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BDについてもっと知りたい!コミュの「マンガ・ヨーロッパ」コミュ・「BDについてもっと知りたい!」コミュ合同交流会報告

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日時:2007年11月18日 日曜日 13時30分〜17時00分

場所:新宿区・東京日仏学院 301号室

参加者:abeille さん、cu39さん、Father Uさん、Freddo さん、Gurihiruさん、midor0ma さん、Yuc さん、ZINさん、アキタさん、阿津井照さん、ショードヴァル、菫子さん、ちまさん、椿屋さん、夏゛さん、ぶた王子さん、ユータさん、他コミュニティ不参加者7名(計24名、アルファベット順、続いて五十音順)

ゲスト:サヴェリオ・テヌータさん(イタリア人漫画作家/インターナショナル・コミック・スクール[在イタリア]講師)、ジョルジャさん(同校教務課長)、アレッシオくん(同校学生)、トンマーゾくん(同校学生)

概要:
13:30〜
参加者の自己紹介。

14:00〜
ゲストの自己紹介。まず、今回の来日の目的は、ローマに本校があるインターナショナル・コミック・スクールに在籍する優秀な学生の、日本のマンガ専門学校への短期留学であるとのこと。同校は3年制で、この奨学金を受けるためには3年間連続で満点を取り続けねばならず、したがって非常に優秀な学生にしか与えられない由。留学先には、現時点で、東京とキューバがあり、学校側が留学先を決めるということです。

アレッシオくん〜フィレンツェ校の学生。今回の来日でマンガや日本文化について学べればと考えている。

トンマーゾくん〜ローマ校の学生。アメコミ・スタイルの絵を勉強。日本のマンガはほとんど読んだことがないが、それだけに興味がある。

テヌータさん〜数年前までアメリカの市場で仕事をし、現在はフランスの市場で活動している。本として出版されているのは Les Humanoïdes Associés(レ・ユマノイド・アソシエ)から出版されている『Légendes des nuées écarlates(紅い雲の伝説)』の1冊。売れ行きは好調で、出版社に在庫がほとんどない状況。テヌータさん自身も手元に3冊しか持っていないとのこと。大の日本好きで、ご自宅のインテリアも日本風にしているそうです(笑)。

ジョルジャさん〜テヌータさんの奥さんで、インターナショナル・コミック・スクールの教務課長を務められているとのこと。展覧会や留学など文化的なイベントの企画もなさっているそうです。一方で、midor0ma さんとイタリアの漫画家を紹介するエージェントを設立し、そちらの活動もなさっているとのこと。

midor0ma さん〜ローマに28年滞在。元々マンガ好きで、イタリアに行ってからも当地の漫画に関心を持ち、ちょうど1990年代に『モーニング』が海外漫画の紹介を積極的に推し進めていたこともあり、イタリアの作家のエージェントを務められたとのこと。現在でも『MANDALA』などを通じて、イタリアの作家の紹介をなさっています。テヌータさん、ジョルジャさんと同じくインターナショナル・コミック・スクールに勤めていらっしゃいます。なお、midor0ma さんには今回の通訳を務めていただきました。midor0ma さん、お疲れさまでした!

14:15〜
以下、ゲストの話。全体の構成は、?現在のイタリアの漫画事情をジョルジャさんが解説し、続いて、?テヌータさんがご自身の作品を解説するとともに主にアメコミとBDの作画の違いを説明、最後に、?学生の2人が、漫画とのかかわりや、今後の見通しなどについて語るという感じです。参加者からの質問に対する回答も組み込みつつ、以下に要約します。特に断りませんが、midor0ma さんによる補足も含まれています。

?イタリアの漫画事情(ジョルジャさん)
 現在、イタリア国内の漫画は非常に厳しい状況にある。漫画で成功するためにはイタリアに留まるのではなく、海外―主にアメリカとフランス―の市場に参入しなければならない。海外で成功して初めてイタリアでの出版が可能になる。

