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BDについてもっと知りたい!コミュの『Monsieur Fruit(ムッシュー・フリュイ/ミスター・フルーツ)』

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 Nicolas de Crécy(ニコラ・ド・クレシー)『Monsieur Fruit(ムッシュー・フリュイ/ミスター・フルーツ)』(Seuil [スイユ]、1995年刊)、読了です。例によって日仏学院の図書館で借りてきました。ド・クレシーは mixi にもコミュが2つあるくらいの人気BD作家ですが(http://mixi.jp/view_community.pl?id=205988http://mixi.jp/view_community.pl?id=77323 )、僕は全くその作品を読んでなくて、2年ほど前、BDをまともに読み始めた頃に、『フランスコミック・アート展 2003』でその存在を知り、中野のパピエで『Le Bibendum Celeste(天空のビバンドム)』(Les Humanoïdes Associés[レ・ユマノイド・アソシエ]刊)の第1巻を買って読んだきりです。あとは、『JAPON』に載った短編か… 絵のかっこよさは無類で、メビウス、エンキ・ビラルの跡を継ぐのはこの人しかいない!って感じですが、『ビバンドム』についてはさっぱり話がわからず、BDを読み始めたばかりだったということもあり、正直、自信を失いました(笑)。BDってどんだけ難しいんだというね… その後、全ての作家がド・クレシーと同じようにわかりにくいというわけではないということが判明しますが、『ビバンドム』ショックは拭いきれず、ド・クレシーはとりあえず絵がかっこいい作家という括りに入れられ、僕の中では省みられないことになります(笑)。でも、『JAPON』に載った作品なんかは『ビバンドム』と比べるとわかりにくいということもありませんし、独特のユーモアがあったりしますよね。『ビバンドム』ももしかしたら、3巻まで読むと面白いのかもしらんし、結局は僕のフランス語力がいまいちなだけで、今読んだらまた印象が異なるのかもしれません… ま、それはともかく、今回、他に特に読みたいと思う1巻完結型のBDが日仏になかったからという消極的な理由で『ムッシュー・フリュイ』を借りてみたわけですが(笑)、ド・クレシーに対する印象がちょっと変わりました。梗概は以下のとおり。

 主人公の Clark Kent(クラーク・ケント)ならぬ Clarque Quinte(クラルク・カント)は、Daily Planète(デイリー・プラネット)社勤務の自他ともに認める敏腕記者である。ただ、名前はそっくりでも、容姿の点でクラーク・ケントには似ても似つかぬカントは、でっぷり太った大食漢で、甘いものに目がない。毎朝、息を切らしてバス停まで走るのだが、バスに間に合ったためしがなく、次のバスが来るまで時間をつぶそうと、顔なじみのケーキ屋やアイスクリーム屋に入ってはバスに乗り損ね、挙句の果てには居眠りを決めこんで、大遅刻するのが日課になっている。そんな自堕落な生活が祟ったのか、ついに特ダネ記者の座をライヴァルの Brade Quéligtonne(ブラッド・ケリグトン)に奪われ、死亡記事の担当者に格下げされてしまう。折りしも、野菜と果物の流通を一手に担っている O’Canelle Corporation(オカネル・コーポレーション)の社長が失踪するという大事件が持ち上がり、その特ダネをつかんだケリグトンは一気に記者としての株を上げる。意気消沈し、いじけるカント。上司の忠告を容れて、真剣にダイエットを考え始めようかという折、ぶらりと立ち寄った果物店の店主が、彼に特別なオレンジなるものをくれる。半信半疑のカントに、店主は、これを食べれば不思議な力が身につくのだと言う。帰宅してオレンジを食べると、カントはそのまま眠ってしまう。と、あら不思議、夢に先ほどの店主が現われたではないか。彼は、地球から遠く離れた果物と野菜の惑星 Fruitus(フリュイチュス)から、危殆に瀕している地球の果物と野菜を救うためにやってきたのだと言う。彼の情報では、敵は犯人はオカネル・コーポレーションの社長を誘拐した人物と同一である。野菜と果物を救うべく、フリュイチュス星人はカントを正義の味方 Super Monsieur Fruit(スーパー・ムッシュー・フリュイ)に任命する… 夢から醒めたカントが室内を見渡すと、親切なことに、SMF(Super Monsieur Fruit)と胸に記されたコスチュームが用意されていた。早速、コスチュームを身にまとい、事件の解決に乗り出すカント。はたしてスーパー・ムッシュー・フリュイは事件を解決し、地球の野菜と果物を守ることができるのか…!?

 ということで、他愛もないスーパー・ヒーローものの体裁を取ったBDですが(笑)、ド・クレシーが、白黒の簡潔ながらも魅力溢れる描線で『スーパーマン』のパロディを行なっている点に本書の魅力があります。フランス人がこれを読んで、どのような感想を抱くのか気になるところですが、日本人的にはまず「かわいい」という言葉がこぼれそうな作品です。実際、カントが「ouf ouf(ウフ ウフ)」言いながら体を左右に揺すりバスを追いかける姿とか、スーパー・ムッシュー・フリュイに変身し、高度20cm、時速42kmで滑空してバスを追い越す姿はかなりかわいい。敵と戦い気絶をすると、スーパー・ムッシュー・フリュイの目が×になるんですが、これなんてまるでミッフィーです(ミッフィーは口が×なんでしたっけ?)。着替えをするのはやはり電話ボックスだったりするんですが、着替えようと電話ボックスに向かう時にズボンがずり落ちて半分お尻が見えちゃってるところなんかもかなりかわいい。「かわいい」みたいなことをどれだけ意識して作ってるのか非常に気になるところです。ただ、さすがはド・クレシーと言うべきか、ただのかわいい作品では終わっておらず、かわいさとノンセンスと不気味さが同居した作品になっている気がする。もう本を返しちゃったので、具体的な根拠に基づいた話ができないんですが、アイスクリーム屋でアイスを食べるところなんて、食べてるシーンが延々と描かれていて妙に不安にさせる感じでした。他のシーンにしても全体に細部が肥大しているというか… ただの印象にすぎないかもしれませんが… ド・クレシーの妙なユーモア感覚というのは『ビバンドム』にもあって、この作家の重要な特徴なんでしょうか。どういった読者層を想定しているのかわかりませんが、大人向けに描かれていたとしたら、かなり特異なBDということになるでしょう。BD史的な価値はわかりませんが、他にあまり例がないような気がする。こんな作品を描いてしまうド・クレシーはやはりなかなか興味深い作家です。『ムッシュー・フリュイ』は2巻まで出ていて、その後、『Super Monsieur Fruit(スーパー・ムッシュー・フリュイ)』という続編も出ているようです。渋谷のパルコ・ブック・センターの中に入ってる洋書屋ロゴスでも見かけました。

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