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ライドグライダーコミュのブラック #2 ブラック VS ソニックキャッツ

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連れ去られたドクター・トモロウを取り戻すため、ライダー・ブラック=アティはF★CKIN'BABY号を駆りケイイチと共にジ・アニマルスと決死のミッドナイトチェイスを展開する。

手に汗握るハードな展開!  奇想天外な秘密兵器も登場★

うわさのライドグライダー・ブラック 新章 大突入! 

コメント(24)

ライドグライダー・ブラック その15 じゃいあん?


オレは日本語を喋るのが下手だ。

というか、下手になった。


あの事故以前には 片言のイントネーションながら、もっとスラスラと言葉を話すことができた。

今は、頭にイメージしたものを言葉にするためにイチイチ反復してしまう。
思ったとおりの言葉が口から出てこない。




ドクター・トモロウにも 心配されている。
ドクター・トモロウは あの事故のとき 瀕死のオレを救い、このチカラを与えた。

オレの外見は 事故の前と同じに回復した。

オレは あの事故で 大切な友人を無くした。
オレは あの事故で 大切な愛車も無くした。

心に敗北のダメージが残り、その代わりに、ボディにはパワーが与えられた。






怪物バリゲーターとの 戦いのあと オレは仲間たちの待つ『アジト』へと向かった。

『F★CKIN’BABY』とオレが名づけた新しい特注バイクは、ドクター・トモロウとエンジニア・奈良沢くんによるスーパーマシンだ。
オレのチカラと似たような「電磁パワードによる『開放』のチカラ」が動力になっている。
超硬度のフェンダーに囲まれ、電磁兵器を積み込んでリッターバイク超の馬力で走り回るコイツは、並みのビックスクーターとは 全くワケが違う。
『F★CKIN'BABY号』を走らせることによって オレの傷ついたボディは『開放』のチカラでチャージされ、元通りに復元される。

数十分、『アジト』でケイイチに迎えられたころ、オレのボディにはバリゲーターに噛み砕かれたキズも80%ほど回復していた。

 
部屋に入ったオレは ヘルメットを置き、ドサっとソファに座り込んだ。


「アティ、遅かったね。 何かトラブルでもあったのかと心配してたよ。」

   「ジャイアン。」

「じゃいあん?」 ケイイチが目を丸める。

   「ジャイアンと ケンカ。」 


「無事で何より。 『どらえもん』は役に立ちましたか?」奈良沢がドア越しに声をかけてきた。彼は一日中、『アジト』の中の奈良沢専用の研究部屋で奈良沢専用の実験・研究を繰り返す奈良沢専用メガネをかけた男だ。

   「マダマダ お互いの意思の疎通がトレナイけどナ。」
 オレのボディと「F★CKIN’BABY」の『頭脳』は シンクロの機能がある。まだまだ発展途中なのだが・・。


「アティさん、ボスがラボから戻ってきたら またレポート提出ですよ。」

    「ああ。   オマエ 代わりにヤットイテクレ。」

「駄目ですよ。ドクターもラボでお待ちかねです。」 ケイイチが苦笑する。

『機動力』『戦闘力』の向上のために ボスとドクター・トモロウに面倒臭いレポートを提出するのがオレの義務だった。アジトから数キロ離れたラボに転送して「F★CKIN’BABY」の『頭脳』のデータと比較して修正するのだそうだ。




 「おっと 言った早々 ボスのバイクの音だ。」
 手を休めて 部屋に入ってきた奈良沢がカップラーメン片手にそう告げる。

「でも  なんだか いつもより エンジン音がでかいな・・」


「ボク、ゲートを開けてきます。」 ケイイチは アジトの隠しゲートへボスを出迎えに行った。


ドドダダダッダダダダダダ・・・

ボスのハーレーの音が近づく。

ドドドドド・・・・        ドガガ!

だが、それは 減速することなく ゲートの横壁に激突して止まった。


「来て  早く!   ボスが大変だ!」  ケイイチの叫びが聞こえた。






  奈良沢とともにゲートに向かうと 焦げ臭い煙の中、髭もじゃの大男 ボスが体中をキズだらけで流血しながら 横たわっていた。

 覗き込むと、血だらけのヘルメットの中で 朦朧としながらボスがオレに言った。


「 トモロウを・・
 
     ア・・・     アニマルズ  が・・
                           トモロウを・・

  
                                救え・・    アティ・・・」
      






あの事故で、心にダメージが残り ボディにはパワーが与えられた。

このボディには 使命がある。
   
ライドグライダー・ブラック その16  『センサーアイ』


オレとケイイチは ボスと奈良沢をアジトに残し、互いのバイクでゲートを飛び出した。

ヘルメットのインカムから奈良沢の声が聞こえる。
「アティ、ケイイチ、ボスの話だとラボが『ジ・アニマルズ』に占拠され、ボスがドクター・トモロウを連れ出したところを襲撃、ドクターを拉致されたようです。
ボスはダメージで意識を失いました。ハーレーの通信装備もほとんどヤラレちまっています。
ボクは、残った走行データでできる限りハーレーの走行ルートをトレースして、そっちのモニターに送信します。
二人とも 急いで!くれぐれも気をつけて!」



まもなく奈良沢からのデータはBABY号のモニターに映し出され、ケイイチの乗るFORZA-Zが後に続いた。

ケイイチのFORZAは奈良沢の借り物だ。
走りは至って普通の250CCなのだが、その漆黒のボディには 奈良沢専用のメカニズムが濃縮されているそうだ。
しかし、奈良沢専用なだけに、奈良沢以外にはその特殊機能の使い方が分からないところが問題だった。
まあ、タンデムで人を乗せやすいところが一番の能力なのでは?と思う。

オレは FORZAを引き離し過ぎないようにしつつ 速度をあげた。


やがて、アジトから北に離れた山道に2台のバイクは差し掛かった。

「データの障害と時間で割り出すと、おそらく、その近辺で襲われた模様です。
何か手がかりになるものを探してみてください。」
これで 奈良沢の遠隔捜査は限界になった。
あとは、痕跡をこの『目』で探すのみだ。



オレはBABY号を停め

「変身!」と 声をあげた。

声紋に反応して被っているフルフェイスの内部から黒いコールタールのようなラテックスが顔を伝って降りてくる。

オレは『センサーアイ』を取り出し、顔面に近づけながら自身の電磁レベルをあげた。

特殊ラテックスは、体内から発せられる電磁サイクルによって固形化され『センサーアイ』はオレの顔面と一体となった。


ジ・アニマルズは 痕跡を残す。
奴らが変体して現れた場所には 紫外線反応する分泌物が散布されている。
オレの『センサーアイ』には 暗視カメラのように奴らの痕跡を読み取る機能があるのだ。

