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BDについてもっと知りたい!コミュの『Les Innocents(罪なき者たち)』

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 Gipi(ジピ)作『Les Innocents(罪なき者たち)』(Coconino Press – Vertige Graphic[ココニノ・プレス‐ヴェルティージュ・グラフィック]、2006年刊)読了しました。と言っても読んだのはだいぶ前なんですけど… 例によって今年のアングレーム国際BDフェスティヴァルにノミネートされたため買ってみました(もっともノミネートされたのはこの作品の第2巻『Ils ont retrouvé la voiture(彼らは車を見つけた)』です)。フランス語版の表紙を見る限りでは非常にわかりにくいんですが、この作品、シリーズの総題らしきものが別に付けられているようで、フナックなどで検索すると、「Baci dalla Provincia」の第1巻となっています。で、副題が『Les Innocents(罪なき者たち)』ということらしいんですね。表紙をよく見ると、たしかに上の方に消印を模したような黒い丸に囲まれてタイトルの文字が… 「Baci dalla Provincia」ってたぶんイタリア語ですよね… 何て読むんでしょう…? バッチ・ダッラ・プロヴィンチア(笑)? どなたかイタリア語できる方、教えてください。とりあえずAltaVistaの「Babel Fish Translation」というサービス(http://babelfish.altavista.com/)を使って仏語に翻訳してみると、「Baisers de la Province」と出ました… 「田舎からのキス」とか「田舎からの挨拶」くらいな感じでしょうか…? そもそもこの作家はイタリア人で、この本のオリジナルはイタリア語で書かれており、同じココニノ・プレスから2005年に出版されています。ウィキペディアのフランス語版によると(http://fr.wikipedia.org/wiki/Gipi)、Gian Alfonso Pacinotti(ジアン・アルフォンソ・パチノッティ?)というのが本名だそうで、1963年ピサ生まれ、広告業界を経て、新聞の挿絵画家になり、2005年にココニノ・プレスから『Esterno Notte(Extérieur Nuit「外なる夜」って感じ?)』でデビュー。語りのセンスの良さとダイナミックな絵でたちまち人気作家になったそうです。まだまだ作品も少なく、デビュー作の『Esterno Notte(Extérieur Nuit)』、去年のアングレームで最優秀作品賞を受賞した『Notes pour Une Histoire de la Guerre(ある戦争の物語のための覚書)』、フランスのGallimard(ガリマール)社から出ている『Le Local(その場所?)』、それから「Baci dalla Provincia」の2冊、最後に『S.』という作品、以上6冊しかないようです。ということで、前置きが長くなりましたが、梗概は以下のとおり。

 中年の Giuliano(ジュリアーノ)は、甥の Andrea(アンドレア)を乗せて車を走らせている。姉に頼まれ、アンドレアを遊園地に連れていく約束をしたのだ。だが、少年時代の友人で長年刑務所に収容されていた Valerio(ヴァレリオ)が出所し、突然彼に連絡をつけてきたため、彼はアンドレアを連れてヴァレリオに会い行くことになる。ヴァレリオは決して乱暴な少年ではなかったが、彼やジュリアーノが住んでいた町に赴任してきた2人の刑事の嫌がらせが原因で、取り返しのつかないことをしてしまったのだった… 久しぶりに親友と会う喜びを感じつつも、アンドレアの手前もあり、どこか心の晴れないジュリアーノ。そんなジュリアーノの気持ちをよそに、アンドレアはこれから会う叔父の友人の犯罪者に興味津々である。やがて車は待ち合わせの場所へ。ジュリアーノは十数年の月日を経て、かつての親友ヴァレリオに再会する…

 という感じです。ストーリー的には非常にシンプルで、ジュリアーノとアンドレアの2人がヴァレリオに会ってそれでおしまい(笑)。何か大きな事件が起きるわけでもなく、それぞれの人物の中で、微妙な心情の変化はあるんだろうけど、特にそれに言及するということもありません。水彩っぽい淡いタッチとグレーを主調とした渋めの色彩、それからBDにしては簡略化された柔らかな人物の表情がこの作品の魅力だと思いますが、それが物語の雰囲気に見事にマッチしていて、素晴らしく効果的です。この作品の登場人物たちは子どものアンドレアを除いて、どこか寡黙な雰囲気があるんですが、思うに表情に乏しいBDには、沈黙こそ相応しいんじゃないでしょうか(笑)? この作品について言えば、それが非常にクールな印象につながっています。ロケーション的にも抜群のものがあり、労働者風の中年男とその親友の元服役囚、彼らの過去においても現在においても救いのない状況が、どんよりとした空と海辺の空漠とした風景に暗示されているかのようです。救いのなさみたいなものはこの作品の通奏低音になっていて、無垢な子どもであるはずのアンドレアも妙に大人びたところがあって、未来への希望を仮託できる存在なのかどうかさっぱりわかりません。ただ、物語の最後、ちょっとした冒険を終えたアンドレアとジュリアーノの間には共犯関係めいたものが成立するんですが、そこに何やら一抹の爽快感のようなものを感じるのも事実です。それから、アンドレアとジュリアーノが移動途中、車から降りて昼飯代わり(?)に食べる「Flashbang(フラッシュバン)」という食べ物があるんですが、これがなかなか愉快な代物で、物語の最後、というか欄外で小道具として素敵な使われ方をします。「Flashbang chocolat(フラッシュバン・チョコレート味)」と「Flashbang coco-banane(フラッシュバン・ココア‐バナナ味)」があるようなんですが(笑)、ひょっとして実在したりするんでしょうか? ググっても出てこないんで、たぶんないのかなという気はしますが… まあ、それはともかく、絵柄と言い、抑えの効いた色彩と言い、日本人受けしそうな作品だと言えるでしょう。というか、ジピ、要チェックです!

コメント(3)

先日は貸していただいてありがとうございました。
パラパラとめくって最初に思ったのは、やはり「日本人にも読みやすそう」ということでした。というか、自分がそれほど違和感を感じませんでした。
絵柄・色彩もさることながら、視線の動きがスムーズになるような画面作りをかなり意識的にしている(いそうな)点も注目してます。

90年代あたりから日本でも「郊外」というテーマで括られる作品が出てきて、都市の周辺の場景や暮らす人の心情が注目されたりしましたが、Gipiの視点にも共通するものを感じます。
一方で日本の「郊外」よりもさらにすさんだ感じがあることや、さらに「老い」(までいかないけど加齢?)もテーマに入ってきているあたりは違った魅力と言えそうですね。イタリアの社会状況についてよく知らないのが悔やまれるところ。
"S. dit qu'il n'y a rien de mieux que d'aller en bateau, en mer, et de pêcher des poissons et de les cuire dans le cockpit de bateau et ensuite de fumer un cigare et de boire du vin et de s'allonger, à l'ombre, et dormir."

「船に乗って海へ出て、魚を釣って操舵席で焼いて、煙草を一本吸ってワインを飲んで、日陰で横になって、寝てしまう。これ以上のことなんかないって、S.は言うんだ。」


注文していた『S.』が到着しました。
個人的にせっぱ詰まっているタイミングだったんですが、うっかり日曜を一日つぶして読み通してしまいました。

主題は家族、特に父と息子の関係。モチーフは、親子が共にした一つの経験と、父が子に語ったいくつかのエピソード。後者のうちで柱になるのは、橋への爆撃の話、家にドイツ(ナチ)兵の巡察が入った話、川を渡った若い兵士二人の話。ほかに細かいエピソードいくつか。非常に緻密な構成で仕掛けもあるので、あまり詳しい説明はためらってしまうんですが。最後の章 "LES DIMANCHES" (日曜日)は泣けます。というか泣けました。

重苦しい箇所も重くなりすぎはしない絵柄と淡い色彩で、全体の印象は爽やかでした。セリフはモノローグが大半ですが、軽快な調子なので読みやすかったです。たぶんイタリア語で読んだ方がもっといいような気がしました。それほど明るい話でもないんですが、ラストはユーモアで締められていて、それが救いにもなっています。これがイタリア人らしさを感じるところでもあるんですが、単にGipiがそういう人なだけかも。

途中、父親が死ぬんですが、その晩、息子がずっとカウンターストライク(対戦シューティングゲーム)をやっていたという部分が、自分にも十分ありそうな話でシャレになってませんでした。

とりあえずGipi信者になってしまったので、Le Local と Notes pour〜も買っていきたい。あと、今後は「Fumettoについてもっと知りたい!」分派を自称します(笑)

以下、検索でみつかったGipi作品の紹介と感想
「Notes pour une histoire de guerre」
http://lireenfete.blog27.fc2.com/blog-entry-112.html
「Le Local」
http://lireenfete.blog27.fc2.com/blog-entry-172.html
>cu39 さん
『S.』、ご紹介ありがとうございます! 反応遅くなりました。トピを立ててくれればよかったのに(笑)。これ、非常に面白そうですね! 引用文を読んだだけで、グッとくるものがあります。ジピの抑制されたスタイルはほんと素晴らしいですよね! 今度ぜひ貸してください。「Fumettoについてもっと知りたい!」、いいなあ(笑)! コミュも作ってくださいよ。よかったら副管理人とかになりますよ(笑)。

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