第５章『7.78』
「どれだけ、速いか？」
結は小首を傾げて、老婆に問い返した
「そうじゃ
半分だけ本気で走って日本記録が出るんじゃ
全部本気で走ったら、どれだけ速いか知りたいじゃろ」
老婆は結を見据えて言った
結は少し戸惑い気味だったが、クッキーを一つ食べて返事をした
「知りたいけど……
でも、一回帰らなきゃ、お父さん心配するし
今、何時？」
寺澤が携帯を開いて時間をみた
「４時半だ」
「え？まだそんな…」
結は不思議に思った
部活が終わったのが夕方３時半
片付けとかして、４時ちょっと前に学校を出て
団地まで15分ぐらい
と、いうことは
団地の裏で暴走族みたいな連中に襲われてから、まだ全然時間経ってないってこと？
ここに来てけっこう時間が過ぎたような気がしたけど……
「間もなく夜が明ける頃か
そうじゃな、オヌシも一度家に帰るか」
…………は？
夜が……明ける？
「え…じゃあ、今
夜中の４時半？！」
「そうじゃが
ワシはさっき起きたばかりじゃ
ワシにとっては、朝の４時半じゃがな」
「お婆ちゃん早起き！！｣
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