少し遅れてケイイチが着いたころには オレはすでに痕跡を発見していた。


道端に点々と白く残るシミを追って再びバイクを走らせる。


奴らはその山道を走り抜けていた。複数だ。


「ケイイチ、  先に行くゾ。」オレはFORZAに通信してBABY号の速度をあげた。




『センサーアイ』越しに見る深夜の森は 太陽を待たずして朝もやのように薄紫の煙霧を揺るがせていた。
ライドグライダー・ブラック その17  セクシーだった。


「開けてくれ、キティ。」

ティガは アタシにドアを開けさせると背負っていた『獲物』をハリアーの後部席に押し込んだ。

獲物・・・いかにも運動不足の中年体型のオヤジは指示どうり傷つけずにスタンガンで気絶させてある。 
襲撃したラボでは瞬撃で3人殺した。
『獲物』を連れて逃げ出したハーレー野郎はしぶとかったが、アタシとティガのチームプレイで最終的には獲物のオヤジはアタシたちの手中に落ちた。
まあ 残念なことにはハーレー野郎を生き逃してしまったことと、ティガーの左肩を野郎の閃光弾で抉(えぐ)られちまったことだけど。。



「運転・・ オマエがしろ。」
ティガが指示するから アタシは急いで『スガタ』を戻して、服を着てハリアーのエンジンをスタートさせた。
タフなティガは、今の『スガタ』でキズを癒してからヒトの『スガタ』に戻るのだろう。
ヒトの『スガタ』では、治癒に5・6倍の時間がかかる。
彼はバックシートに前かがみに目を閉じ座り肩で息をしている。
逞しい背中や腕の盛り上がった筋肉の表面を覆った模様が呼吸に合わせて大きく動いている。


森の木々が覆いかぶさった真夜中の山道をしばらく走りつづけた。

「そろそろ アンタも戻したら?  『スガタ』を・・」
アタシがそう聞くと ティガーは低く押し殺したような声で答えた。

「能力を戻したオマエには 聞こえないだろうが、追っ手が迫って来ている。 オレの耳には 聞こえる。
 もう一度 戦いになるだろう。オマエはその『スガタ』で運転しろ。
追いつかれたら オレが戦う。」


ヒトに戻ってしまったアタシの聴力では聞き取れないオトも アニマルズのままのティガーには 聞こえていたのだ。
数分後、アタシにもたしかに追っ手のオトが確認できた。

オトからすると追っ手は1台のバイクだった。
でも その姿は見えない。
真っ黒なバイクとライダーがバックミラーに映り込まないようにヘッドライトを消したまま暗闇を追跡しているのだ。

アタシは接近するバイクを振り切ろうと アクセルを踏み込んだ。  

しかし予想以上に相手の加速は凄まじく、ハリヤーのテールランプが反射して、真後ろまで近づいた追っ手の姿が見えたかと思った瞬間、

突然、運転するアタシの目に激しく眩しい光が飛び込んできた。


アタシたちを追うバイク全体が暗闇の中、物凄い光量で発光し ルームミラーからのフラッシュを浴びたアタシの視界は真っ白になって 視力を奪われた。

「うああ!   眩しい!

    キティ    大丈夫か!?」

グギャギャギャギャギャ・・

  叫ぶティガに答える間もなく、猛スピードで走るハリアーは左のボディをガードレールで削りだした。

「ヤバイ   ヤバイよ  ティガ   見えないよ!」


「いいか!  速度を落とすな  ゆっくり右にきれ。
   無理して目を開けるな。  しばらく目を閉じてれば視力が戻る。
   落ち着け。  次は ひだり・・」

   ティガは アタシの目に代わってハンドルの指示をだした。
  言われたとおり瞳を閉じたまま 声を頼りに爆走する。


 ドガっ!   
     「うう!」追っ手のバイクが走りながら車体を攻撃してくる。

   何度も衝撃を食らい ハリアーはそのたびに大きく左右に揺れて
 ガードレールに接触した。

  「畜生!  どうだ 視力は?  大丈夫か?」


 「う・・  うん。   すこしずつ 戻ってきた・・・」
   薄目を開けたアタシの眼前に  急カーブが現れる。

   ギキキーーーーーーッ    半スピンするハリアー。


  ドドッ   ガスッ   かまわずに闇に溶けた追跡者の攻撃は続く・・
 

 「ひるむな キティ。
       オレには ヤツの姿が見える。
          オマエは獲物を連れて逃げ切れ!
             追っ手を倒したら すぐに行く。」 

そうアタシに言うと、ティガは背中の縞模様を躍らせて 疾走するハリアーのドアから飛び出した。


 バムッ!
 
バイクから発射された閃光弾を空中で掻い潜るティガ。

  その『スガタ』は、アタシにとって最高にセクシーだった。
ライドグライダー・ブラック その18  ドラッグ・ロータス号


ジ・アニマルズ特有の分泌物のあとを追ってBABY号を走らせたオレのセンサーアイは、やがて山道を走る1台のSUVを見つけた。

ヘッドライトを消し、闇に紛れて加速する。 まさに、センサーアイが無くてはできない芸当だ。


まもなくして オレは目標のSUV ハリアーに近づいた。
スモーク張りの車窓でもセンサーアイを使えば、ある程度のようすが認識できる。 敵は2人。 前後の座席に分かれて乗っている。
おそらく ドクター・トモロウは後部席に拉致されているのだろう。


オレは、堅実な奈良沢が嫌う「無茶な作戦」をとった。
ぴったりとハリアーの後ろに張り付き、BABY号とシンクロして放つスーパーストロボ『ライジング・ブラック』: オレのボディとBABY号のフェンダーに仕込まれた発光体が猛烈な閃光を発する。
 敵のドライバーを目潰しすると、ハリアーは左右に揺れ、車体をガードレールにぶつけながら暴走しだした。

オレは構わず接近して、ハリヤーの車体目掛けてサイクロンパンチを見舞う。
サイクロンパンチは直接相手に拳を当てずに、電磁パワーを振動波に変えて腕から発する攻撃技だ。

数発のパンチの衝撃で何度も車体は大きく揺れながら、急カーブに差し掛かった。オレは攻撃の手を緩めない。


もうしばらく攻撃を続け、窮地に追い込めば、衝突して止まるか車を捨てるだろう・・・オレがそう思ったとき、ハリヤーの後部ドアが開き、敵が車外にジャンプして躍り出てきた。


またしても半獣人・・
オレは コックピットのスイッチに指を置きBABY号の閃光弾を発射させた。

見るからに凶暴そうなトラ模様の半獣人『アニマライズド』は、2発の閃光弾の間を潜り抜け、一度着地して手足で地面を蹴り、高く跳躍した・・・ネコ科っぽい体の柔らかさが気持ち悪い。


  ガリイイーー

ヤツは跳ね上がるや、いきなり正面からF★CKIN’BABY号のフロントカウルに爪を立てて飛び掛ってきた。
ハードコーティングのカウルに深いキズをつけ、オレの顔面を狙った鋭い爪を寸でのところで交わすと、ジャンプしてそのまま車体を飛びこえる。
振り返ると、一旦後方に回った敵が凄い瞬発力でまたもBABY号に追いつき襲い掛かろうとしている。


「追跡の邪魔が入った。
        またしてもデートのお誘いだ。」ケイイチと奈良沢にボヤく。

「しようがないな。ちゃんとデートの相手に忙しいって言っといてあげなきゃダメですよ。

ケイイチ君、アニマルズはアティに任せておいて追跡開始です。」
奈良沢の声にケイイチが答える。

「はい。   ・・・でも、まだアティの姿も見えない。こんなに距離が空いて このFORZAじゃドクターの乗せられたハリアーに追いつくのも大変だ。。」


「大丈夫、ケイイチくん、僕のドラッグ・ロータス号をナメちゃダメですよ。
じゃあ まず、左のコンソールを開けて10キーを操作してください。」

奈良沢の声がインカムから聞こえる。

「『0862**』 これでアルティメーテッドモードです。
地形に合わせた適正加速は僕がここから遠隔で操作しますから、
ケイイチ君は振り落とされないように ちゃんとつかまっててくださいね。
大丈夫、 ホント 大丈夫です。 僕のドラッグ・ロータスですから。」

声のトーンが上がった。 奈良沢の気分がアッパーになっているようだ。 

オレはとりあえず二人を放って置いて、まずはトラ退治に専念することにした。
ライドグライダー・ブラック その19  アルティメーテッド・パワードアーマー・モード



僕が奈良沢さんの指示どうり10キーを操作すると
 バスン   バスン  とサスペンションから音がして いきなり車高が低くなった。
シート後ろのフェンダーからは2枚のウィングが現れ、続いてハンドルの角度も低くなり
僕の姿勢が前傾のポジションに変わると、FORZA-Zは信じられないほどの急加速を始めた。
FORZA-Z:奈良沢さんのドラッグ・ロータス号が遠隔操作モードに入った。

ホントだ、コレじゃ下手すると風圧で吹っ飛ばされそうになる。

アクセルスロットルを自分で開閉して自分の感覚で運転するのとワケが違い、
まるで ジェットコースターに安全装置なしでしがみついてるようだ。

          マジ ちょっと 怖い。

「どうだい、ケイイチ君! 
  さっきまでのドラッグ・ロータス号の走りとは 別段じゃないかい?」  奈良沢さんが 上ずった声で話しかけてくる。

「この遠隔操縦装置は、アティのBABY号のシンクロよりも最高速も操縦性も勝っているんだ。 ただ、唯一の問題点としては、遠隔操作の方法が僕専用のプログラムで動いているから、他人には操作できないところなんだけどね。
でも、このシステムを使えば 僕は100歳のじいさんにも時速300キロの世界を肌身で体験させてあげることができるんだよ。ハハハハハ・・」

僕は 真っ暗な山道で 時速280キロを肌身で体験している。
このバイクを降りるころには 105歳くらいの年寄りになってしまうかもしれない・・

僕が105歳になったころには 妹のチサは100歳か。。もう2年も会っていないな。。
・・・そんな事を考えているうちに 間もなくドラッグ・ロータス号はアティの姿が見える距離に差し掛かった。

「奈良沢さん、 アティだ!  モンスターと戦っている!」


「うんうん。 こちらのモニターでもよく見えています。
  『怪獣ゴッコ』は彼の専門分野です。
     僕らはスルーして追跡を続行しましょう。」

 奈良沢さんは 丁寧クールだ。 

ドラッグ・ロータス号は アティがモンスターを引き付けている横を 言われたとおりに、距離を開けブッチギって通過した。


やがて今度は僕の目に濃色のトヨタ・ハリアーの姿が現れた。


「ケイイチ君、あのクルマですね。
追いつき次第、ドラッグ・ロータスは『アルティメーテッド・ラピッド・モード』から『アルティメーテッド・パワードアーマー・モード』に移行します。
10キーをリセットして『99*451』で再入力してください。」
 
  な・・長い・・  名前が長い、、
そして 「うう、  たまんねぇ」という奈良沢さんの小さな独り言が聞こえる。 
ハリアーの真後ろに密着して、僕は10キーを押した。


 ウグググググ・・・ グイングイングイン・・

早速、再変形するFORZA。

 今度は凄い! 

   とんでもない!


ナント、走行しながら、フロントが持ち上がり、前ホイールの位置が後ろホイールの直前の位置までスライドした!

他から見ると きっと僕は、
「フェンダーごと前タイヤが外れたビッグスクーターにしがみついて必死でウィリーして直立させたまま走っている器用なライダー」
のように見えているのだろう。
でも、
奈良沢専用モードになったドラッグ・ロータス号はハンドリングもアクセルも、一切が僕の意思を離れ、奈良沢専用コマンドで走行している。僕はまるで FORZAにつけられた等身大のバイカー・フィギュアみたいなもんだ。

「ケイイチ君、落ちないように注意してくださいね!
 『アルティメーテッド・パワードアーマー・モード』では、ライダーの体重がないと車体のバランスが取れなくなってしまうから、こちらの操縦もできなくなってしまいます。
 頼みますよ!」
  ・・・どうやら 等身大フィギュアには「錘(おもり)」の役目があるらしい・・・

奈良沢さんの声が一層 甲高くなる。

「そおおら!
 コレからが僕のドラッグ・ロータスの本領発揮だ!

いくぞ! アニマルズ! これが 『アルティメーテッド・パワードアーマー・モード』だああ!」

 インカムの向こうで 叫ぶ奈良沢氏。
 ただスクーターにしがみついたままの僕・・・



 バコン!

   グーーーーィン・・・   ガツン ガシン!

セグウェイのように直立走行するFORZAの底辺から、いきなり1対の金属の腕が突き出し、前方のハリアーのボディを引っ掴んだ。



うーーーん・・・

  確かにこれで
  奈良沢専用ドラッグ・ロータス『アルティメーテッド・パワードアーマー・モード』は、ハリアーからは引き離されない・・
                         ・・・らしい。。
 
ライドグライダー・ブラック その20  ヒトオモイにヤッテ あげる



アタシは クルマから飛び出したティガをバックミラーのなかで確認すると思い切りアクセルを踏み込んだ。

「バイバイ  セクシーなティガ。
 アンタは一生懸命頑張って戦って アタシを逃がして。」

 アタシが投げキッスを送ると ミラーの中のティガとチェイサーの姿は闇のなかで小さくなり見えなくなった。


ダッシュボードからケータイを探り出してアイツの留守電に吹き込む。

「獲物は捕獲したワ。 今からアタシが一人で連れて行くから。」



ケータイをジーンズのポケットにこじ入れると 何かがまた接近してくるのに気がついた。 さっきのバイクとは違う奴だ。

チキショウ もう一人いたのか!
こいつも 凄いスピードで走ってくる。
          ヤバい、逃げられない!


くそっ それならこうしてやる!

         ギキキイイイイイイーーー

アタシは 相手をクルマの後ろに激突させるため 急ブレーキを踏んだ。

しかし それより早く相手のバイクは何かおかしな具合にフロントを上にあげ、立ち上がったバイクの下腹から2本の腕のようなものを突き出してアタシのクルマのトランクハッチを掴んだ。

「何 やってんだ!?  コイツ!」
アタシは吃驚してもう一度アクセルを踏みなおす。


 キキキキキキィィーーー   バン   バン!

 リアウィンドウに何かが発射されて ガラスが砕け散った。
    

「バカヤローーー!  メチャクチャやりやがる!

アタシをナメンじゃねぇえ!」

 沸騰したアタシは 思い切りブレーキを踏んでハンドルを切った。

 ギャギャギャギャギャギャ    回転するハリアー。

アタシは止まったクルマを降りると 地面に投げ出された追跡者を見つけた。

男は吹っ飛ばされて路上をごろごろと回転してひっくり返った。


 
着ているシャツとジーンズを脱ぎ、下着を外しながら男のほうに向かって歩く。

途中で視界が一瞬暗くなり、次第に脳のなかに黄金のイメージが湧いてくる。
脳みそが金塊に入れ替わっっていくような感じだ。

「アアアア  アアアア  アアア  アアアアア・・・ ハアハアハア」

全身に快楽が訪れ、アタシは歓喜の声を漏らした。
筋肉や内蔵や体液が沸騰しているのが解る。
再び アタシは 『スガタ』を変えた。


正気を取り戻した男は アタシの『スガタ』に気がつくとフルフェイス越しに悲鳴を上げていた。

「あわ   あああ    ああ・・・」


完全に変態が終わると 闇夜はアタシの味方だ。


「ホントはユックリあそんであげたいケド

   今日はアイニク時間が ないんだニャア・・

     ショウガナイからヒトオモイにヤッテ あげる」

 怯える男の正面に立ち、アタシは舌なめずりして 高々と爪を振り上げた。
ライドグライダー・ブラック その21  さよーニャら


近づいてきた女モンスター::化け猫!?は 地面から起き上がりかけた僕に向かって、いきなり鋭い爪を振り下ろした。

  ギャン!        ギリギリで避けた爪が僕のフルフェイスに当り 嫌な音を立てた。


僕は 死に物狂いで道路の上を転げまわって逃げる。


   ドスっ    
        「 !   ・・・ううううう」   苦しい!  怪物女の足が 僕の腹を踏みつけた。  

「だからさぁ   アタシ 急いでんのよ!
   解かってないのねぇ・・
    ドウセ殺されるのだから 
        ナルベク痛くないように   ナルベク怖くないように

ラクに早めに ヤッテ貰ったほうが アンタには トクじゃないの?
   
   アタシは ホントは 時間さえあれば ユックリ 悲鳴や血や内臓の匂いを 楽しんでプレイしたいのよ!
   ホント  わかっちゃいないのねぇえ!」

そう言いながら 猫女は 僕の太ももに長く尖った人差し指の爪を突き立てた。


   ぎゃああ!
             激痛っ!        」
            構わずに 爪をグリグリと傷口にねじ込む。


      跳ね除けようとした僕の右腕は捕らえられ 凄い握力で手首を捻じ曲げられる。

  うああああああぁぁぁ・・・・  
                 やめてくれえぇぇぇぇ・・・・




「ケイイチ君!   逃げて!
  落車してしまったドラッグ・ロータスは 役に立ちません。
   何とかして その場を逃げて ブラック・ロータスに跨ってください!」
  ヘルメットに奈良沢さんの必死の声が響く。
   ・・・逃げれるもんなら 逃げてますよぉ・・・


「ボロボロのヘルメットの内側のアンタの泣き顔が 美味しそう。」
化け猫は目を光らせて ヘルメットのシールドの前で人差し指を立て、
僕の眉間を指差した。

僕の頭の中で いろんな出来事やいろんな人々のことがぐるぐると回りだし、そして 頭のなかのルーレットは妹のチサのところで止まり、その顔がシールドの向こうの猫オンナの顔とオーバーラップした。



僕は、  この化け物に 殺されるんだな・・

    この化け物も   ほかのやつらと おんなじ・・
       昔は 普通の 人間だったのだな。。

    できることなら  僕にも

      パワー  が   あれば・・

          く    や   しい・・



 

 


化け猫は   尖った人差し指のつめ先をシールドにあて
  グリグリと回した。

     ピシピシと透明なシールドに亀裂が走る。


「それじゃあ      さよーニャら。」




     パシッ


  
    
 猫オンナの細く硬い爪が シールドを貫通して 夜の空気と共に僕のヘルメットに侵入したのだった。   
ライドグライダー・ブラック その22  ニャンコ先生


鋭い爪と牙で何度も繰り返しBABY号に乗ったオレに襲い掛かるトラ人間。

このままバイクに跨って、コイツと『かけっこ』だの『鬼ごっこ』だのやっていても 埒が明かない・・・一気に片付けてしまったほうが手っ取り早いか・・

いきなりブレーキをかけ、繰り返しアタックをかけてきた怪物に肩透かしを食らわした。
怪物も四足でブレーキをかけ、対面した地面に這い蹲(つくば)る。



キュアアアアアアアーーーーーーーーン


対峙したオレたちの横を猛スピードでケイイチの乗った奈良沢のFORZAが通り過ぎた。

 
 アレ? あのFORZAってアンナニ早かったっけ? 
   
   まあ イイヤ
        オレには 目の前のニャンコ先生とのお手合わせがある。



口から牙を飛び出させ、その先端から唾液を垂らしながら ニャンコ先生は オレを睨んでいる。 目がイッテるから見る者に恐怖感を倍増させる風貌だ。


面と向かったBABY号から閃光弾を放ち、怪物が怯む隙にBABY号を離れた。

今度は走るオレをターゲットにして襲い掛かろうとするトラ人間。
素早く道路から森の茂みにダッシュすると奴も続いた。


木々の間をフットワークを使ってジグザグにつっ走るが 途中でヤツの姿が消えた。

 思ったとおり高さのある木に駆け上って空中からオレを攻撃するつもりだ。

 センサー・アイの機能を使い暗闇の森の木々にサーモセンサーとUVセンサーの網を廻らして、ジ・アニマルズの体温と分泌物から敵の居場所を狙い当てる。


  バっ    
        バッ

                   バっ

                       バッ

 オレは走りながらも懐から数枚の楔(くさび)形のをブレードを取り出し握った掌から闇に向かって発射した。
 

     ドズっ


  直後、地面に落下する一匹のケダモノ・・・ヤツに命中したブレードにはオレの身体から電流が帯電し、急所に当たった場合は気絶させることができるのだ。


  
 オレは、墜落した叢の上で痙攣するトラ人間に駆け寄った。      
 身体の自由は利かないものの、意識はあるようだ。

「オレのピップ・エレキバンは効き目サイコーだろ。

  オイ、 ドクターをどこに連れ去るツモリだ?
     もうイッパツ 心臓に食らいたくなかったら 吐け。」
 
  ヤツの胸の上でブレードを握って問いかけた。


 「 ・・・ ラエ・・」

    ヤツが か細い声で答えた。


  「・・・   コ  レ      ・・・ラエ・・」


「ハア?   何だ?  キコエネーゾ!」
  
 オレはヤツの口元に耳を近づけた。

  「  ・・・  コ   ・・レ  デモ・・


              クラエ!」

      バババっ

   オレの頭部を狙ってヤツの鋭い爪が繰り出された。 

         ドンッ
 
        寸前でオレは交わしながら トラ人間の腕を掴み、体中の電流を集めて放出する。

 


      ドダダダ    ダダダダ   ドダドダドダ・・



   高圧で感電したヤツの体は、寝そべったままハイスピードで死のブレイクダンスを踊りだした。
 
ライドグライダー・ブラック その23  逃げるんだ!


「殺されるんだ・・・このまま  このモンスターにやられて・・・」

  ボクは 観念した。 

  シールドを突き破った鋭いつめが眉間に突き刺さる・・・


     ボシュっ・・・


「痛っ!」   と  感じた瞬間、
   遠くで何かが破裂するような音が聞こえ、突然、ボクの視界からネコ女の姿が消えた。
       
 
    ドガガッ

   
  横たわるボクの横に何か黒い物体が飛来してきて地面に落下した。

 「ケイイチ君、早く立って!

     とりあえず何とかしたけど、このあとは僕じゃなんともできない・・  早く 立って走って逃げるんだ!」
   メットのなかに奈良沢さんの叫びが響く。

  必死のボクは足の痛みも忘れ、立ち上がった。
 横を見ると 黒い物体・・・なんと、ボクが跨っていた奈良沢さんのロータス号のシートが転がっている。
 
 「ケイイチ君、やつらの車を奪って!
   ドクターを連れてそこから逃げるんです!
  あ!  シート持ってた方がいいですよ!   きっと・・・」
    
 ワケが判らないがとりあえず、ボクは言われたままにバイクのシートを拾い、ハリアーに向かって走り出した。


   
    ザンッ!   


       いきなり 闇からの攻撃! ネコ女だ!   早い!!

 正面に抱えたシートに衝撃が伝わった。
      ボクに一撃を喰らわせたネコ女は瞬間、闇へと姿を消した。
すぐにまた攻撃を仕掛けるつもりだ。 

  「わあああああああああ!!!」
      ボクは 叫びながら夢中でシートを振り回しながら走った。



   バスンっ!

  またもや シートに爪が立てられた。 目の前に光る目!

「ゴのニャロおおおおおお!!!!」

     シートに突き刺さった爪を抜かずにネコ女は僕に向かってシートを押し込んでくる。

  ボクは押されて、よろけながらも徐々にハリアーに近づいた。



  バリバリ  バリ

      凄い音を立てて、盾にしたシートを突き破るネコ女の右腕。
   パニックになったボクは 腕が突き出したシートを握り締めたまま、無我夢中、チカラ任せに暴れ周る。
  ネコ女も左腕を振り回して、ボクの身体を爪で狙った。


  「フーーーーーーー!!!!」 
 死に物狂いで暴れるボクにネコはキレている。


   バシュ!     痛イっ! 腕を裂かれた!  
         
    目の前では 突き出た鋭い爪が顔面のシールドを引っかき続けている。

  「うわわわあああああああああ!!!」
    ハリアーはもうすぐだ。 ボクは力を振り絞り、両手に持ったシートを振り回した。


  
  「ギャン!」     バランスを崩してよろけるネコ女。
           ボクがシートから手を離すと見事にひっくり返った。
   そして その隙にハリアーのドアを開け 乗り込む。



   バン!   バン!   バン!

   
   車の外からドアに体当たりするネコ女を残してボクはアクセルを踏んだ。

    とにかく   とにかくコイツから逃げるんだ!
ライドグライダー・ブラック その24  任せてください。



 ギョギャギャギャギャ
    
   思い切りアクセルを踏むと ハリアーは軽く尻を振りながら走り出した。
 

    ボゴッ
        ボディに何か当たった。

          バックミラーに一瞬FORZAのシートが映る。
          ネコ女が投げ飛ばしてきたのだ。  

   かまわずボクはアクセルを踏み、細い山道のカーブを曲がり続けた。

   周りの暗闇にネコ女の姿は見えない・・・逃げれたのか・・
     獲物を逃したモンスターは苛立ちのあまり、腕が突き抜けたシートを放り投げてきたのだろう。


 ちょっと安心して、ルームミラーでバックシートのドクター・トモロウの姿を見る。
 ボクはいつも難しい表情をしてボスや奈良沢さんとディスカッションする顔くらいしかみたことがなかったが、今、後部席には、まるで遊び疲れた子供のようにぐったりとして低く寝息を立てているドクターの様子が見える。


「兎に角、取りあえず助かったみたいですよ・・ 
  さあ  アジトに帰りましょう、ドクター。」
   返事が返ってこないのを承知でボクはドクターに声をかけた。

 現在地がいまいち判らないのでコンソールのナビを操作するために手を伸ばした。

 
  すると 



     バガバガ   バリバリバリッ

  いきなり 車内の後ろのほうから大きな音が!



