Jacques Tardi(ジャック・タルディ)による『Les Aventures Extraordinaires d’Adèle Blanc-Sec(アデル・ブラン=セックの驚くべき冒険)』の第1巻「Adèle et la Bête(アデルと怪獣)」を紹介します。以前僕の日記に書いたものですが、このコミュニティではまだ紹介していなかったので。1976年カステルマン社刊の古典的(?)バンド・デシネですね。梗概は以下の通りです。
バンド・デシネ・ノワールとでも言えばいいんでしょうか、犯罪物のBDです。日本のマンガで言えば、山田章博の『紅色魔術探偵団』とか近いかもしれません。ユーモアの洗練度とかはどうしても『紅色』の方が上だと思いますが… というか、たぶんジャック・タルディはそういう作家ではないですし。ちなみに『GUIDE FNAC』では「幻想と驚異」というジャンルに分類されています。たしかに、第1巻には恐竜が出てくるし、2巻以降のタイトルを見ると「エッフェル塔の悪魔」、「気狂い科学者(マッド・サイエンティストの方がいいかな…)」、「錯乱のミイラたち」、「サラマンドラの秘密」、「頭が二つある溺死者」、「怪物たちのすべて(誤訳かも… 仏語では Tous des Monstres!)」、「深淵の神秘」といかにも幻想的です。本書「アデルと怪獣」について言えば、蒸気機関車が走り、レトロな車と辻馬車が往来に同居する20世紀初頭のパリを舞台に、恐竜が現われ、殺人が起こり、奇妙な飛行機やギロチンといった何やら「独身者の機械」めいたものが登場し…と幻想文学好きの心をくすぐる設定だと言えます。めちゃくちゃうまいんだけど、怪しげな(と言っていいんだろうか…)雰囲気を醸成しているデッサンが魅力です。