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リレー小説 〜ライトノベル〜コミュの時空遡行記

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「ねえ、遼一ぃ」
駅のホームで、一緒にいる男に甘ったるい声をかけた女。
派手な服装だが、それに似合わない黒髪に純和風な顔立ちだ。
年は20代前半だろうか。
「ああ…わかってる」
遼一と呼ばれた男は、けだるそうな声で答えた。
女と同じか、少し上の年齢だろう。
背が高く、何かスポーツをやっていたのだろう、がっしりした体つきをしている。

コメント(3)

刹那、呼び起こされた遠い記憶……あれは、もう2年以上前のことになる。
遼一は、大きな病院の中の一画、ICU──集中治療室の前で立ち尽くしていた。
目の前に、壮年の夫婦。
遼一が、うめくようにつぶやく。
「もう……助からない?」
目の前が真っ暗になった。
とてもではないが信じられなかった。
そんな──そんなバカなことが、あるはずがない!
「どうして……こないだまで、あんなに……あんなに元気だったのに」
見かねた夫婦が、声をかけてくる。
「すまない、遼一君。この病院でも、娘のために最大限の努力を尽くしてくれたんだ。だが……」
「私たちも信じられないのよ。あの子が、なんであの子が……ううっ」
遼一の頭の中を駆け巡る記憶。
それは、付き合い始めたころからの、彼女と過ごした時間だった。
「──沙弥花──」

大学に入ってしばらく経った頃、遼一は恋をした。
おとなしい、自己主張をあまりしない女──だが、はっきりと他の娘たちとは違う何かを、遼一は感じていた。
名前は、沙弥花──偶然の一致か、紗耶香と同じ「サヤカ」という名前だった。
運良く共通の友人がいたことから、二人が一緒にいられる時間を作ってもらうことができた。次第に関係は親密になっていき、そして……告白。
彼女がそれを受け入れたときは、天にも昇る気持ちだった。
それからの時間は、沙弥花との思い出を紡ぐことに全身全霊をつぎ込んだ。
だが、僅か2ヶ月後、元々心臓の弱かった沙弥花が発作を起こし──

そして思い出は──途切れた。

「ねぇ〜、どしたの? 元気ないよぉ〜」
他に乗客のいない電車の中、隣に座った紗耶香が声をかけてくる。
「何でもねぇって」
つらい記憶を振り切るかのように、遼一は強がってみせた。
正直言えば、紗耶香と一緒にいると、ふと──もういないはずの沙弥花がそばにいるような、そんな気持ちになることがある。
性格も、顔立ちも、全く似たところのない二人なのに。
──すまない、紗耶香。俺はきっとどこかでお前を、あいつと重ねてしまっている──
もう昔のことだ。いつまでも過去に縛られ続けたところで意味はない。
──思えば、こいつと付き合うことを決めたのも、過去を忘れるためだったのかもしれないな──
紗耶香の肩を引き寄せ、そっと唇を重ねる。
罪悪感を打ち消すように。

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