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BDについてもっと知りたい!コミュの『Broderies(刺繍)』

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 先日、takatakata さんが紹介してくださった出版されたばかりの翻訳BD、マルジャン・サトラピの『刺繍 イラン女性が語る恋愛と結婚』(大野朗子訳、山岸智子監訳、明石書店)、読み終わりました。原題は Marjane Satrapi『Broderies』で、2003年に L'Association(アソシアシオン)から出ています。サトラピと言えば、既に邦訳のある『ペルセポリス』(全2巻、バジリコ、2005年刊)の作者であり、それに続いて今回こうやって『刺繍』が日本語になったのは、翻訳出版がある程度成功しているということでしょうか。BDファンとしてはうれしいところです。そういえば以前同じ作者の『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』を abeille さんが紹介してくださいました(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3214867&comm_id=424387)。この勢いを駆ってぜひこの作品も翻訳出版してほしいもんです。さて、それでは『刺繍』のご紹介を。
 物語の骨子は、ある午後、イランのサトラピ家に集まった様々な世代のご婦人方が女ばかりであけすけなおしゃべりに興ずるといったものです。話題にあがるのは多くの場合恋愛で、話者たち自身の体験や人づてに聞いた話がいかにも楽しげに語られます。さすがは『千一夜物語』の国ということで、そのおしゃべりの際限ないこと! ちょっとでも横やりが入ると、「話の腰を折らないでちょうだい」という具合です。『ペルセポリス』もそうでしたが、一見過度の抑圧を被っていそうに見えるイランの女性たちの逞しさとかしたたかさみたいなものが垣間見えるようで、非常に興味深い。面白いのは『刺繍』というタイトルが与えられているにもかかわらず、刺繍が行なわれているわけでも、話題に挙がっているわけでもないというところで、この言葉は比喩として用いられているようです。一つには女性たちのお茶を囲んだ長時間にわたる言葉のやりとりが、生地をうねうねと行き来する糸のようであるということなのでしょう。そして、もう一つ別に意味があるんですが、これは読んでのお楽しみということで…
 一冊の本が、定められた刻限に絞って会話の様子を記述するというスタイルは日本のマンガにはまずなさそうに思えるんですが、どうなんでしょう? こういうのは小説にはいくつかありそうで、イギリスの18世紀にテーブル・トークものの文学があったようですし、フランス文学でも19世紀末のバルベー・ドールヴィイが同様な発想の小説を書いていたりします。何にしても、女性のBD作家が目立たない中で、このような女性のリアルな(?)有様を描いた作品は貴重な存在ですよね。こういう作品がもっと増えてくると楽しいんですが… 内容以外のことにも触れておくと、絵は全て白黒で描かれていて、コマ割は一切ありません。時には1ページに1つの絵しか描かれないということもあります。エッセイ・マンガ的な趣でしょうか。あと、ページ番号が振られていませんね。特別不便ということはありませんが、不思議な感じはします。明石書店はギィ・ドゥリールの『平壌』に続いて2作目のBD出版ですが、あまりよく知られていない地域の風俗を伝える作品が続いているところが少し気になります。解説もサトラピのBD史における位置づけとかそんな感じではなく、イランの日常生活を伝える好著として評価するというスタンスだし… こういう作品しか出さんつもりか…? いやいや、そんなことはないと思いますが(笑)、せっかくBDを出してくれているので、これからも頑張っていただきたいと思います。

* 画像は表紙のみ日本語版。

コメント(8)

今朝の朝日新聞に「刺繍」の書評がのっています
ネタバレの『Broderies』のもう一つの意味についても載っていましたね。辞書引いても書いてないので、なるほどと思ったのと、こちらの女性はその逆の儀式がなかったしら?と生おぼえの知識が浮かんでしまったのですが。
オンラインで読めるようになってました。
http://book.asahi.com/review/TKY200609050261.html
BDのことに少しは触れてくれよ…とか思っちゃいました(笑)。まあ、でも書評が出るだけましですかね…
ショードヴァルさんにお借りして読ませていただきました。ありがとうございます。
タイトルの『Broderies』には辞書によると「(話の)尾ひれ、あや」といった意味もあるので、トリプルミーニングのタイトルなのではないでしょうか?
自分の体験談にしろ幼なじみの話にしろ、悪口というものは多少の脚色をつけて楽しく話してこその息抜きなので、読んだ印象は「みんな笑いをとる為にふくらませてるでしょう?」っていう感じでした。

サトラピの書くエピソードって「一人ノリツッコミ」や「三段落ち」みたいな関西人のようなイメージがあって、かなりブラックなんだけれどあまりにブラックすぎるから笑い飛ばしてしまうような性格なのか、どこか冷めた視点があるので乾いてますよね。
だからサブタイトルの『イラン女性が語る恋愛と結婚』というのにはちょっと違和感があります。
どちらかというと「処女神話の崩壊と女性の自立」みたいな感じの読後感で、その裏にある「処女じゃないと結婚しないみたいな事を言ってのける男って馬鹿だよね〜と言わないとやってられないくらい未だにそのツケを支払わされている女性達」という図も浮かんできて、最後のページのイラストがまさにそんな感じでした。
コマ割りがないせいかBDを読んでいるという感覚はなく、イラストエッセイを読んだような感じでしたが。
なるほど、なるほどー。「(話の)尾ひれ、あや」というのはいかにもな感じですね(笑)。サブタイトルの「イラン女性が語る恋愛と結婚」というはの出版社側の思惑だと思います。そういう本として売りたいみたいな… 女性作家が少ないBD界の中で、これだけ女性の本音みたいなものを出した作品というのは少ないのではないかと思うんですが、そういうところに着目して、実は他にもこういう作品もあるよというようなうれしい驚きのある解説がほしかったなあと思ってみたり…
ようやくゆっくりとはじめから終わりまで読みました。
日仏に原書もあったので、両方(笑)

broderieの意味
中学の時、作文を提出したとき、先生に
Essaie d'un peu broder par ci par la
といわれたことがあります
短すぎるパラグラフをもう少し話を膨らませて、飾り立てて、というような意味だったと思います

abeille さんのコメント見て思い出しました

しかし、読んでいて、イランの男性たちが少しかわいそうになってしまいました
ここまでコケにされなくても……
でもそれ以上に男性中心的な社会なんでしょうね

ところで、これは直接BDとは関係ないのですが、そんなに乱れているなら、そういう未婚の女性たちの相手って誰なんでしょうね?
あんまり出会いもないような気がするので、ばれないほうがおかしいと思うのですが……

しかし「ゆがんでる」とは思いました

今回面白かったので、「ペルセポリス」読んでみます
感想書き忘れてた…
ショードヴァルさんにお借りして読ませていただきました。ありがとうございます。

イラストエッセイやイラストレポは好きなので、これも楽しめました。
読んだ感想としてはabeilleが仰ってる

> 「処女じゃないと結婚しないみたいな事を言ってのける男って馬鹿だよね〜
> と言わないとやってられないくらい未だにそのツケを支払わされている女性達」

ってのがまさにぴったりですね!ペルセポリスも読まなくては。

それで、ショートバルさんに本をお返ししたいのですが、19日がどうも都合が悪そうで…。どうしましょう。。。
>Kigalisoupe さん
なるほど、「broder」ってそんな感じで使ったりもするんですね。『ペルセポリス』はさらに素晴らしいですよ。おすすめです。僕も『Poulet aux prunes(若鶏のプラム煮)』を読まないと… 日仏に置いてあるんですよね。

>のりおさん
いつでも結構ですよー。今度BD研究会にいらっしゃる時にでも持ってきてください。

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