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空の小説コミュの大連駐在物語

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3月

PM4:00の「定例部所管会議」に出席して第一営業部に居る同期の羽田と少し話した。

羽田 「 4月に「原課長」が帰って来れるみたいだね」

    「 あれえ 先月大連に行ったけど、そんなこと言ってなかったよ」

羽田 「 なんでも奥さんの病気でね、急遽「帰任」が決定だと」

    「 奥さん? たしか家族赴任だよね 」

羽田 「 うん・・・でさ 昨日、原さんが電話で「西部長」にお願いしたらしいぞ」

    「なにを?」

羽田 「 後任を 「三田君に」 ってさ」

    「 おいおい、嘘だろ? 」

中国拠点の「北京営業所」の支店にあたる「大連支店」の支店長は通常なら本社の

主席(課長の上)が赴任する。 三田はまだ「課長」に成り立ての自分が「原主席課長」

の後任になるはずが無いと思っていたが、翌日の朝には総務部に呼ばれ、総務部長

から、打診という形の「強制赴任書」(j辞令)を受け取った。

   「 3月10日・・って15日後じゃないですか? 今の引継ぎとかどうしますか」

と直属の「西部長」に聞いても 「会社命令」の一言で却下され、あわてて現行業務を

羽田に引継ぎ 3月9日の成田ー大連のJALで「大連事務所」に向かった。

空港に着くと見慣れた「大連支店」の「張」がすぐに三田の「カバン」を持ち、社用車に 

案内する。

「25日に「原支店長」のお部屋が空きますので、三田課長サンはそれまで「フラマホテル」に

泊まって頂きます」

「張」は流暢な日本語で言いながら社用車を飛ばして市内の中心地に向かって行く

日系の会社が多く入っているビル。 ここが今日から三田の勤務する場所だ。

原支店長は「大連支店6人」の唯一の日本人だ、中国語もそこそこ出来る

三田は去年まで「香港支店」に出向していた関係で アジア地区担当が永い原さんとは

旧知の間柄だった。年齢は原さんのほうが6歳年上

「 よー 来たな〜 新支店長」 という原の声で事務所の中のすべての人が三田の

顔を見る。

男が3人 女が2人 すべて大連での採用で「勤続の永い者」で8年という人もいる

「ここ座れよ、三田君  明日からキミが支店長で、僕が補佐だからさ」

ニコニコと笑いながら原支店長は三田を応接セットの椅子に座らせた。

「張」を先頭に次々と自己紹介をされていくが、三田もその都度「よろしく」と言うしか

ない、 原さんは 嬉しくて仕方ないのか始終ニコニコしている。

「この子が「陳」さん、 三田君が来るのを一番待ってた独身女性だよ」と言ったり 

新参をからかう悪い先輩の役に徹してもいる。

原さんがこの日から「日本帰任」の25日まで2週間、三田は毎日行動し夜には

社宅に送り届け自分はフラマホテルに戻る日々が続いた。

夜、「大連探検だ」と言い三田を「カラオケクラブ」に連れ回した

原「 三田クンさ キミ「独身」だよね? 彼女は居るの?」

  「いや、去年別れましたよ。香港が永すぎましたから・・」

コメント(21)

