっとったんよ!!あんたは。」
アンネン「続きまして、エントリーNo.27番。ピアノ部門。諏訪市からお越しの小口千里君です。」
千里「僕だぁ…どうしよう…」
健司「頑張れよ、とにかくやるだけはやってみろ。」
麻衣「ほーよ。大丈夫。弾いているときは、審査のこんなんて気にしちゃダメ。楽しんで弾かなくちゃ。な。」
千里「うん…みんな、ありがとう。僕、やりますっ。いってきます!!」
   千里、固そうに入場して弾き出す。が、弾き出した途端に会場から歓声が挙がる。ロマノフ、レニャーノも見とれている。

麻衣【小口君って…プロみたいに上手い…上手すぎる…】
健司【な、何なんだ、こいつ…一番は俺の麻衣かと思っていたのに…ほの上をいく奴がいるだなんて…】
   千里、弾き終わるとロマノフ、微笑んで合格の札を挙げる。千里、泣きそうになりながら一礼して、涙を隠すように戻っていく。

   (ステージ裏)
   麻衣、泣いて戻る千里を抱き止める。
麻衣「凄い…びっくりしたに。まさか小口くんがあんな大曲をスラスラ弾きこなしちゃうだなんて…あんた、何者よ!?」
健司「ふんとぉーだよ。悔しいけど、上手かった。どこかお前、専門のとこいってんのか?」
千里「いや…まだ、だよ。」
麻衣「まだ、ってこんはこれから行く予定なんね。」
千里「うん、まぁね。(涙を拭いて笑う)この春から京都の芸術高校へ入学するんだ。僕の産まれ、京都だしね。」
麻衣「京都の…芸術高校って…」
健司「あの、超難易度も高い名門のか?」
麻衣「ほりゃ、あんたのほの腕なら受かるわけさ…」
千里「ありがとう。僕、実は東京の芸大に入って、ピアニストになるのが目標なんだ。」
麻衣「へぇー。小口くん、あんたならきっと素敵なピアニストになれる!!私、応援しとるに。」
健司「俺も。頑張れよ。」
千里「ありがとう、うん。お互いにね。」

   (時間が経つ)
   結果発表。合格が出た人々が全員ステージ上に並んでいる。審査員席には、ロマノフ、レニャーノ、アーニャ、タニア、マルセラと、全員集まっている。

アンネン「それでは、優勝者の発表を致します。まずは、バレエ部門から…アーニャ・シルヴァさんお願い致します。」
アーニャ「はいっ。バレエ部門…第三位は…岡谷市からお越しの19歳、大学生。“シルヴィラ”を踊られた…赤羽翠さん。」
   拍手が起きる。
アンネン「赤羽さんには、賞金20万円と、今年夏に行われるサンクトペテンブルク短期留学が送られます。」
アーニャ「では準優勝の方…諏訪市からお越しの15歳、高校生。“海賊”を踊られた、小口千里君。」
   千里、一瞬固まってからワッと泣き出す。
アンネン「小口君、泣いてしまいました。小口君には、賞金50万円と、今年夏に行われるサンクトペテンブルク短期留学が送られます。」
麻衣「おめでとう、小口君。良かったな。」
千里「うん、うん、ありがとう。みなさん、ありがとうございました。」
アーニャ「それでは、優勝者の発表を致します。優勝者は、…茅野市からお越しの15歳、高校生。“海賊”を踊られた、柳平麻衣さん。」
麻衣「わ、私?私…私だ!!やったぁ!!!」
   麻衣も泣きながら千里に抱きつく。
アンネン「おめでとうございます。柳平さんには、賞金100万円と、今年夏に行われるサンクトペテンブルク短期留学・マスタークラスと新人公演が送られます。」


アンネン「続きましては…」
タニア「声楽の発表を致しますが…声楽は第三位がありません。よって、一位と二位のみ発表を致します。優勝の方は、他の方とは比べ物にならないくらいの歌唱力、完璧さに長けており、声楽水準を遥かに上回り、とてもその若さとは思えませんでした。優勝の…柳平麻衣さん…。」
   会場、他の出演者も目を丸くして驚く。
タニア「茅野市からお越しの15歳、高校生。柳平麻衣さん。あなたには輝く将来性があります。これからも頑張ってくださいね。」
アンネン「おめでとうございます。柳平さんには、賞金100万円と、今年春に行われる、ローマ短期留学・マスタークラスと、ローマ春の音楽祭の出演が認められます。」
美和子「麻衣っ!!!」
   麻衣に抱きつく。
美和子「やったな麻衣、あんたは凄いに。あたい、あんたなら優勝でも文句ないに。おめでとう!!」
   美和子、泣き出す。
麻衣「ちょっと、美和子さんが何も泣くことないらに!!」
タニア「ちょっとそこ?発表はまだ終わっていませんよ。(穏やかに微笑む)準優勝の辰野町からお越しの21歳、短大生。大和田美和子さん。」
美和子「え?」
麻衣「美和子さんだ!!美和子さんよ!!凄いに!!おめでとう!!」
美和子「あたい?あたい?あたい、あたいだ!!あたい、あたいが準優勝!!!わーん!!!」
   麻衣に抱きついて泣きじゃくる。タニア、満足げに微笑む。
アンネン「大和田さんには、賞金80万円と、今年春に行われるローマ短期留学が送られます。そして、ローマ春の音楽祭に出演が認められます。」
   大きな拍手が起きる。るり子、椿、百合江、和泉は客席にいるが面白くなさそうに悔しそうな顔をしてツンッとしている。

アンネン「最後は器楽の部の発表です。」
ロマノフ「いや、実に難しいものでした。では、第三位から発表致します。第三位は、茅野市からお越しの15歳、高校生。ピアノ部門の柳平麻衣さん。」
アンネン「柳平さんには、賞金10万円が送られます。」
   拍手が起きる。
ロマノフ「準優勝は…原村からお越しの15歳、高校生。バイオリン部門で岩波健司くん。」
アンネン「岩波君には、賞金30万円が送られます。」
   拍手が起きる。
ロマノフ「優勝は…私は、沢山の演奏者の中でも断トツだと思ったのは…諏訪市からお越しの15歳、高校生。小口千里君。」
千里「ぼ、僕…」
   腰を抜かす千里、健司と麻衣が両側から支える。
アンネン「小口君には、賞金50万円が送られます。みなさん、おめでとうございました。それでは、休憩のあとは其々の優勝者の方々にフィナーレのコンサートで締めてもらいたいと思います。それではもう一度、8人の方々に盛大な拍手を。」
   拍手と共に幕が閉まる。

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