    振り返るとリアゲートに引っ付いたFORZAが突き破った窓ガラスの穴がどんどん裂けて大きくなっていく!


   爪だ! 獣の毛に覆われた手!
       振り払ったと思ったネコ女はFORZAに飛び乗っていたのだ。

  女の爪が穴を大きくするたび、車内に細かいガラスの破片が飛び散る。

  
  「やばいやばいやばい!
     奈良沢さん!
    あいつ、車にしがみついていますよ!

       中に入って来る気なんですよ、大変だ!!」
    
  「落ち着いて! ケイイチ君。
    アニマルは、ボクのドラッグロータス号に掴まっているのですか?」

  「そうです!  でも もうすぐにでも ヤツは車の中に・・!」


 「わかりました。  任せてください。」    なぜだか 奈良沢さんの明るい返事。。
ライドグライダー・ブラック その25  一筋の光



 ドゴッ という音がして いきなりガラスから突き抜けていた指が消えた。

バックミラーを見るとFORZAがネコ女を乗せたまま道の真ん中で直立している。

「やった!」  ボクはアクセルを強く踏みつけてスピードをあげる。


 「今から、モンスターを載せたまま切り離したドラッグロータス号をUターンさせて、アティの元に走らせます。
 アティ、 2ラウンド目の準備はできましたか?」

 「ああ コッチはBABY号のところまで戻ってきたところだ。
  イツデモお持て成しの準備はできてるぜ。」

 「じゃあ ネコちゃんのお守りは任せましたよ。
  あ   それと、 僕のドラッグロータスは大切に扱ってくださいね。
  シート張り替えたら またちゃんと乗りますから。」

 「帰ったら キッチンシートぐらい買ってやるよ・・・奈良沢チャン。
    オっと 借りてきたネコがコッチに向かってきたぜ。
     そろそろBABY号で お迎えにイッテクラ。」


ボクは奈良沢さんとアティの会話を聞きながら山道を走り続ける。
あのモンスターから遠ざかっていくのを二人の会話で実感しながら、とりあえず、ボクの心には一人分の安堵感が生まれた。
 

ふと目を落とすとナビのGPSが機能してないのに気がついた。

 「ケイイチくん、 その辺りからしばらく無線電波が悪くなると思いますよ。
     道は ほとんど一本道だ らまっすぐ走って ば  いいと  ですが
   たぶん、会話が とぎれとぎ  な   しま    から
      気をつ              アティな      
      あと  ドクタ   を   ろしく。・・・・」

 結局、奈良沢さんの言葉は途切れ途切れで聞こえなくなってしまった。
心細いけれど、どうやらこの山を走り抜けると電波も回復してくれるのだろう。

ボクは運転に気をつけながら道を急いだ。


深い谷の周りを巡る曲がり道が続き大きくカーブに差し掛かると 道を挟んだ渓谷の向こう側が見えた。
 
 細い真っ暗な道を早いスピードで動く光が線のように照らすのを見つけた。

 明かり・・・ライトだ。
  この時間にこの道で初めて対向車に出会う。
 
  バイク なんだ・・・な?
   一筋の光は かなりスピードを出して走っている。

 あと 少しで ボクの乗る車とすれ違うだろう。
  
 だが、しかし 無音でボクらに接近するそのひかりの筋は
 何かワケのわからない「恐怖の予感」の種を 再びボクのはらわたにいくつもいくつも生まれさせていくのだった。
ライドグライダー・ブラック その26  けいれんするるるるるうううう・・・




獲物を取り返すために アタシが必死で走る車の窓を突き破っているとイキナリ何かがアタシのうえに覆いかぶさった。

  シマッタ!    何かの罠だ!

    と 思った瞬間、身体に電気ショックが!

      アタシが飛び乗ったバイクから ネットが発射され
  身体に覆いかぶさると電流を流しだしたのだった。


  く   くそう・・・
         け   けいれんするるるるるうううう・・・


  窓を突き破った腕の力が抜け、ハリアーから分離したバイクは 一旦、後ろタイヤだけで立ち上がった後 何かに操られて逆方向へとアタシをネットで括りつけたまま走り出した。

 


  ヤバイヤバイヤバイヤバイ
   電流は収まったものの、 カラダがしびれて   力が入らない
     
 シートが外されたメットインに半身を沈められて上からネットで押さえつけられ身動きも取れない
 
    アタシは目を見開き 移動する暗闇を見続けた。
  
  
  
  そして すぐに 敵は現れた。

   黒いバイクに跨った顔面にサーチライトを付けた黒装束の一つ目男だ。

  男は停めたバイクに乗ったまま、アタシがバイクで運ばれてくるのをじっと見て待っている。

  ちくしょう! こいつ、ティガを倒したのか!

 
  男のバイクとの距離が10メートルくらいになった時、アタシの乗せられたバイクが急ブレーキをかけ、同時にネットが切り離された。

 
    ネットを体に巻きつけたまま 道路に放り出される。

   
   うううう・・・・

     身動き取れないアタシは 横たわったまま呻き声をあげることしかできない。。
 男のバイクとの距離は ほんの3メートルくらいのところだ。
  


 「じっとシテロ。  いい三味線にしてヤル。 」一つ目が囁く。



   ちきしょー さっき アタシが小僧に言った台詞じゃねーか!


一つ目野郎がバイクに付けられた装置のスィッチを入れると
 野郎と同じ一つ目ヘッドライトのバイクから地面に向かって青白いビームが放射された。


  男が照準を合わせだし、ビームの光の輪がどんどん小さく、そして激しく明るくなる。
 目映い光の点が暗闇の地面の上を移動する・・・
  その先の 這いつくばっているアタシにむかって。

  

 
   ゴゴゴゴゴゴォォォォォ・・・

    アタシは喉を鳴らした。

    まだ  死にたくない・・・
        アタシは 死なない・・・  こんなところで・・・
        
ライドグライダー・ブラック その27   後ろからパンチ?