原「ふーん、 あのさ忠告だけどね。 コッチのクラブの子には気をつけてね」

  「 はぁ 香港でも同じですから、大丈夫ですよ」

原 「 違うんだなぁ〜〜 香港のクラブと.・・・ 」

  「 なにが違うんですか? 」

原 「 まず コッチのクラブの子は  「日本語出来る」」

  「 ええ・・確かにそうですね」

原 「コレが一番問題なのよ、判る?」

  「 いや、ぜんぜん。 なにが問題ですか?」

原は指で三田を指差した 「おまえ 単身赴任の独身日本人男性って事」

  「はあ?」

原 「 バカだね、お前。 『寂しくなる』って事よ、そして「ハマる」訳よ」

  「ああ なるほど ハハハ」

原 「笑い事じゃないの、三田クン  俺はね〜4年大連に居るけどさ、たーくさん見たよ

   カラオケの女の子に狂ってる日本人、 気をつけな。」

  「 判りました」

原 「 ハマらない、いい方法があるから教えてあげるよ。 キミ「ゴルフ」「釣り」「テニス」

   「野球」は出来るか?」

  「野球は してましたよ、社会人クラブにもいましたし・・」

原 「ほ〜 じゃ「大連の同好会」に入りなよ、 テニスは? ゴルフもあるぞ」

  「そんなに なんでも「同好会」あるんですか?」

原 「 あるよ〜〜 でも打ち上げは「カラオケ」なんだけどね」

  「それは休日とかいい運動できますね。早速紹介してくださいよ」

原 「 よくさー 「日本人は群れる」て言うだろ、 違うんだよなぁソレ、「異国の地」

    での「自衛の方法」でもあるわけだ」

  「それ 面白いですね、 説得力ありますよ」

原は満足そうにタバコを咥える。「 ついでに教えるけど」

  「 なんですか? 」

原 「 こっちのスタッフに「幻滅」するなよ。 『こーゆーもん』と割り切れ」

  「 え? 割り切るんですか?」

原 「そ、 それが「鬱病」にならないコツ」

  「 まさか・・・・」

原 「ほんとよ、 「多くを望むな」てことね」

  
3月25日  原支店長は帰国、 三田は「大連支店」のたった一人の日本人としてスタートした。

4月

まだ日本と違い「春が遠い」大連に駐在して一ヶ月、 「アカシア有志会」という同好会

に入って、先週の日曜日に会合に参加して自己紹介をした。 奥さんと一緒に参加してる

人も居れば、大連で自営業をしてる初老の社長もいた。 十年以上滞在してる人も居れば

まだ三田と同じ数ヶ月目の単身赴任の人もいる。

釣り大会やテニスが好きな人同士で休日にコート借りてテニスをしたり、ゴルフに行ったり

時には夜にご家庭でパーティーみたいな事もしてるらしい、

これなら、1人で大連に居ても楽しく過ごせそうだ。

仕事は一ヶ月でなんとか要領が判った、本社からの注文を裁く事と送り込んで来る

お客さんのアテンドと、出張者の世話だ。

先週は日本が連休だったからお客さんが多かった、毎日「サウナ」に連れていったり

カラオケに行ったり、毎度の夜中1時にマンションに帰る事が一週間続いた。

今日も「メール」を開くと、本社営業部からの「GWのスケジュール表」が来ていた

(え・・16人?) あわてて日本の本社に電話する

営業1課の同期「羽田」は「悪いね〜急にGWに先方の「デザイナー」が工場見学

したいて言い出してさ〜 じゃ「生産部全員」で行くって事になったみたいなのよ」

 「 そんな・・車の手配とかレストランの予約とか、大変なんだぞ!」

羽田 「 悪い悪い・・ほんとに! 帰国したときご馳走するからさ」

 支店の中で「客先アテンド」の一番上手な「張」にホテルの手配を頼む

張 「 これは大人数ですね、 移動は「マイクロ・バス」が必要ですね」

 「なんとかなるかな?」と聞くと 「ええ、大丈夫ですよ」と携帯を取り出し

電話を掛ける。暫くして「OK」のサインを出して来た。

「どこで借りたんだ?」と聞くと張は「 工場の工員輸送のマイクロバスを借りたんです」

と言う。 次は「食事」の場所だ、これは一週間前から予約入れておけばいいだろう。

昨日 大阪から来たお客さんは支店の「劉」と朝から工場に行っていて市内に

帰ってくるのは夕方になる。たぶんその後は一緒に食事して、カラオケに行くのだろう

午後3時  ひとつ上の階に事務所がある「食品会社」の駐在「西川くん」から電話が来た

西川 「三田さん、今度の日曜日に「大連ゴルフクラブ」行きませんか?」

  「 いいね、暖かくなりそうだし・・行くよ」

西川は 三田よりも5歳年下だが、食品会社の営業部にいたから「人なつこくて」

とても気を使ってくれる、「アカシア有志会」の幹事のような事もしていた。

西川 「 あっと、メンバーなんですが、なんと「クラブ・宴宴」のママさんも一緒です」

 「 宴宴? どこだいソレ? 」

西川 「 森ビルの裏ですよ 」

 「 あったっけ?そんな店 」

西川 「明日にでも一緒に行きませんか?」

 「うん・・いいけど・・・」

西川 「 決まり! じゃ明日「夜飯」はいつもの「和善」で 電話くださいよ」

夕方に帰る予定のお客は 「生産トラブル」で夜の8時になって市内に帰ってきた

かなり怒っていて機嫌が悪いことは帰ってくる途中の「劉」からの電話連絡で知っている

「夕食はなにを食べたいですか?」と聞いたが 疲れていたのか「軽いもの」と言う。

「では、まずホテルに荷物置いて、それから行きましょう」と言うと「お客」は少し機嫌が

よくなったようだ、後は「食事」をしながら不満の聞き役になればいい、

荷物を部屋に置いてロビーに降りてきた時にお客というのは必ず恐縮する。
「すみませんね・・お待たせしました」と言った時点で「工場での事」は30%忘れる

軽い食事には「木月山」が一番いい、ビールを飲みながら数回「乾杯」する内に

お客の機嫌はドンドン治ってくる。

「ちょっとこの後に『クラブ』行ってみますか?」と三田が言うと「お客」は珍しく

「いや〜按摩のほうがいいです」と言う、

「じゃ、最近見つけた、「按摩屋」に行ってみましょうか?」

「 三田さんが見つけたんですか?」

「いえいえ、同じ森ビルの人なんですけどね。その人に教えてもらったんですよ」

なぜか「マンション」の中にある「按摩屋」に連れて行き、2時間コースで外に出た時

には11時になっていた。

スッキリしたお客を「タクシー」に乗せてホテルの名前を告げる、後は「ホテル」の玄関で

お客に「さよなら」すれば今日の仕事はオシマイだ。

(今日は久しぶりに早く部屋に戻れるな)

大連の4月  夜はまだ肌寒かった。

5月

GW中の「16人団体」のアテンドがやっと終わり、連休明けの支店は「来るお客」もなく

少し静かだった。

三田はGWの最終日に「アカシア有志会」の釣り大会に参加した、釣りなんか子供の

頃に「池」で小魚釣った経験しかなくて、それが「星海広場」の先から「船」に乗せられ

上下にゆれる船底で三田はグロッキーになった

(船酔いってこんなに気持ち悪いのか・・来なけりゃよかった)

時々「有志会」の長老「保住さん」が三田の様子を見に来る。

「三田クン 大丈夫かい? 波が弱くなったら少し気分もよくなるからね」

結局、三田は波の収まった最後の一時間に竿を出して釣れたのは「一匹」の”ふぐ”

