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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『真夜中のゆりかご』[日本公開:2015年5月15日]

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●Introduction
 第83回アカデミー賞外国語映画賞受賞作『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トマス・イェンセンのコンビによるサスペンス。妻子と幸せな日々を過ごしていたが、突如思いも寄らぬ悲劇に見舞われた刑事の葛藤を、育児放棄や家庭内暴力など現代社会が抱える問題を取り上げながらスリリングに描く。テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのニコライ・コスター=ワルドーを主演に、『ある愛の風景』などのウルリク・トムセンらが出演。

 愛する妻と幼い息子と幸せな毎日を送っていた刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、通報を受けて同僚のシモン(ウルリク・トムセン)と共に現場に掛け付けた一室で、薬物依存のカップルと目を覆うような育児放棄の現場を目の当たりにする。夫婦でわが子をいつくしむ日々は愛に満ちていたが、ある日思いがけない悲劇に見舞われ、アンドレアスの中の善悪の価値観が揺らいでいき……。
[日本公開:2015年5月15日]

コメント(1)

 「未来を生きる君たちへ」などで、過酷な状況でもがき苦しむ人々の喪失感を描いてきたデンマークのスサンネ・ビア監督の新作。
 トリッキーな展開ではなく人間の業に深く踏み込んだ描写で見る者を翻弄するサスペンス作品として、ビア監督の新境地を感じさせてくれました。
 特にこれまでの作品においては、展開が緩やかで、物語が動き始めるまで、つい眠ってしまうことも多かったのです。本作では赤ん坊の強奪というあり得ない展開に、ぐいぐい引き込まれてしまいました。

 物語は、刑事アンドレアス(ニコライ・コスター・ワルドー)が、薬物中毒者のガサ入れ時に、虐待されて糞まみれの赤ん坊を発見するところから始まります。
 アンドレアスにも、愛妻アナ(マリア・ボネヴィー)と、大切に育ているちょうど同じ年頃の赤ん坊がいたため、人ごととは思えなかったのです。

 そんなアンドレアスは、ある夜にアナから、突然わが子が急死してしまったことを告げられます。錯乱するしたアナ。それをなんとかなだめて、寝つかせたアンドレアスは、わが子の遺体を車に乗せ、外出します。
 どうするのと見ていたら、薬物中毒者のカップルが眠っている住宅へ辿りつくのです。そこで、あろうことか室内に忍び入り、部屋の中で寝ている赤ちゃんと死んだわが子をすり替えてしまうのでした。
 主人公の刑事の予想外行動に、ビックリ仰天。でも、見ている方も、余りに酷い糞まみれの赤ちゃんの状態を伏線として見せられていたので、こうでもしないとやがて赤ちゃんは親からの虐待で殺されてしまうのではと、容易に予想してしまう流れ。
 だから、それをよかれと思ったアンドレアスの行動に、違和感よりも思わず共感してしまう成り行きでした。

 しかし、映画『そして父になる』で描かれているほどに、赤ちゃんの取り替えが、そうそうそうバレずにうまく行くことはありません。物語は、いつバレるかハラハラさせる展開が待ち受け、一気にサスペンスモードに突入です。
 案の定、薬物中毒者の夫は、「わが子」が死んでいると気づいたとき、これまでの虐待が赤ちゃんの死に繋がったものと思い込みます。そして、死んだことを認めない妻を口説いて、死体を隠し、子供が誘拐されたと騒ぎだすのです。やがて警察がきて、夫の狂言は、大きな事件へと発展して、捜査にあたるアンドレアスを抜き差しならぬ状態へ追い込んでいきます。

 また、一度は取り替えたことに納得していたアナも、次第に精神的に追い詰められていきます。そしてアンドレアスに断りもなく、赤ちゃんを連れて真夜中に彷徨してしまうのです。まさにタイトルどおりの真夜中のゆりかご状態です。大きな橋の上で立ち止まったアナは、赤ちゃんを持ち上げて…。
 赤ちゃん大ピンチと思えるほど、アナが心を病んでしまったのには理由がありました。その理由が、本作のミステリーの大きな鍵となっていたのです。それは単に赤ちゃんをすり替えたという罪の意識では無く、もっと根本から隠された秘密を抱えて悩んでいたのでした。
 それが明かされるラストでは、思わずアッと叫びそうになる戦慄ショットが加わり、全くスクリーンから目が離せないことになってしまうこと請けあいです。複雑で切迫した感情のうねりに飲み込まれてしまいました。

 本作での赤ちゃんの取り替えは、心情的には理解してあげたくなる展開だけど、法的にいえば、許されない行為に走る刑事の運命を通して、見る者に道徳的な問題を投げかけていると思います。
 社会と人間の暗黒面を濃縮したような重苦しい内容でしたが、強烈なひねりを利かせたサスペンスに、喝采を送ってやみません。

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