ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

BDについてもっと知りたい!コミュの【インタヴュー】ジャック・タルディ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
先日のエンキ・ビラルのインタヴュー(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21201151&comm_id=424387)に続いて、今度はジャック・タルディのインタヴューをまたまた Kigalisoupe さんが訳してくださいました! Kigalisoupe さん、ありがとうございます! 前回と同じくフランスのラジオ局RFI(Radio France Internationale)の番組「Culture Vive」においてなされた「Best of BD」という放送に基づいています(→http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3819097&comm_id=424387 の134の書き込み)。今回もとりあえず日本語訳だけ載せますので、フランス語版がほしいという方、ショードヴァルか Kigalisoupe さんまでご一報ください。ちなみにタルディについては、以前『Les Aventures Extraordinaires d’Adèle Blanc-Sec(アデル・ブラン=セックの驚くべき冒険)』という作品をコミュで紹介しています(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=4972286&comm_id=424387)。
----------------------------------------------------------------------
パスカル・パラドゥ(以下P.P.)
毎年、アングレームのフェスティヴァルではひとりの作家がフィーチャーされますが、34回目の今年はラピノの生みの親、ルイス・トロンダイムの年でした。フェスティヴァルに合わせるように発表されたのが、「 L’Île Bourbon 1730(ブルボン島1730年)」です。その前に「Le Secret de l’étrangleur(絞殺者の秘密)」とともにジャック・タルディがやってきました。

P.P.
善良なる民よ、震えるがいい。1959年のこの2月、絞殺者が戻ってきた。パリの街を殺人鬼がさまよい、毎晩男がひとり冷たい石畳の上に絞殺体で発見されている。いったい誰が? なぜこのような連続殺人が? ジャック・タルディの新作「絞殺者の秘密」を読めば分かるも知れません。あるいはこの放送を聴くか。ようこそ、ジャック・タルディ。

ジャック・タルディ(以下J.T.)
よろしく

P.P.
さて、秘密はあかされるのですか?

J.T.
いや、絶対に明かしませんね。

P.P.
それはまたどうして。

J.T.
そりゃ、本を売りたいですからね。

P.P.
で、結末を言ったら売れなくなると?

J.T.
結末ねぇ。どの結末ですか?

P.P.
たしかに。

J.T.
結末がたくさんあるのですよ。そこが問題なのです。どれが本物の結末か。

P.P.
あなたは絞殺者の秘密をご存知なのですか?

J.T.
そもそも「絞殺者の秘密」というのは、どうやらこの本の主人公で本屋のヴァランタン・エスビロルという男が書いたできの悪い小説のタイトルのようなのです。結局この本は発表されませんでした。ということでわたしの本のタイトルになった訳なのです。もともと、原作のシニアックの小説のタイトルは「Monsieur Cauchemar(『悪夢』氏) 」だったのですが、あまりいいタイトルに思えなかったのです。

P.P.
今回のあなたのBDはシニアックの小説が原作なのですよね。たしかに「絞殺者の秘密」の特徴はいろんな結末が可能性として提示されているというところにありますね。それがありえないようななぞめいた秘密を生み出していく。

J.T.
言ってみれば、理屈にかなう、合理的な結末はひとつしかないのです。わたしはシニアックの原作を忠実になぞりました。この小説をBDにしようとと思ったのは、殺人の方法がとても巧みだったからです。ですからこれはBDにそのまま生かしました。で、別の結末も用意しました。このほかにも用意してますし、まだまだ出てくるかもしれない。ここで終わる必然性はまったくないのです。でも意味のある結末はひとつしかない。それは明確にどのようにしてものごとが行われたかを説明している結末です。

P.P.
つまり最初の結末ですね。

J.T.
そうですね。

P.P.
というのも、「Fin(終)」の文字は何べんも出てきますからね。

J.T.
そう、6、7回かな。

P.P.
そして、その現れ方も凝っていて、4回は誰にもはっきりと分かる形ででてきます。でもそのほかは……2回はありえないような結末で、あとの1回は一見ありえなさそう。おまけにこれらのエピソードを読むためには、本のページを切らなくてはならないのですよね。古いオリジナル本のように綴じ込みになっていて。

J.T.
そう。わたしはこの本でいくつもの結末を用意したわけですが、その全体観を書店で立ち読みする読者、あるいはもしかしたら購入者になるひとにいきなりわかって欲しくなかったのです。家で綴じ込みを切って開いて欲しかったんですね。昔ガリマール社の本などを読むときみたいに。

P.P.
でもたくさんの結末を用意したのはあなたの遊び心なのですか。われわれを混乱させるため? それとも結局のところ結末なんてないからなのでしょうか。

J.T.
いやいや。わたしは、何か物語を書くとき、いつもどうやって終結させるかが悩みの種なのです。だからいつも先送りにするのです。「次回に続く」ってね。連載ものの常套句ですね。それにこの話は連載ものにとても適していると思いました。ですから5話にわたって1ヶ月に1話ずつ発表したのです。いつも問題になるのですよ。話をどうやって終わらせようかというのが。すべて説明しなくてはならないのだろうか? フェアでありたければそうですね。どのようにものごとが起きたかを説明しなければならない。でもいつもそうしなければならないのでしょうか。それはわかりません。もうひとつの問題は、謎を長く引っ張ってきた場合、ある時点で、つまり、もしすべて説明すると決めたなら、最後で、みんなに注目をよびかけ、座ってわたしの話を聞きなさい、すべてをお話しますから、ということになります。アガサ・クリスティーやコナン・ドイルの小説ではほとんどこの方式で物語りは終わります。