だけ、  船が堤防に着いて地面に足をつけた瞬間に元気になるのが「船酔い」だと

言う経験だけはした。

夕方になれば腹も減る・・・不思議なものだ。

単身赴任で大連に来て3ヶ月。

三田は自分の想像以上に「友達」も出来て、休日も楽しかった。

「お好み焼き屋」の常連になったり、「小さい喫茶店」で顔見知りの駐在さんと話したり

日本だと「ライバル」になる同業者の駐在と仲良く「飲み」に行ったり、

時には「支店」の「劉クン」達と勝利広場の地下で「ボウリング大会」をしたり、

三田は自分で思っていたほど「大連」と言う街は「悪い所」ではない。と感じていた

駐在員というのは 「早く帰りたい組」と「帰りたくない組」にハッキリ分かれるというけど

間違いなく三田は「後者」だ。

「そりゃー三田クンが独身で気楽だからさ」と 有志会の「自営業・安田さん」が言った。

安田 「 もしも「恋人」が日本に居てみぃ〜 毎日「帰りたい〜」て泣くぜぇ」

  「そうかもしれませんね」

安田 「 そうや〜 三田クン。キミ大連で居ないの? 恋人? 」

  「 いえ クラブも行きますけど・・ほらマンションが例の「駐在専用マンション」だし

    悪い事できませんよ。ハハハ」

安田 「 なに言ってんのよ、 「ホテルの部屋」でいいじゃんよ〜」

  「 えっ? ああーそうですね。気がつかなかった」

安田 「 ホテルの中のクラブなら 格安で取ってくれるよぉ」

  「 へぇー」

なにも自分の部屋があるのにホテルを取ってまで・・と思うのだが、確かに「三田のマンション」

は「家族赴任」の人たちが多くて、女の子と部屋に帰るのを見られたら・・と思うと「その気」が

無くなる。

同じ森ビルの中の単身仲間に言わせると「考えすぎだよ」と言うけど 少し考えて

「やっぱり、出来ないよね」と皆が言う。

「じゃーさ、 旅行行けばいいんじゃない?」と 単身赴任仲間の「新井」が言う

 「 いちいち 旅行いくの? いやだな〜」

新井 「なに言ってんの、楽しいよ。オレなんか一ヶ月に一度行くよ」

 「ふーん」

新井 「 三田さん、そういうのの前に「相手」居ないとさ・・・」

 「そうだな 結局さー 女の子の友達なんて「クラブの子」だけだしね」

新井 「 へ?? だからさ クラブの子でいいじゃん」

 「うーん 」

新井 「深く考えないのよ三田さん。俺たち「日本人」よ、何時かは日本に帰るのよ

     結婚するわけじゃないって「理解」して付き合えるのは「クラブの子」だけよ」

  「でもなぁ〜 なんかそういうの「恋」でも「愛」でも無くて、ただの「利用」みたいな」

新井 「 ずいぶんな 潔白さんだねぇ〜」

翌日 昼休みに食事の場所で キチンと「ネクタイ」に「スーツ」の新井を見かけて

つくづく「日本人は「仕事」と「遊び」を割り切る人種」だと思った。

緑色の葉っぱが支店の窓から見える5月の大連は桜の季節だった

6月

東京本社の会議に出席するため、赴任以来始めて帰国した。 東京の空気が

大連と違う「味覚」なのに気がついた、どっちが嫌いとか好きはないけど、

自分が今住んでる場所が好きにならないといけない。

大連空港で「張クン」の運転する社用車に乗り込むと早速聞かれた

張 「どうですか?久しぶりの日本は?」

 「うーん、本社も大変みたいよ。 ほら天候不順でしょ日本も・・」

張 「 違いますよ三田さん。 東京はどうでしたか?」

 「 え? ああ 暖かいね。もう」

張はガッカリしたように無口になった。

 「えーと・・ 陳さんの結婚式なんだけど、来週だよね」

張「 そうですよ、三田さん「スピーチ」どうしますか?」

 「それなんだけど、助けてよ」

張 「 じゃー 文章書いてくださいよ、中国語のP音を書いてあげますから」

 「 うん、頼むよ」

陳さんが結婚するので支店長としては「披露宴」でスピーチをしなければいけない

新郎新婦は大連の人たちだから日本人の出席は三田だけだった。

緊張の「結婚式」「披露宴」が終わり、三田は酒を飲みすぎて歌まで披露したらしい

朝の支店では軽い「朝礼」を行い、新婚旅行に行かない「陳」も居て

三田は少し気まずかったが支店の社員には好評だったようだ。

午後 「大連分国酒店」の営業が「三田」に会いたい。と電話してきた

話を聞けば「割引するのでお客さんを当ホテルに・・」と言うことだ。

「うーん 日本からのお客さんって自分でホテル決めるからね、僕達「駐在」が

決めることはほとんど無いんだよ」 と説明しても、「なんとかお願いします」

と言う。 「判ったよ、 じゃー来月初めて大連に来るお客さんに勧めてみるよ」

半額の約束をしてホテルの営業さんは帰って行った。

帰った後で「劉クン」が 「そういえば、今度スイスの近くに 「ケンピンスキー」て

5星ホテルが出来るみたいですよ」

「へえー 大連もホテルがドンドン建つようになったんだね」

と、言うと  「シェラトンホテルも来るらしいです」「フラマの?が出来るらしい」と

事務所内でひとしきり「ホテル談義」になる。

数日経った「昼休み」に珈琲店にいると同年代の「駐在員」が三田の席に次々と

やってきた、雑談の中心は「最近オープンした高級クラブ」だった。

「3日前のプレオープンに行った」という商社駐在の冬木がしゃべる

冬木 「高いのなんの・・個室が一時間200元だって言うんだよ」

 「え?じゃ2時間いたらそれだけで400元も取られるの?」

冬木 「 そうだよ、ビックリだろ? シーバースが650元だよ」

 「へ〜 500元が限界値段だろ。普通はさ」

冬木 「そうよ、ボトル入れて個室にいたら1500元は飛ぶね、もう行かないよ」

 入れたボトルを飲んでいい、と言われても三田は困った。

 「日本人の店長いるんだろ?」

冬木「いるよ、社長って言うオッサンも居たけどね。ありゃスグに無くなるね」

 「 まぁ・・最近「お店」が多すぎだからね」

冬木 「高けりゃいいってもんじゃないのよ、な?西川クン」

西川 「 そうですよね、お客さん連れて行くとしたら、2軒分の予算が取られるのは

      痛いですもんね 」

食品関係の駐在「西川」が話し始める

西川 「なんでも、日本の「キャバクラ」の支店みたいですよ。そこ」

冬木 「へぇー 日本と同じ値段で?ってことかね〜 」

西川 「 結構プレオープンの時に沢山お客来たって言ってましたもん」

冬木 「 だれが?」

西川 「 ミナトのママさん、偵察に行ったらしいですよ。でも「楽勝」だって」

同業者は「新しい店」を見に行くのはよくある事だ。

内装や女の子の質よりも値段で「楽勝」=「敵デハナイ」と判断したようだ

冬木 「三田さん 行けば?」

 「行かないよ、それだけ「高い高い」言われたら、行く気が失せたよ」

大連で 一度着いた「評判」はなかなか消せない。

