David B.（ダヴィッド・ベー）作『Le Cheval Blême（蒼い馬）』（L’Association［アソシアシオン］社、1997年刊）読了しました。日本でもマルジャン・サトラピの『ペルセポリス』（バジリコ）、や『刺繍』（http://
で、どういう本かと言うと、都合14の短編から構成されていて、その全てがダヴィッド・ベーが見た夢という体裁を取っています。時期的には1980年から1991年まで。夢とは言ってももちろん脚色されていることでしょう。基本的にはどれも悪夢と言っていい性質のもので、不安感と滑稽味がないまぜになった、意味があるんだかないんだかわからない、でも圧倒的な話が続いていきます。試みに「L’Apprenti（見習い）」という一編を紹介してみると――屠殺業者の界隈に育った私は、皆と同様に屠殺を生業としている。羊を食肉用に加工する日々を送る私だが、仕事が終わると羊たちにお話を聞かせてやるのを習慣としていた。当然羊たちに僕の言葉が理解できるはずもないが、中には人語を解する羊もいる。ある日、1匹の羊が僕に脱走を持ちかける。工場の屋根を伝い逃げ出す僕ら。工場の職員や警官が追いかけてくる。後で助けにいくと言ったきり羊は別の方向に向かってしまった。僕はとうとう捕えられてしまう。一方、羊は排気管がめぐらされた工場の壁をどんどんどんどん下へと降りていく… おしまい――という感じです。登場人物の非論理的な行動、またそれに対する説明のなさがまさに「夢」という感じでたまりません。比較的筋をたどり易いものを紹介してみたわけですが、中にはもっと奇妙な話がたくさんあります。どれも素晴らしいんですが、個人的には「Le Cirque（サーカス）」、「La Lumière（光）」、「L’Élephant（象）」、「L’Apprenti（見習い）」、「Le Couteau（あいくち）」、「La Mort au Travail（死神の仕事）」あたりが特に好きです。
冒頭で筆者がタイトルに触れて言っているんですが、悪夢（cauchemar）というのは「chaucher」と「mar」からできていて、「chaucher」は「踏みにじる」とか「馬で疾駆する」、「mar」は馬の形をした悪魔を意味するとか。ベーに言わせるとそれは死の象徴だそうで、夢見る人はその「死」から逃れんと、自らの体に鞭を打って目覚めへと疾駆しているわけです。ということで、はっきり言ってるわけではありませんが、タイトルの「蒼い馬」とは、まずは悪夢そのものであり、またそこから逃れようとする彼の姿を指しているのかもしれません。なんかカンディンスキーの絵に同様な作品がありませんでしたっけ？ 夢を描いているので当たり前かもしれませんが、漱石の「夢十夜」とか内田百�里痢慳重咫戮箸�に似てるという印象を持ちました。日野日出志のマンガに似たところもあるかも。もっとずっと乾いた印象ですが… やー、ダヴィッド・ベー、素晴らしいですよ！ 他のアソシアシオン系作家を含めてこれからどんどん読んでくことにします。
*アソシアシオン（ラソシアシオン）については、『本とコンピュータ』2002年春号の付録（？）「マンガホンコ フランス語圏のマンガ（ＢＤ）たち」にアラン・グリースンによる「個性派作家集団「ラソシアシオン」の挑戦」という紹介文があって、これが大変参考になります。
で、どういう本かと言うと、都合14の短編から構成されていて、その全てがダヴィッド・ベーが見た夢という体裁を取っています。時期的には1980年から1991年まで。夢とは言ってももちろん脚色されていることでしょう。基本的にはどれも悪夢と言っていい性質のもので、不安感と滑稽味がないまぜになった、意味があるんだかないんだかわからない、でも圧倒的な話が続いていきます。試みに「L’Apprenti（見習い）」という一編を紹介してみると――屠殺業者の界隈に育った私は、皆と同様に屠殺を生業としている。羊を食肉用に加工する日々を送る私だが、仕事が終わると羊たちにお話を聞かせてやるのを習慣としていた。当然羊たちに僕の言葉が理解できるはずもないが、中には人語を解する羊もいる。ある日、1匹の羊が僕に脱走を持ちかける。工場の屋根を伝い逃げ出す僕ら。工場の職員や警官が追いかけてくる。後で助けにいくと言ったきり羊は別の方向に向かってしまった。僕はとうとう捕えられてしまう。一方、羊は排気管がめぐらされた工場の壁をどんどんどんどん下へと降りていく… おしまい――という感じです。登場人物の非論理的な行動、またそれに対する説明のなさがまさに「夢」という感じでたまりません。比較的筋をたどり易いものを紹介してみたわけですが、中にはもっと奇妙な話がたくさんあります。どれも素晴らしいんですが、個人的には「Le Cirque（サーカス）」、「La Lumière（光）」、「L’Élephant（象）」、「L’Apprenti（見習い）」、「Le Couteau（あいくち）」、「La Mort au Travail（死神の仕事）」あたりが特に好きです。
冒頭で筆者がタイトルに触れて言っているんですが、悪夢（cauchemar）というのは「chaucher」と「mar」からできていて、「chaucher」は「踏みにじる」とか「馬で疾駆する」、「mar」は馬の形をした悪魔を意味するとか。ベーに言わせるとそれは死の象徴だそうで、夢見る人はその「死」から逃れんと、自らの体に鞭を打って目覚めへと疾駆しているわけです。ということで、はっきり言ってるわけではありませんが、タイトルの「蒼い馬」とは、まずは悪夢そのものであり、またそこから逃れようとする彼の姿を指しているのかもしれません。なんかカンディンスキーの絵に同様な作品がありませんでしたっけ？ 夢を描いているので当たり前かもしれませんが、漱石の「夢十夜」とか内田百�里痢慳重咫戮箸�に似てるという印象を持ちました。日野日出志のマンガに似たところもあるかも。もっとずっと乾いた印象ですが… やー、ダヴィッド・ベー、素晴らしいですよ！ 他のアソシアシオン系作家を含めてこれからどんどん読んでくことにします。
*アソシアシオン（ラソシアシオン）については、『本とコンピュータ』2002年春号の付録（？）「マンガホンコ フランス語圏のマンガ（ＢＤ）たち」にアラン・グリースンによる「個性派作家集団「ラソシアシオン」の挑戦」という紹介文があって、これが大変参考になります。
|
|
|
|
|
|
|
|
ＢＤについてもっと知りたい！ 更新情報
-
最新のアンケート
ＢＤについてもっと知りたい！のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています
人気コミュニティランキング
- 1位
- お洒落な女の子が好き
- 90033人
- 2位
- 大人のmixi【おとミク】
- 6415人
- 3位
- 独り言
- 9044人