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BDについてもっと知りたい!コミュの『Alack Sinner(アラック・シナー)』

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 「はじめまして」トピで毒ドリルさんに教えていただいた『Alack Sinner(アラック・シナー)』を紹介します。読んでない作品を紹介するのはちょっと心苦しいところですが、出版社のサイトなどを参考にしつつ… まあ、以前何度かこういうことはやってますが… 

 Carlos Sampayo(カルロス・サンパイヨ)原作、José Muñoz(ホセ・ムニョス)作画『Alack Sinner(アラック・シナー)』。主人公の名を冠した探偵もののBD。アラック・シナーはニューヨークの貧民街に生まれ、長じて警察官として働くが、仕事に対する違和感から退職、今では探偵事務所を構えている。人生に疲れた私立探偵アラック・シナーが腐敗した産業界や法曹界を相手に戦う。

 現時点で、仏語版は casterman(カステルマン)社から7巻出版されています。これは必ずしも作品が描かれた順番ということではないようですが、カステルマンで仏語版が出版された順に並べると以下の通りになります。ついでに同社のサイトの記事を参考にして、ごくごく簡単に各巻の紹介をしておきます。

■『Souvenirs d’un Privé(ある私立探偵の思い出)』(?年)〜『Mémoires d’un Privé(ある私立探偵の回想)』の次に出た作品で、アラックがキャリアのごく初期に扱った事件が語られる。
■『Mémoires d’un Privé(ある私立探偵の回想)』(1999年)〜1983年時点で最も新しいアラックの物語を描いたもの。
■『La Fin d’un Voyage(旅の終わり)』(1999年)〜旅のテーマを扱った4編の作品を収める。アラックと彼の伴侶 Sofie Milaszcewicz(ソフィー・ミラセヴィッチ?)の関係を描いた話もあるとか。
■『Viet Blues(ヴィエット・ブルース)』(2000年)〜1975年、雑誌『Charlie(シャルリー)』に掲載された記念すべき第1作。ニューヨーク育ちのニヒルな30代の探偵アラック・シナーの誕生。
■『Nicaragua(ニカラグア)』(2000年)〜アラックとソフィーの娘 Cheryl(シェリル)の登場。訳があって別々に暮らしている2人の心のふれあい。ソフィーちゃんは事件に絡んでくるのかな…? 作者の反レーガン主義が露骨に出た作品だとか。
■『Histoires Privées(個人的な話)』(2000年)〜アラックの実の娘ソフィーが殺人の容疑で勾留される。おまけに彼女は記憶を失ってしまっていた… 調査に乗り出したアラックが見たものは…
■『L’Affaire USA(USA事件)』(2006年)〜2001年、今や孫もいるアラックが久しぶりにニューヨークへ戻り、再び探偵事務所を開く。彼のもとに、今や政治的に重要な地位にあるかつての恋人 Jill(ジル)が姿を現わす。長い年月の後にアラックの前に現われた彼女の真意とは…

 出版年度をきちんと明記した資料がなく、実際の制作順序はどのようなものだったかわかりませんが、カステルマン社のホームページの作品紹介を読んでみると、『Viet Blues(ヴィエット・ブルース)』→『Mémoires d’un Privé(ある私立探偵の回想)』→『Mémoires d’un Privé(ある私立探偵の回想)』→『La Fin d’un Voyage(旅の終わり)』→『Nicaragua(ニカラグア)』→『Histoires Privées(個人的な話)』→『L’Affaire USA(USA事件)』という順番のような気がします。