結局、いつもの「お店」でお客を接待するのがちょうどいいようだ

冬木に貰った「ボトルカード」は西川に渡して、三田は席を立ちエレベーターに乗って

支店に戻った。

7月

シャングリラホテルの予約は簡単に終わった。 2週間後に「東京本社」の部長と

中国支社の「北京支店長」が同時に大連支店にやってくる

先月 東京本社での会議で話題になった「工場視察」だ。

協力工場と三田の会社の合弁工場の3箇所を廻ることになる

「金州」 「普蘭店」 「開発区」 と強行すれば一日で終わるのだが

ゆっくりと時間を取って 大連支店内でも会議の予定もいれて3日間を予定した

中国の全支店の統括は「北京支店」が行っている、今の「北京支店」の柴田支店長は

本社の部長「柿枝さん」と同期で、二人とも以前は「韓国支店」で一緒だったこともある。

三田よりも10歳年上だが、二人とも「温厚」で部下の評判がいい

劉 「 柿枝部長の飛行機がJAL797便で 11時45分着デス 柴田支店長のMU5665

    が 12時着、 柿枝部長には少し空港で待って頂きましょう」

 「そうか、じゃ 柿枝部長にメールしておくよ」

三田は CCで 柴田支店長にも報告した。 

支店の電話が鳴り 陳が電話を取った

陳 「支店長、 北京の柴田支店長からです」

あわてて電話を取ると

柴田 「 三田クン 元気かね? メール見たよ」

 「 はい、 柿枝部長には15分ほどですが空港でお待ち頂きます。なにか問題ありますか?」

柴田 「 いや、柿枝君とちょっと話したいことがあるので「空港」で少し時間くれないかな?」

 「 はい、結構です。出発ロビーの横に「珈琲」飲める店がありますから、

   そこでいかがですか?」

柴田 「 いいよ、ありがとう。では着いたらそこに行こう。電話するよ」

  「いえ、支店のスタッフが出口でお待ちしますよ」

柴田 「 大げさだよ。僕は1人で行けるよ」

  「 そう言わないでください。 劉クンがお会い出来るの楽しみにしていますから、出口で

    劉クンが待ってますよ」

柴田 「 劉クンが待ってくれるのか、そりゃ仕方ないね。じゃ 宜しく頼むよ」

大連支店の「劉クン」を入社させたのは当時の大連支店長「柴田」さんだ。

2週間後 周水子空港の珈琲店で、本社営業部のトップと生産部のトップが話し合いをした。

柴田 「 河北の延協集団が石油高騰の理由で10月から値上げを打診してきた、現在の

     価格はベトナムのブラザーグループの提示してる金額と同額だ」

柿枝 「 中国での価格メリットがこのままだと危機だということだね」

柴田 「そうだ、ベトナムに負ける」

柿枝 「 なんとか現状の価格を守れる方法はないかね」

柴田 「 協力工場に資金提供か合弁を持ちかけて凌ぐしかないだろう」

柿枝 「 最善ではないね。それは・・ 中国政府の政策が読めない現状では

      投資が「死に金」になる可能性があるよ」

柴田 「 判っている。 ただベトナムよりはましだ」

柿枝 「 天津の虹星工場のように当社の投資で安定価格の維持が出来ればいいが」

柴田 「 そこでだ・・熊本工場の機械を河北に貸すというのはどうだろう」

柿枝 「 ほう、 ウルトラCだね。 確かに熊本工場はこのままだと閉鎖だからね」

柴田 「 技師も一緒に派遣する。 出向扱いでね どうだ?」

柿枝 「 本社にか? オレからのアイデアってことかい?」

柴田 「 頼むよ 」

判った、と「柿枝部長」は答えて、現地と本社の根回しが終わる。

会社内で話し合われない非公式な内容は、こういう場所で話し合われる

三田は二人の話し合いに同席していたが、口を挟まずに黙っていた。

本心では「日本の工場」の事を気にし、工場の従業員のことも気になる

二人の部長は会社の指導者としての立場であって、三田の考えの遥か上を見て

話している。 温厚な二人の紳士 は 冷徹な企業人でもあるわけだ

空調が少し弱くなったのか、汗が出てきた。 柴田支店長は時計を見ながら

「待たせたね、行こうか」と三田に声を掛けた

柿枝部長も立ち上がり、空港の出口に向かう。

「三田クン どうかね?大連は? 昔ね 柴田君と僕でよく遊んだんだよ・・今はどうなってる

かな? 」

三田は聞いてる限りで「古い店」の名前を柿枝に言ってみた。

「ほうー その店はまだあるのか? よし今日は「柴田クン」と行ってみよう」

柴田支店長も「 それは懐かしいね。ママさんは元気かね?」

 「いえ、わたしはその店に行った事がないんですよ」

柴田 「なに? 大連では「奥さん公認カラオケ店」だぞ」

柿枝 「 ハハ 柴田クンは「家族赴任」だったからね」

その夜  柴田支店長も柿枝部長も クラブ「御前」のママさんに逢って、懐かしい昔話を

していた。     三田は、ずっと「カラオケ」の本を持ったままだ

7月の大連は、短い夏の季節だった。


8月

森ビルの中に一番、日本人の少ない季節がやってきた。

一時帰国して夏休みを過ごす人、家族を先に帰国させてギリギリまで残る人、

この際と「香港」に行ったり、中国国内の観光地に行ったりする人もいる

三田は、独身の単身赴任という気楽さもあって、JALに予約をするのを伸ばし伸ばしして

(よし 今日こそ予約しよう。 12日の成田行きで・・帰りを20日・・・・)

何気なくパソコンを見るとメールが着ている、

『 東京第三営業部の宮元です。  ご無沙汰しています そちらの天気は・・・・』

から始まり 読み進めていくと

『 14日から16日の3日間ですが、当課のメイン取引先「ラコネット・ジャパン」の海原常務と

  その取引先である「セイカー・スーパー」の水戸バイヤー様が大連に観光に行きたい。

  との事でして、 三田支店長に・・・・』

おいおい・・・・・・

『 保科部長も 三田支店長に宜しく。と言っておりました』

えええ〜〜〜

あわてて電話を本社の小売部に掛けて 保科部長と話す。

保科 「 悪いな〜三田クン 頼むよー ラコネットさんは大事な3課のお客さんなのよ」

  「 だって、わたし 顔も知りませんよ 」

保科 「 そりゃ 空港でプラカード持ってたらいいがな」

  「 ホテルとかどうします? 」

保科 「 ああ? パスポートのコピーをFAXするから予約して」

  「 いや、そうじゃなくて・・・」

保科 「 だいじょーぶ 三田さんなら 任せて安心や」

電話を切ると「劉クン」が心配そうにやってきた

劉 「支店長、 僕達でアテンドしますから帰国していいですよ」

 「 いやいや 劉クン ありがとう。 そうはいかないんだよ、 直属じゃないけど

   上司に「名指し」で頼まれたんだから、帰国するわけにはいかないよ。

   まー どうせ帰国してもすることないし、「お盆も大連」て感じだね」

 (こんなことなら 昨日 飛行機の予約入れれば「言い訳」になったなぁ・・)

