舞台は明治時代の日本。西洋の影響力が強まり、日本の近代化が着実に進み、町には鉄道が走っている。そこへ現われたのがla Renarde(女狐)と le Champignon(きのこ)のコンビ。彼らの目的は日本を血の海と化すこと。妖怪たちを操っては悪事を働いている。こうした事態を前に日本の警察も黙ってはいない。降魔を事とする僧侶を雇い、妖怪退治に乗り出す。一方、巷で剣の達人たちが相次いで殺されるという事件が起こる。妖怪たちの仕業かと思いきや、これは、両親を武士に殺された Parashurama(パラシュラマ)という男の凶行で、警察はこちらにも力を注がなければならなくなる。パラシュラマに襲われたさる道場の生き残り Yoshu(ようしゅう)もまた、復讐のためにパラシュラマの跡を追っている。ある日彼は、Le Tengû Carré(四角テング)と名乗る天狗に出会う。四角テングは、悪戯が原因で師匠のもとを追い出されたらしい。聞けば、かつて四角テングはパラシュラマの師匠であったという。教えを請うようしゅう。結局のところ、四角テングが教えたのは、道化の術に過ぎなかったことが判明するが、以後2人は行動を共にすることになる。女狐ときのこが率いる妖怪軍団、四角テングとようしゅう、そしてパラシュラマと警察… やがてこの4者の運命が交錯していくことになる…
ということで紹介してみました。「天狗」とか言っちゃってるので、異郷趣味だけでできてる作品かと思いきや、普通に面白かったです。日本人が西洋を舞台にした作品を描きたがったりするのと同じことなのかもしれませんね。この短い紹介ではわかりにくいですが、主役は la Renarde(女狐)と le Champignon(きのこ)のコンビ、あるいは Yoshu(ようしゅう?)という青年のどちらかということになると思います。ラストから考えると前者かな。『Le Cheval Blême(蒼い馬)』にしてもそうだし、『L'Ascention du Haut Mal(癲癇の発作?)』もそうなのかもしれませんが、異形なもの、あるいはマージナルな存在に対する愛(アンビヴァレントなものかもしれませんが…)みたいなものがあるようで、妖怪たちが非常に魅力的です。四角テングが悪戯して、人間が食べようとする米が意識を持ち始めるというエピソードとようしゅうが妖怪たちの一味に加わって顔をなくすというエピソードがなかなか面白かったです。参照したという芳年の影響か、女狐が何やら艶かしい… きのこのについては作者の創作みたいです。きのこが好きなんですって(笑)。日本の妖怪マンガとかも読んでたりするんでしょうか? 序文によると一時期日本の歴史とか伝説とかの類を相当読み込んだようです。作者がどういう読書体験をしてきたのかとかちょっと気になりますね。インタヴューとかどこかにないかな?