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BDについてもっと知りたい!コミュの2007年第4回BD研究会実施報告

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日時:2007年8月5日 日曜日 13時30分〜16時50分

場所:新宿区・東京日仏学院 301号室

参加者:abeille さん、cu39 さん、Father Uさん、inorik さん、Mr.T さん、takatakata さん、tanatos さん、witness さん、アキタさん、あやさきんぎょさん、シーさん、ショードヴァル、のりおさん、ぶた王子さん、ゆうじ(山本)さん、りんちゃんさん、他コミュニティ不参加者4名(計20名、アルファベット順、続いて五十音順)

概要:
13 :30〜
雑談しながら持ち寄ったBDに目を通したり。

14 :00〜
自己紹介。

14:40〜
inorik さんによる発表。タイトルは『フランスにおける若者マンガ読者層とBD』。

フランスにおける日本マンガ受容の変遷、また、マンガの消費者とは主として若者であったわけだが、彼らとフランスに元々存在していた漫画BDの関係、主として以上2点について考察する試み。発表の骨子を簡単に掲げておくと、

はじめに
1.フランスにおけるマンガ受容の歴史
2.マンガの主な消費者層のフランス人若者
3.日本と比較したフランスBD市場における若者
結論

という感じ。詳細は以下のとおり。

1.フランスにおいて日本のマンガは、1994年には年間の新刊刊行点数が14点を数えるに過ぎなかったが、2000年以降爆発的に増加し、2005年には1,000点にも及ぶ。フランスにおけるマンガ受容の歴史を振り返ってみると、大きく3つの時代にわけることができる。まずは、『UFOロボグレンダイザー』のフランス語版『GOLDRACK(ゴルドラック)』に端を発する日本アニメ移入期(1978〜1986年)。元々は人気テレビ番組の穴埋めとしてスタートしたこの作品は、その粗雑性と暴力性で親の反感を買う一方で、子どもたちからは熱烈な共感を得る。次に、テレビ局の民営化を背景にスタートし、後に絶大な人気を得ることになるテレビ番組「クラブドロテ」を中心にアニメ、マンガの紹介が進む時代(1987〜1997年)。この番組は毎水曜日、日中の7時間ほどの放映時間の中でアニメを放映する時間を設けており、『ドラゴンボール』もこの番組の中で放映された。アニメ人気から原作のマンガが読まれるようになるのがこの時代で、『ドラゴンボール』は各巻が平均14万部売れ、日本語版でさえ2万部売れたと言われている。また、この時期はマンガがアニメの補助的な読み物から独立した読み物へと移行するのを準備する時代でもあった。その端緒となったのが1994年に出版される『電影少女』のフランス語版で、アニメの放映とは関係なく出版されたにもかかわらず、大きな成功を収める。その成功の背景には、フランスの若者の間におけるマンガに関するリテラシーの定着、ビデオ・ゲームの普及、思春期の若者をテーマにした作品がそれまで存在していなかったことなどがある。最後に、2000年前後から始まるマンガを独立した読み物として消費する時代(1998年〜)。現在にもつながるこの時期には、アニメと関係なくマンガを消費することは常識化しており、読者はインターネットなどを通じて、多くの情報を手に入れることができている。

2.フランスにおける日本マンガの主な消費者は16歳から30歳の間にほぼ限定される若者層である。2004年度にフランスで最も売れたマンガは、『銃夢 Last Order』第3巻、第4巻、『Naruto』第9巻〜第14巻、『らぶヒナ』第13巻、第14巻であり、よく売れた作品が消費者の傾向を如実に示している。

3.日本では1959年に『週刊少年マガジン』、『週刊少年サンデー』が創刊されて以来、続々と一般雑誌が週刊化していく。これはベビーブーム世代の中学校への入学と同時期であり、今後、彼らの成長に合わせるかのように、雑誌が多様化していく。一方、フランスの場合、20世紀初頭の新聞に掲載されたBDから第2次世界大戦前後にそれぞれ創刊し、子どもたちの間で絶大な人気を誇る『Spirou(スピルー)』、『Tintin(タンタン)』を経て、1960年代から1970年代にかけて、日本とほぼ同時期に若者向けの雑誌(1959年の『Pilote(ピロット)』、1964年の『HARAKIRI(ハラキリ)』、1975年の『Metal Hurlant(メタル・ユルラン)』など)が創刊される。しかし、その変遷は日本の雑誌とは異なった道を辿っている。子ども向けの作品の規制をはかる法律の存在もあり、これらの雑誌ははっきりと大人向けの雑誌となり、子ども向けBDと大人向けBDの二極分化が起きてしまい、両者の間に存在する思春期の若者をターゲットとする作品の受け皿がなくなってしまう。これは1つの雑誌における変遷を考えてみた場合にも言えることで、例えば、『Pilote(ピロット)』の1959年の創刊第1号と1989年の廃刊号を比較してみると、前者は比較的低年齢の読者層も射程に収めることを意識した装丁だが、後者は大人向けとしか考えようがない作品が表紙を飾っている。そもそも編集方針にしても、日本の『週刊少年ジャンプ』がアンケートに基づき、読者のニーズを作品内容に反映させ、読者の期待に適った雑誌作りを目指していったのに対して、『Pilote(ピロット)』はそれ以前にはフランスの雑誌にも存在していたアンケートを「商業的な検閲」と敬遠し、より作家性を重視した雑誌作りをしており、その結果、読者のニーズを必ずしも反映したわけではない、作者が考える読者が読みたい作品が生み出されることになったと考えられる。その後、乱立する雑誌の創刊でそれぞれの雑誌の差異化が困難になったこと、テレビの登場、そしてアルバム版型(フルカラーのハードカバー版)の主流化に伴い、多くのBD雑誌が80年代末には消失する。以後BDの刊行は雑誌という定期的刊行物から、より多数の読者を想定できるアルバムにその発表の場を移行していくことになる。

