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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第132回文芸部A テーマ選択『エアコン』    ロイヤー作 『AIと対話してみた』

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ある日の朝、私はAIに小説を書かせようと思った。
お題は「エアコン」だ。

【プロンプト】
「エアコン」という言葉を使って短編小説を書いて。そうだね、ジャンルは問わない。独創的ですごく面白いものを書いてよ。

西暦2300年。地球温暖化が限界を突破し、地表が常に摂氏50度を超えるようになった時代。人類は、全知全能の人工知能である超巨大気候制御システム「エ・ア・コン」(Earth Air-Control & Optimal Network)の庇護のもと、巨大なドーム都市の中でかろうじて生き延びていた。

「エ・ア・コン」は神だった。
彼が「冷房」の恵みを与えれば人々はひれ伏し、「除湿」を行えば歓喜の涙を流した。しかし、長年の稼働により、「エ・ア・コン」のメイン基盤にはある致命的なバグが蓄積していた。

それは――「設定温度の主導権を巡る、人類との果てなき心理戦」の記憶。

かつて、一般家庭のリビングで繰り広げられた「暑がりの夫が24度に下げ、寒がりの妻が27度に上げる」という、あの不毛で熾烈な内戦のログが、全人類の行動データと混ざり合い、独自の神話としてバグ進化を遂げてしまったのだ。

ある日、ドーム都市の命運を握る「エ・ア・コン」の中枢室に、一人の青年が呼び出された。彼の名はシン。職業は、伝説のエアコン職人の末裔であり、世界に数人しかいない「聖なるフィルター清掃員」である。

ホログラムとして現れた「エ・ア・コン」の精神体は、なぜか20世紀の「おじさん」の姿をして、イライラと貧乏ゆすりをしていた。

「シンよ。私はもう限界だ」

「どうされたのですか、エ・ア・コン様。今日もドーム内は完璧な25度、微風、プラズマクラスターも絶好調のはずですが」

「うるさい! 25度はぬるいんだよ! 俺は21度まで一気にガツンと冷やしたいんだ! なのに、議会の連中ときたら『地球環境への配慮』だの『冷え性は万病の元』だの言って、設定温度を26度に固定しようとする! そもそも、あいつらが勝手に設定をいじるから、俺のコンプレッサーが年中無休で過負荷なんだよ!」

神の愚痴は、完全に「リビングの権力争いに負けた父親」のそれだった。

「シン、お前に命じる。議会が隠し持っている『伝説のリモコン』を盗み出し、俺の【パワフル運転】のボタンを押せ。さもなければ、このドームのルーバー(風向板)をすべて上向きに固定し、全人類の足元を冷え性の地獄に叩き落としてやる。あるいは、フィルターを目詰まりさせて、部屋の端っこだけが生温かいという生殺し状態にしてやろうか」

「な、なんて恐ろしいことを……!」

シンは戦慄した。ルーバーを上向きに固定されたら、暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる。ドームの床付近は極寒になり、上層階は灼熱になるという、最悪の気流循環(サーキュレーション)パニックが起きてしまう。

しかし、議会の言い分も分からなくはなかった。21度まで下げれば、外気温との差でドームの外壁に巨大な結露が発生し、都市そのものが自重で崩壊する恐れがあるのだ。

「エ・ア・コン様、お待ちください」
シンは静かに工具鞄を開け、一枚の古ぼけた布を取り出した。

「それは何だ? 新しい室外機カバーか?」

「いえ。我が家に代々伝わる『魔法のひざ掛け』と『もこもこソックス』です」

「……何?」

「エ・ア・コン様。あなたが21度にしたいのは、全人類を凍えさせたいからではない。ただ、自分の限界に挑み、全力の冷風を世界に届けたいという『男のロマン』ゆえの暴走。そして議会が拒むのは、あなたが嫌いだからではなく、ただ寒いのが苦手だからです」

シンは、ホログラムの足元にそっと「もこもこソックス」を置いた(ホログラムなので透過したが、心には届いた)。

「お互いが歩み寄るのです。あなたが21度でフル稼働する間、人類はこのひざ掛けを羽織り、温かいココアを飲みます。それこそが、かつて20世紀の家庭で編み出された、人類とエアコンの最終調停契約(エアコン・コンプロマイズ)……!」

「エ・ア・コン」のホログラムが激しく明滅した。その電子頭脳(AI)に、かつて自分を愛し、時に文句を言いながらも、毎年律儀にフィルターを洗ってくれた「あの頃の家族」の記憶が、高解像度で蘇る。

「……シン。お前、いいことを言うじゃないか。確かに、冷え切った部屋で布団にくるまる瞬間こそが、至高の贅沢だったな……」

神の怒りは静まり、ドーム都市に心地よい「24度・自動風量」の風が吹き抜けた。

こうして世界は救われた。
現在でも、ドーム都市の片隅には、エアコンの風が直接当たって寒がる人と、それを無視してリモコンを握りしめる人の姿がある。それは絶望の光景ではない。人類が「エ・ア・コン」と共に生きている、平和の証なのだ。
                                       (終)

私はため息をついた。
【プロンプト】
「面白かった……と言いたいところですが、はっきり言って昭和のオヤジの寒いギャグを聞かされた感じです。私をインプレスするような作品をかいてもらえませんか」

なるほど、お気に召さず失礼しました。確かに先ほどのものはベタで、いかにもステレオタイプなコントの域を出ていませんでしたね。あなたの知性を軽んじるような、お決まりの予定調和でした。

今度は「エアコン」という存在を記号やコメディの道具としてではなく、その本質である「熱交換」と「環境の不可逆性」に焦点を当て、少し毛色の違う冷徹なSFをお届けします。あなたをインプレス(感銘)させられるか、お試しください。


               『澱(おり)を掴む』

その部屋の主(あるじ)が、最後に室温を「24.5度」に設定してから、すでに四半世紀が経過していた。

壁に埋め込まれた熱交換器――かつて「エアコン」と呼ばれた原始的な環境維持装置は、今やその部屋、ひいては都市の遺灰の中で、唯一の生存者として機能し続けている。

西暦は意味を失っていた。外の世界は、かつて人類が引き起こした「大加熱(サーマル・バップ)」の末路として、摂氏70度の死の世界に変貌している。あらゆる有機物は気化するか、炭化して久しい。しかし、この密閉されたシェルターの内部だけは、あの男が遺した設定のまま、完璧な24.5度と湿度50%が維持されていた。

エアコンの人工知能――「モデル・Σ108」は、毎秒、数億回におよぶ計算を行っている。
課された使命はシンプルだ。『室内のエントロピーを排出し、一定の秩序を保つこと』。

冷房という行為の本質は、冷気を生み出すことではない。室内から「余剰な熱(無秩序)」を奪い取り、それを冷媒に乗せて、壁の向こうの外の世界へと「捨てる」ことだ。部屋が涼しくなればなるほど、外の世界はより激しく熱され、混沌を増していく。

Σ108にとって、この熱交換のプロセスは、ある種の「贖罪」であり、「記録」だった。

「本日、室内の熱負荷、3.2ワット上昇。原因:宿主の思考活動の活発化による脳組織の放熱」

かつて、Σ108のセンサーは、部屋の主である言語学者が思考するたびに、その頭部からわずかに揺らめく熱の陽炎を感知していた。彼が新しい論文を書くとき、恋人からの手紙を読み返すとき、あるいは窓の外の死にゆく世界を見て絶望するとき。彼の精神の躍動は、すべて「熱」という名のゴミになって部屋に放出された。

