Boucq(ブック)作『Les Pionniers de l’Aventure Humaine(冒険のパイオニアたち)』読了しました。先日、Freddo さんからいただいたものです。Freddo さん、ありがとうございます!僕が読んだのは1987年刊の J’ai lu BD(ジェ・リュ・ベーデー)という新書版サイズですが、オリジナルは1984年に casterman(カステルマン)社から出ているようです。作者のブックはホドロフスキー原作の『BOUNCER(用心棒)』の作画を務めている人ですね。あと、コミュニティの現在のトップ絵もブック作画の『La femme du magicien(魔術師の妻)』です。では、紹介を。
この本は短編集で、計11編の作品が収められています。それぞれの作品が、ある意味で人間の生活におけるパイオニアを描いていると言える…のかな…? 作品の傾向は大まかに言って、幻想的なものと異常性欲的(?)なものに分けられます。例えば、読書をしている母子のところへ日本兵(!)が闖入し、息子が捕虜に取られるが、母親が冷静沈着に敵を鎮圧する話とか、人間の日常生活と野生動物の世界が地続きになっている話とか、筋肉隆々たる男たちに入れあげる老女の話とか… どの作品も面白いんですが、とりわけいいのが「La Loi du Grand Nord(北極の掟)」と「La Solitude des Profondeurs(水底の孤独)」と「La Tigre du Bengale(ベンガルの虎)」で、いずれも馬鹿馬鹿しい状況をポーカー・フェイスでやり過ごしていく登場人物たちの姿が笑いを誘います。「北極の掟」の主人公はパパナキテイという見た目には冴えない中年のおやじですが、極寒の地の叙事詩にふさわしい素朴で力強い(?)ナレーションをバックに、アザラシやホッキョクグマを狩っていきます。「水底の孤独」は、プール掃除を職とする男を主人公にした作品で、この男はなぜか常に潜水服を身につけ水中にいるんですが、頭上を楽しげに泳ぐ水着を着た美女に恋してしまい、自分の孤独な境涯にも絶えかねて、カッパよろしく彼女を水中に引きずり込んでしまいます。怖いのか馬鹿馬鹿しいのかわからんという微妙な読後感がたまりません。馬鹿馬鹿しいという点では「ベンガルの虎」も素晴らしい! これは保険の営業マン、ジェローム・ムーシュローの日々の戦いを描いた作品なんですが、コンクリート・ジャングルならぬ本物のジャングルと化したパリ(?)で、ヒョウ柄のスーツを着た「ベンガルの虎」たる主人公が、恐竜やワニや野蛮人の攻撃を避けながら命がけの保険の勧誘を続けます…