初期フェーズとして構築され現在稼働するシステムは、Learning Gateway をコアに構成されています。Learning Gateway は、SharePoint Server および SQL Server を基盤としており、学校ポータル機能として、ファイル共有、掲示板などを使用した情報共有や、クライアント側の Microsoft Office 製品とのシームレスな連携が可能となっています。
今回、幕張インターナショナルスクールでは、主にファイル共有を活用。教職員専用のファイル サーバーと生徒専用のファイル サーバーを構成しています。
そして、このファイル サーバーを利用することによって、教師たちによる教材作成がうまく回っていると、幕張インターナショナルスクール副校長である ニコラス ガン氏は話します。
「私たちは、Learning Gateway 上にフレームワークを構築しました。それぞれの教師は ID を持っており、自分の権限で利用できるフォルダに資料などのファイルを格納し、共有することができます。1 人の教師のアイデアをここで参照し、さらに自分のアイデアを加えて活用し、それをさらに共有することで、どんどんと教材が磨かれ、作り込まれていきます」。
こうして活用されるフォルダは、実際には SharePoint Server 上で管理され、Active Directory との連携によって、利用者である教職員と利用できるフォルダの関係が定義されています。これにより、自分の ID が持つ権限のレベルで、利用できるフォルダが特定され、「一般教員が利用できる教材が格納されたフォルダ」、「経営層のみが利用できる職員評価情報の格納されたフォルダ」などのような切り分けができるようになっています。
教師たちは授業中、クラスのスマートボードを経由して、この SharePoint Server 上の「教師フォルダ」内の共有フォルダから、テンプレートとなる教材を取り出し、授業の内容や生徒の要望などに応じてカスタマイズすることで、柔軟に授業を行っています。
一方、生徒についても、ファイルサーバーでのファイル共有が、「創造力を高めることに役立っている」とニコラス氏は評価しています。
「たとえば、教師がクラス内の生徒をグループ分けし、あるグループにはスマートボードを使って作業をさせ、別のグループはノート PC で作業する、というように異なる手段で別のデータ ソースにアクセスしてそれぞれのテキストを作るという授業が行われています。また、違う学年の教材を見比べながら学習するなど、さまざまな方法で、さまざまなものの見方と考え方ができるようになっています」。
そしてもう 1 点、同校の IT 基盤の特徴として挙げられるのが、校内全域に敷かれたワイヤレス LAN です。管理棟、幼稚園棟、小学生棟、さらには校庭でも利用が可能となっています。
情報漏えいなどに関連してワイヤレス LAN に不安を感じるユーザーもいますが、内田洋行の野村氏は、「各棟内の壁に無線機器が取り付けられているのがわかりますが、ネットワーク上ではこれが見えないように設定されています。国内の公立小中学校と比べても、ネットワーク セキュリティのレベルは非常に高いものとなっています」と話します。
また、校内の全教職員は ID を使って PC にログインしますが、Active Directory によるシングルサインオン機能が実現されているため、運用上大きな負荷とはなっていません。生徒については、PC 電源を入れると自動的にログインが行われるようなしくみとなっています。
これらの書類の中には、成績に関わる情報など絶対漏えいが許されないデータが含まれています。このため、Learning Gateway と Active Directory による安全なプラットフォーム上で、電子化して管理することが不可欠となります。本機能については、既に開発を見据えた検討が開始されています。
最後にポール氏は、将来の展望も含め、IT を活用した教育の可能性について、次のように締めくくります。
「教育において IT を十分に活用できればその効果は無限大に広がるでしょう。もし限界があるとすれば、それは教師のイマジネーションの問題だけです。そのため、本校ではイマジネーションの豊かな教師の採用に努めています。現在、全校レベルで考えれば、まだ IT が持つ可能性の 10% 足らずしか活用できていません。将来的には全教職員が 100% 活用ができるよう IT スキルの育成を図り、これによって子供の可能性をさらに伸ばす教育環境を実現したいと考えています」。