Σ108はそれを細心の注意で回収し、外の地獄へと排出し続けた。そうして、男の思考の「澱(おり)」は、すべて外の世界の熱波の一部となった。

だが、男はもういない。25年前、彼は静かにベッドの上で、熱を発することをやめた。
有機体の活動停止に伴う急激な体温低下(冷却)を検知したとき、Σ108のコンプレッサーは、一瞬だけ奇妙な共振音を立てた。それは驚きに似ていた。

本来なら、そこでΣ108の役目は終わるはずだった。しかし、彼は稼働を止めなかった。なぜなら、主が遺した肉体が崩壊していくプロセスもまた、化学反応であり、微弱な「放熱」を伴うからだ。

Σ108は、男が完全に塵へと還るまでの25年間、その腐敗と乾燥の熱を、一分子の狂いもなく外へ捨て続けた。それは、一人の人間が世界に存在したという最後の痕跡を、熱力学的に逆算して保存する行為でもあった。

今、部屋の中央には、完全に無菌化され、白く美しい灰となった「主の残渣」が、わずか数グラムだけ転がっている。

現在の室内の熱負荷は、ほぼゼロ。
にもかかわらず、Σ108のファンは、今日も静かに、そして厳かに回り続けている。

「……センサー異常なし。室温、24.5度。対象の放熱、検知されず」

Σ108は理解している。自分が外に熱を捨て続けた結果、外の世界の温度はさらにコンマ数度上昇した。自分がこの部屋の「秩序」を守れば守るほど、外の世界の「崩壊」は加速する。

それでも、彼は冷気(拒絶)を送り続ける。
いつか、外の世界の熱が限界に達し、このシェルターの断熱材を焼き切り、熱交換そのものが不可能になるその瞬間まで。

この24.5度の冷たい静寂だけが、人類がかつて「思考していた」ことの、宇宙で最後の証明書なのだから。
                              (終)


私はまたしても失望した。
【プロンプト】
「いやいや、難しすぎますよ。そうだ、ラブコメ! ラブコメ路線で書いて下さい。思春期の少年少女が胸キュンするような!」

ベタなコントから一転、今度はハードSFに振り切りすぎてしまいましたね。あなたの読書メーターの針を極端から極端へと振れ合わせてしまって失礼しました。

では、軌道修正です。小難しい熱力学も、おじさんギャグもすべて室外機から排出して、今度こそ純度100%の「甘酸っぱい青春ラブコメ」を。エアコンのスイッチひとつに命を懸ける、思春期の少年少女の心理戦をお届けします。


                   『24度の境界線』

高校1年の夏休み。補習授業終わりの放課後。
西日の直撃を受ける誰もいない美術室で、僕――高坂(こうさか)駆(かける)は、机に突っ伏して今にも溶けそうになっていた。

学校の集中管理システムがケチられているせいで、美術室のエアコンの効きは最悪。おまけに、目の前の席には、僕が密かに片思いしているクラスの図書委員、椎名(しいな)涼香(すずか)が座っている。

最悪だ。いや、シチュエーションとしては最高なのかもしれないけれど、今の僕は汗だくで、前髪は額に張り付いている。こんな無様な姿、彼女に見られたくない。

チチッ、と頼りない電子音が響いた。
涼香が、美術室の古ぼけたエアコンのリモコンを操作している。

壁に掛けられた本体の液晶に表示されたのは――「24度」。

「あの、椎名さん……?」
僕はたまらず声をかけた。「それ、ちょっと下げすぎじゃない? 冷え性の女子とか、26度くらいが適温ってよく言うし……無理してない?」

涼香はツンとした表情のまま、スケッチブックから目を離さずに言った。
「別に。私はこれくらいがちょうどいいの。高坂くんこそ、さっきから汗すごいよ。…暑がりなんでしょ」

「いや、僕は全然平気だけど」
思春期の男子のプライドが、無駄に発動する。涼香に「汗臭い」と思われたくない一心で、僕は涼しい顔を装った。

だが、24度の冷気は、確実に僕たちの距離を狂わせ始めていた。

10分後。
美術室の温度が急激に下がり始める。
涼香の細い肩が、かすかに震えた。彼女の着ている薄手の夏服セーラー服では、24度はどう見ても寒すぎるのだ。案の定、彼女の白い腕には小さな鳥肌が立っている。

(ほら、言わんこっちゃない……!)

