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BDについてもっと知りたい!コミュの「Pandora box」シリーズ

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パンドラの箱から飛び出した人間の災いの元となった言葉のうち、人間の七つの大罪と呼ばれる、「Orgueil (傲慢)」「Paresse (怠惰)」 「La gourmandise(暴食)」 「La luxure (色欲)」 「L'avarice (強欲)」 「L'envie (嫉妬)」 「La colère (憤怒)」の7つの言葉と、人間に残された「L'espoir (希望)」が、それぞれの巻のタイトルになった、パンドラボックスシリーズ。
全部で8巻ありますが、それぞれの巻で、お話が完結する、読みきりタイプのシリーズです。

このシリーズ、とても凝ったつくりになっています。

各巻で、現在私達の生活に入り込んでいるハイテク技術を一つ取り上げ、その技術が人間にもたらす災いを、タイトルとなった言葉に絡めて語るという仕組みになっているのですが、それだけでなく、各巻のストーリーは、ギリシャ神話の中のお話に発想を得て作られています。

つまり、それぞれの巻のストーリーは、

・タイトルの人間の七つの罪源の一つ
・現在話題になっているハイテク技術
・ギリシャ神話の挿話、

の、3つの支柱を元に構成されていることになります。

ストーリーは、全巻を通し、Didier ALCANTE (ディディエ アルカントゥ)氏が担当。作画は、1巻と8巻は、Didier PAGOT (ディディエ パゴ)氏が、2〜7巻は、それぞれ違った漫画家が担当しています。

私は、今までに、100冊余りのBDを読んできましたが、『これ!』といったシリーズ物に出合った事は今までありませんでした。単作の、優れた作品に出会う事は、時々あるのですが、シリーズ作品の場合、中の1冊が良く出来ていても、他の作品は・・・という物が多い中、どれも、堅固に構成されたストーリーに加え、かなり高いレベルの作画、という、バランスの取れた、粒ぞろいの作品揃いの「Pandora box」シリーズは、群を抜いていると思います。

Pandora box の公式サイト(仏語)
http://pandorabox.dupuis.com/fr/intro.html
(アニメーション画面の右下の Passer l'intro をクリックするとサイトに入れます)
  
http://pandorabox.dupuis.com/fr/home2.html
(仏語デモ・アニメーションを見ないで直接サイトに入れます)


又、下記のBDサイトでは、ストーリー担当のDidier ALCANTE氏のインタビューを読む事が出来ます。
http://www.sceneario.com/sceneario_interview_ALCA3.html

コメント(12)

「Pandora Box, Tome 1 : L'orgueil」(パンドラボックス 第1巻 : 傲慢)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アルカントゥ)
作画    : Didier PAGOT (ディディエ パゴ)
着色    : Christophe ARALDI (クリストフ アラルディ)
出版社 : Dupuis


アメリカの大統領選挙の5日前、民主党代表の現役大統領のNarcisse Shimmerが有力だと、アンケート調査は示していた。 
Shimmerのライバルの候補者Costnerは、私立探偵のRon Grubbに、Shimmerの人気を落とすスキャンダルを見つけるよう、依頼する。Grubbは、Shimmerが、スタジアムで行われたミーティング中に、携帯電話で会話した事に目をつけ、Shimmerが、産婦人科医と会話をした事をかぎつける。

このパンドラボックスシリーズの第1巻のタイトルは「Orgueil(傲慢 )」で、泉に映る自分に見とれてしまった「ナルシス」の神話が下敷きとなっており、取り上げられているハイテク技術は、『クローン』です。

アメリカの大統領選挙を巡り、選挙を取るか、プライベートを選ぶか、板ばさみになる大統領候補を中心に据え、そして、それに、現在問題になっている不治の病の治療のための人間の細胞のクローニングの許可の問題をからめ、スピーディーにストーリーが展開します。

絵の方は、人物の描き方に、ちょっと癖があるような感じがしましたが、背景など丁寧に描かれており、スムーズに読む事が出来るよう、考えられて描かれている漫画です。
チョット見たところ、幾分テキスト部分が多いような印象を受けますが、漫画化の仕方がうまく、スピーディーに話しが展開するので、読み心地は、悪くありませんでした。

どうして、このお話が、『傲慢(自己愛)』で、『ナルシス』のお話と関係があるのかは、ラストにならないとわかりませんが、なかなか気の利いたタイトルの付け方だと感心しました。
「Pandora Box, Tome 2 : La paresse」(パンドラボックス 第2巻 : 怠惰)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アルカントゥ)
作画    : Vujadin RADOVANOVIC (ヴュジャディン ラドヴァノヴィック)
着色    : USAGI (ウサジ)
出版社 : Dupuis

100 メートル走で、3回も世界新記録を更新した Paris Troy 選手は、腿の故障のため、一時、陸上競技から、遠ざかっていたが、故障から完全に回復し、イスタンブール・オリンピックに向けて、練習を積んでいた。
Paris が休んでいる間、100 mètres走で、優勝を収めたAce Achean選手は、自分は、Paris を破り、オリンピック金メダルを獲得する自信があると吹聴していた。Ace Achean選手は、恋人をParis に取られた事から、Parisを目の敵にしていた。

又、Paris のエージェントから、
現在Paris Troy をコマーシャルに起用しているメーカーが、Ace Achean選手を新たに起用することを検討中であるが、Paris がオリンピックで優勝すれば、莫大な契約金で契約更新をする事が出来るという、
という情報がParis の耳に入る。

怪我は完治したものの、自分の体に何かしっくりとしないものを感じ、思ったように、練習に熱が入らないParis に、彼の兄Hectorは、Hydrolernolという、現在行われているドーピング検査では、見つかる事のなり、ステロイド剤を彼に供給できるとほのめかす。
Hectorは、かつて、Parisと同様の陸上選手だったが、ドーピング検査で陽性の判定が出たため、陸上競技を断念した過去があった。

このパンドラボックスシリーズの第2巻のタイトルは「Paresse (怠惰)」 で、スパルタの女王ヘレンに恋し、彼女を奪ったたため、戦争を引き起こしたトロイの王子のパリスの神話が下敷きとなっており、取り上げられているハイテク技術は、スポーツ選手のドーピングです。

一見したところ、私がとても苦手なタイプの読むところが多い漫画の様なので、「かったるいなぁ」と思いながら、読み始めたのですが、ストーリーがとてもいい上、読むところは多少あるけれど、読み心地はさほど悪くない作品なので、あっという間に読み終わってしまいました。
スポーツ選手の体、そして表情の描き方などに、漫画家の才能が溢れています。

又、ストーリーに関しても、文句なしの作品です。
作品では、ドーピングのステロイド剤が、トロイの木馬の役目を果たしますが、ギリシャ神話を、巧妙に現在に、置き換えたそのストーリー構成には、優れたストーリーテラーの才能が感じられます。
又、長い間「ずるする事」を拒否していたいたスポーツ選手が、外部からの色々なプレッションを受けて、ドーピングに走らずにはいられなくなるまでの心理が良く、表現されていました。
又、意表をついた後半のストーリー展開も、見事。
ラストには、言葉を失いました。
「Pandora Box, Tome 3 : La gourmandise」 (パンドラボックス 第3巻 : 暴食)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アルカントゥ)
作画    : Steven DUPRE (セルジュ デュプル)
着色    : USAGI (ウサジ)
出版社 : Dupuis

エチオピアの飢餓のため、孤児になったTézé(テゼ)は、フランス人夫妻の養子となった。それから、約20年後、厚生大臣となった、Tézéの養父は、Tézéをフランス食品衛生委員会の委員長に任命する。彼が、委員長の地位についてから、新しいタイプの狂牛病に罹った牛が見つかり、狂牛病と同様の症状の患者が、相次いで死亡する。
この新しいタイプの狂牛病で息子を失くした婦人に、Tézéは、この新しい、狂牛病の原因を突き止め、責任を明確にすることを誓うのだが・・・

パンドラボックス第2巻のタイトルは「La gourmandise (暴食)」 で、元になっているのは、ギリシャ神話の「テーゼとミノタレス」、そして、テクノロジーとしては、狂牛病の騒ぎを通じて話題を集めた、「人工飼料の使用などに代表される、新しい畜産技術」が取り上げられています。

とっても、リアリティーがあり、考えさせられるストーリー。
自分達が毎日口に運んでいるものが、どういう経過で生産されているのかが、曖昧な現在、この手の話には、背筋が冷たくなる思いがします。
私達が毎日食べている肉が、実は、・・・ を食べて育ってきたとしたら・・・
やっぱり、気持ち悪いような気がします。

現在の先進国の食品工業と、それを管理する者達へ鋭い疑問を投げかける内容です。決して単純なストーリーではなく、少々読むところは多いのですが、滑らかに、漫画化されているので、すんなり理解することが出来ました。

絵の方は、人物の顔の描き方に、改善の余地がある、と言う人もいますが、人物、背景共に、丁寧に書き込まれており、全体的に好感の持てる絵柄です。
社会派タイプの読み応えのあるフランス漫画でした。
「Pandora Box, Tome 4 : La luxure 」(パンドラボックス 第4巻 : 色欲)
ストーリー : Didier ALCANTE(ディディエ アルカントゥ)
作画    : Roland PIGNAULT (ローラン ピニョー)
着色    : USAGI(ウサジ)
出版社 : Dupuis


特殊撮影を専門とする、製作会社の社長で、アカデミー賞、視覚効果賞を受賞した事もあるEwan Orfayは、ラグナ・ビーチを朦朧として、彷徨っているところを発見され、神経衰弱で、ハリウッドの名士を診察する事で有名な精神医 Bridgeの病院に入院した。

妄想に悩まされているEwanは、うわごとで、Shannon という名を繰り返し叫んでいた。ドクターBridgeは、Ewanの治療のためには、彼の過去を知る必要があると考え、Ewanに、過去を語るように促す。

Ewanは、バーチャル・セックス業界からの依頼を受け、ネットを通して、熱い体験が出来るニュータイプのソフトを開発していた。そして、そのソフトを完成するためには、完璧にセクシーな女性を創り上げる事が不可欠だった。

試行錯誤を繰り返したが、なかなか意にかなうような女性を創り上げる事が出来なかったため、Ewanは、モデルの女性を探すため、ロサンジェルスのクラブを捜し歩き、ある日、Shannon という名の女性と出会う。

Ewanは、彼が開発中のソフトに、Shannon をモデルとして、使うことにし、二人の間には、愛が芽生えはじめたのだが・・・


パンドラボックス第4巻のタイトルは、「La luxure (色欲)」 で、主人公の名前から分かるように、元になっているのは、オルフェとユーリディスの伝説で、テクノロジーとしては、バーチャル・リアリティー(仮想現実感)が、取り上げられています。

ストーリーは、いままでの巻同様、文句のつけようのない程、とてもよく出来ています。
又、グラフィックの方も、既成のBDに囚われない、大胆なレイアウトを屈指しており、読み応え満点の作品に仕上がっています。

テーマがバーチャル・リアリティーなので、読者の理解を仰ぎ、作品に信憑性を持たせるために、技術的な説明を入れる事が不可欠なため、多少、説明的なテキストが多くなっていますが、読みごたえのあるストーリーに加え、漫画化の仕方が良く出来ているので、テキスト部分が多い漫画が苦手な私でも、苦なく読む事が出来ました。

又、シチュエーションに応じ、色々なタイプのページレイアウトを駆使して漫画化されているので、変化に富み、読んでいて、快いリズム感が感じられる作品に仕上がっています。又、人物、背景とも、丁寧に書かれているので、その点も、大満足のお勧めなフランス漫画です。

ストーリーの方は、オルフェのお話を下敷きにしていることから、想像出来るように、悲しい恋の物語なのですが、バーチャル・リアリティーにからめて、とても上手に料理されていました。

情感たっぷりで、とっても良かったです。
Lemon.frさん、はじめまして。

このシリーズ、面白そうですね。
1巻はたぶん東京国際見本市の会場で見かけたのですが、最初の方の手術室のシーンを流し読みしただけで、自分の好みではないかなぁとスルーしてしまったのですが、こんなに読み応えのある作品だったとは。
今度さがしてちゃんと読み直してみたいです。
七つの大罪と絡めてあるあたりは、「Decalogue」シリーズと似てますね。
それがさらにギリシャ神話と現代のハイテク技術と絡めた話になっているというと、現代社会へ対するアンチ・テーゼのような感じなのでしょうか?
Lemon.fr さん、長文のご紹介ありがとうございます! へえー、こんなBDがあるんだ! これ、面白いですね! いちいちギリシア神話をストーリーの根幹に持ってきているってのがすごいですね。主人公の名前がすごすぎ! パリス・トロイにヘクトール・トロイって… まあ、それはともかく、物語的にも面白そうですね。2巻が気になるなあ。オリンピックって着想が面白いですよね。ギリシアつながりだからそのままって言えばそのままなんだけど、『イリアス』の世界をそのままうまく置き換えられそう。アキレウスとかヘレネーとかも登場したりするんでしょうか(笑)? というか Ace Achean(アース・アシュアン?)ってのがアキレウスなのか…? なんか役所が違うような… 4巻なんてピュグマリオンの神話を使ってもいい話ができそうですね。BDにこんなタイプの作品があるのが驚きです。日仏の図書館が購入してくんないかなあ…
abeille さん、

実は、私も、1巻を手に取った時、絵がいまいちと思い、図書館で借りるのを躊躇ったことが何度もありました。
1巻、2巻の絵は、癖があるので、そこのところ、損をしているような気がします。
ストーリーは、とてもいいので、残念です。


ショードヴァル さん、

すごい!ギリシャ神話に精通していらっしゃるのですね。
第2巻にヘレネは、ちょい役で登場します。パリスが横取りしたAce Acheanの元恋人です。
私は、ギリシャ神話はあまり良く知らないので、あまり、その絡みが良くわかりません。もし、日仏の図書館に購入されて、お読みになられたら、その辺の解説して下さるとありがたいのですが・・・。
Lemon.fr(れもん)さん、
こんにちは、
わたしもギリシャ・ローマ時代は大好きなので、このシリーズ、はまりそうな予感……です
今、Murenaを読んでいる最中なので、終わったら、こちらにもチャレンジしてみますね
Kigalisoupe さん、

「Murena」そういえば、図書館で見かけたような気がします。
いつも第1巻目が貸し出し中なので、まだ、手に取った事はないのですが、今度見かけたら、読んでみたいです。


さて、しつこく、パンドラボックスシリーズの続きの紹介をします。
最終巻の第8巻まで紹介したら引っ込みますので、しばしの間、お付き合い下さい。

「Pandora Box, Tome 5 - L'avarice」 (パンドラボックス 5巻 : 強欲)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アリカントゥ)
作画    : Erik Juszezak (エリック ジュゼザック)
着色    : USAGI (ウサジ)
出版社 : Dupuis (デュプイ)


神の様に、株式市場の動向を読むことが出来ると評判の、Midas Management Fundの社長、John Midasが今回の投機の対象として選んだのは、大統領選挙のキャンペーン真っ只中のブラジルの貨幣、レアル。
自分の思惑通り、レアルの値を操作しようと、画策した、Midas には、ブラジルで、貧しい農民に資金を貸すマイクロクレジット(信用貸付)機関で、働いている一人娘がいた。
  

パンドラボックス第5巻のタイトルは、「L'avarice (強欲)」 で、元になっているギリシャ神話は、黄金が大好きで、「自分の触れるものを全て黄金に変えてほしい‥」という願いをアポロンに叶えてもらい、パンや飲み物、そして、しまいには、愛娘まで黄金に変えてしまったミダスのお話です。

そして、今回は、厳密にはテクノロジーではないのですが、テクノロジーとして「為替投資」が、取り上げられています。

この「Pandora Box」シリーズのシナリオを全巻担当しているAlcante氏は、経済学部を卒業し、現在、エコノミストと、BDのシナリオ作家との二束わらじを履いているそうです。

そんな、経済に精通しているAlcante氏による、この第5巻は、BDの域を遥かに超えた、経済小説的なスケールを持つ作品に仕上がっています。

主人公Midasが仕組んだ為替操作のからくりを中心として、ストーリーが構成されているため、かなり、説明的なテキストが多くなっています。

そのため、漫画化を担当した、Juszezah 氏も、かなり苦労している様子が伺われますが、為替投機に、一喜一憂する人々の興奮と、市場の盛り上がり等が良く伝わって来きました。

私は、株式・為替市場に関する知識が皆無で、先物取引の基本的な仕組みすら知らなかったので、Midasが実際に行った為替相場の操作について、作品を読んだだけでは、完全に理解出来ませんでしたが、ストーリーを堪能する妨げにはなりませんでした。
一人の倫理観のないトレーダーが、自分が利益を得るためには、一国の経済を目茶目茶にするのも厭わない様子が、具体的な例を挙て、説明されています。
作品を通して、株・為替取引が、世界的な政治・経済へ与える影響、弊害等について理解が深める事が出来るので、楽しみながら、賢くなれる、一石二鳥の作品です。
でも、先物取引に関する、簡単な説明を、ストーリーの中に織り込むか、それが無理ならせめて、第3巻の様に、頁の下の方に注でも、付けてくれたら、私の様に、経済用語に疎い読者も、すっきりと理解出来る作品になったのにと、そこのところちょっぴり、残念に思われました。

