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BDについてもっと知りたい!コミュの【インタヴュー】エンキ・ビラル

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先日「雑談」トピでご紹介しましたが、フランスのラジオ局RFI(Radio France Internationale)の番組「Culture Vive」において「Best of BD」という放送がありました(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3819097&comm_id=424387 134の書き込み)。で、その放送のエンキ・ビラルのインタヴューの部分を Kigalisoupe さんが日本語に訳してくださいました! 「モンスター四部作」の最終話「Quatre?(キャトル?)」に触れた注目の最新インタヴューです。Kigalisoupe さん、ありがとうございます! できることなら Kigalisoupe さんが聞きとってくださったフランス語も併記したかったんですが、うまい方法が見つからないので、とりあえず日本語訳だけ載せます。フランス語版がほしいという方、ショードヴァルか Kigalisoupe さんまでご一報ください。それでは、はじまり、はじまりー。
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パスカル・パラドゥ(以下P.P.)
いまだにBDとはTintin(タンタン)、Spirou(スピルー)、Titeuf(ティトゥフ)だけだと思っているかたたちには、急いでこの再放送を聴いていただきたい。BDとはとてもまともなものなのです。「Persépolis(ペルセポリス)」のような映画にならなくても、物語、グラフィズム、あらゆる意味で幻想的な世界を創り出しています。今年、François Boucq(フランソワ・ブック)が新しいキャラクター「Le Janitor(ジャニトール)」について語りにきてくれましたし、Enki Bilal(エンキ・ビラル)も「Le sommeil du monstre(モンスターの眠り)」で始まった「モンスター四部作」の最終話「Quatre?(キャトル?)」刊行にあたってきてくれました。色んな話がきけそうです。

P.P.
続編、そして結末。エンキ・ビラルがモンスター四部作の最終話「キャトル?」について語ってくれます。モンスター四部作は近未来の2026年にわれわれを連れて行ってくれます。エンキ・ビラル、ようこそ。

エンキ・ビラル(以下E.B.)
よろしく

P.P.
2026 は世界の終わりではありませんが、それでも我々の生きている世界とは大分違いますね。

E.B.
そうともいえますし、違うともいえますね。つまりそこが問題なのですよ。わたしはただ、近未来の世界に鏡を移動させただけなのですが、そこに映っているものは実は今の現実社会を比較的忠実に再現していると思うのです。

P.P.
でも、本の中で、ひとは空中を発進機つきのDバックで移動してますが、まだまだそんなことはできませんよね。

E.B.
確かに。安物の装置だとか何とか言われると思うのですが、そこは自由というか、想像する楽しさ、あるいは遊び心と言うかね。でも登場人物たちが生きている現実、彼らの考えること、言っていること、作品の中で扱われているテーマなどは今とても熱いテーマだったりするのですよ。そして私が関心があるのはそういうことなのです。

P.P.
でも、ときには奇妙な形で現れていますよね。たとえば、パリには匂いがない。これも、ずいぶんと現実とはかけ離れてます。確かに匂いと公害の問題は身近で重要な問題ではありますが。

E.B.
パリはナイク・アッツフェルドにとって匂いがないのです…

P.P.
物語の主人公ですね。

E.B.
そう、主人公です。彼はウォーホールという全てのひとを越える人物(実は彼はわたしをも超越してるのですよ。私自身、彼がいったい何者だか分かっていないのです)のせいで、レイラと言う女性を探すために十倍の嗅覚を持つようになったのです。しかしウォーホールが接触を絶ったとたんにナイクは匂いについてのあらゆる概念を失います。だから匂いがしないというのはナイクの反応であって現実の反応だとは限らないのです。つまり、こういう本はとても注意深く読まなくてはなりません。いろんな読み方ができるからです。表面的に現れていることだけをみるのではなく、……ひとつひとつの台詞に罠が隠されてるかもしれないし、そしてその罠は理論的には解決できないものなのです。

P.P.
でもこの2026年の世界は少し怖ろしいような未来に思えますが。さきほど、安物の装置とおっしゃってましたが、もっと深く見てみると、たとえば登場人物の多種性、雑種性ですね。クローンの問題とか。そうとうなものですよ。あなた自身はクローンと人間との境界は狭まっているとお考えですか

E.B.
そうですね。それにそういう研究をしている人たちがいますよね。実際。科学者などが。かつて、顔を移植したという話を聞いたとき、驚きませんでしたか。わたしは驚きましたよ。理論的にそういうことが可能だとかそういうこともありうるとかは思ってましたが、実際に手術でそういうことができたと知ったときは、もう、ほんとにびっくりしました。すごいことやってのけたな、と。そして、こう言ったニュースを見聞きして「すごい」と言っている連中が、わたしに「あなたの想像の世界はむちゃくちゃだ。支離滅裂だ」なんていってくるんですからね。でもそんなことないのですよ。