日本マンガの成功の一因は、読者のニーズに答えようとする作品作り、BDがターゲットとしてこなかった思春期の若者をターゲットにした作品の存在にあると思われる。

15:10〜
休憩。

15:40〜
takatakata さんによる補足。

 2006年度のデータ。フランスにおけるBDを含めた漫画の刊行点数約3,000点の内、日本マンガが約1,000点を占めている。割合としては、95年には全体の10%を占めているに過ぎなかったが、2006年には35%に。売上げ部数的にも全体の34%を占めている。2006年度の売上げトップ10に入る作品は初版にしてほぼ5万部を刷っており、人気のある作品についてはさらに多くの部数が刷られている(『Naruto』13万部、『鋼の錬金術師』8万部)。フランスの漫画売上げベスト50の内、19が日本のマンガで、その内17が『Naruto』とのこと。『Naruto』はフランスのマンガ市場で非常な人気を誇っているわけだが、この作品だけで、日本マンガの売上げの17%を占めている。ちなみに『ドラゴンボール』は9%とのこと。
 日本マンガの影響について。絵柄だけでなく、マンガ制作のシステムがフランスBD界に影響を与えつつある。読者に対するアンケートを行なったり、サイト上で制作過程を公開し、読者の意見を取りいれたりしているものもある。刊行ペースについても従来の1年に1冊、あるいは2、3年に1冊から、それほど多いページ数でないにしても数ヶ月に1冊出すということも。版型についても、従来はA4版、48ページというのが基本だったが、現在ではかなり自由な版型、ページ数による出版が目立ってきている。

16:10〜
質疑応答。
フランスにおける日本マンガの中古市場について、BDの流通について、BDの二極分化(子ども向けと大人向け)の原因について、漫画を規制する法律についてなど。

16:50
終了。片付け。

* 2006年の第6回BD研究会が今回の内容と関連する内容を扱っています。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=9838563&comm_id=424387
ちなみに日本アニメ・マンガ(特にアニメ)のフランスへの移入については清谷信一さんの『Le OTAKU(ル・オタク)―フランスおたく事情』(KKベストセラーズ、1998年)という本に詳しく紹介されています。

コメント(3)

レポートありがとうございます!
ご無沙汰しております、オランダのMarkとMaaikeの友達参加したミントです。今回、かなり気になっていたのですが、仕事で参加できず。。。

詳細なレポートありがとうございます。アンケートの実施のことなど、興味深いです。
HARAKIRIってタイトルにはドキリとしましたが、64年では日本には関係なさそうですね。

またぜひ参加したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(お借りしている本もあったり…)
たいへん明快なレポートありがとうございます。
興味あるテーマだったのに参加できず、残念に思ってましたが、
内容を知ることができて嬉しいです。
takatakataさんの補足も効いてますね!

参加された方々のご意見も知りたいです。…
BD雑誌が消失した理由の件ですが、若干文章を訂正しました。
1.雑誌の乱立による雑誌間の差異化の困難
2.テレビの登場
3.アルバム版型の主流化
の3点が理由であるとの指摘をいただきました。

>ミントさん
書き込みありがとうございます。『HARAKIRI』については貴田奈津子さんの「9番目のアート バンド・デシネ案内」というかつて『ふらんす』に載せられた連載の2回目に詳しく紹介されています。「Journal bête et méchant(馬鹿で意地悪な雑誌)」なんですって(笑)。BD研究会、ご都合のいい時にまたいらしてくださいね。

>仙の道さん
20人も参加してくださってなかなか盛況でした。質疑応答の時間をもっととればよかったとちょっと後悔しております。仙の道さんもぜひ一度いらしてくださいね(笑)。

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