「じっとシテロ。 子猫ちゃん いい三味線にしてヤルぜ。」

 オレは BABY号のUVビームの発射スィッチを押した。

照準が不安定なビームを命中させるために一度地面に放射したビームをモンスターに向けて近づけていく。

 ネットでグルグル巻きにされた女の瞳が闇の中で緑色に光っている。こいつらの襲撃で ラボの研究員たちが殺されたのだ。
 あの組織が壊滅した後に派生した『ジ・アニマルズ』と呼ばれる怪人集団による殺戮は、以前のように目立つ証拠を隠す配慮もなく、遠慮無しにハデハデだ。
 集団といっても活動も個々バラバラで 目的意識をもって特殊能力を使うヤツもいれば、単に自分の欲求や金品のために殺人を犯すヤツらもいる。

単独に殺戮を続けたアウトローなモンスターのほとんどは、今までのオレたちの装備や働きで、根こそぎにできたのだが、
今回のように、何かの目的のために計画性を持って動いている連中は残虐性の中に緻密さがある。
必要なとき以外は表立った殺しもせず、人間社会に潜伏してしまっている連中どうしが何かのつながりをもって、今度は自分たちで新たな組織を作っているのだ・・・『何かの目的』のために・・・




ビームの照射が標的の30センチぐらいに近づき、オレは一度スイッチを切った。
照準を合わせなおして、もう一度スィッチに指を置く。

ネットの中でもがいていた女が観念したようにおとなしくなった。

「南無・・」指に力をいれてスィッチを押そうとした、そのとき、



  ドグァ!



     オレのカラダに衝撃が起こった。

 エアサスで着地していたマグザム・BABY号が横倒しになる。

  地に転げるオレ・・   何か重たいものが背中に乗ってやがる!


  ドス!

 
   後ろからパンチ?   に しちゃ 痛みが強烈だ。

   しかも 激痛が内蔵に広がっていく気がする。


   「ウオオオオオオオ!!!!」 耳元で劈く咆哮 ・・

さっき 倒したトラ野郎だ! くそう・・生きてやがった・・


  ヤツはオレの背後から襲い掛かり、その爪がオレのボディを貫通していたのだった。
傷口に指を突っ込んだまま背中の皮膚を掴み上げられ、オレのカラダはBABY号から引き剥がされた。


オレは無言で痛みに堪える。背中に開けられた穴から多量の体液と血液が流れ出ていくのが解った。

全身クロ焦げになったままのトラ野郎のしゃがれた声が、地面に這いつくばった俺の耳に届いた。

「マ・・・マッテロ・・・  一つ目・・  すぐラクに シテヤ・・ル・・」
ライドグライダー・ブラック その28    プリントされた。



網に包まれたままのアタシの目前に 一つ目野郎が倒れこんだ。

 野郎の背中を踏みつけるもうひとりの男・・ ティガじゃん!

  荒い息遣いとそのシルエットからティガだと判ったが、よく見ると、彼は まるで焼死体のように皮膚が燃え、全身黒焦げになっていた。 

  生きていたティガは身体から煙の匂いを出しながら ほとんど無言のまま何度も繰り返して一つ目男の上に踵を落とす。
  背中を踏まれるたびに ビュっ ビチャっ  と 音を立てながら一つ目の身体から液体が飛び散る。   凄い出血だ。

   周りには ティガからの饐(す)えた匂いと男の血と揮発性の液体の匂いが立ち込めている。
 アタシが ニンゲンのオンナだったら 吐きそうな匂いのブレンドだ。


  ティガに散々蹴られ続けた男は しばらくすると死に掛けの虫のように動かなくなった。
 男の傍らに片膝を付いて おもむろに右腕を高く上げるティガ。
黒く爛(ただ)れた顔面に鋭い眼光と牙が見える。

 ドゥっ!

   振り下ろされた右手の爪が獲物の背に新しい穴を開けた。
 断末魔を迎えた男の身体がえびぞり、何も無い空間に助けを求めるように両手の指が広がった。
  
 ティガは 男の背中に突き刺した腕を抜こうとはせず、グリグリと左右に回転させる。
傷口から勢いよく吹き出る男の体液。
 上半身に返り血を浴び、焦げて無くなった縞模様のかわりに新しく生血で出来た斑(まだら)の柄がティガの身体にプリントされた。


 突き刺された腕を抜かれると一つ目男は、力が抜けスイッチが切れたようにその場でうつ伏せのまま動かなくなった。


 ティガは ゆっくり立ち上がり アタシのほうに歩み寄ってきた。


 「ウウウ・・・   
       ダイジョブカ    キ  ティ・・」

  枯れたような声を喉から絞り出しながら アタシに巻きついたネットを両手の爪で引きちぎる黒焦げティガ。

 背中に腕を回されて引き起こされると アタシの麻痺はだいぶ癒えてきたようで、支えられながらも歩くことが出来るようになった。


「ティガ、   助かったわ。 ありがとう
       あんた 大丈夫?   ・・・ずいぶん ひどい火傷・・・」

「ア  ・・  ああ  オレは     ずいぶん ヒドク ヤラレちまって・・る
   これじゃ  サイセイ   するのにも   シバラク  かかりそう  ・・ダ。

  でも    オマエが ヤラレルまえに  まにあって ・・ ヨカッタ。」

ナルシストのティガは ボロボロのくせに  がんばってアタシに向かって笑顔を作って答えた。
でも   その引きつった笑顔は 焼け爛れて血だらけで信じられないぐらいの恐怖の外観だった。 
ライドグライダー・ブラック その29     ヤッチャッて・・・



