孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】総括：政府・与党検察庁法改正案今国会成立見送り決定。

今回決定背景には①数百万を超える「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」のツイートと②元検事総長等検察OBの反対意見書。後者は反対のツイートが正当であることの理論的支柱に。同様法案は復活不可。
2020-05-19 07:045
１：１８日、検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、政府・与党は、国民の理解なしに国会審議を進めることは難しいとして、、今の国会での成立を見送ることを決めた。
２：本法案の最大のポイントは「役職定年」を設け、内閣の意向によって延長できることにある。
・問題点に関しては私の次のツイートが参考になる。特捜部検事OB 38人の意見書（１８日法務大臣に提出）
・特捜部で仕事した検事として、検察庁法改正案の性急な審議により、検察の独立性・政治的中立性と検察への国民の信頼が損なわれかねないと深く憂慮。準司法機関＝検察がよく機能するには独立性・政治的中立性、厳正公平・不偏不党の検察権行使が極めて重要。
・幹部検察官の定年、役職定年の延長規定は、検事総長を例にとると、1年以内のサイクルで定年延長の要否を判断し、最長3年までの延長を可能とするもの。通例2年程度の任期が5年程度に。これは、検察権行使に大きな政治的な影響が及ぶ懸念。
・これまで事件処理で幹部検察官の定年延長の具体的必要性が顕在化した例は一度もない。検察現場に無用な萎縮を招き、検察権行使に政治的影響が及ぶのでないか。法改正を急ぐことは、検察に対する国民の信頼をも損ないかねない。
３：今回の見送りには世論の動向が重要であるが、この流れは①「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」のツイートが数百万、累積一千万近くになったことと②元検事総長ら検察OBが意見書を出した、二つが相乗効果を作ったということと思う。
検察庁法改定案に反対する運動の中心人物、海渡雄一氏が次のツイートをした。「#検察庁法改正案に抗議します。日本のトレンド、トップを独走。ツイート10万突破。秘密保護法や共謀罪の反対運動でも、国会を取り囲むデモをやった。しかし、10万は集められなかった。いま、市民の怒りが沸騰している」。彼にとり、１０万超えのツイートは一大事件だった。」
だが一日後１０日午後一時には１８２万に達した。その後、累計４００万、５００万、９００万という数字が出ていた。つまり、今回の動きは主催者の想定を１０倍どころか１００倍以上も超えた。
４：今回こうした反響を生んだのは芸能人の貢献が大きい。
　日本のリベラル系、野党系の人々のツイッターなどの利用は極めて低い。例えば、立憲民主の枝野党首枝野幸男氏のツイッターフォロアー数は15.7万である。彼のフォロワーが全員ツイートをしても１５万人である。
他方芸能関係者は多くのフォロアーを持っている。芸能関係者のツイートがなければ、今回の動きはない。
５：この中、安倍首相支援者たちは激しい攻撃をしてきた。その主たる論法は「何も知らないで」「勉強してから発言せよ」であった。
６：ここに元検事総長等の意見書が出た。芸能関係者を攻撃する人で、元検事総長たちの意見に対抗できる人はいない。これで反対の流れは論理的にも、人的動員数でも無視しえない勢力になった。
７：政府は次回国会に再度提出としている。しかし、「役職定年」と行政府の意向で延長できる制度の復活は最早ありえない。行えば、新たな反対運動が出るだけだ。
８：この動きの中で、今後の自民党の動向に影響ある現象が出た。先ず、安倍首相は強行突破の考えである。様々な反対があっても、しょせん国民は忘れる。だから問題ないというのが彼の論である。背景は判らない。菅官房長との連携や公明党との連携などがささやかれているが、小沢幹事長が反旗を翻した。安倍首相との直接対話で、強硬採決しない決定を行った。小沢幹事長の力が安倍首相を上回った。それは全ての自民党員が見たことである。「安倍一強」では最早ない。