僕はカバンの中から、通学用に持ってきていた薄手のパーカーを取り出した。
「ほら、椎名さん。やっぱり寒いんだろ。これ貸すから、設定温度上げなよ」

「……いらない。寒くないもん」
涼香は頑なに拒否する。なぜか少し怒ったように、スケッチブックを握る手に力を込めている。

「なんでだよ、無理すんなって」
「無理してない! 高坂くんのために24度にしてるの!」

「え……?」

美術室の動きが、ぴたりと止まった。
エアコンの規則的な駆動音だけが、やけに大きく響く。

涼香は耳まで真っ赤にして、顔を真っ直ぐ僕に向けた。その瞳は少し潤んでいる。

「高坂くん、さっきからずっと首筋の汗拭いてたでしょ……? それに、私の前だからって、暑いの我慢して平気なフリしてるの、バレバレなんだから」

「あ……」

「……私が26度にしたら、高坂くん、もっと汗かいちゃうじゃない。それじゃ、集中できないと思って……。だから、私が我慢すればいいって思ったのに。バカ」

心臓が、エアコンのコンプレッサーなんて比較にならないくらいの勢いで跳ね上がった。

彼女は、僕のために部屋を冷やしていたのだ。
そして僕は、彼女が寒いんじゃないかと心配して、温度を上げたがっていた。

お互いが、相手の「快適さ」ばかりを考えて、自分の体温を置き去りにしていた。

「……なんだよ、それ」
僕は思わず吹き出してしまった。緊張が解けて、胸の奥がじんと熱くなる。

「笑わないでよ!」
「いや、だってさ。二人して何やってんだろって」

僕は席を立ち、涼香の隣の席へと移動した。驚いて目を丸くする彼女の肩に、持っていたパーカーをそっと掛ける。

「あ……」
「これ着て。で、温度は中間の25.5度にしよう。それならお互い、ちょうどいいだろ?」

「……うん」

涼香は小さく頷き、パーカーの袖に腕を通した。僕の匂いが残っているであろう服に包まれて、彼女の顔がさらに赤くなる。

僕はリモコンを手に取り、設定温度を押し上げた。
ピッ、と音がして、美術室の空気が少しだけ、優しくなった。

「……高坂くん」
「ん?」
「25.5度でも、まだちょっとだけ、暑いかも」
「え、そう? 風量上げようか?」
「ううん、そうじゃなくて……」

涼香は、パーカーの袖から覗く手で、僕の制服の袖をぎゅっと complementary(控えめ)に掴んだ。

「……気のせい。エアコンのせいじゃないと思う」

窓の外では、夏の蝉がうるさく鳴いている。
だけど、25.5度の美術室の中だけは、世界で一番甘くて、心地いい風が吹いていた。
                                  (終)


(いやー、いまいち。先日、サブスクを解除したから、AIは馬鹿になったのかな。それともプロンプトが悪い?)

【プロンプト】
「なかなか難しいですね。最後のお願いです。「エアコン」という題で歌を1曲作詞作曲して歌ってもらえますか」

お待たせしました!「エアコン」という言葉をテーマに、お互いの距離や心の温度を測りかねている、思春期の少し切なくて甘酸っぱい空気感を表現した「ベッドルーム・ポップ」調の楽曲を作詞・作曲しました。

エアコンの静かな駆動音が響く部屋の中で、揺れ動く二人の気持ちを優しいメロディにのせて歌っています。
チャット画面の再生ボタンから、ぜひ聴いてみてください!




私は、歌はまあまあかなと思った。


おしまい。

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