 イタリア国内の漫画市場で成功を収めているのは、大手のボネッリ社とディズニー・イタリア、それからオルタナティヴな漫画を出版しているココニノ・プレスぐらいである。ボネッリ社は、キオスクを中心にコレクター向けの漫画を出版している会社で、原作、作画、ペン入れ、色付けなど役割分担がはっきりと決まったチーム制作をしており、その点でアメコミとよく似ている。雑誌から単行本という流れを取らず、単行本を中心に出版。この出版社から出されているタイプの本は、特にイタリアン・クラシックと呼ばれている。若い世代から見れば、旧態依然とした漫画制作を続けているという印象があるとのこと(テヌータさん曰く、ボネッリ読者は高齢化しており、それに伴って徐々にイタリア漫画界の革新がなされるのではないかとのこと…笑)。

 ディズニー・イタリアでは、ディズニー・アカデミーという専門学校の卒業生が漫画を出版しており、キャラクターを中心とした漫画制作を行なっている。既存のキャラクターの使用はもちろんだが、新たなキャラクターの開拓にも熱心で、現在は『Witch(魔女)』という作品が人気である由。

 この2つの大出版社以外に多くの小出版社が存在しているが、中でもしっかりとした業績を残しているのが、ココニノ・プレスである。かつて『モーニング』誌上に連載され、単行本にもなった『ユーリ』という漫画で日本でも知られているイゴルトがアート・ディレクターを務めている。4、5年前にできた出版社で、イタリアの作家だけでなく、フランス、スペイン、日本の作家の作品も出版している。

 このような状況を反映して、インターナショナル・コミック・スクールでも、最終学年の3年次に、イタリアン・クラシック、アメリカン・コミックス、ヨーロッパ・コミックスの3つのコースが選択できるようになっている。

 雑誌については、現在はほとんど存在していない。70年代の終わりから5年間くらいが漫画雑誌の全盛期で、当時最大で7つの雑誌が出版されていた。雑誌が定着しなかったことには複数の原因が考えられるが、キャラクター中心のアメコミや日本マンガが紹介されはじめ、それらと競争できなかったこと、月刊雑誌がほとんどで、各作家に割り当てられたページ数も少なかったため、読者の関心を留めることができなかったこと、作品の大部分がカラーで、原稿料が高く、そのため出版社の経営を逼迫してしまったことなどが挙げられる。このように雑誌が消失してしまったことで、新人が作品を発表する場がなくなり、それがイタリア漫画界の停滞をさらに押し進めることになっている。唯一、エウラ社という出版社が出している『スコルピオ』という雑誌を通じて、新人も作品の発表をすることができるが、元々この雑誌は1970年代、政情が不安定なアルゼンチンを逃れ、イタリアに活躍の場を求めたアルゼンチン作家たちに門戸を開いていた雑誌で、そのため、出版社の要請する白黒のスタイルに合わせねばならず、原稿料も安いというデメリットもある。ただ、『スコルピオ』が新人作家にとって修行の場として機能していることは事実で、とりわけ日本のアニメを見て育った新しい世代が、イタリアの漫画にわずかではあれ、新風を注いでおり、これが将来のイタリア漫画界に何らかの寄与を与える可能性はある。

 女性作家の進出はまだまだ十分に進んではいないが、原作者と作画家では、まだ作画家の方が状況がいいと言える。既存の大手出版社では、大御所原作者が作画家の指定をするために、女性作家、新人作家にチャンスが回ってくることは少ない。

 漫画の販売は、漫画専門店かキオスクでなされており、一般の書店では手に入らない。漫画専門店の数はイタリア全土で1,000店弱である。配本を行なっているのは、出版事業も行なっているスター・コミックスと取次業務専門のペガサスで、この2社はキオスクへの配本も請け負っている。キオスクに配本するためには少なくとも1万5,000の発行部数が必要で、したがってキオスクで売られるのはボネッリ社とディズニー・イタリア、エウラ社の作品くらいである。それ以外の小出版社については、主に地元密着の配本業者に委託したり、コミック・フェアで出版したりしている。

 アメリカなどでは各社間の熾烈な競争が市場を活性化させているが、イタリアにはそういう状況がない。かつて、1990年頃、ボネッリ社が非常に多くのタイトルを出版することがあったが、それはキオスクで販売され、非常な人気を博した日本マンガの進出に対する恐れから、キオスクの市場を独占しようとする試みであり、積極的な意義を有するものではなかった。

 ちなみに、イタリアにおける日本マンガの出版は、日本アニメの放映と密接なつながりを持っている。1970年代、イタリア国営放送が『UFOロボ グレンダイザー』を放映したのがその始まりで、『マジンガーZ』についてはその後放映される。これらの作品を見た子どもたちは、複雑で感情移入できるストーリーに熱狂。その後放映される『ベルサイユのばら』や『キャンディ・キャンディ』などとともに、子どもだけでなく、中高生をも虜にしていく。当時、漫画を掲載する老舗新聞の『コリエーレ・デイ・ピッコリ』の経営が逼迫しており、打開策として、日本アニメのフィルム・ブックを出版。これがマンガ出版のさきがけとなる。その後、アニメは民放でも放映されるようになり、かなり多くの作品がイタリアに紹介されることに。マンガ出版は当初、放映されたアニメに関連したものに限られていたが、徐々にそうした状況も変わっていき、現在ではアニメと関係なく、マンガ自体が翻訳されるようになっている。マンガは若者を中心に広く認知されており、コミック・スクールにもマンガのスタイルに影響を受けた学生が多くいるとのこと。

 オンライン・コミックスについてはまだあまり発展していない。WEB上で公開されていた漫画が紙ベースで出版されるというケースはあった。

15:15〜
休憩。

15:30〜
?作品解説、およびアメコミとBDにおける作画の違いの説明(テヌータさん)
 数年前までアメリカの『ヘビー・メタル』誌で作品を発表。元々関心を持っていたのはフランスのユマノイド系の作家―メビウス、エンキ・ビラル・ドゥリュイエなど―で、彼らのようにストーリーも作画も自分で行なう作家になりたかった。アメコミでは、視覚的にインパクトのあるキャラクターを求められ、キャラクターを効果的に見せるために、アップが多い。一方、フランスでは、出版社からロング・ショットを多用して描いてくれという要請が出る。アメリカとフランス、両国の異なる市場を体験することで、そのような相違について勉強できたのは自分にとってプラスになった。現在は、ヨーロッパ漫画の特長とアメコミの特長を融合させた作品の制作を心がけている。

 『紅い雲の伝説』は、友人と一緒にフランスの出版社に持ち込もうと考えていた企画が元になっている。結局、1人で制作することになり、設定は大幅に変更されたのだが、目の見えない侍というアイディアだけは残っている。舞台は日本で、江戸時代くらいを想定しているが、曖昧なままにしている。制作に当たって、資料が必要な部分もあったのだが、制作開始当初は十分な時間がなく、十分な考証を行なうことができなかった。登場人物の感情と場の雰囲気をフランスの読者に伝えることにとりわけ腐心している。今読み直してみると、細部の描写―衣服など―におかしな部分が見受けられるが、現在準備中の第2巻では、そういった部分に対する配慮も十分行なっている。

 元々、日本の文化に興味があり、それが作品中にも反映されている。作品の中に「le loup d’Izuna(飯綱の狼)」という怪物が出てくるが、これはイタリア語にも訳されている高山和雄の『奇想天覚』が霊感源になっており、本来「飯綱の狐」となっているものを宮崎駿の『もののけ姫』の影響などもあって、狼に変えたものである。作品全体の雰囲気はデヴィッド・クローネンバーグの映画の影響を受けている。

 この作品はフランスの出版社に持ち込んだことがきっかけになって、出版までこぎつけることができた。一般的に持ち込みを行なう際には、作品のあらすじと作品を作る上で参照したもの、完成原稿4、5枚をつけることになっている。完成原稿については特にどこの部分を持っていかねばならないという決まりはないが、個人的には物語への関心を持たせる上で、冒頭部分が重要だと考えている。例えば、『紅い雲の伝説』の場合、冒頭で文楽を演じるシーンが描かれているのだが、この文楽の内容が物語全体を要約する伝説のような形になっている。ここで全体が提示され、読者に何が起きているのかという関心を引き起こし、その後を読むことで、最初に提示された伝説と事実の間で何が異なっているのかが徐々に明らかになるようになっている。一般的なBDの場合、ページ数が決められており(賞味46ページほど)、その中で冒頭のセット・アップが果たす役割は重要である。