 作画家José Muñoz(ホセ・ムニョス)の伝記も簡単に紹介しておきます。

 1942年ブエノスアイレス生まれ。12歳の頃から彫刻や絵画、マリオネット演劇を学び始める。これらの技術を磨く一方で、彼はユーゴー・プラットの影響を強く受け、漫画制作の道へと進んだ。1959年にはユーゴー・プラットと実際に出会い、1963年にはユーゴーがプロデュースした作品集(かどうか正確にはわかりませんが…)『Mistirix(ミスティリックス)』の中の1編「Precinto 56(おそらくイタリア語。どういう意味かわかりません…)」の作画を担当する。これはニューヨークの探偵を主役にした作品で、『アラック・シナー』の原形と言っていい。1972年に彼はアルゼンチンを去り、スペインでカルロス・サンパイヨと出会い、共作を始める。『アラック・シナー』意外の主な作品は『Le Bar à Joe(ジョーのバー)』シリーズ、『Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)』、Jérôme Charyn(ジェローム・シャラン)と組んだ『Le Croc du Serpent(蛇の牙)』など。

* アルゼンチン時代のユーゴー・プラットとムニョスの関係がいまいちよくわかりませんね。詳しい方がいたら教えてください。原作者のCarlos Sampayo(カルロス・サンパイヨ)については特に詳しい伝記は見つかりませんでした。

 ついでに触れておくと、『アラック・シナー』同様、サンパイヨとの共作の『Le Bar à Joe(ジョーのバー)』は Fnac(フナック)のBDガイドに載せられていて、なんだかそれが『アラック・シナー』の紹介になっています。カステルマンのホームページの紹介を読んでみると、「ジョーのバー(Joe’s Bar って言った方がかっこいいな…)」に集まる様々な人間たちのドラマが語られる作品ということなんですが… これってガイドの勘違いなんでしょうか? ただ、『La Fin d’un Voyage(旅の終わり)』でも語られているようですが、アラックとソフィーの出会いは「ジョーのバー」でだったようなので、そこに焦点を合わせたのかも… なんにしてもこちらの作品も魅力的です。BDガイドによると、90年代の多くのBD作家に影響を与えた作品だとか。様々な人間模様が交錯するバーって、なんか他にもこういう作品ありそうですけどね… 映画で言うと『スモーク』とか? 続編(?)に『Histoires Amicales du Bar à Joe(ジョーのバーでの打ち明け話?)』というのもあります。どちらも2002年刊になっているんですけど、たぶんオリジナルの出版年度は違うはずです。BDの出版年を正確に知ることができるデータベースってないもんでしょうか…? 不便で困る…

 ちなみに最近出た雑誌『フリースタイル』Vol.6 (2007年冬号)「特集:松本大洋」に仏文学者中条省平による松本大洋のインタヴューが掲載されていて、ムニョスと松本大洋の類似がごく簡単にですが、述べられています。ムニョス作品をきちんと読んでないのでわかりませんが、たしかにぱっと見似てる。

参考資料
カステルマン社:
『Alack Sinner(アラック・シナー)』
http://bd.casterman.com/serie/castalac/

『Le Bar à Joe(ジョーのバー)』
http://bd.casterman.com/isbn/2-203-33407-X/

『Histoires Amicales du Bar à Joe(ジョーのバーでの打ち明け話?)』
http://bd.casterman.com/isbn/2-203-33435-5/

ムニョスの伝記
http://bd.casterman.com/bio/MunozJo/?r=castrom

仏語版ウィキペディアにもムニョスの項目がありますが、これはカステルマン社のサイトを参考にしたものみたい。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jos%C3%A9_Mu%C3%B1oz

あと、このウィキペディアのムニョスの項にリンクが貼られていますが、ムニョスのインタヴューがあります。1998年10月『L’Indispensable(ランディスパンサブル)』という雑誌の第2号に載せられたインタヴューのようです。主としてムニョスの白黒のデッサンについて語っています。ムニョスにとって描くってどういうことなのかとか…
http://www.du9.org/article.php3?id_article=526

* 画像は左が『Mémoires d’un Privé(ある私立探偵の回想)』からで、右側の2つが『Histoires Amicales du Bar à Joe(ジョーのバーでの打ち明け話?)』の表紙と中身。『ジョーのバー』、すごくいいですね! 表紙も気が利いているし、絵も素晴らしい。これはぜひ読まねば。

