ＢＤについてもっと知りたい！コミュの『Sasmira（サスミラ）』

　Laurent Vicomte（ロラン・ヴィコント）作『Sasmira（サスミラ）』第1巻「L'appel（呼び声）」、読了しました。1997年、Les Humanoïdes Associés（レ・ユマノイド・アソシエ）刊です。だいぶ前に Freddo さんにいただいた本ですが、ようやく読むことができました。Freddo さん、ありがとうございます！　ヴィコントと言えば、前にご紹介した『Balade au Bout du Monde （地の果てへの放浪）』（http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=4277326&comm_id=424387）の作画を担当している漫画家ですが、『サスミラ』もそれに劣らぬ素晴らしい作品です。というか絵的には明らかに上です。描かれた年代が10年以上違うので、当然と言えば当然でしょうけど…　ただ、それだけじゃなく物語もまた魅力的なんですよねー。梗概は以下の通りです。

　若き指揮者スタニスラスは、ある日街を歩いている折に、１人の老婆に呼び止められる。見ず知らずのその老婆はなぜか彼の名を知っており、彼にスカラベを模した指輪を手渡すと、詩の一節らしきものを呟いた。

「不可逆なる時は過ぎ去った
時間が終わりを告げる…
だが、汝が我が夢に去来するとき
汝の腕は登りゆく太陽より清々しく
汝の眼は眩く輝くことだろう
時間を超えて我が追憶は汝に口づけん…」

この謎めいた詩を口ずさむと、老婆はスタニスラスの腕の中で息を引きとる。スタニスラスは身寄りのない彼女を埋葬し、彼女が携えていた1枚の写真を譲り受けた。田舎風の大邸宅を後ろにし、何人かの人々が寛いだ様子で庭に立っている。身につけている衣装からして20世紀初頭だろうか。その中の1人、大木に背中をつけ、こちらを見つめている女性の視線にスタニスラスは捕えられてしまう。無意味とは知りつつ、100年近く前に生きていたであろうその女性のわずかな手がかりを求め、調査に調査を重ねるスタニスラス。ついに、その邸宅がオーヴェルニュにあることをつきとめた彼は、恋人も自分の楽団もそっちのけでオーヴェルニュへと向かう…　残された恋人ベルティーユは、スタニスラスの部屋に残された写真を目にし、驚愕する。ポーズする人々の後ろに建つ邸宅の窓にスタニスラスの姿が映っているではないか…！　言い知れぬ不安を胸にスタニスラスの後を追うベルティーユだったが、彼女を待っていたのは、廃墟と化した邸宅に過ぎず、恋人スタニスラスも無事であった。2人はその晩をその邸宅で過ごすことにする。だが、その夜、不思議なことが起きる。無人のはずの廃墟で人間の話し声が聞こえてきたのだ。それは忙しく行き来する召使たちの声だった。彼らは知らず知らずの内に過去の世界に来てしまっていたのだ…　主人の親類として振舞うスタニスラスとベルティーユ。その屋敷に集う人々の中にはあの写真の女性の姿があった…

　手間を省くためにスタニスラスに焦点を当てて要約したんですが、視点人物はどっちかって言うと、彼の恋人ベルティーユです。このベルティーユってキャラクターがなかなか魅力的なんですよー。まだ1巻だけしか出ていない様子で、この先どうなるかわからないんですが、彼女と写真の女性がどういう関係を持ってくるのかが非常に気になります。幻想文学好きとしては、現代と過去の交錯というテーマもたまらないものがあるし、続きはぜひ読みたいなー。それにしてももう10年近く続きが出てないってのはすごいですよね…　Fnac で読者の声みたいなページを見たんですが、やはり早く続きを読ませろ的な投稿が多かったです。
http://www.fnac.com/Shelf/comments_list.asp?SID=460dcde8%2D6a06%2Db5f4%2D5ba7%2Debbb5567f835&UID=165965369%2D84C2%2DF27E%2DC989%2DC6D413855BF3&AID=&Origin=mail%5F120e18ec&OrderInSession=1&TTL=310520061721&NID=%2D1&RNID=%2D1&SubjectId=1&PRID=258459