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BDについてもっと知りたい!コミュの『Capucin(カピュサン)』

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 Florence Dupré la Tour(フロランス・デュプレ・ラ・トゥール)作『Capucin(カピュサン)』第1巻「La Mauvaise Pente(転落)」、読了しました。つい最近紹介した『Orage et Désespoir(オラージュとデゼスポワール)』と同じくガリマール社の「Bayou(バユ)」叢書に収められています。そして、やはり『オラージュとデゼスポワール』と同じく、今年のアングレーム国際BDフェスティヴァルの受賞予定作品にノミネートされていました(→http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=14133620&comm_id=424387&page=all)。副題の「La Mauvaise Pente」は「よからぬ道に入り込む」的な意味の「être sur la mauvaise pente」から来ていると思われ、主人公カピュサンの運命を暗示しているはずなので、とりあえずは「転落」と訳してみました。梗概は以下のとおり。

 Arthur(アルチュール[多分にあのアーサー王的ですが、設定的に全く同じかどうかは不明])王の騎士Gauvin(ゴーヴァン)を父に持つカピュサンは、立派なお城の中で何不自由ない生活を送っている。ある週末、宮廷で武術会が開かれることになり、カピュサンの父ゴーヴァンも参加することになった。カピュサンは武術に長けた父を誇りに思っており、父の優勝を信じて疑わない。大会当日、予想通り順調に勝ち上がっていくゴーヴァン。だが、決勝で見知らぬ騎士と対戦した彼は、力及ばず敗れ去り、片腕を失ってしまう… 騎士ゴーヴァン重体の報を聞いて、ここぞとばかり攻め寄せる隣国の君主たち。カピュサンと彼の母は、取るものも取りあえず、瀕死のゴーヴァンを連れて城から逃げ出すことになる。城から遠く離れた田舎へと退きこんだ3人を待っていたのは、かつての暮らしぶりからは想像もつかないような惨めな境涯だった… 城ではわがままを通すばかりだったカピュサンだが、今では貧しい没落貴族の子どもにすぎない。自分の食い扶持を稼ぐために母に命ぜられるがままに大嫌いな馬の Rostremond(ロストゥルモン)と連れ立って仕事を探しに行くはめになる。が、騎士の子としての誇りを持ったカピュサンは、働いて日々の糧を得るなどということを肯んじえない。いっそ盗みを働く方がましと、山賊行為を重ねていく。やがて彼らは Patenôtre(パトゥノートル)という名の小鬼と知り合う。パトゥノートルの提案で彼の知り合いの金持ちの老人宅に押し入る一同。そこでカピュサンは生まれて初めて殺人の片棒を担ぐことになる。金を奪い洞窟で一休みする一同だが、何者かの気配がする。その洞窟には、他ならぬカピュサンの父を傷つけた騎士がいたのだ。父の仇を討とうと騎士に襲いかかるカピュサン。しかし、あえなく捕えられ、仲間ともども Bouche Dorée(ブッシュ・ドレ)と名乗るその騎士の城に連れていかれてしまう。彼はそこで、奴隷のような境涯に身を貶めつつも、復讐の機会を狙う…

 ということで、物語の大筋を紹介してみました。ここまで読む限りではかなり単純な子ども向け漫画(とは言え、今どき復讐譚なんてないか…?)という感じですが、後半はかなり屈折した話になってきます。この後、カピュサンはブッシュ・ドレの城で新しい仲間を得、徐々にブッシュ・ドレの家臣の中でその地位を高め、彼の信頼を得ていくわけですが、その過程で自分の中に確固としてあった善悪の基準が揺らいでしまい、しまいには自分とブッシュ・ドレのどちらが真の悪なのかわからなくなってしまったりします。これから読む方のために詳細は省きますが、仇討ちという最大の目標も失ってしまい、カピュサンは最後には精神に異常を来たしてしまうわけですが、その辺の心理的な危うさを表現するかのように、絵自体が歪んでいきます。とりわけカピュサンの顔と目の形がすごいことに(笑)。ところどころに見られる暴力描写も稚拙な感じの絵の割には何やら生々しく(数人で巨大な犬に襲いかかり、脚を折ってしまったり、拷問のために剣で子どもの腹を裂いたり…)、子どもたち同士が殺戮し合う場面などはまるで楳図かずおです。何歳ぐらいを対象にしてるのかはっきりとはわかりませんが、児童向けの漫画でこんな表現をしてしまうというのはちょっとすごいなという印象… でも、逆に欧米人からすると、日本のマンガ・アニメも同様に暴力的に映るのかもしれませんが… まあ、何にしてもこういうヤバさを抱え込んだ児童ものというのは面白いと思います。今言ったように絵はやや稚拙な感じがあるんですが、どことなくこの叢書の監修者ジョアン・スファールの『プチバンピ』(→http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=3247269&comm_id=424387)に似てるような気がする。物語的には全く救いのないところで終わるんですが(それはそれで面白いんですが…笑)、まだ続きがあるようで、今後どうなるのか気になるところです。

* 画像真ん中…ブッシュ・ドレに捕えられるカピュサン。画像右…狂乱のカピュサン。動物の首を刈りまくってます…

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