情報のあふれる今日，急速に変貌する時代の流れを知るには，自ら情報を取捨選択し解釈する力をつけることが必要である。そのためにはじっくり本を読み，思索する以外にない。手許にある本のなかから，３冊紹介しておこう。?ジョセフ・Ｅ・スティグリッツ『スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く―』ダイヤモンド社，2007年。近年の世界経済の出来事や国々の政策を巡るトピックを取り上げて，経済のグローバル化についての市場原理主義的で一面的な礼賛論や不可避論とは異なった批判的な見解を展開したもの。?広河隆一『パレスチナ』（新版），岩波新書，2002年。近年再び泥沼化してきたパレスチナ問題を，最新の状況にもふれながら，その背景と歴史をたどった本。?アミール・Ｄ・アクゼル（吉永良正訳）『天才数学たちが挑んだ最大の難問』早川書房， 1999年。17世紀にアマチュア数学者によってメモの形で残され，数学上の最大の難問とされてきた「フェルマーの最終定理」が1994 年に証明されるまでの歴史を描いて，世界的なベストセラーとなった本。幾多の大数学者がその証明に取り組み苦闘し挫折し，その過程で新たな数学理論が生まれ，最終的にはそれらが結集されて解決に至るプロセスは感動的であり，人間の知的営みについて多くのことを考えさせる。
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