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BDについてもっと知りたい!コミュの【インタヴュー】マルジャン・サトラピ その1  part 2

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「BD Sélection(BDセレクション)」というサイトに載せられた2002年、BD版『ペルセポリス』をめぐるインタヴューの続きです。
http://www.bdselection.com/php/?rub=page_dos&id_dossier=51
前半はこちら↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=24323491&comm_id=424387
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3.児童書の作者、マルジャン

V:子ども向きの本も何冊か出版してらっしゃいますね。
S:ええ。Nathan(ナタン)社から2冊と『Sagesse et Malices de la Perse(ペルシアの知恵とからかい)』という本を Albin Michel(アルバン・ミッシェル)社から出してるわ。でも、それは挿絵だけね。ナタンからは『Ulysse au pays des fous(狂人の国のユリシーズ)』って本を出していて、Jean-Pierre Duffour(ジャン=ピエール・デュフール)が挿絵を描いてくれているわ。『Les Monstres n’aiment pas la lune(モンスターはお月さまが嫌い)』って本もあるんだけど、これは全部自分で作った作品よ。それから、今、別の本を準備中なの。やっぱりナタンからで、『Hachda le dragon(竜のアシュダ)』って本よ。2002年の2月に出るはずだわ。ナタンからはもう1冊その年の内に出す予定よ。実は、子ども向けの話って今まですごくたくさん書きためてあったのね。ようやく今、それを形にすることができてるって感じ。

V:それは『ペルセポリス』と受賞のおかげ?
S:ううん。それは関係ないわ。ナタンが最初の2冊の本の契約をしてくれた時、まだ『ペルセポリス』は出てなかった。2000年10月のことで、『ペルセポリス』が出たのは翌月よ。『ペルセポリス』の1巻は描き終わっていて、出版されることがわかっていたから、気は楽だったわ。以前は、出版社に行く前に、本を開いてはこう言ってたの。「あーあ、こんなのクズだわ…」って。卑屈になって自分のことをクズ扱いしている人間に安心して仕事を任せられるわけがないじゃない? これって出版社の悪意によって生まれたシニズムとかそういうことじゃないのね。そうじゃなくて、出版社に持ち込みにいくような人間は、あらかじめ自分に自信を持ってなきゃいけないのよ。
私がナタンに行った時、大して期待してなかったのに、本が出版されることになっていたから、気楽だった。ナタンの担当者はきちんと私のお話を読んでくれて、それが彼らの気に入って、はい出版ってことになったわけ。それにジャン=ピエール・デュフールと作った本が『ル・モンド』で取り上げられたから、彼らはさらに信用してくれて、今では私が何かを提案すると丁寧に読み込んでくれて、大抵はうまくいくわ。私もね、ひどいものは提案しないように注意はしてるの。私って、決して多作じゃないのね。自分自身に厳しいのよ。1つのお話を人に見せる前に40回も書き直すことだってあるわよ。

V:バンド・デシネ(漫画)を描くことで4年間を無駄にしたという気持ちはないですか?
S:まさか。今ではすごく気に入ってるのよ。前はね、BDって頭の弱い人とかいかれた奴とか、コマからコマへと次々と絵を描くのが好きな小さな子ども向けのものだと思ってたわ。私ね、長く続くことがすごく好きなの。バンド・デシネ(漫画)を描くのもすごく労力と集中力が要るんだけど、だからこそ、私、ものすごく気に入ってるの。来年はもちろん『ペルセポリス』の第3巻が出るんだけど、それとは別の本がやっぱりラソシアシオンから出るわ。そして、第4巻が出た後もバンド・デシネ(漫画)を描き続けるつもりよ。また私の生まれた国に関係がある話かもしれないし、そうじゃないかもしれない。今のところは未定ね。