沈んだ気持ちのところに 北京の柴田支店長から電話が来た

柴田 「 三田クン 下期の経費予算の修正をスグに作ってくれ、お盆前に本社に

     提出しないとダメだよ」

  「 はい、判りました 」

柴田 「 ところで三田クン キミはいつ帰国するんだ?」

  「 えーと 帰国はしません。3課のお客さんがお盆に大連に来られますんで・・」

柴田 「 そりゃご苦労さん。上海の田中クンも帰国出来ないって電話来たよ

      あんまり飲みすぎないようにな」

  「 はぁ・・・・・」

 こうゆー時に家族赴任の柴田支店長は気楽だ。

 「オレは家族が大好きで、奥さんも大好きだ。もしも生まれ変わったらもう一度「奥さん」

  と結婚する」 と平気で言う。

案外 家族赴任の人たちには多いのかもしれない。

お盆が過ぎて、森ビルに続々と日本人が帰ってきた

「 三田さん 寂しかったですか?」 と昼ごはんの場所で西川クンに言われる

「 別に・・カラオケは全部やってるし、お客さんと一緒だし、寂しくないよ 」

西川 「 じゃー新規開拓しましたね」

 「 うん・・・韓国カラオケね」

西川 「 へぇ〜 今度連れていってくださいよ」

 「あのさ、それより今度の日曜日に「テニス」しないか? 」

西川 「 え?テニス?ですか・・ オレ、日本で散々して来まして」

 「 ひどいな西川クン、 オレなんか日本人誰も居ない大連で運動不足だよ」

西川 「 あ、こりゃ失礼しました。付き合いますよ テニスでもゴルフでも」

 「 悪いね 」

鉄鋼商社の駐在「佐久さん」が話しに加わる

佐久 「 三田さんさー 独身だから寂しいんだよ。嫁さんもらいなよ」

  「 恋人も居ないのにですか? 」

佐久 「 中国の女性は案外日本人より優しいよ」

  「 はぁ・・・・・」

佐久 「 ほら、中国銀行の「劉ちゃん」は独身だし「恋人募集中」らしいよ」

  「 はぁ・・・・」

西川 「 佐久さん、佐久さん  その話題は今日の夜に和善でしません?」

佐久 「 お、そりゃ名案だね 」

 「 あのー 恋人も嫁さんも自分でなんとかしますから」

西川クンも佐久さんも二人で同時に三田の顔を見る

 「 ジャ 今夜は「クラブ」行こうよ。 三田さん恋人探しに付き合う西川。佐久組」

二人とも 大連に帰ってきて「クラブ」が恋しいに違いない

暑い夏がもうすぐ終わる 秋の始まりの8月末

9月

大連外国語学院から電話が来た

三田は「本社から許可がないと採用できない」と担当者に伝える。

「面接だけでもお願い出来ませんか? 優秀な学生なんです」

 「判りました」と熱心な様子についつい答えてしまう。

面接の約束時間に来た子は 案外に優秀な子で、三田は驚いた。

陳が中国語で問いかけると、反応の早い答えが返って来る。

(この子は・・いい人材だ) 三田はスグに親しい「市内」の貿易公司に電話した

「日本語が結構上手で 頭の回転も速い子が居るけど、面接しないか?」

「三田さんの推薦ですか? 会いましょう。」

三田は自分の携帯を 面接に来た子に渡す。

ちょっと驚いた様子で三田の電話を耳にあてると 暫くして笑顔で話し始める

きっと、面談の約束時間を話しているのだろう、

陳も三田も正直に「この子」が惜しい気持ちだったけど「東京本社」に増員の許可を

申請して・・・という手順を思うと、この子が気の毒だ。

一週間もした日に 貿易公司から電話で「あの子を試用期間で採用してみる」と報告

が来た。

陳に言わせると 「あの子は 日系企業じゃなくて、大連の貿易公司のほうがいいですよ」

と自信たっぷりに言う。   積極性があるんだそうだ・・・

当日居なかった「劉クン」は 「スタイルはどうでした?」とか「顔は誰に似てました?」

しか聞いて来ない。

(来年忙しくなったら 増員の申請しないとな・・・・)と思うと同時に「大連の大学」も

いい人材が居るもんだと見直した。

昼はビルの裏の「日本料理屋 藤枝」に行くと、駐在の人たちが集まっていた

堀 「 お、三田さん。いいトコ来た こっち座りなよ」

  「 あ すみません。じゃ お邪魔します」 総合商社の駐在「堀」さんと 日系銀行の駐在

 「原田」さんの間に座ると、目の前には「ジェトレ」の高居さんが居た。

3人とも真剣な話をしていたようで、原田さんは腕を組んで頭を傾げている

 「 どうしたんですか? なんの話題です?」  店員に「天ぷら定食」を頼み手を拭きながら

聞くと

堀 「 三田さんのフロアはさ・・・ トイレに「異常」はないのかい?」

 「 えっ? 異常?ってなんですか?」

高居 「 堀さんと僕のとこのフロアは同じ階なんだけどね。 トイレが「水漏れ」する

      んだよ。 で・・原田さんとこ聞いたら 同じように「水漏れ」してるって

      でもね、 ちょっと「水漏れ」と違うんだよな、  こ〜〜

      『水を撒いた』ような感じでさ・・・」

原田 「 それでね、皆で 「なんだろう?」て 話してたんだよ」

高居 「 ほんと 不思議だよな〜〜」

原田 「おかしな奴が居るのかね〜?」

堀  「 警備に問題あるんじゃないのかな・・」

 「あのー それって「ウォシュレット」じゃないですか?」

原田 「 へ? 」

森ビルのトイレに全館「ウォシュレット」が付いたのは20日前だ

 「 ほら、ウォシュレットの使い方が判らず、ボタン押して ジャー!て・・」

高居 「 うーーん なるほど」

確かに 「ウォシュレット」のある「トイレ」なんて大連でも珍しい。使い方が判らずに

立ち上がり「ボタン」押してしまえば 水は勢いよく便器の外だ。

原田 「 うん うん あるね。ソレ  そうだ間違いない」

天ぷら定食が三田の前に出てきたが 原田さんと高居さんは「正しいウォシュレット」

の使い方談義を始めて止まらない。

堀 「 あのさー 「勢い」のトコ「最強」にしたまま去る奴・・いるよね?」

原田 「 いるいる! ケツに水が「刺さって」  なんじゃ〜!て・」

全員 50代の支店長クラスだが 「仲がいい」のかいつも3人で居るから遠慮がない。

高居が突然 携帯を取り出しメールをチェックしながら

高居 「 なー? キャロウェイのドライバーどこで売ってるか知らない?」

原田 「 フラマの前のショップならあるんじゃないの?」

高居 「 無かったよ、見たもん。 上海で売ってるらしいんだよ」

原田 「じゃー 上海から送ってもらえば?」

堀  「 ニセモノだろ。 でも、オレの「本物キャロウェイ」よりも飛ぶのが腹立つね」

高居 「ニセモノで十分ですよ  腕でカバーします」

まだ 話してる3人の先輩達を置いて 三田は外に出た。

風は少し強くなったのか、冷たくなったのか、 明日は雨のような気がする。


10月

行き付けの「料理屋・和善」に行くと 「土瓶蒸し」が今日から出来るというので頼んだ

日本だと「土瓶蒸し」と聞いただけで腰が引けてしまうが、大連なら三田の給料でも

気軽に頼める。

一緒に来た「西川クン」は、「秋刀魚の塩焼き」を頼んだ

「もう少し 寒くなると白身の魚が美味しくなるよ」 店主の村井さんがカウンターの向こう

でウチワを使いながら話す

「 大連はね、海が深いから「海老」「蟹」「貝」「海栗」が美味しいんだよ」

 「 へえー」

「11月になれば回遊魚が美味しくなるね。 スズキやサヨリだね」

土瓶蒸しと「梅おにぎり」を食べて満足する所は「日本人だな」と三田は思う

店主の村井は「福井県」から大連にやってきた。

「大連の「寿司屋」てね。ほとんど「日本海の魚」が多いんだよね。職人も日本海側の人

が多いのよ。 ところが上海に行くと 上海は「大阪」「福岡」の職人が多いのよね。

だからさ・・・「扱う」ネタが違うのよ、 越前・福井・新潟の「ボタン海老」とかさ・・

あ、11月になったら仕入れるから食べに来てね」

気さくで、同じ「大連駐在」の仲間で アカシア有志会のメンバーでもある村井さんは

休日に一緒にテニスする仲間でもある。

西川 「 村井さん、店終わったら一緒に飲みに行こうよ」

村井 「 いいよ、あと30分ほど待っててちよーだい」

店はもう3人のお客しか居なかった、3人と言っても全員、「顔見知りの駐在さん」だ

物流関係の駐在「岡谷」さんなどは駐在10年選手だ。  

大連で困った時は「岡谷さん」と 森ビル内でも有名な人だ

その「岡谷さん」が三田に話しかけてきた

岡谷 「 三田クンにも領事館から連絡来たかい?」

  「 来ました。 邦人滞在調査って内容ですよね」

岡谷 「 うん、 訪問ビザでの駐在行為は禁止で・・て内容」

  「 あれは『中国政府の要請により』って書いてありましたね」

岡谷 「 なんでも 不法滞在の取り締まりらしいよ。 外国人が税金納めず滞在するのは

      違法だからって事だろうな まー 現地法人ある人には関係ないけどね」

岡谷さんは「領事館」「ジェトロ」の両方から連絡が来た、と言い「ビザ延長」や「更新」に

注意するように教えてくれた。

西川 「 そういえば「村井さん」はナニビザなの?」

村井 「 えへへ わたしFビザの90日マルチなんだよ 」

岡谷 「 うーん、 それは何とかしたほうがいいよ」

村井 「 そうですね、知り合いに頼んでみますよ」

岡谷も加わり 4人で西川クンの「お勧めのクラブ」に行く事にした

「新しいクラブ」と言ってもどうせ「顔見知りの子」が居るに違いない。

西川 「 シャングリラの後ろに新しく出来た店なんですよ。元気のいい子が

      たくさん居るんです。 ボトルもありますから」

村井 「 また『自称 西川クンの彼女』が居るんだろ?」

西川 「 いないですよぉ〜 」

そんな西川クンが月末に「緊急帰国」をした。

鉄鋼商社の「佐久さん」が教えてくれた

佐久 「 なんでもさ、朝起きたら全く身体が言う事効かないから病院行ったら

       肝臓がイカレてるらしいよ。飲みすぎだね」

   「 そうですか まだ若いのに肝臓って・・そんなに毎日飲んでましたかね?」

佐久 「  あいつ 酒が好きなんだよ。 若いからスグに復帰するだろうけどね」 

なにしろ西川クンの会社は「接待」が多いそうだ。 真面目に「接待」すると必ず肝臓

が壊れるほど「お客さん」が多い。

翌朝 三田は「パソコン」を立ち上げると「商社駐在の冬木さん」からメールが入っていた  

「11月20日に日本に帰任する事になりました・・・・」

(冬木さんは確か駐在4年だからな)