P.P.
2026年、エンキ・ビラル・ヴァージョンでは、クローンは頭のてっぺんから足の先まで完全にクローンで、火星に住んでいて、悪者も全の天使に変身して…というのも、このアルバムの中に登場するホールロウというのはウォーホールの後継者なのですよね。ウォーホールのほうは前の巻での悪者だったわけですが。そしてそのウォーホール自身はホログラムによって引き続き存在し続けている、という。

E.B.
解説はしないでおきますよ。でもこいうこともすべて本をよく読めば、物語にちゃんとはいりこめば、すべて明解なのです。ただ、わたしにとっての関心事は1993年に生まれたあの孤児なのです。彼はボスニア・セルビア民族主義者たちの爆撃の中のサラエボで生まれたわけですが、わたしの物語りに登場するとき(わたしは彼の人生の途中から描いているわけですが)、彼には30代であってほしかったのです。つまり、彼は2026年に33歳ということで、そこに関心がありました。たしかにわたしは視覚的な幻覚、あるいは時間のずれの幻覚に重きを置きすぎてるかもしれません。それが私の言う安物の装置というわけですが、その後ろにはとても明確で具体的な事柄が語られているのです。

P.P.
その後ろには愛がある。これはあまり変わっていませんね。

E.B.
変わってません。そしてここで愛の物語を描いたことに満足してます。ふたりのアンドロイドの愛の物語ですね。人間のナイクとレイラは愛し合っていますが、彼らの複製も火星で愛し合うのです。

P.P.
そしてそれはおなじことなのですか。

E.B.
さあ、どうでしょう。わたしもアンドロイドの物語がどういう結末を迎えるのか分かっていません。人間同士の物語よりも長続きするかもしれませんしね。


--- 何の話でしたっけ? そうそう、あなたの記憶喪失ですね。いったい何を思い出したくなくてあなたがここまで抵抗しているだろうと思っているのです。言葉を変えて言えば、いったい何を忘れたがっているのだろう、と。
--- わたしは何も記憶しないのです。少し意味が違います。
--- でも、あなたは大量の危険薬物を服用することは忘れませんよね。薬物に関しては後で分析する必要がありますが。今持っていますか。どこで入手するのですか。○○パレスの3階ですか。「非人間」たちのところで。
--- 「非人間」のなにがいけないのですか。素晴らしい「非人間」もいます。
--- あなたのように? わたしが医療に携わるようになって20年になりますが、あなたのような症例を見たことがありません。あなたのような心臓、子宮、肺。今までに一度も。あなたの身体はまるで三ヶ月前に生まれた身体のようなのです。もしかしたらこのことを思い出したくないのではありませんか。あるいはそのことにあなたは確信を持てていないのかも……


P.P.
あなたの世界におけるクローンの重要性についてですね。今お送りしたのは、「L’Immortel(邦題:GOD×DIVA [ゴッド・ディーバ])」というあなたの映画のワン・シーンです。今回、新しいBD のアルバム「キャトル?」が発売になりますが、ここでもクローが登場しますね。「キャトル?」とは「モンスターの眠り」で始まった四部作の最終話ですね。「モンスターの眠り」のあとには「12月32日」「パリのランデヴー」と続くわけですが、今回の巻を読むに当たってやはり前3作を読んでおいたほうがいいのでしょうか。

E.B.
と言うか、前の3作を読んでいないならもこの巻を買う意味はないですよ。

P.P.
そんなおおげさな。

E.B.
いや、そうですよ。たとえばバルザックの小説(べつに自分がバルザックだといっているわけじゃありませんが)の最後の100ページだけを読むようなものですよ。その前の300から400ページをとばしてね。すべては繋がっているのです。前3作をよんでいなければまったく理解できません。

P.P.
それでもこういうことはいえるのではないですか。前3作のあらすじを語ることはしませんが…

E.B.
そりゃあ、ぼくでも1時間では無理ですよ

P.P.
それでも、まず登場人物が3人いて、さっきおっしゃっていたナイク、それからレイラ、そしてアミール。三人ともサラエボで孤児になり、同じ場所ですごしていたけれども、戦争によって引き裂かれてしまった。そして彼らは互いを探し出し、再会しようとする。

E.B.
確かに。でもこれは本の裏表紙を読めば分かることですよね。確かに直接4巻から入ることも可能でしょう。でもこの作品はそれだけじゃない。世界観があって。画風とか。そういうことが夢をみさせてくれる。そして最終的に読者がわたしの語っていることから離れて自分の夢を見出すということがとても嬉しいのです。ある世界が視覚的にとても存在感がある時、その後、なんでもいいってわけではないが、読者や観客が自分の捕らえ方で意味を捉えることはできると思う。

P.P.
ところで、この四部作ですが、どのようにして生まれたのですか。ユーゴスラビアの紛争から生まれたのでしょうか。

E.B.
残念ながらそうですね。

P.P.
出発点にはなった。

E.B.
そうです。あの戦争がなかったら、そしてもちろんあんな戦争など起こらなければよかったと心底思ってますよ。というのも、あの戦争がなかったら、今頃ユーゴスラビアはきっとヨーロッパの中でとてもいい位置を占めていたと思うのです。でもバルカン地方が分裂した今、ユーゴスラビアがヨーロッパの一員となるにはまだまだ時間がかかりそうです。ということで、あの事件はわたしの創作の方向性を完全に決定付けたのです。当時、わたしは二本目の映画作りをしていて、ちょうどニコポル三部作を描き終えたときでした。だから新たなテーマを扱う準備をしていたときなのです。あの紛争がなかったらどうなっていたかは分かりませんが、少なくともこの物語を描いていなかったことは確かです。

P.P.
確認ですが、あなたは旧ユーゴスラビア、正確に言うと、ベルグラードでお生まれになったのでしたね。1950年代のある意味すべてが上手くいっていたように思えた時代ですね。多民族、多宗教のコミュニティも共存していた。あれは現実だったのでしょうか、それともユートピア。どう思われますか。

E.B.
ユートピアだったことは歴史が証明してます。残念ながら。もうわかっていることです。それでも当時わたしはある種の調和の中で生きていました。でももしかしたら父の亡命というのはもともと政治的なものだったのかもしれませんが……父は1956年にユーゴスラビアから亡命しました。当時わたしは4、5歳だったわけですが。亡命の理由は政治的なものでしたが同時に…つまり父はチトの率いる共産党に入りたくなかったのです。父はもともとチトの側近でした。戦争直後、父はチトの洋服屋だったのです。でも入党はしたくなかった。でも後に分かったことですが、父が怖れていたのはやはり民族と宗教の問題だったのですね。ビラルというのはオスマン系の名前、つまりイスラム系の名前なのです。父は無宗教でしたが、ある時私に言ったのです。このビラルという名前が時にはクロアチア人やセルビア人との関係において時どき問題を生じさせることになることを心配したと。つまり、クロアチア人はカトリックで、セルビア人はギリシャ正教ですね。つまり当時から…芽は既にあったのですよ。

P.P.
あなたはその不安、その恐怖を引き継いでいらっしゃるわけですか。つまりその恐怖こそが結果的に93年に勃発した紛争に繋がるわけですよね。

E.B.
引き継いでいる、そうですね。わたしはこの不安を引き継いでますし、ずっと自分の中に持っています。結局「モンスター」四部作は警鐘なのです。つまり「二度までもバルカン地方で起きたことは地球規模でいつか起きるかもしれないよ」とある意味言っているのです。いつも問題を考えなくてはならないのです。

P.P.
そうですね。結局この四部作はある意味反戦ものですよね(こう言うことにあんまり意味はないのですが)でもあなたは和解を夢見ている。なぜならあなたの作中人物は三人とも違うコミュニティ、違う民族、違う宗教に属していますが、あなたは彼らを愛し合うようにしている。彼らを兄弟にしている。実際の歴史では彼らは敵どうしなのに。

E.B.
そのとおりです。でも、この三人の作中人物は三人ともわたしなのです。わたしは彼らの中に少しずついます。彼らはわたしと同じように名前が混じっています。私の母は無宗教でしたが、カトリックで、チェコ出身、父はボスニア出身、イスラム、無宗教、ユーゴスラビア人。アミールも同じです。アミール・ファズラジックはセルビアとイスラムの混血ですし、レイラもイスラムの名前とクロアチアの姓を持っています。もう誰が誰だか自分でもわからなくなっていますが、でもこのような混在は意図的なもので、私の作中人物たちはこの混在を愛しています。もちろんこの本は告発しています。つまりあらゆる民族主義、あらゆる狭量な宗教、つまりあらゆる愚劣なことを真正面から攻撃しているのです。そして今この地球上には愚劣なことには事欠かないですからね。

P.P.
この「キャトル?」の最初の方に、異宗教間の試合があるのですが、こんなものは実際には……でもこういったものがあってもいいなと思ったんですよ。

E.B.
やったね。こういうものを描くとき、わたしは誰かこういうものがあってもいいね、と思わないかなと思いながら投げかけるのだけどね。そして読者が「あってもいいんじゃない」と思ってくれたらとても嬉しいのです。

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