4.フランスのペルシア人、マルジャン・サトラピ

V:あなたは今現在まだイラン人ですか? それともフランス国籍を取得なさったんですか?
S:私ね、イランに帰る度に熱狂的なフランス愛国主義者になるのよ。でも、フランスにいる時はイラン国粋主義者ね。率直な話、どちらでもあるのよ。フランスにやって来て、運良く両腕を広げて歓迎してくれる人々に出会うことができた。彼らは興味津々で、私のことにとても関心を持ってくれたわ。私の大親友たちは今ではフランスにいて、彼らと一緒に仕事をするようになってもう7年になる… つまり、フランスは私の国なのよ。そこで起こっていることは全て私に関係があるの。
今は私、イラン人よ。もしかしたらいつか二重国籍を取得することになるかもしれない。でも、変わらないことだっていくつかあるわよね。私の肌の色は変わらないでしょう? 髪の毛だって黒いまま。フランスになくてイランにあるものだってあるのよ。私はやっぱり2つの国の間にいるのよね。オーストリアには4年間いたけど、自分の国と思ったことなんて一度もなかったわ。
1998年のワールド・カップの時に信じられないくらい素敵なことが起こったの。私はイランから戻って来ていたんだけど、なんにも知らなかったの。試合も見てなかった。でね、決勝戦の夜に友だちの1人が電話をかけてきて言ったの。「勝ったわよー!」って。私、考えたわ。これは素敵なことね、彼女は私を違う人種だと思ってないんだって。書類上は私と彼女は違う国籍だとしても、彼女にとってこれは私たちの勝利なのよ。私も同じように感じたわ。

V:イランのご家族は健在ですか?
S:もう両親しかいないわ。母方の親類はほとんどアメリカにいるし、父方はロシアよ。共産主義対帝国主義ね。

V:なぜご両親はイランに留まっているのでしょう?
S:あのね、30歳までに大したことを成しとげてなければ、出立するのも簡単だわ。諸々の事件が起きた時、父は既にイランで何年間も技師をしていた。地位があったのよ。それに彼はいつもこんな風に考えていたの。戦争が終わったら国を立て直す人が必要だ。多かれ少なかれ何がしかのものを国に負っているんだからって。私はあまりに若かったから、国を去らなければならなかった。でも、父は違ったわ。それにアイデンティティ・クライシスの問題だってある。自分の国では立派な人物であったとしても、よそに行ってしまえば、何者でもなくなってしまう… 既に地位を手に入れていれば、ゼロから始めるのは難しいものよ。私はまだイランで何も始めていなかった。だから、ゼロから出発することができたの。両親はイランに残ったわ。彼らはそこで働き、国を愛している。そこで物事が発展していくのを見るのがうれしいのよ。

V:ご両親はあなたに会いに来ることができますか?
S:もちろん。定期的に来てるわ。

V:あなたがイランに行くこともある?
S:2000年までは定期的に戻っていたわ。今はたくさん仕事があるし、彼らにフランスに来てもらう方がいいわね。そうすれば、彼らが向こうじゃ経験できないような楽しみを味わってもらえるでしょ? 例えば、母だったら、頭にスカーフを巻かずに散歩することができるわ。私はイランのことはもう知ってる。少なくとも19年間はそこで暮らしたんですもの。それに帰りたいと思ったらいつでも帰れるわ。事態も少しずつよくなってきているし。人々は高い政治意識を持っていて、若者たちは物事が変化するのを望んでいる。きっとこのまま発展し続けるはずよ。最近の社会情勢において問題になっている事件を前に、イランが採った立場がその証拠だわ。周知のようにそれはさほど保守主義的でもなければ、原理主義的でもなかった。昔に比べれば大きな変化だし、今後に期待が持てるわ。

V:フランス人は寛大だと思いますか?
S:すごく寛大よ! 以前、「フランスには8%の極右勢力が存在している」ってよく聞かされたわ。それはそうかもしれない。でも、残りの92%はそうじゃないのよ。それに8%のバカって世界中どこの国に行ってもいるもんだわ。何もフランスにだけいるわけじゃない。フランスは亡命の地、歓待の地だって言われるけど、それは嘘じゃないわね。フランスにはある種の好奇心がある。私、旅をするとその国のテレビ番組を見るのね。外国とか民族とか風習とか異文化についてのドキュメンタリーの数を比較してごらんなさい。例えば、フランスとアメリカよ。あるいはイタリアのテレビ番組でもいいわ。それが証拠よ。どうしてフランスのテレビはそういったものを放映するのかしら? それに興味を持ってる人たちがいるからでしょ! 私は一度だって差別されていると感じたことはないわ。私の国にだって、私に汚い言葉を浴びせる人たちはいたわ。そういう奴らはバカなのよ。バカは国際的な現象なの! そういうことを考えると、概してフランス人の態度って寛大なものだわ。