現在の世界中の政治家の事を思う浮かべると、ストーリーは、ちょっと理想に走りすぎている傾向がありますが、残酷だけど、とても素敵なストーリー。
ラストを思い返すと、今でも涙が出てきます。
「Pandora Box, Tome 6 : L'envie」」 (パンドラボックス 第3巻 : 嫉妬)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アリカントゥ)
作画    : Alain HENRIET (アラン アンリエ)
着色    : USAGI (ウサジ)
出版社 : Dupuis (デュプイ)


パンドラボックス第6巻は、近未来が舞台。

ICチップを製造する工場で働いている、Tiborは、同僚の信頼を集めている、リーダシップの持ち主。 ある日、工場で事故が起こり、Tiborは同僚達数人と共に感電してしまう。そばにいた同僚がすぐに電源を切ったため、彼らの命に別状はなかったが、工場長は、念のために健康診断を受ける様に促す。 

同僚が健康診断を受けている間、待合室で自分の順番を待っていたTiborは、同僚の叫び声を聞き、駆けつける。健康診断をしているはずの医師と、同僚がもみ合っているのを見たTiborは、彼の助けに入ろうとする。『医師ら』が、銃のような武器を持っているを見た、Tiborは、同じ工場で働いている恋人と共に工場を逃げ出す。

警察に助けを求めようとしたものの、Tibor達は、彼らが指名手配になっているのを知る。『健康診断』に来た、医師たちが胸に着けていたサインペンに刻まれた『Synapse』という社名から、Tiborは、『Synapse』に関する情報を得、創業者兼社長のAlicia Skillの住所を探り出し、彼女のアパートに忍び込む。

Tiborらが待ち受けていたアパートに帰ってきたAlicia は、Tibor達に、
「彼らは、Synapse社により製造されたアンドロイドだ」と告げる。

パンドラボックス第6巻のタイトルは、「L'envie「嫉妬」。
今回は、テクノロジーとして、「人工知能」があげられています。
そして、元になっているのは、人間に火を与えた為、ゼウスの怒りをかい、コーカサスの山の岩に鎖でつながれ、永遠に、はげ鷹に腹を引き裂かれ、肝臓をついばまれ続ける、という刑に処されたプロメテウスの伝説です。

フランスは、労使の力がとても強いので、労使対策は、フランスの経営者の頭痛の種。
そんな現状をうまく、ストーリーに折り込んだ、背筋の冷たくなるような、近未来が舞台のSFです。

漫画の方は、テキストが集中して多い頁と、絵のみの頁の2タイプのレイアウトを使い分けている、あまりお目にかかることのないタイプのスタイルで書かれた漫画です。
テキストが集中している頁は、読むが少々しんどかったですが、だらだらと読むところが多いページが初めから終わりまで続いている漫画に比べると、メリハリが利いて、作品全体が締まって見えるような気がしました。
とてもよく出来て、分かりやすいストーリーに加え、達者で迫力のあるグラフィック、パンドラシリーズはホント粒ぞろいの作品ばかり、と改めて感嘆しました。
「Pandora Box, Tome 7 : La colère 」(パンドラボックス 第8巻 : 希望)
ストーリー : Didier ALCANTE  (ディディエ アルカントゥ)
作画    : Sébastien DAMOUR  (セバスチャン ダムール)
着色    : USAGI (ウサジ)
出版社 : Dupuis (デュプイ)


化学兵器と用いたテロに対処するため、アメリカは、化学兵器の研究に力を注いでいた。
アメリカ軍付属の研究所で化学兵器の開発にかかわる、女性科学者、Pam Gleam は、幼い頃、両親を交通事故で失くした忌まわしい思い出に、未だに悩まされていた。

ある夜、Pam は、同じ建物に住む、Timothyという少年とその父親と知り合いになる。
Timothyは、生まれつき、内臓器官の一部の膜に異常があり、医師から、誕生の際、余命は長くないと宣告を受けていた。 だが、治療の甲斐あり、奇跡的に、これまで、生き延びることに成功し、母親を交通事故で失くしたが、父親の愛を一身に受け成長していた。

