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BDについてもっと知りたい!コミュの『Les Mauvaises Gens – Une histoire de militants(レ・モベーズ・ジャン―活動家たちの物語)』

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 Étienne Davodeau(エティエンヌ・ダヴォドー)『Les Mauvaises Gens – Une histoire de militants(レ・モベーズ・ジャン―活動家たちの物語)』(Delcourt[デルクール]社、2005年刊)、読了しました。今年1月末に行なわれた第33回アングレーム国際BDフェスティヴァルの Le prix du meilleur scénario(最優秀脚本賞)および Le prix public du meilleur album(読者選考最優秀作品賞)受賞作品です。今まで気づきませんでしたが、日仏のメディアテークに置いてあったので借りてみました。まずタイトルですが、これは文字通りに「mauvaises gens(悪い人たち)」という意味ではありません(タイトルだけ見たらそう考えざるをえませんが…)。最初の方で説明されるんですが、物語の舞台となる Mauges(モージュ)という地名と関連したタイトルです。作者の解説によると、モージュという地名の語源には諸説あるそうですが、何人かの歴史家が「mauvaises gens(モヴェーズ・ジャン)」の短縮形だという説を標榜しているとのこと。元々、フランス革命の際には王党派による反乱の温床になった地域であり、その住民たちは閉鎖的で、信心深く、一方で獰猛な性質を備えているとされており、こうした類推もあながち間違いではないのかもしれません。実際、この作品でもこの地域の人々の、上記とは違った意味での、ある種の人々に対する「mauvaises gens(悪い人たち)」ぶりが描かれることになります。日本語的には非常に訳しにくいわけで、サブ・タイトルの方が話の内容をよく伝えています。
 こういう言葉の使い方が一般的なのかどうか知りませんが、副題にある「militant(ミリタン)」という言葉は、労働者階級に属し、自分たちの権利を勝ち取るための運動をする人々を指して使われています。「活動家」というのはちょっと誤解を招きかねませんが、他にいい言葉が見つからなかったのでとりあえずそう訳してみました。定訳とかありそうですけどね… で、このBDはどんな話なのかと言うと、Maurice(モーリス)と Marie-Jo(マリー=ジョー)という1組の男女の青春時代を通じて、貧しく教育もない地方の労働者階級の若者たちが、 J.O.C.(Jeuness Ouvrière Chrétienne[キリスト教労働者青年同盟])という教会がバックアップする運動をきっかけに社会参加していく様が描かれています。実は、このモーリスとマリー=ジョーという2人は作者エティエンヌ・ダヴォドーの両親で、2人それぞれに、時には2人一緒にインタヴューしていく形で物語が進んでいきます。なんと言っても、2人の少年少女時代の回想が美しい! マックス・カバンヌの『目かくし鬼』(講談社)にも同様なシーンがありましたが、兄弟たちと街路で戯れる場面や教会でコーラスを務めたりする場面がとてもいいです。幸せな少年少女時代とは違って、特にマリー=ジョーの青年時代はつらいもので、マジでかわいそうです… ただ、そうした状況から抜け出るべく彼女や彼女と同年代の若者たちは努力をし、実際、救われていくわけですが… 初老のマリー=ジョーと作者が、かつて彼女が勤めていた町を訪れる場面が素敵で、今はなくなってしまった勤め先の工場、苦い思い出がありながらも郷愁をそそるその工場を作者がスケッチ・ブックの上に再現してみせたりします。後半には、結婚後のモーリスとマリー=ジョーの社会活動が描かれる一方で、2人の息子である作者やその兄弟たちも登場したりします。作者の少年時代の描写も非常に魅力的。この作品は、基本的には作者の両親の伝記だと思いますが、ある意味、作者の自伝ととれなくもありません。
 インタヴューという手法が使われている点で、この作品はアート・スピーゲルマンの『マウス』(晶文社)にちょっと似ています。「別冊本とコンピュータ」の『アメリカンコミックスの最前線』(トランスアート)というムックで、アメコミにおける「コミック・ジャーナリズム」ということが言われていますが、テーマと言い手法と言い、それにも近いものがあるかもしれません。ただ、多分に叙情的な面もあるので、簡単にジャーナリスティックと言ってしまっていいのかはわかりませんが… 僕のフランス語力の拙さ、さらには政治的なテーマ(苦手なんです…)が扱われているということもあって、途中ちょっと疲れてしまいましたが、それでも素晴らしい作品であることには違いありません。ぜひ翻訳されるべき作品だと思います。勝手に決めつけてしまいますが、テーマから言っても明石書店向きじゃないでしょうか? 出してくんないかな…

コメント(2)

ショードヴァルさん、この作品をご紹介下りありがとうございます。

この作品、フランスでは、とても売れて、ダヴォドー氏を一挙に売れっ子漫画家にした作品です。自分の若い頃に、主人公達を重ね合わせることの出来る年代の、BDとは、余り縁のない世代に人達に特に受けたみたいです。

「militant(ミリタン)」というのは、ホント日本語に訳しにくい言葉ですが、労使活動だけでなく、例えば、環境保護のための活動をしている人たち等も指して良く使われています。ある運動に積極的に参加している人たちという意味を持ち、ポジティヴなニュアンスを持っている言葉です。

日本では、フランスと社会的な背景がかなり違うので、この作品、日本人には、すんなり理解出来ないところがあるかもしれませんが、あまり知られていない、フランスの生の姿が良く伝わってくる作品なので、私も、是非、日本語に訳してほしいなぁと思います。
>Lemon.fr さん
コメントありがとうございます。これ、ほんとにいい本ですよね。ただのルポルタージュではなくて、個人的な体験が盛り込まれているので感動的です。「militant(ミリタン)」ってそういう意味合いもあるんですね。こういう言葉は辞書に載ってないので苦労します… モーリスの少年時代を語る箇所で、『Le Tour de la France par Deux Enfants(2少年のフランス旅行)』という本を読んで自分の知らない世界への憧れを抱くくだりとかちょっと好きです。松原秀一の『フランスことば事典』でもちょろっと紹介されてるんですが、この本読んでみたいなー。

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