第11章『MONSTER』
「お前…！！」
男…ヒデの姿を目にした結の表情が、怒りの形相に豹変する
そう
そこにいたのは、この日の夕方、結に呼び出しの手紙を送り付け、屋上で結を襲い、明日香をさらったあの若い男だった
「お前だけは、許さない！！」
結は叫ぶと、ヒデに向かって弾けるようにコンクリートの床を蹴った
同時にヒデは、手に持っていた何か…注射器を、自分に打つ
「なんだ！？」
寺澤がヒデの行動に気付き、頭の中で知識をフル回転させる
ヒデが自分に打ち込んだ注射は、おそらくドーピングの類いだろう
しかし、寺澤の知識には、どんなに即効性のドーピングでも、結の攻撃速度よりも早く効果の出るものはなかった
タイマンの勝負なら、学校の屋上での戦闘の時点でついている
ドーピングが効く前に倒せれば問題ないはずだし、結の攻撃力ならば難無くこなせるはずだが……
寺澤は、妙な胸騒ぎがした
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