その頃、マンハッタンの海で溺死体が見つかり、指紋から、死体がPam Gleam であると確認される。
又、アメリカ防衛庁付属の研究所でアンドロイド製造担当していた、 Alimighty所長は、コントロール不能に陥ったアンドロイドを回収しようと、全力を挙げていた。
そして、Alimightyは、捕らえたアンドロイドから、Pam に成り代わったアンドロイドが強力な化学兵器を盗もうとしている計画を知る。


パンドラボックス第7巻のタイトルは、「La colère (憤怒)」。
今回は、テクノロジーとして取り上げられているのは、「化学兵器」、そして、元になっているのは、「全てを与えられた」という意味の名を持ち、神々によって造られた最初の女性であり、好奇心に勝てずに開けてはならない箱を開けてしまった、パンドラの伝説です。

「パンドラボックス」は、全巻読みきりタイプのお話からなるシリーズなのですが、この巻は、第6巻の後日談となっているので、私は、第6巻を読んでから、この作品をお読みになる事をお勧めします。
人物の顔の描き方には、フランス漫画で良く見受けられる独特のくせがなく、とても好感が持てる絵柄です。又、背景の構図にも、漫画家のセンスのよさが表れています。
読み心地も、全体的には、それ程悪くないのですが、一部、技術的説明が集中しているページや、公演や会議の部分は、ごちゃごちゃしていて、とても読みにくかったです。
この説明部分のページをもっと増やして、一つのコマのテキストを減らすか、又は、直接ストーリーに関係ないテキストを省くかして、一つのコマのテキスト部分をもう少し減らしたら、ずっと読みやすい作品になって、感動も一段と深まったのに・・・と、そこのところ、少々残念に思えました。
ストーリーは、第6巻の続きで、その後、自由の身になったアンドロイド達が、次々と仲間が捕まえられていくのに危惧し、強硬手段に出ようとします。
偶然の出来事の不幸な連鎖のために、人間が自分達が開発した、テクノロジーによって破滅に向かって行く様子を語ったストーリーは、近未来を舞台にしているにもかかわらず、リアリティーが感じられました。

パンドラボックスの今までの巻と同様、ラストが圧巻。
ラストのニューヨークの空の色が美しさが、とても切なく感じられました。
「Pandora Box, Tome 8 : L'espérance」(パンドラボックス 第8巻 : 希望)
ストーリー : Didier ALCANTE (ディディエ アルカントゥ)
作画    : Didier PAGOT (ディディエ パゴ)
着色    : Christophe ARALDI (クリストフ アラルディ)
出版社 : Dupuis (デュプイ)

ジャーナリストのJackの所に、元大統領 Narcisse Shimmerのボディーガードをしていた男から、 
「大統領選挙の前日に死亡したNarcisse Shimmer大統領に関する秘密を知っている」
とのたれ込み電話が入る。

一方、Streamと名前を変えたShimmer夫婦に育てられた、Adam Streamは成人し、同棲中の恋人は、彼の子供を身ごもっているが、Adamは、訳の分からぬイライラに悩まされ、恋人の元を離れ、両親の住む、田舎の村を訪れる。

ところが、長雨により、村はずれにあるダムが決壊の危機にさらされており、村には、緊急避難警報が発され、村人を安全な場所へ、避難させるための措置が取られた。


パンドラボックスの最終巻。
この間は、第1巻の後日談となっており、この巻には、ギリシャ神話も、テクノロジーも織り込まれておらず、シリーズの今までの巻とは、少々違った趣となっています。 

これまで語られた7つのお話の結論と言えるような作品です。
2〜7巻までは、それぞれ違った漫画家が作画を担当していましたが、1巻と8巻は、Didier Pagot 氏が作画を担当しています。

この8巻の背景のグラフィックはなかなかの出来です。
嵐、洪水、爆発と、漫画家泣かせの、描くのが非常に難しい、シチュエーションが続出するのですが、いやぁ、作画担当のDidier Pagot氏と、着色担当のChristophe ARALDI氏の才能には、脱帽。
凄く迫力を持って読者に迫ってくる絵です。

この巻では、今までのお話に必ず出現し、主人公達が辿る運命を予言した、老いた女の乞食の正体が、明らかになります。

運命や、定めに身をゆだねる事なく、自分の意思で、人生を切り開いてゆく事が『希望』に繋がる、という、著者が出した、結論には、感涙しました。

又、それを、人間が開発したテクノロジーにより生まれた、クローン人間が示しているというのにも、新しいテクノロジーを否定するのではなく、その使い方を考える事が『希望』に繋がるのではないか、という著者の考えが伺われる様な気がしました。

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