ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

参加型空想物語_ミルゥのかかしコミュの第二章 出発

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
バルの家はすべてが大きくて、ごつごつとしていた。
あまりものがなくて、あってもとまにはなにがなんだかよくわからないものばかりだった。
トランプ48は二本の尻尾を交互にゆらしながら、バルの家を散策していた。
とまはトランプ48が何かを壊すんじゃないかしらとはらはらしたのだけれど、
その実バルの家のものでトランプ48が壊せるくらい“やわ”なものは何一つなさそうだった。

「北の国。。青い森が厄介だが、しょうがないだろうな、この場合」
バルがどこからか出してきた地図を前にして一人で呟いていた。
イバジンはその地図を覗き込んで、ポケットから出した手帳になにやら書き込んでいる。
バルはそんなイバジンにチラリと一瞥をくれたが、特に何も言わず奥の部屋へと
入って行き、しばらくがさがさといわせていたが程なく戻ってきて、大きな袋のようなものをドサリとテーブルの上に投げ出した。

「それは?」
とまは聞いてみた。

「持っていく荷物だ。おまえのはもう用意してあるのか。」
とバルは当然だろうなという態度でとまの方を見た。

「えっ、いや、あの。。。まだ。。」
またもやとまはへどもどしながら答えた。

「我々は長老におことばを頂いてすぐにここに直行したのだ。
準備はこれからだ」
イバジンがなるべく背を伸ばすようにして立とうとしているのがとまにはちょっぴりおかしかった。

「ふん、これだからミルゥの連中は面倒だ。四の五の言わずにさっさと準備したらどうだ」
バルはイバジンなんて目にも入ってない様子で窓の外を見ながら言った。

「大丈夫よ、すぐできるわ。」
ギャジーが入ってきて言った。
我ながら情けないなと思ったがとまはギャジーの姿を見て、
とてもほっとしていた。

「わたしととまの家は長老の家からそんなに離れていないから、すぐにでも準備はできるわ。あなたが来てくれるならすごく安心よ。ありがとう。出発の前に一緒に長老の家に来てもらえるかしら?あ、そうそう、忘れてた。私の名前はギャジー、そしてこっちはとま、あの小うるさいひとはイバジンよ。長老はこの4人で行きなさいって」
ギャジーはとてもはきはきとしゃべっていた。ギャジーがわくわくしているのがわかる。ショウガ色の髪の毛がふわふわ元気に膨らんでいるからだ。

「トゥマ」
バルはとまの方をみて言った。

「座ってないで、出発だ。だろ?」

とまはバルから名前を呼ばれて、ちょっぴり、嬉しい気分になっていた。

「うん、よろしく、バル。おいでトランプ!」
とまはげんきにバルの家から駆け出した。トランプ48も負けじととまの後を追いかけていった。

イバジンだけが相変わらずバルの家を眺め回して、手元のメモに何かを書き込んでいた。

コメント(4)

「ふう・・・」
と、小さなため息をついたのは
ほかでもない、そのメモ帳だった。

そのメモ帳もイバジンの役に立たないコレクションの一つのはずだったが
おいおい、こいつはため息をついたぞ!

世界じゅうがびっくりしたと同時に
メモ帳は今度はこうつぶやいた。

「僕が役に立つか否かは
 僕がきめることじゃない」
イバジンはぎょっとして小さな目を見開き、自分の手にあるメモ帳をまじまじと見た。
そしてじっと耳を澄まし、今度しゃべったら間違いなく声を聞きとろうと耳を傾けた。

「こいつは・・・このメモ帳は・・使えるかもしれないぞ」

イバジンは内心ほくほくしていた。
長老の家の掃除をしていたときに出て来た、ただの小汚いただのメモ帳だと思っていた代物が。
ワタシの収集家としての素質がこれを発見したのだ。
イバジンは、この不思議なメモ帳が今後彼にもたらしてくれるであろう様々な栄光を思い描き、口元をゆるめながらなおもメモ帳に向かって耳を傾けて立っていた。


「おい、お前。何やってんだ」
鋭いバルの言葉がイバジンの妄想の風船を打ち破った。

イバジンは一瞬ビクリ、としたものの、すぐに体裁を取り繕って
「いや、すぐに行くさ。待ちたまえ」
と、姿勢を正し、手元のメモ帳をそそくさとボタンのあるポケットの中にしまった。
そして戸口の外へとすまして歩いて出て行った。

バルは胡散臭そうにイバジンに一瞥を投げかけた後、
自分の家をざっと見回して戸を閉めた。

「しばらく帰らないかもしれないな」 

バルは青い森のことを考え、それから先を歩くとまやギャジーを一人ずつ眺めた。
途端にふん、と鼻を鳴らし、

「全く頼もしい連中だ」

と言ってから、首を横に振った。
トランプ48が長老の家の窓辺を行ったり来たり、
時々喉を鳴らしながら歩いている。
とまはトランプ48の歩くのを目で追うことだけに気を取られている
・・・ふりをして、ぼうっと突っ立っていた。

さっきから、長老はいつもの杖の上に顎をのせて何かじっと考えてるのか、
寝ているのか、ちっとも動かないし、
バルはそんな長老を肩をいからせながら少し怒ったように見下ろしている。
その回りをイバジンがいつものように飄々と、
要りもしなさそうながらくたばかりを集めて旅のためのかばんに放り込んだり、

「いや、まてよ」
と言ってまた取り出したり、を繰り返していた。

ギャジーもさすがに手持ち無沙汰になって
ショウガ色の髪の毛のてっぺんを手でなでつけたり、むだなことをしていた。

「ジィさん、いいかげんにしないか」

ついにバルが唸るような声を出し、長老の方に一歩踏み出した。
とまはちょっと恐くなってギャジーの方を見る。
ギャジーも手をひっこめて瞬きもせずにバルを見、その後長老の方を見た。

長老の目が眠たそうに開かれた。
両耳も眠そうに横に落ちている。
杖の上に置かれた前足が、一瞬ずるっと滑り落ちそうになった。

「ちょっと長老、寝てないでなんとか言ってよ」
ギャジーが長老の方に駆け寄る。

「ううむ。ワシは最初この石のお告げが不吉なのかと思っておったが・・・」
と、おもむろに長老が話しだした。

寝てるんじゃなかったんだ。
とまはちらっとバルの顔を見上げた。
バルは相変わらず不機嫌そうな顔をしている。

「何かの転換期か、そういうことなのかもしれんな。おまえさんたち次第じゃ」
長老は目を細めてあご髭をなでた。

「いずれにしても、行ってみなければわからない、ということじゃ。
とま、ギャジー、行ってくれるかの。
お前さんらが適任のようじゃから」

ギャジーは力強く「うん」と言い、頭を大きく縦にふって長老の前足を握った。
とまはなんだか胸がいっぱいになって、小さく頷いて応えた。
長老はにっこりとわらって頷き、

「よい子らじゃ。頼もしいの」
と言って、ギャジーの頭をなでた。それからバルの方へ向き直り、

「この旅はお前さんにとっても大切な旅になる。
そしておそらくそのことを、お前さんも薄々感じているのじゃないのかね」

長老はこのときだけ、ぼしゃぼしゃの眉毛の奥の目をキラリと光らせて
バルの目をまっすぐに見た。
バルの浅黒い顔がその瞬間だけ、赤くなった。
とまはバルの顔をまじまじと見た。
バルはとまに見られて一瞬たじろいだみたいだったが、
その後すぐに深緑の外套をわざとらしく翻し、くるりと反対側を向いた。
そしてつかつかとイバジンの所に歩み寄り、イバジンの上着の、右側腰辺りのポケットの中に
ぐい、と手をつっこんだ。

「ひぃっ、な、何をするっ」
イバジンは急にそんなことをされて手に持っていた何かを落っことしてしまった。
バシャン、といってそれが粉々に割れた。
バルはおかまいなしにイバジンのポケットにさらにぐいぐい手をいれ、
何かを掴んだ。
引き抜くと手には「白い骨」が握られていた。

「あっ、それは・・・」
「バル!それは・・」
とまとギャジーが声を上げたのと同時にバルは長老の家の窓をバアン、
と開け放ち、手にした骨を思いっきり遠くへと放り投げた。

わんわんわんわんんわわん!

長老は骨に向かってまっしぐら、窓から飛び出して行ってしまった。
とまとギャジーはまたもや唖然として、遠くにあがる砂埃を見ていた。
イバジンは奪われた骨の数をあわてて計算している。
はっ、と我に返ったとまは、ついついバルの顔を見上げる。

「チッ、全く」
バルはとまの視線を避けるように顔を背け、さっさと外に出て行ってしまった。
入れ替わりに入って来たのはミタムラだった。
今までずっとバルと一緒にいたもんだから、今はミタムラがちょっとだけ小さく見える。
でもミタムラはやっぱり大きく、堂々として、
両腕にいつものバスケットをぶら下げている。
それで思わず、とまとギャジーはミタムラのそばに駆け寄る。
これはもう、ミルゥの村人の体の奥に埋め込まれた自然反応みたいなものだ。

「これ、持っていく、よし」

ミタムラは少しだけ目を細めて、とまとギャジーの肩に大きな手をどしり、
と置いた。
2人ともちょっとよろめいて、けれどなんとかその場に踏みとどまった。

これは、ぼくたちの旅のための特別な食料なんだ。
とまは思った。
ギャジーも、同じことを思ってるみたいだった。
なんとなく、自分たちはとっても大切な任務の旅に出るんだ、という感覚が、2人の中に漲ってきたのだった。

「ご苦労、ミタムラ。流石長老、手回しが早くていらっしゃる」
イバジンがやっとこ自分の荷物の口を結びながら言った。

「さて、後は君たち2人の準備次第、そして北の国へと出発だ」
長老もバルもいないせいか、イバジンはいつもより一層偉そうな口調だった。

とまの心臓がドキドキ鳴った。
ギャジーも、きゅっと口を結んで、目はまっすぐ戸口の方を向いていた。

長老の椅子の近くに放り出された杖の石が、相変わらず不気味な色をして光っていた。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

参加型空想物語_ミルゥのかかし 更新情報

参加型空想物語_ミルゥのかかしのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング