孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏からのご紹介】沖縄から日本がよく見える

【色平哲郎氏からのご紹介】
沖縄から日本がよく見える

（桜井名誉教授、２０２２年７月８日、第３０回若月賞を受賞）

「山ろく清談」　　信濃毎日新聞　　２０２２年８月６日
沖縄から日本がよく見える
沖縄大名誉教授　　桜井国俊　さん

３０分ほど電車で通っていた高校時代、松葉づえをつきながらアコーディオンを弾いている朝鮮人をよく見かけました。そういう人たちに当時、傷痍（しょうい）軍人に対する恩給などは出なかった。日本の一部となって戦ったのに負けて帰ったら国籍がなくなり補償も受けられない。

＊写真は若月賞を受賞した時の沖縄タイムス社撮影の沖縄大名誉教授桜井国俊さん

どうすればいいか分からなかったけれど、なんでこういうおかしなことがあるのか、おしいと言わないとまずいと思っていました。

沖縄にいると、嫌でも置かれている状況がおかしい、こういう状況に置いている日本は
どうかしているんじゃないのと感じます。
学生に言ってるんです。「沖縄から日本がよく見える」と。
帰る時、飛行機が本島に近づくと、非常に低く飛ぶ。
きれいなサンゴを見せているわけじゃない。
上の方は米国がコントロールしていて、低空に入るしかないんです。
東京は横田基地に管制されている。自分の国の空なのに、自由に飛べない。
こんな国あるかい、と思います。

本土復帰に際し、琉球政府の屋良朝苗主席は建議書で基地のない沖縄を求めました。
５０年たち、国土面積の０・３３％に過ぎない沖縄本島に在日米軍基地の７０・３％が集中している。望んでいなかった状態にどんどんなっている。
琉球諸島は自衛隊配備が強化されるなど「盾」として軍事要塞（ようさい）化され、「矛」としてミサイル基地が整備されている。

私は本土出身で、いわば犠牲を強いてきた側。７７年前の沖縄戦再来につながる事態を避けるべく、政府同士じゃなく人々の間で友好関係をつくることが大切と思います。
環境を守ろうと中国や韓国のNGOと情報交換しています。
「あいつがいる国とは変なことにはなりたくない」と思える関係をつくりたい。

名護市辺野古の大浦湾一帯は生物多様性のホットスポット。防衛省の環境影響評価書で５３３４種の生物が記録され、２６２種の絶滅危惧種が含まれます。マングローブ林、湾を縁取る砂浜と岩礁と干潟、サンゴ礁、ジュゴンの食（は）み跡の残る
広大な海草藻場などがあり、２０１４年に日本魚類学会、日本動物学会など１９学会が連名で
「こんな貴重な海を埋め立ててくれるな」と要望書を出しました。
守って後世に残さないといけない。

勝つ方法は諦めないこと。
辺野古のテント村の看板に、そう書いてあります。岩国基地（山口県）滑走路の沖合移設を巡る埋め立て承認取消請求訴訟で、広島高裁判決は「承認が取り消された場合、国は現状回復義務を負う」としました。
辺野古でも勝訴すれば、どかざるを得ない。
泥をどけ、ジュゴンが帰ってくるようにしたい。

普天間飛行場は米軍が民間地を強制接収した基地で、私有財産の没収を禁じたハーグ陸戦条約違反です。辺野古に代替基地を求めること自体、盗人たけだけしいと言わねばなりません。

さくらい・くにとし
静岡県熱海市生まれ。東大卒、工学博士。
世界保健機関アメリカ地域事務所環境衛生専門官、国際協力機構国際協力専門員、
東大客員教授などを経て２０００年から沖縄大教授。
学長などを歴任し、名誉教授。沖縄環境ネットワーク世話人。７８歳。
佐久市の県厚生連佐久総合病院本院で。

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