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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏からのご紹介】 「プラネタリーヘルス」ーー私たちと地球の未来のためにーー

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【色平哲郎氏からのご紹介】
「プラネタリーヘルス」ーー私たちと地球の未来のためにーー


「プラネタリーヘルス」ーー私たちと地球の未来のためにーー
長崎大学 監訳、 河野茂 総監修  丸善出版  2022年
【書評】 中村安秀 なかむら・やすひで 公益社団法人 日本WHO協会理事長


世界保健機関(WHO)は2022年の世界保健デーのテーマを
「Our Planet, Our Health(わたしたちの地球、わたしたちの健康)」とした。

その背景には、世界の保健医療のあり方を根本から揺るがした新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)の存在がある。
私たちは、あまりにも性急にヒトの健康だけを追い続けてきたのかもしれない。
感染症に国境はない。COVID-19のような新興感染症の半数以上は動物由来だといわれている。
今後も第二、第三のCOVID-19が地球規模で大流行する可能性を考えると、79億人の人類を対象とした保健医療だけに専心する視座には限界がある。
家畜や野生動物、細菌やウイルス、植物といった地球上の生き物すべての健康に配慮したうえで、ヒトの健康を考える視点が必要である。
何よりも、地球環境、気候変動、生物多様性などが健全でなければ、生き物全体が生き延びることはできないのである。

いま、COVID-19以降の医療と健康のあり方を考えるときのキーワードのひとつは間違いなく「プラネタリーヘルス」である。


ハーバード大学のサミュエル・マイヤーズとワシントン大学名誉教授のハワード・フラムキン
が編者を務めた本書が上梓されたのは2020年であった。
出版社は、環境問題の解決策を考える人々に最高のアイデアと情報を提供することをミッションとする非営利団体アイランドプレス。
「まえがき」によると最後の校正段階に入ったときに、COVID-19のニュースが飛び込んできたとのことだった。
急遽、8ページにわたる「コロナウイルスとプラネタリーヘルス」という「あとがき」
が付け加えられた。
パンデミック後に安易に平時への復帰をめざすべきではないという論考を紹介し、
「地球上でこれまでの生活様式を維持することではなく、自然界との新たな関係への『大転換』を促す」ことを呼びかけた。

COVID-19のパンデミックが起こる前から周到に準備されてきた「プラネタリーヘルス」に関する本書は、COVID-19を体験することにより、世界中に共通した経験が深まることが期待される。
翻訳グループにおいても同様にパンデミック前から動きがあった。
COVID-19が日本に上陸する直前の2020年1月に、
「長崎大学はプラネタリーヘルス(地球の健康)に貢献する」と宣言した河野茂長崎大学長。
熱帯医学・グローバルヘルス研究科や医歯薬学総合研究科はもとより、環境科学、工学部、
経済学部、水産学部、多文化社会学部など、文字通り学際的な翻訳ネットワークがすばらしい。
プラネタリーヘルスの研究と実践のためには、従来の学問分野の垣根を越えた学際的な協働が必須だからである。


全18章498ページにわたる先駆的かつ重厚な本書の構成を紹介したい。

第1部は「基礎知識」。
プラネタリーヘルスの全体像の概観にとどまらず、変わりゆく地球のなかで、未来に向けた
枠組み作りが芽生えた経緯について当事者の視点から紹介されている。
そもそも、人類が急速に活動規模を発展させてきたことが地球とそこに生息する生物のあり方を変えてしまった。
人口と消費について、公平性と権利の視点を加味して検討した。

第2部の「プラネタリーヘルスと健康」では、栄養、感染症、非感染性疾患、メンタルヘルス
などの疾患ごとの課題が丁寧に検討されている。そして、環境変化と移住や紛争、気候変動と人間の健康といった課題に正面から向き合い、幸福とプラネタリーヘルスの密接な関連についてエビデンスを念頭に置いた議論が展開されている。
この章で議論されている健康は、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的にイキイキとした状態)を含む、社会的な概念を包含している。

第3部のタイトルは、「脅威からチャンスへと軌道修正するために」。日本風の言い方では、「ピンチとチャンスに」ということになろう。
ここでは、エネルギー、都市空間、有害物質の暴露、経済学、そして、ガバナンス、政策、実践を通したビジネスのあり方が検討された。

第4部は「地球を守り、人類を救う」。
ヒポクラテスの「do no harm」という誓いの現代的な意味を問い直す作業とともに、
スウェーデンの若き活動家のグレタ・トゥーンベリさんに代表される次世代に遺す地球の姿を意識した未来志向の議論が行われた。
著者らは、自然界への畏敬の念が込められている古今東西の文化や伝統がもつ自然との精神的なつながりの重要性にも触れている。

編者は、日本の読者に向けたメッセージの中で、最先端技術を駆使した産業とともに、静けさと調和のとれた日本庭園の存在を賞賛していた。日本では長く、自然の恵みのもとで人間の暮らしが成り立ってきた。今後は、プラネタリーヘルスのなかで、文化や伝統がもつ精神性がより脚光を浴びるのではないかと思われた。


本書で詳述された斬新な概念を、未来を担う若い世代、特に中学生や高校生に十分に理解してもらうことが重要である。
そのためには、「プラネタリーヘルス」の日本語を早くつくるべきであろう。
「私たちと地球の未来のために」というすてきな副題のついた本書が再版を繰り返すころには、プラネタリーヘルスに対応する魅力的な日本語が生まれていることを期待したい。

「學鐙」2022年秋号 

コメント(1)

全くですね。地球全体が健康体でない限り、人間が、健康体でありうるはずがない。「地球健康」これが、キーワードですね。

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