P.P.
謎解きの部分ですね。

J.T.
そう。このやりかたはおうおうにして重くなりがちです。なんか消化不良と言うか。自分達は何も分かっていないのに、探偵がすべてを説明する。だけど、この方式のいいところは、読者が前に戻って確認できるというところなんです。そしてそうそう、この人物が部屋に入ってきたとき、確かにこれこれが起きたんだった、ってね。

P.P.
つまり、読者にもう一度捜査させるのですね。

J.T.
そして確認させる。わたしがしたかったのはそういうことなのです。つまり唯一の合理的な結末では、読者には前に戻って、チェックしてもらいたいのです。そうしたら、最初に読んだときには見落としていた要素が発見できるようになっています。当然のことながら、わたしは苦心して、最初に読むときには絶対に分からないようなしかけをしたのです。だから謎解きを読んで初めて確認できるのです

P.P.
でも、それはしっかりとしたものなのですよね。

J.T.
というのも、推理小説と言うのはたいてい速く読み飛ばすものだからです。後になって注意深く読み返してみると、案外つじつまが合わないところがみつかったりするのです。

P.P.
あなたにとっていいポラール(推理小説)を作るための要素は何ですか?

J.T.
要素ねえ。ゲーム性でしょうか。細い雰囲気作りのものではありませんね。霧のある・なしとか、闇夜とか、ガス燈とか、そういうものではありません。

P.P.
でもそういったものもあなたの本には出てきますよね。

J.T.
もちろんです。背景の一部としてね。でも、いちばん大事なのは、読者が探偵よりも前に結末にたどり着かないということだと思います。つまり読者をミス・リーディングしたり、混乱させたりすることですね。もし読者が探偵よりも前に結末を見抜いてしまったら、失敗です。


まず、自由なひとですね。彼は誰にも依存していないし、どのようなイデオロギーにも流行にもながされたことがありません。彼には独自の判断基準があって、すべてのことを自分ひとりで決めてきたし、誰とも徒党を組むこともしませんね。つまり自律したひとで、絶対自由主義の人です。彼と仕事をしたときも、いつもほんとうに楽でした。彼はひとを強制することもしないのです。あるテキストに絵を描くときも、提案をするくらいです。
「絞殺者の秘密」のときもそうでした。年表を作ったときも自由に作りました。唯一のしばりは物語と同時に起きるということぐらいで、当然ですけれど。
わたしは、この「絞殺者の秘密」の続編が出るといいなと思っているのですよ。


P.P.
ドミニック・グランジュがあなたについて語ったことです。ドミニック・グランジュと言うのはあなたと一緒に仕事をするひとですが、同時にあなたの奥さんでもありますよね。

J.T.
そうですね。

P.P.
彼女の客観性は特別だと言っても……

J.T.
まあ、話していることを熟知してますがね。

P.P.
話していることを熟知している。自由なひと。いかがですか。そうですか。

J.T.
そうありたいですね。でもそうであるかは自分では言えない。でもそうありたいですよ。

P.P.
なぜ、今回シニアックの小説を題材にしたのですか。シニアックは2002年に亡くなってますが、普段は現在活躍中の方々と組んでらっしゃるように思えるのですが。

J.T.
いやいや、そんなことはありませんよ。

P.P.
ヴォートランとか、ぺナックとか……

J.T.
確かにヴォートランはそうですね。そしてマレと組んだときも。

P.P.
そう、レオ・マレもいましたね。

J.T.
当時、マレはまだ生きていた。でも亡くなった作家と組むほうがよっぽど便利ですよ

P.P.
まさに自由のためには、ですか。亡くなってれば、面倒なこと言ってこないし。幽霊を信じてはいないのですね(笑)。でも、著作権の問題とか、いろいろあるわけですし……

J.T.
シニアックが亡くなった後に、読んだのですよ

P.P.
面識はなかった?

J.T.
ええ、一度も会ったことがないのです。でも彼がなくなった後、「813」というポラール専門の雑誌でシニアックの作品の紹介を読んだのです。で、「悪夢」氏に興味を持ちました。読んでなかった作品だったのです。手に入れて、読みました。それでもしばらく放っておいたのです。なにしろ、この類の話は五万とありますからね。でも興味深かったのは最後に明らかになる殺人の方法でした。

P.P.
いつも原作をさがしてらっしゃるのですか?

J.T.
そうですね。自分で物語を作りだすと、どうしても迷いが出てしまうものですから。

P.P.
ありがとうございました。

P.P.
タルディの「絞殺者の秘密」はカステルマンから出ています。
そして、代表作「Adèle Blanc-Sec(アデル・ブラン=セック)」の新作がこの夏テレラマ誌上にて連載中です。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

BDについてもっと知りたい! 更新情報

BDについてもっと知りたい!のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング