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BDについてもっと知りたい!コミュの『Pourquoi J’ai Tué Pierre(僕がピエールを殺した理由)』

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 Olivier Ka(オリヴィエ・カ)原作、Alfred(アルフレッド)作画『Pourquoi J’ai Tué Pierre(僕がピエールを殺した理由)』(Delcourt[デルクール]社、2006年刊)読了です。アングレーム関連のBDの紹介が続きますが、本作も今年のアングレーム国際BDフェスティヴァルでLes essentiels d’Angoulême(仮に「アングレーム最重要作品賞」とでも訳しておきます)を受賞した作品です。この前に紹介したガリマールの「Bayou(バユ)」という叢書もそうでしたが、従来のアルバム(だいたい縦30cm×横23cm)と比べると変則的な版型で(おおよそですが、縦26cm×横20cmくらい)、一回り小さい分、僕にとっては手に取り易い感があります。子ども時代のある出来事を物語の中心に据えて、主人公 Olivier(オリヴィエ)の成長過程を描いたおそらくは自伝的な作品で、7歳から35歳までの主人公の生活の断面が全10章で描かれています。各章のヴォリュームは必ずしも一定ではなく、たった1ページの所もあれば、長いところだと30ページに及ぶことも… とりわけ決定的な事件が起きた12歳の章と最後の35歳の章に多くのページが割かれています。各章の扉は必ず「J’au tué Pierre parce que j’ai ○ ans.(○歳だから僕はピエールを殺した)」という副題(?)が入り、各章の要約であったり、導入の役割をしたりするテクストが置かれているんですが、この副題のねらいについてはいまいちよくわかりません。というのは、主人公は決してピエールという人物を殺すわけではなく、後々比喩的な意味で殺すことにはなるんですが、それも大人になってからなんですね… うーん、どういうことなのか… 読んだ方でわかるという方ぜひ教えてください。さて、梗概は以下のとおり。

 ヒッピー風な生活を送る両親のもと、主人公のオリヴィエは病弱ながらも幸せに暮らしている。長期の休みになると、ベルギーにいる祖父母を訪れたり、あるいは逆に祖父母が彼らを訪れたりしている。祖父母は奔放な暮らしをしているオリヴィエの両親とは異なり、敬虔なクリスチャンで、幼いオリヴィエの世界観の形成に大きな影響を与えた。もっとも、両親の影響も受けている彼であるから、祖父母の厳格な教えだけを行動の指針としたわけではないが、祖父母を通じて吸収したキリスト教の強制的な道徳観が彼の世界観に入りこんだのだ。ある時、一家を訪れていた祖父母を通じて、オリヴィエたちはピエールというその地域を巡回している司祭と知り合いになる。彼は司祭とは言え左翼的な思想の持ち主で、まだ歳も若く、くだけた服装をし、ギターを弾いたり歌を歌ったりもした。その飾り気のない人柄で、祖父母はもちろん、両親、そしてオリヴィエも彼のとりこになってしまう。やがてピエールはオリヴィエ一家にとって、なくてはならない友人となった。12歳になった年、オリヴィエはピエールが主宰する臨海学校に参加することになる。ピエールを実の叔父ででもあるかのように慕い、他の子どもたち以上にピエールと親密であることを誇りにしていたオリヴィエだが、ここでピエールの今までとは全く違った一面を知り、面食らってしまう。ピエールはオリヴィエに間接的にではあるが、性的な交渉を要求してきたのだ。オリヴィエの頑な拒否によって、結局深刻な事態には至らず、その後、ピエールも何事もなかったかのようにオリヴィエに接する。だが、多感な年頃に起きたこの事件は、オリヴィエのその後の人生に影を落とすこととなる。日常生活の中でふと訪れる不安… やがて、オリヴィエは自らを脅かすピエールの影に正面から対峙することを決意する…

 という感じです。ピエールがオリヴィエを誘惑する所は、こんな感じで文章にしてしまうと身も蓋もないんですが(笑)、もうちょっと繊細なやりとりがあって、ピエールの側の恐る恐る会話を進めていく様子だとか、誘惑する際に使うレトリックの奇妙さだとか、あるいはオリヴィエの怯えだとかがうまく描けています。カトリックの坊さんが子ども、それも男の子を相手に性的な満足を得ようとしてるわけで、こういう話って基本的にフランスではタブー視されてるんじゃないかと勝手に想像してるんですが、こういう話がBDで描けてるってのがすごいことのような気がしますね。『Blacksad(ブラックサッド)』の第2巻「凍える少女」(早川書房)にも同様な話がほのめかされていましたが、大人向けのBDだとこういう話は割と自由に描けたりするんでしょうか? どうしてもBDだとまだまだ表現の自由がないような印象を受けてしまったりするんですが、それは偏見ですかね…? もちろん文学とかだとそういう話はたくさんありそうですけどね… こんな感じで物語の主筋は深刻なんですが、必ずしもしかつめらしい話ということではなく、ユーモアもあって、非常にいい作品です。ビジュアル的にも素晴らしく、デッサンとか色つけとか、デュピュイ/ベルベリアンの『Monsieur Jean(ムッシュー・ジャン)』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3449850&comm_id=424387&page=all)とか、Jouvray(ジューヴレ)兄弟の『Lincoln(リンカーン)』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=12684169&comm_id=424387)とか、Larcenet(ラルスネ)の『Le combat ordinaire(日常の戦い)』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3351391&comm_id=424387&page=all)に近しいものを感じます。とりわけオリヴィエがピエールと夜を共にするシーンの描写が、黒とかグレーを中心にした色彩の効果とあいまって(ところどころオリヴィエの心理を強調するかのようにカラーが使われています)なんかすごい… 最後の章で、写真をそのまま使ったコマが続く所があるんですが、個人的にはこれはいまいちかな… シュイテン/ペータースの『傾いた少女』(http://mixi.jp/view_bbs.pl?page=1&comm_id=424387&id=3679293 * 9番目の書き込み)とか Emmanuel Guibert(エマニュエル・ギベール)他『LE PHOTOGRAPHE(写真家)』でも使われていたりする手法ですが、あんまりピンときません… とは言え、全体として見た時にこのBDが素晴らしい作品であることには変わりはないわけで、おすすめの作品です。

画像は、真ん中が「おちんちんをいじると地獄へ落ちる」と脅される幼少時代のオリヴィエ。右がピエールに誘惑されるオリヴィエ。このページのあと、海水浴をする子どもたちを指差し海水パンツの長さが違うのは不公平だ。みんな裸になれば公平になるという素敵な話になります(笑)。

コメント(5)

なんか画像がアップされませんね… こちらの問題ではないような… 他の画像でもダメみたいなので、とりあえずこのままにしておきます。
画像表示されたみたいです。よかった、よかった。
内容の絵を見て、どこかでみた覚えがあるなぁと思ったら、去年買ったBDの作画も同じAlfred(アルフレッド)という人でした。
絵が可愛くてジャケ買いしたBDで、そのうち感想を書こうと思いつつまだそのままだった。
ゴリゴリとペンを走らせた感じのペン画で、可愛いですよね。
>天鵞絨さん
恐縮です。ただ、尊敬していただくにはまだまだ及ばなくて(笑)、ハマり方が足らんというか、もっとこう、身代を潰すくらいにBDを買いまくらなきゃならんのでは?と思う今日このごろです(笑)。こういうやや重い(?)テーマのBDってどれくらいあるのか興味深いところですよね。他コミュの情報によると、田亀源五郎の仏訳があるということだから、そういう市場は存在してるんでしょうね。この作品は毛色がちょっと違いますが… 未読ですが、これ以外では Fabrice Neaud(ファブリス・ノー)という作家の『Journal(日記)』という作品がゲイの赤裸々な日常(?)を描いてる様子で、いつか読みたいと思っています。

>abeille さん
お、マジっすか? それはぜひ紹介してください! 絵はすごく魅力的ですよね。この作品に関しては、他の人が色付けをしてるんですが、それも抜群です。

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