昼休みに「冬木さん」に電話してみたら、やけに明るい声で

冬木 「 次の赴任先も決まってるんだよ。」

   「 じゃ 一時だけ日本帰任ですか?」

冬木 「 うん、 商社は問答無用だからね〜 次は広州だよ、来年3月から」

   「 大変ですね 」

冬木 「 慣れてるよ、ここの前は「青島」だしさ」

 中国語がある程度出来れば「駐在員」は中国全土の「要員」になる。
  
三田にも同じ事が起こるし、現実に「北京支店長の柴田さん」は駐在15年選手だ

支店の窓から下を見ると 今日も雨でここ3日ほど続いている。 

ひと雨降ると気温が下がっていく、この様子だと夜は「霧」が出るだろう

   11月

北京支店で行われた三田の会社の「中国法人会議」には 中国各地の支店長が全員

出席した。

柴田 「 来年2月をメドに「天津支店」は「営業所」となり、現在の支店長「永井君」は

     帰任することになった。 営業所の統括は一時「北京支店」で行う事にする」

業務縮小で「天津」を閉めるということだろう。

三田の大連支店と田中主席の「上海支店」 志村主席の「青島支店」 北京と4箇所の

支店で日本本社のサポートを行う。と言うことだ

田中 「 上海支店の人員を増やす稟議書には本社の意向はどうでしょうか?」

柴田 「 その件は社長の許可が出る予定だね ただ・・問題は「上海支店」の場所

      を、現在の「虹橋地区」から「浦東」に移せ、という総務部からの通知もくる」

田中 「それは無理です。 現在の事務所人員のほとんどは虹橋周辺に在住です

     浦東に移したら「通勤」や「勤務」に支障が出ますよ」

柴田 「 浦東地区での「事務所家賃」のことだけが先行して本社に入ってるみたい

      だね。 総務部から通達きたら「事情説明」の準備はしておいてくれ」

田中 「了解しました。報告書形式でまとめておきます」

上海事務所は「虹橋地区」の国際ビル内にあり20人クラスの人員が配置されている

出向と駐在人数もアジア地区で一番多いし経費も年間にすると膨大だ。

柴田が「青島支店」の書類を手に取り志村に話しかけた

柴田 「 8月の経費が予算の30%増になった原因は本社に説明しておいたけど

      9月 10月と やはり12%増の原因はなんだい?」

志村 「 綿糸の高騰による損益が出まして・・・それと・・製品クレームが増加して

      対処が遅れ 再検品費用の負担金が増加したのが原因です」

柴田 「 工場変更も視野に入れて対処したのかな?」

志村 「 なにぶん 現在の「煙台景勝集団」に代わる規模の工場がありませんので」

柴田 「 確かにね、4千人規模だからね、 ただ「無策」ではダメだよ。 千人規模の

      集団公司を3箇所で対応する。と言う策もアリだからね。志村君」

志村 「 判りました、検討します」

柴田はこの会議が終わると日本本社に行き、役員会議に出席しないといけない。

中国法人の実質の社長の役割だ。

柴田 「 最後に・・ 大連支店の三田課長を主席課長として昇格して「大連支店支店長」

      としての辞令を12月1日付けで出す事になった」

三田は出世したわけだが、待遇は変わらない。

内示は昨日「柴田さん」からあったわけだが、これで他支店の支店長と「同格」になった

それだけの事だ。

田中 「あれ? 三田クンは主席課長じゃなかったんだ? 知らなかったよ」

   「 ええ 前任の「原主席」のピンチヒッターで赴任しましたから・・」

田中 「 そうだったね、確か3月だね」

   「 もう9ヶ月経ちました。」

田中 「 じゃ〜次はオレのあとの上海支店も頼むよ」

   「 やめてくださいよ〜」

三田は(冗談じゃないぞ・・上海支店の忙しさは大連の10倍だもんな)と思う。

帰任の「永井支店長」は天津に単身赴任してるから日本に帰国出来て内心は

嬉しいのだろう。

夜の最終便で大連に戻る予定の三田に

永井 「 来週 大連に挨拶廻りに行くよ」

  「 お待ちしてますよ、大連銀林の奏さんも喜ぶでしょう」

奏さんの結婚の仲人は永井支店長だ。

翌日、支店に出勤した三田に、困った顔の「劉くん」がすぐにやってきた

劉 「 船が濃霧で・・・止まってます」

 「 たしかに霧がすごいね。 お昼まで様子見てダメなら本社に連絡しよう」 

劉 「 これは無理ですよ。支店長」

 「 いや、あきらめない事だよ。事態を正確に把握して「代案」も添えて報告する。

   これが大事だよ。」

劉 「 わかりました」

結論を急ぐと「無策」になる。 三田は赴任した3月に前任の「原さん」が言った事を

思い出す。   「過度な期待をするな」

スタッフとの信頼関係と 「日本式の教育」を教える事が自分の仕事と思わないと

いけない。

納期は大事だけど、「濃霧」は自然現象でどうにも出来ない。いくら船会社にお願いしても

出航しないものはしない

劉くんをもう一度呼び 「 港から下ろして 『エア』で送る算段と経費を計算しておく」事

を言うと劉くんはスグに取り掛かる。

陳さんは「営口の工場からトラックが動かない、今週の船に乗せられない可能性あります」

 「 では、船の予約をずらして 「日本到着の曜日」を確認して」

次々と問題が起こる。

天候が悪ければ「当然」のように次々と起こるものだ

(船の便は少ないし、天候で「出港」しないこともあるし・・

 いやいや・・日本の需要のほうが「急ぎすぎ」なのかもな〜こんな景気で・・)

