最上列に「平和を欲するなら戦争を学べ」とあります。 恐らく、「si vis pacem para bellum」の事だと思いますが、訳が気になりました。自分はこれを日本語に訳すると「平和を欲するなら戦争に備えよ」と訳されるものだと思っています。一応グーグル検索をかけてみましたが、英語では(ラテン語系統なので比較的正確に訳することができる)"if you want peace prepare for war"と訳されています。これを日本語に訳しますとやはり「平和を欲するなら戦争に備えよ」です。 直された方が宜しいかと思いますが、いかがでしょうか。
ネットで検索したところ(日本語サイトのみですが)、
「平和を欲するなら戦争に備えよ」(si vis pacem para bellum)はラテン語の箴言ということでたくさん出てきますが、それがヴェゲチウスの言葉と紹介しているサイトは見当たりません(ギリシャの哲学者セネカの言葉として紹介しているサイトがあったが、本当がどうかは私には確認できませんでした)。
一方、ヴェゲチウスで検索すると、「平和を欲するなら戦争を学べ」しかでてきません。
まず、このSi vis pacem para bellumという言葉の元は実は不確かというのが真相です。一応ヴェゲチウスという事になっていますが、一語一句この通りではなく、Epitoma Rei Militarisという著書においてIgitur qui desiderat pacem, praeparet bellumと書いています。(aeはくっ付いている現代英語に無い文字です)これを現代語訳へ一語一句直訳するとtherefore you desire peace prepare battleとなります。洗練された訳では、therefore, he who desires peace let him prepare for warとなります。(p62, N.P. Milner, Vegetius: Epitome of Military Science, Liverpool Univ. press, 1993).私の独訳になりますが、これを日本語に訳すると「であるからして、平和を欲すならば交戦に備えよ」となります。戦略思想家事典においてはpraeparetの部分が「学ぶ」に訳されているとの事ですが、これは誤訳でしょう。正しくはミルナー氏の著書にあるprepare=備えるだと思います。
私もヴェゲチウスで調べてみましたが、確かにネット上では「学ぶ」で出てきますね。推察するにEpitoma Rei Militarisが始めて日本語訳された時の時の誤訳が日本語の世界で広まってしまっているのでしょう。この本の題が日本語にどう訳されているのかわからないのですが、こういった手の本を入手できる方がいらっしゃったら是非ともチェックをお願いします。ちなみに本題は直訳である「軍事に関する縮図」や「軍事の縮図」では無いようです(安直過ぎたか・・・)
英文wikipediaでは、"Let him who desires peace prepare for war."になってますね。Lieutenant John Clarkeによる1767年版の英訳では、"He, therefore, who desires peace, should prepare for war."です。
リデルハート氏の格言として一応確認しました。「一応」なのは孫引きになるからです。まぁ、でもまさかこんな所に嘘は書かんでしょう。
alex danchv, the journal of military history, vol 63 no. 2 Apr. 1999 pp 313-337において、Liddell Hart氏のStrategy: the indirect approachのpreface(序文)が掲載されており、そこにありました。学校には1941年の初版がありましたので必要ならば確認出来ます。