コメント(9)

どうも南米出身でスペイン・イタリアで活躍→フランスで活躍という作家が多いようですが、アルゼンチンなどのBDシーンはどうなっているのでしょうか。情報求むというところです。でも私はスペイン語もよくわからないし、困った。
多いようですねー。ウィキペディアの記述によると、『アラック・シナー』も初出が1975年、Milano Libri(ミラノ・リーブリ?)となっていて、名前から察するにこれってイタリアの出版社なのか?という感じです。本人がヨーロッパに来てるのかどうか知りませんが、Quino(キーノ?)の『Mafalda(マファルダ)』という作品なんかもヨーロッパでよく知られていますよね。アルゼンチンでユーゴー・プラットが果たした役割がどういうものだったかについても非常に気になります。情報求む!ですね(笑)。ちなみにスペイン語は第二外国語でやったんですが、僕もさっぱりです(笑)。
>ショードヴァルさん
>アルゼンチン時代のユーゴー・プラットとムニョスの関係
 1950年代の後半〜1960年の初めにかけて、ブエノスアイレスには漫画の学校(Escuela Panamericana de Arte)が存在し、プラットは講師の一人でした。ムニョスはそこに通っていました。(lambiekより→http://lambiek.net/artists/m/munoz.htm)ムニョスはプラットの熱心なファンで、初期の作風は強く影響を受けていると言われています。なので、プラットを特集した雑誌にはムニョスの談話が載っています。手元にある2冊からかいつまんでご紹介致しますと……

 「Bodöi hors série(ボドイ増刊、2002年、第5号)」に掲載された短い談話によると、ブエノスアイレスの漫画学校ではプラットの授業を直接受けた訳ではないが、そこで知り合ったのだそうです。ムニョスはプラットの作品が大好きで、漫画家になりたいという動機のひとつであったとのことです。ブエノスアイレスの漫画学校は、生徒は12才〜40才位の様々な世代が集まって熱気があり、講師陣はAlberto Breccia(アルベルト・ブレシア)のような表現主義者を始め、充実していたそうです。ムニョスはその後、パリでプラットと再会した際に作品への助言として「上手いけど、まだまだ商業的だ。もっと独自の構想を練ってみてはどうか」と言われ、それがSampayoのような人々と作品を創ることへとつながったのだそうです。

 またBD情報誌「BANG!(2005年、第3号)」の方には6ページのエッセイ漫画が載っています。ムニョスが15才の頃の思い出話で、漫画雑誌「Misterix(ミステリクス)」の編集部で働いていた友人から悪だくみをもちかけられ、プラットの原画を2枚そっくり模写して差し替えて1枚ずつ山分けしようとするのだけど、果たして編集部やプラットにバレることになり……というお話。抽象的に描いてあるので分かりにくいのですが、要は、プラットの作品世界に入れ込むあまりに、自分の世界とプラットのそれとが混濁していく様子を表しているのだと解釈しました。


>Father Uさん
>アルゼンチンなどのBDシーン
 いくつかのアルゼンチンの漫画サイトを見た上での印象なので正確な事は言えないのですが、アルゼンチンはイタリアと人の行き来があり、ブエノスアイレスが「南米のパリ」と言われるようにヨーロッパ文化の流入があり、かつアメリカの漫画や映画の影響を受けて、第2次大戦後に独自の漫画文化が築き上げられたように見えます。ただし、1960年代以降、経済や政治状況の悪化のために、漫画をめぐる状況は今に至るまで厳しそうです。BDにアルゼンチン作家のものが多いのは、BDがヨーロッパの漫画の中心だから作家・作品が集まるというのが一番大きな理由だと思います。アルゼンチンの漫画は、絵はモノクロで個性的でアクが強く(近年は彩色したものも多いですが)、ストーリーもまたアクの強いものが多いです。いちばん精力的に活躍しているのがシナリオライターのCarlos Trillo(カルロス・トゥリージョ)で、アルゼンチンの漫画家と組んでヒネリの効いたストーリーをよく書いています。Carlos Meglia(カルロス・メグリア)と組んだ「Cybersix(サイバーシックス)」が日本とカナダの合作でアニメ化されたのを見た方もいらっしゃることと思います。
 アルゼンチンの漫画の歴史については「La Historieta Argentina(http://www.buchmesse.de/comic-argentina/)」が英語のページもあって参考になります。スペイン語の文章は、翻訳サイト「Babel Fish Translation(http://world.altavista.com/)」で英語に変換すると、そこそこ意味が拾えたりします。
 

>毒ドリルさん
>作家単体の作風の変遷
 ムニョスの近作は、スイスの漫画雑誌(スイス・コミックアート展や11月のBD研究会で椿屋さんが持参されたもの)でいくつか見かけました。その他にも割とBD雑誌に短編が掲載されている模様です。あまり深く読んでいないのですが、絵を見る限り、近年の作風は叙情的な印象を受けました。年を追って作風を変えていく様子や薄墨を使うところはアルベルト・ブレシアの影響を受けているような気がします。しかし、私自身、あまり深く読んでいないために込み入った話が出来なくてすみません。先日のアングレームでグランプリを受賞したことですし、また英語版など出てくれると(過去に英訳が出ていたんですよ)、手に取りやすくて有り難いのですが……


 あと、2002年にムニョスとアルベルト・ブレシアの合同展が開催されたとかで、その特集ページが充実していたのでリンクを張ります。特に2ページ目のムニョスへのインタビューが、まさに「作家の個人史」となっています。
http://www.bdparadisio.com/dossiers/breccia/
http://www.bdparadisio.com/dossiers/breccia/breccia2.htm

 「アラック・シナー」の初出はイタリアの雑誌「Linus」で、後にフランスの雑誌「Charlie Mensuel」「(A suivre)」に掲載されるようになったみたいです(参考:http://www.thrillingdetective.com/sinner.html)。雑誌掲載データのページを見つけたので、こちらもリンクを張っちゃいます(ちょっと読みにくいので参考になるかどうか分からないのですが…)
http://www.dimensionedelta.net/jones/linus/z_1975.html
http://www.bdoubliees.com/charliemensuel/series1/alacksinner.htm
http://bdoubliees.com/asuivre/series1/alacksinner.htm


画像は、左)ブエノスの漫画学校の宣伝漫画(プラット画『いかにして一人の漫画家が“誕生”したか』という題名かな…)、真ん中)「BANG!」に掲載されたムニョスのエッセイ漫画の1頁め、右)BD情報誌「le Collectionneur de Bandes Dessinees」のジャズBD特集の表紙に使用されたムニョスのイラスト(『BATMAN: BLACK AND WHITE』より)
いや、すばらしい書き込みですね。アルゼンチンのマンガ学校でユーゴ・プラットが教えていたなんて。日本人もそのころ誰かがアルゼンチン留学するか、アルゼンチンの日系人がそこに通っていたら…日本のマンガもずいぶん変わっていたでしょうね。話は変わりますが、BD情報誌ボドイなどは今でも入手可能ですか?
>BD情報誌ボドイなどは今でも入手可能ですか?
 私は当時「BDnethttp://www.bdnet.com/」で買ったのですが(『auteur: Collectif』で検索すると色々な雑誌がヒットしたので。でも今見たら品切れのものが多そうな…)、今は「BoDoï」の公式サイトhttp://www.bodoi.com/page/にバックナンバー販売コーナーhttp://www.bodoi.com/page/rubrique.asp?id_rub=3があります。利用したことは無いのですが…
ボドイのサイトにボドイの特集号というか総集編みたいなものも載っていましたが?
>ボドイの特集号というか総集編みたいなもの
すみません、どの冊子の事を指していらっしゃるのでしょうか。また、いずれにせよ私は仰っているものの現物を見ていない以上、どのようなものかは分からないです。お役に立てなくて申し訳ないです。。。

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