納期も金額も「ギリギリ」で余裕無く走ってる。 どこかが脱落していく、残ったところに

負担が掛かる。 我慢比べをしているようだ

本社から「納期確認」の電話が一時間おきに来る。

三田は支店の全員に言った

「 終わらない「問題」は無い。 終わらせるように努力して」

濃霧は2日間続き、船は3日間の間出て行かなかった。

支店の全員が「工場との交渉」と「港への問い合わせ」に疲れ果てたが、日本到着へ

の「納期」に大きな障害は未然に防げたつもりだ。

11月の「濃霧」は、「大連」へ冬の訪れを告げる 

12月

防寒着のフードを被り工場の中をチェックしていく 工場内での温度は屋内でも

マイナスになる。

工場の事務所に戻ると総経理の「馬」が熱いお茶を入れてくれた

馬 「 まだまだ寒くなるね。 三田さん、春節の休みの事なんだけど

    2月1日から20日まで「休み」にすることにしたよ。

    工員が20日後に「戻ってくるか」は判らないけどね・・・・

    戻って来ない場合は、25日以降に「募集」するけど、

    集めるのは難しいよ。」

 「なぜ?戻って来ないのかな?」

馬 「 うん、古い工場の労働環境よりも「IT」関係の新しい工場のほうが

    賃金同じで カッコいいからだね。  中国の若者の意識だよ

    故郷に帰れば「友達同士」で情報交換するからね。

    昔なら「工場の為に」とかあったけど、今の若者にはあまり無いよ

    賃金の高いほうに行くし、楽な仕事のほうに行く 」

 「 共産党のスローガンのように行かないんだね。『愛的工作』みたいな」

馬 「 国営工場が無くなってるからね。独資の「競争」だよ。

    生産力に設備投資や人件費のバランスが伴ってないね

    このままだと・・・・・ 相当数の工場が「操業出来なくなる」よね」

 大連は「工場」が沢山あるが材料が少ない。 加工貿易に頼って来た結果

素材や材料の競争力が無くなっていった。

2月の春節後の「生産スケジュール」が埋まらないまま年を越していった。

人民路の「シャングリラ」ホテル」の電飾がミドリ色のイルミネーションになった

クリスマスのイベントは特にないけど、ホテルの電飾は本当に綺麗だ

行き付けの「小さなクラブ」に行くとママさんから「クリスマス・プレゼント」を貰う

ママ 「三田さん。 どっちがいい?」

   「えーと・・・・・」

    2つの「花瓶」を選ぶ。 綺麗なガラスの花瓶と 陶器の花瓶。

   「これって、ママさんが選んだの?」

ママ 「 そうよ。当たり前じゃない ホラ!早く選んで」

   「じゃ、ガラスの花瓶を貰うよ」

ママ 「 ガラスの花瓶にするのね。 誰か花を刺してくれる人は居るの?」

   「 ありがとう・・そのうちに見つけるよ」

そこに「西川クン」が入って来た。

西川 「 まいど〜〜 三田さんオバンですぅ〜」

   「 あれ、今日はお客さんないの?」

西川 「 なんか〜 ホテルで女の子とご飯食べるんだって言うから、邪魔しちゃ悪い

      って帰ってきちゃった。 今の時期のホテルの「ご飯」って高いし・・」

ママ 「 西川さん いいとこ来たね。 あなたに「クリスマス」のプレゼント」

西川 「 え? マジで! 嬉しいなぁ〜 お! 花瓶じゃない」

ママ 「 あなたの為に わたしが「選び」ました。 気に入った?」

西川 「 いや〜〜 綺麗な花瓶だね。ママさんアリガトウ。感謝感激」

ママ 「 いえいえ〜〜」

西川 「 三田さんも貰ったの?」

ママ 「 あげたわよ、残り物で悪かったけど」

ママは小さく「目」で合図しながらガラスの花瓶をすばやく「包んで」渡してくれ

西川の花瓶は「ダンボール」の小さい「箱」に入れて西川に手渡す。

西川は笑いながら 「なんか悪いですねぇ〜三田さん」

 「いや 全然、気にしないでよ」

西川クンは上機嫌になり、ママさんはニコニコと笑っている。

(さすが・・・・) 

クリスマスが過ぎると少し街に「静寂」が訪れる

年末までのカウントダウンになるのだが、駐在組は一時帰国の準備に入る

実のところ12月に入ったらすぐに「予約」を入れないと27日28日の飛行機券は

取れない、三田はギリギリの27日のJAL797成田行きが取れた。

空港には見慣れた駐在さん達が沢山いた。家族で居る人たちも多い

「やぁ〜 キミも今日の便か」と声を掛けられた

 「あ、尾藤さんも今日のJALですか?」

尾藤 「 ANAなんだよ。 これ僕の「奥さん」」

 「こんにちは、三田といいます。お世話になってます」

尾藤さんは「都市銀行大連支店」の法人担当駐在で家族赴任している。

普段、ビルの中で会う「尾藤さん」は銀行マンの典型みたいな人でスーツを着て

歩いているのを何度か見ているけど、今日は大きなカバンを持ち、セーターに

ジーンズとコートを着ている。奥さんは男の子と手を繋いでオマケにベビー・カーには

小さい「赤ちゃん」が居る。

「8月に生まれたんだよ」と言いながら、成田に着いたら新幹線に乗り換えて

「長野」に行くと言う。 日本の色々な地域から「大連」と言う街に集まって働く人たち。

三田は成田に着いたら埼玉の実家まで、西川クンは明日の飛行機で大阪から神戸へ

『和善』の村井さんは昨日の「富山便」で帰った。

空港で沢山の人に

「よいお年を・・・」と言い三田はJAL797便に乗り込んだ。


1月

” ご乗客の皆様、機長のキタハラでございます。 ただ今入りました情報によりますと

  現地「大連」の天候は「降雪」の為 周水子飛行場は閉鎖になっております。

  当機はこのまま上空で旋回待機し、場合によっては福岡空港か一時「瀋陽」に

  降りまして燃料補給後に・・・・・・・・・・”

(ついてないなぁ〜 新年早々・・・)三田はイヤホンから流れる機長の説明を聞きながら

(あれ・「劉クン」とか・・連絡どうしよう・・飛行機ってこうゆー時はどうしようもないな)

と思う。

瀋陽で燃料補給し、成田に戻るはずの飛行機が突然「周水子飛行場」に向かい降下

を始めて3時間遅れで帰る事ができた。

誰も居ないと思っていたら「劉クン」は待っていてくれた。

劉 「 飛行場の「表示」て正確なんですよ。 『今瀋陽に居ます』から『着きました』まで

    結構正確なんです」

「到着」の表示が出るのは 本当に飛行機が滑走路に接地した時で、すごく正確なんだそうだ

雪は路のあちこちの残り、ちょっと奥に入るとまだ積もっている。

街は「春節」の準備に入っているようだ。

赤い飾りが至る所にある

劉 「 正月に居残り組の『佐久さん』につき合わされましたよ〜」

 「へぇ〜 クラブとかやってたの?」

劉 「 結構、観光の人が多いんですよ」

 「 正月に? 大連で?」

劉 「そうです、 なんでも「日本に居ても暇で、お金使うから・・・」て人が多いって」

 「ふーん、なるほどねぇ〜」

劉 「 あ、そうそう! 『北村精機』の『本庄さん』に逢いました」

 「え?? なんで大連に居るの?連絡なかったよ」

北村精機は本社の「お客さん」で3ヶ月に一度「本庄部長」が工場にやってくる。

連絡なしで「大連」に来る事はないはずだ

劉 「 プライベートじゃないですかね。 2日の夜に「クラブ」・・えっと・・『アリス』?

