孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】米国政局は格差社会深化の中、大きなターニング・ポイント。

それが大統領選に。（１）トランプ流、本質的には親富裕層政策、米国第一で貧困白人層支持、（２）大企業、軍需産業中心政策―バイデン、ブーテジェッジ、（３）貧困対策重視ウォーレン、サンダース
2019-11-08 08:127

１：現在米国政局は大きなターニング・ポイントに来ている。グローバリズムの深化で、①

米国大企業は　世界展開、②米国国内の生産基盤弱体化→労働者の賃金下降、②富裕層の富増大、一般大衆の富減少という現象が生じている。

　参考　全米所得の富の分配、上１％の層が約２０％、下５０％が約１３％

　こうした中で政治的に分岐点にきている。

　大統領選挙での選択

（１）トランプ流、本質的には富裕層に好ましい政策の遂行（減税もこの中に入る）一般の人々の不満を外に向かわす。メキシコとの国境、イスラム圏からの移民、外国からの輸入削減措置―いわゆる「Make America Great Again」ここでは客観的事実を貶める動き

（２）大企業、軍需産業中心政策

従来の共和党政策、これに民主党の中枢が加わる。ヒラリー・クリントンに代表される。バイデンもこの中。

（３）格差社会の是正、２０１６年のサンダースの動き、２０２０年大統領選民主党内のサンダース、エリザベス・ウォーレン

２：選挙の現状

（１）共和党内

トランプが完全に掌握、反トランプが出てくる余地はない。

共和党支持者は何があってもトランプ支持を崩していない。

（２）民主党内

大企業、軍産複合体支援の候補対格差社会是正候補の戦い。

前者はバイデン元副大統領、

後者はサンダース、エリザベス・ウォーレン。

民主党の既存勢力は大企業、軍産複合体支援でほぼ固められている。

大企業はエリザベス・ウォーレンの台頭に強い懸念。（参考：民主ウォーレン氏「米企業・富裕層に6兆ドル増税」（日経、2019/11/3）を後に添付紹介。

　　　現状

　（あ）現状（リアル・クリア・ポリチックス平均）10/27 - 11/5

バイデン　エリザベス・ウォーレン　サンダース　ブーテジェッジ
28.6　　　　21.4　　　　　　　　　18.1　　　　　7.1

　（い）アイオワ州（２月３日の党員集会が予備選挙の初戦。他に影響を与えるとみられている）
エリザベス・ウォーレン　ブーテジェッジ　サンダース　バイデン　
２１．８　　　　　　　　１７．５　　　　１５．８　　１５．５

（う）掛け率動向　１１月７日
・ウォーレン　バイデン　ブーテジェッジ　　サンダース　
３７．３　　２３．４　　　１５．６　　　　　１３．６　　

ウォーレンが一時５０％越であったが、皆保険提唱で財源につき攻撃を受けている。

３注目点

　・金融界、軍産複合体は今後ウォーレンへの攻撃を強めていく。

　・バイデンが息子のウクライナ・中国疑惑で生き残れるか

　・バイデン失脚時金融界はブーテジェッジ支持に切り替え。

参考１

ピート・ブーテジェッジ、３７歳インディアナ州サウスベンド市長。

高校卒業式総代演説、ハーバード、ロードス・スカラー（オックスフォード大学で勉強することを可能にするセシルJ.ロードスの意志により資産を贈与される奨学金）としてオックスフォード大。クリントン大統領もその内の一人、米国社会の枢要人物を輩出）

2009年から2017年までアメリカ海軍予備役。2014年には7ヶ月間アフガニスタンへ従軍。

父はマルタからの移民でノートルダム大学の教授。 2012年に、29歳でサウスベンド市長に就任。同市史上では2番目の若さでの就任で、アメリカで10万人以上の人口を有する市の市長として最年少。

自ら同性愛者であると公表、大統領選出馬表明の際には、パートナー（男性）を紹介

ウォール・ストリートからバイデン以上の献金を得ている。

参考２民主ウォーレン氏「米企業・富裕層に6兆ドル増税」（日経、2019/11/3）

・ウォーレン上院議員は、国民皆保険の財源として大企業と富裕層に10年で6兆ドル（約650兆円）の増税を検討。

・増税の規模は「トランプ減税」の4倍。トランプ大統領は追加減税を検討しており、税・社会保障が大統領選の重要争点に。

・ウォーレン氏は1日、「私の構想は中間層に1ペニーの増税も強いない」と主張。

・米国では日本のような政府主導の医療の皆保険はなく、成人人口の12%が無保険。ウォーレン氏は民間保険を廃止して公的皆保険に統合する案を提示。国民の民間保険会社への支払いなどがなくなって「10年で11兆ドルの負担減」と主張。

ウォーレン氏は皆保険の実現に、10年間で20兆5千億ドルの財源が必要と試算した。バイデン氏ら中道派は以前から「国民皆保険は中間所得層の負担増が避けられない」などと批判。ウォーレン氏は中間層の負担増はゼロにする一方、富裕層や大企業に大増税を課す財源案を表明。

提案の柱は5千万ドル以上の資産を持つ超富裕層への課税。同氏は課税率を2～3%として検討してきたが、1日の提案では税率を最大6%に。富裕層を対象とした所得増税も打ち出し、10年間で3兆ドルという巨額の税収増を見込む。

富裕税はフローの収入を税源とする所得税とは異なり、株式や不動産など資産価値そのものに課税。

トランプ政権は法人税率を35%から21%に引き下げたが、ウォーレン氏の案では再び35%に引き上げる。巨大企業にはさらに税率を7%上乗せし、海外収益にも35%の税率を課す。金融機関には株式や債券の取引ごとに購入額の0.1%を課税する金融新税も設け、企業部門でも10年で3～4兆ドルの税収増につなげる。

予備選ではバーニー・サンダース上院議員らも国民皆保険を掲げるが、同氏は中間層の負担増は避けられないとしていた。ただ、同氏も1600万ドル以上の資産を持つ富裕層に1～8%を課税するとしており、大胆な富裕層課税は格差是正を大統領選の争点としたい民主党のアピール材料。

対するトランプ氏は「米国を社会主義にするな」と民主候補を批判し、追加減税を探る。17年末に10年で1.5兆ドルという大型減税を成立させたばかりだが、クドロー国家経済会議委員長は「中間層や製造業労働者、小事業者を対象に新たな税制優遇策を検討する」と述べ、選挙前に具体策をまとめる考えを明かす。

共和党の議会関係者は「ウォーレン氏ら左派は急進的な支持者がそろっており中道には向かえない。左派の躍進はむしろトランプ氏の追い風だ」とみる。民主党内には中道路線を強める観点から、16年の選挙で敗れたヒラリー・クリントン元国務長官の出馬待望論まで浮上している。