5.お気に入りの作品とその理念ゆえのラソシアシオンに対する忠誠

V:これで最後になりますが、現代のBDの中であなたのお気に入りの作品は何でしょう?
S:「マルジャンと仲間たち」的になることは否めないわね。でも、当然ながら私が最も評価するのは私の友人たちよ。例えば、クリストフ・ブランやダヴィッド・ベー、Emmanuel Guibert(エマニュエル・ギベール)や Joann Sfar(ジョアン・スファール)、エミール・ブラヴォの仕事… François Ayrolles(フランソワ・エロール)の『Incertain Silence(ありえざる沈黙)』を読んだんだけど、このBD、バスター・キートンを描いていて、ほんと素晴らしいわ。ラソシアシオンから出てる Vincent Sardon(ヴァンサン・サルドン)の本も大好きよ。

V:あなたはこれからもラソシアシオンに忠実なんでしょうか?
S:私、元々忠実な女よ。ラソシアシオンは私を全面的に信用してくれたわ。彼らは確固とした世界観を持っていて、それは私のとぴったり一致してるの。そりゃ本を売るのも大事よね… でも、彼らはそんなこと一度も私に言ったことがないわ。「紙代のことがあるから46ページか54ページの本にしてくれなきゃ困る」とか。自分の本のページ数なんだから自分で決めるわ。ラソシアシオンはちょっとくらいのお金を失うことなんて気にしないし、最大限の利益を得るために小銭を数えるなんてこともしないの。これだけでも既に私にはすごいことよ。それに彼らの本はグラフィック的にもすごく美しいでしょ。私の本はよく売れたからそれでお金を稼ぐこともできたわ。ラソシアシオンで働いている人たちはみんな私の友達よ。すっごく仲がいいの。アングレームでもサイン会を無理やりやらされることなんてなかったし、何も強制したりしない、したい時にするのよ。こんな自由を他のどの出版社が与えてくれるのかしら? だから、L’Asso(ラソ * ラソシアシオンの愛称)が存在する限り、彼らが私の企画を望む限り、私はそこに留まるわ。事態に変化がなければ、ラソシアシオンはこのままずっと存続するでしょうし、そうすれば私もずっとラソシアシオンと一緒にいるわ。

コメント(3)

ショードヴァルさん

力作をどうもありがとう。
マルジャンの声が聞こえてくるみたい、彼女の印象的な横顔まで浮かんできてしまいました。

ストーリテラーとして能力のある人が、絵の才能にも恵まれてBDをその表現手段に使ってるんだって、よくわかりますね。

インタビューの中で、出生国を離れて暮らす人間が、フランスで何を感じているかと聞かれた時、「どちらでも」ある人間と答える自由さを私も感じることがあります。こういう感覚を共有する人が増えると、国籍や人種は大きな問題ではなくなる日も来るのかもしれないと思わされます。
フランス語で作品を発表する限り、フランコフォン(フランス語での表現者)としてフランス人と同列になる国、アカデミーフランセーズにだって入れる国、その門の広さは認めてもいいと思いますし、これから、すべての表現の世界で活躍する人は多かれ少なかれ、フランス以外の国との関係があるはずですよ。

日本に来日した時に、いい聞き手と出会ってのインタビューが読めるといいですね。あとは、やっぱりイランのことが少し心配、ロシアとどうなっていくのかしら?



>Yuc さん
>きららむし(悠々)さん
ありがとうございます! 実際、いいインタヴューですよね。BD作家にはおしゃべり好きな人が多いのか、ダヴィッド・ベーのインタヴュー(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=23580197&comm_id=424387、http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=23580751&comm_id=424387)もそうでしたが、読んでて非常に面白いです。サトラピのインタヴューはまだまだあるので、せっかく映画が公開されることですし、どこかからケチがつかない限りは(笑)訳していきたいと思います。映画の公開に合わせて日本人によるインタヴューも読めるといいですよね。

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