    に「佐久さん」と行ったら、居たんですよ」 

そういえば「クラブ・アリス」に本庄さんの好きな女の子が居た。

   「劉クン、本社には黙っておこう」

劉 「 ええ、そうしますよ」

プライベートで来てる「お客さん」の事に首を突っ込む事はないだろう・・・

支店に戻ると全員から「おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」の挨拶

を受ける。

日本でのお土産を陳に渡すと

陳 「 おせんべいデスカ?」

  「なんで判るの?」

陳 「草加せんべい。有名ですから」

たしかに、「中国へのお土産ベスト10」に入る「草加せんべい」だ。

携帯の電話が鳴り、上のフロアーに居る「食品商社の駐在、石田さんだ

   「おめでとうございます。今年も宜しく」

石田「 おめでとう! 今日戻って来たんだね。夜ご飯一緒にいかない?」

時計を見るともう5時過ぎだ

   「いいですよ、荷物あるけど・・・」

石田「 じゃーキミのマンションの近くでいいよ。」

石田さんは、新しい「按摩屋」「クラブ」「ラーメン屋」「日本料理屋」に必ず行く

今日も新規開拓の店に連れて行ってくれるんだろう。

日本からの荷物を部屋に入れて手早く着替えて石田さんと合流した

石田 「 今日は「蕎麦屋」いってみようか? どう?」

  「蕎麦屋? 珍しいですね」

石田 「 去年の暮れに開店したみたいよ、僕も始めて行くんだよ」

  「 関西系かな?関東系かな?」

石田 「 え、蕎麦屋だから関東だろ? 「うどん」じゃないもん」

  「判りませんよぉ〜 ここじゃ「うどん」「蕎麦」の区別あんまり無いし」

石田 「 そう あたりハズレも多い。 麺関係は特にね」

  「それ、ありますね。 「分量」が大事な料理は・・・コッチの人に向いてない気が

   します。」

石田 「 大さじ1杯とか、小さじとかの区別が無い?」

  「適当でしょう? だから日本人居なくなるとスグに味が変わる」

石田 「 うん、 以前の「粋」のカツ丼はヒドかった。日本人料理長が帰国した途端に

      つゆだくカツ丼になったからね」

 『 みつい 蕎麦処』と看板が出てる店に入り、メニューを見る。

「手打ち」と書いてあるが・・・・

石田さんはキョロキョロと厨房を見回して

 「三田さん・・・・・やっちまった気がするぞ」と小声で言った。

 「 仕方ないですよ、食べましょう」

簡単な「天ぷらそば」を注文する。 「おにぎり」も頼んだ

ぬるいお茶が愛想もなく出てきた。

石田 「 うーん これは失敗かな」

  「 大連で「うまい麺」は無いって事で・・・・」

出てきた「天ぷらそば」は 酷いものだった、おにぎりを持つと「割れる」

石田 「 ・・・・・・・・・」無言で食べる

 「 蕎麦がブツブツ切れますねぇ〜」

石田 「 うん・・・」

店を出て 「まいった」を連発する石田さんを慰めて、「初カラオケ」に繰り出す事に

した。 突然「携帯」が鳴り始める

西川クンの元気な声が飛び込んでくる

西川 「おめでとーございます。 西川、本日帰ってきました? 今「新井さん」と一緒

     です。 どこか遊びにいきましょう〜」

  「 おめでとう、今「石田さん」と蕎麦食べたとこだよ」

西川 「 どこですか?蕎麦屋?『みつい』なんか美味しいですよ。僕去年の開店

      の時に食べました」

  「 あ、そう・・」 石田さんに 「西川クンが『みつい』の蕎麦はオイシイって」と言うと

石田 「 西川クンは 舌がおかしいんだよ」と小さな声で言う

笑いを噛み殺しながら 「で、どこ行くの?」と聞くと

西川 「 新井さんが、『クラブ・シティー』に綺麗なチーママ居るって言うから見てみよう

      と思います! 」

 「クラブ・シティー? どこだいそれ」

石田さんは横から 「民主広場の奥だよ。按摩の「大全」の近く」

 「 「大全」の近くかい?」

西川 「 そうです! 今どちら?」

 「スイスホテルの近くだよ」

西川 「じゃ20分後に会いましょう、僕達のほうが先に着きます」

駐在4人組でボトル1本入れて全部で1500元だった。

翌日、続々とお昼過ぎに「駐在さん」が戻って来た

森ビルが活気を取り戻す。 現地スタッフの「新年好」から日本語の「御目でとゴザイマス」

まで、工場の人たちも挨拶に来る。

一日が終わり、マンションの近くの珈琲ショップに居ると「アカシア有志会」の長老「保住さん」

が居た。

保住 「 歩け会というのを作ろうと思ってね」

   「 歩け会?てなんですか?」

保住 「 ほら、大きな場所借りたり、設備も要らない。運動不足を解消できるし、

      いいコミュニケーションにもなる。 家族も参加できるし いい案でしょ?」

三田は暮れに「空港」で見た家族赴任の「尾藤さん」の一家を思い出す。

   「そうですね、いいアイデアですよ」

保住 「今は寒いけど、ちょうど3月過ぎた時に出来るかなぁ」

冬の間は「ゴルフ」も「テニス」もお休みしてる駐在さんが多いから春先にこの企画は

いいと思う。

一月も残り5日ほどになった

三田は春節にに合わせて帰国し本社の会議に出席するようにと「北京」の柴田さん

からのメールを受け取り、早速、飛行機券の手配をしたがどこも一杯

ビジネスクラスしか空いていない。恐る恐る申請書を出してみるとアッサリ「許可」

が下りた。

この日 大連の気温はマイナス18度だった


2月

本社会議が終わり来期の「海外支店方針」の書類の束を持って、翌日のJALに乗り込む

同じ飛行機には「北京支店長の柴田部長」が乗っていた。

ボーイング767の機体が成田の第二滑走路からゆっくりと上昇していく

水平飛行に移った時に三田は荷物の中から本を取り出した

柴田 「 キミも「本」を読むのか? なんだい?小説かい?」

  「いえ、中国の伝説っていうか・・昔話みたいな本です」

柴田 「へー そんな本があるのか」

柴田さんは三田の「本」を覗き込みながら

柴田 「 もう 一年経つね。 キミは大連に慣れたかな?」

 「ええ、当初は不安でしたけど、結構「面白い事」も多いですし、スタッフも優秀です

  から、僕としては「勤務し易い支店」ですね」

柴田 「 ふふ、そんな事言ってると駐在が永くなるよ。 普通は「帰りたい」とか

     言う駐在員のほうが多いからね。 原クンのようにね・・・」

 「原課長が?家族赴任だったでしょう?」

柴田 「 奥さんの病気を口実にしただけだよ。ただ・・あのまま置いておくと

      原クン自身が心配だからね。帰国させて後任がキミになった。」

 「なにか原課長にあったんですか? 僕は全然・・・」

柴田 「 駐在した場所の「人」を好きにならないとダメなんだよ。 軽蔑したり

      軽視したり、差別する意識を持つと結局は「続かない」って事だね。

      案外「支店採用の中国の人達」は肌で感じ取るんだよな

      「尊敬できる人」か「一緒に働ける人」か・・・・

     「いい人」と「ダメな人」という二つの評価しかしないけどね。 

     キミはどっちだと思う?客観的に自分を見て」

  「 どうですかね? 自分では努力してるつもりですが・・・

    支店の人達に「どう思われているか」の前に 「駐在員の責務」のほうを

    優先する事が多いですから、仲間意識だけでは「現地の仕事」は出来ないと

    思ってます」

柴田 「 キミは「独身の単身駐在」だろ? ソッチのほうはどうだい?」

  「 それは無理ですよ。 大連は狭い街ですから・・ 社宅マンションには同じビルの

    家族の人達もいますし、支店の人達の手前、「公私」の「私」の部分はなるべく

    見せないようにしないと・・・誰も「公」の僕の指示を聞かなくなります。」

柴田部長は三田の話を頷きながら聞いていた。

ボーイング767は定刻で周水子空港に到着し、「劉クン」の運転する「社用車」は

混雑のない大連の港沿いの路を走る。

柴田部長は三田の顔を見て言った

「キミの駐在期間は2年間だ。 でも もう少し延長させてもらうよ 来月から「天津」

の営業所を大連支店に組み込む。

キミは天津営業所の所長も兼任だ」

「判りました」としか答えようが無い柴田部長の言葉だった

三田の大連駐在はこの日から4年間に及んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おわり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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