 この作品を持ち込んだ時、最初は編集者が満足してくれず、実際に契約にこぎつけるまでに8ヶ月もかかってしまった。まずは、色付けがよくないという話になり、ペン入れをしただけの状態で再度提出したが、それも却下された。カラーリストとインカーがそれぞれ別に付くことになったのだが、幸い、2人とも忙しく、その間、作品に微調整を加えて、再提出することで、最終的には自分1人で全てを行なうことになった。フランスでは、新人が作品を発表する場合、原作か作画のどちらかにデビュー済のフランス人を付けることが通例だが、例外的に外国人でありながら、自分1人で全てを行なえることになった。

 苦労した甲斐があって、作品がフランスでとある新人賞を受賞。売れ行きも上々で、出版社に在庫がほとんどない状況である。批判の中には、物語に新味がないというものもあったが、コマ割であるとか、物語の語り方については高く評価されている。

 作品の制作は非常に多くの過程を経ており、原稿を1枚完成させるのに1週間かかる。1月で5枚という勘定なので、1冊を完成させるためには非常に多くの時間がかかることになる。今後は絵だけでなく、物語にも重点を置くつもりである。

 作品の中で使われている文字は、一見手描き風だが、フォントを使用している。原稿段階ではイタリア語だが、出版はフランスなので、訳者がフランス語に直したものを入力している。作品の中では役割にしたがって、3つのフォントを使い分けている。

16:30〜
?留学生の話
■トンマーゾくん。
 最初はインテリア・デザイナーの勉強をしていたが、ディズニーで働いていたこともある教師から、絵の良さを活かすように、漫画やグラフィックの道に進むことを勧めるられた。元々ナポリ出身だが、ナポリには漫画の学校がないので、ローマを訪れ、現在のコミック・スクールへ。3年の時点でヨーロッパ・コミックを選択するも、描いている内にアメコミ・スタイルの方が合っていることを実感。毎年10月にイタリアのルッカでコミック・フェスティヴァルがあるのだが、そこで、アメコミの出版社DCと接触。契約が決まっているわけではないが、今後作品を見てもらうことに。同時に、フランスやイタリアでも作品を発表すべくいろいろと活動をしているところである。

■アレッシオくん
 元々は漫画を読むことに関心を持っていた。イタリアの場合、読者の関心はある程度固定的で、ディズニーの読者はディズニー作品のみ、ボネッリ社の読者はボネッリのみ読むということになりがちだが、ジャンルに関係なく多くの漫画を読んできたとのこと。美術学校に進学し、趣味で漫画を描き始める。その当時は鳥山明に影響を受けた作風だったが、一時の関心に留まる。その後再び漫画を描き始め、いろいろなコンクールに投稿するようになる。原作を書いてくれる友人などがいなかったので、原作も作画も自分で行なうことに。1年間学費が無料になるコンクールがあり、それに受かって、インターナショナル・コミック・スクールへ。アングレーム国際漫画フェスティヴァルの新人コンクールで3位を受賞したこともあるとのこと。皮肉を混ぜたユーモア漫画が得意で、政治や宗教のグロテスクさを剔抉するような主題を扱っている。絵のタッチとしては60年代のアンダーグラウンド・コミック風を好んで用いている。

 インターナショナル・コミック・スクールは、創設が1978年。ローマ、フィレンツェを筆頭にイタリア国内に複数の校舎がある。中でもローマ校が最大で、400人の生徒を抱えているとのこと。ただし、全てが漫画を勉強しているということではなく、アニメーション、脚本、グラフィックなど、様々なコースが設けられている。創立当初はイタリア漫画市場も活況を呈しており、国内に向けて人材を送り出すことを目標としていたが、市場の縮小に伴い、アメリカやフランス市場を目指す人材も育成することになったとのこと。

17:00〜
片付け。終了。

コメント(2)

ジョードヴァルさん、微細に渡るレポート、ありがとうございました。

イタリアのマンガの画像があるともっとわかりやすかったでしょうね。
来年のために何か考えましょうか。
是非、毎年一回11月の恒例会にしましょうね。
>midor0ma さん
先日はお疲れさまでした! ぜひ来年もやりたいですね! 既に今年の集まりからしてすばらしいものでしたが、毎年どんどんよくしていきたいですね。僕もこれからイタリア漫画の勉強をしていろいろと考えてみます。またご相談しますね。

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