ティガが瞼を閉じて耳を澄ませた。

  「キティ・・ ナニカ  が  来る。

     音が   キコエ ル・・」


「うん   アタシにも 聞こえるわ。 エンジン音。
 バイク・・・   スクーターの音。

  とりあえず、今アタシたちの姿は マズいワ。  
   アンタは 茂みに隠れていて。
      アタシは 木に登って様子を覗うから。」

   アタシの提案どうりに ティガは道端の茂みの中に入っていった。
  体がツラそうだ。  もう少しの辛抱。。今度はホントに楽にしてもらえるワ。

  
  路上でボコボコにされた一つ目を取り残してアタシも樹木に登って姿を隠した。




 やがて


    ハリアーの走り去った前方から 1本のヘッドライトの光が猛スピードで近づいてきた。

 アイツは アタシのケータイの連絡が取れなくなったコトに不審を感じて ここまで来たのだろう。 アタシにとっては好都合だ。

 遠目のヘッドライトが一つ目の倒れている姿を照らすと バイクは後輪をスライドさせて停止した。   


 ゴールドの スズキ GEMMA 250CC

   新型じゃん、  買ったんだアイツ。
 
  この状況の中、アタシはなんだか 嬉しくなった。
  新型のビッグスクーターで駆けつけるアイツがカワイク思えた。


 「おい!  キティ    どこだ?」

   素っ頓狂に声を響かせるアイツ。
   この木の枝の上からでも 茂みで隠れるティガの気持ちの不可思議さが感じられる。

 アタシは可笑しくなって 木の上からアイツに声をかけた。

 「ココよ!    アタシは無事。
   
    一つ目野郎は死んでる。

    ティガは そこの茂みにいるワ。 まだ生きてるよ。

   ヤッチャッて・・・ シン!」


 シンは ヘルメットを脱いでティガの潜む茂みをみつめた。


「出て来い。 ティガ。

           姿をオレのまえに現せろ!」

 
 ティガの隠れる草むらが怒りで震えだしたのがわかった。

 クロ焦げティガが銀色の目を鈍く光らせて むっくりと 起き上がった。

 「・・ナンダ     オマエ   ハ?!」







 



  「オレの名は    シン。

             ライダー・ジェット・シンだ。
      
       
   初対面で悪いが、        オマエには死んでもらう。」




 ジェット・シンの顔が青い毛で覆われだした。

  獣化が始まったのだ。  大好きなアタシのために。。。
ライドグライダー・ブラック その30   忘れてあげるワ



ティガの最期は あまりにもあっけなかった。


 





   草むらから 獣化の完了しきっていないシンの前に 飛び出したティガ。

 不完全なシンは 獣毛も伸びきらず、身体の骨格もほぼヒトのまま、筋肉の増強が始まったばかり。
  肉体のほとんどが黒焦げになっていようとも、ティガのからだは 生身に近いシンのふた周りは巨大だった。

  四つんばいのまま ゆっくりとシンの周りを歩き出すティガ。


 小刻みに皮膚を痙攣させながら、シンは黄色い瞳をティガに向けている。

 
「シュウウウウウウ・・・・」 もはや 唸り声すら出ない獣は、シンの正面に止まり、立ち上がって彼の眼を見つめた。


 蒼い影から腕が伸ばされ、 長い爪が光りながら焼け焦げた獣の喉元を走った。


  「・・・・カ   ハ・・・」   

 喉元からヒューという音が漏れたあと、 ティガの体は シンの前で跪(ひざま)き、そのまま倒れて動かなくなった。







  「行くぞ。 キティ    降りて来い。」

  
   アタシは シンに呼ばれて枝を降りた。
   ニンゲンの形に戻りだす全裸のアタシに黒いナイロンコートを手渡すと 

 「早く乗れ。  あっちにデザートが残してあるから それが終わったらお土産のテイクアウトだ。」

いまだに青い毛が残ったままの顔で自分のウェアを整えながら スズキGEMMAを指差しアタシを急かす。



ロースタイルのビッグスクーターは軽い走行音を立てながら、もと来た道路をスピードを上げて引き返す。

 素肌の上のナイロンのコートで冷えた風を遮りながら GEMMAのバックシートで密着したシンの腰に手を回していると、シンが大声で話し出した。
 「おい。

    ティガってヤツは変わりモンなのか?

    あいつ 殺される間際に オレの顔 見てる目と唇が笑ってるくせに 
          ボロボロ涙流してやがんだぜ。

    気味わりーから 瞬殺してやったぜ。」
                      
 


         ティガ・・ アタシのために 戦って
             アタシのために 大人しく消えてくれて

          アンタのそーゆとこ  まだちょっと 好きかも知んないヨ。

  でも  これで この仕事のギャラは 全部アタシの好きにさせてもらう。
        アンタの五月蝿い指図は受けることもない!
           カネのないアンタと違って ジェット・シンはリッチ・・・
               ただ アイツは血とスリルとアタシに夢中なだけ。。
    
          さよなら かわいそうなティガ  ありがとうティガ 

                あたしは はやく 忘れてあげるワ  アンタのこと・・・ 
          


   





     「ほら、  ついたぜ。」


   シンは ヘッドライトが照らす方向を指差しながら 緩やかに減速しだした。


 「さあ 後は大してカンタンさ。
 
   手っ取り早く済ませて帰るぞ、    オウチに。」


   GEMMAを降りたアタシたちは、山肌に頭から突っ込んでいるハリアーの元へと向かった。


 いつのまにか 空の色にピンクが混じってきていた。

                 この夜 が もう明けようとしていた。

  
ライドグライダー・ブラック その31   黒点




ハリアーのドアを開けるジェット・シン。   

 中には大人しくオヤジとアタシが仕留め損なったボウズwがひっくり返っている。

 「こいつもピーピーうるさかったから スタンガンで寝かしといた。
   オウチに帰ってから このぼうずは オマエの好きにバラして 遊びな。」
       ボウズwの身体を荷台に担ぎ込みながらシンが言った。


・・・ふん  今度は ゆっくりチビラセながら じわじわ絶命させてやる。

 とりあえず 先にオヤジの方の換金手続きが先だ。

 アタシがハリアーの運転席に座ると 
  シンは ウインクしてからドアを閉めてくれて 自分のスズキGEMMAに再びまたがっ
た。


  夜明けの道を走るハリアーのバックミラーの中には ジェット・シンの乗るGEMMMAの金色の車体に朝日が反射して眩しく光りだした。
 
  
 曲がりくねった山道を抜け 駄々広い野中を突っ切るまっすぐな国道に出る。
  やがて太陽が昇り、少し離れて後ろを走るシンのGEMMAを後光のように包んでいた。
 そして ある時、その後光の中に アタシは何か太陽の黒点のようなものを見つけた。

 黒点は シンの横の地面に浮びながら その影をだんだん大きくしだしている。 
 
   

       ナニ?  あれ・・・ 




                     !!!


  
         ああああっ!!!!

 
      シンのバイクと同じくらいの大きさになった黒点は、
   いきなり GEMMAに接触して跳ね飛ばす。
    
     バランスを失い、側道に突っ込み 飛び上がる金色のバイク
       シンが 空中に吹っ飛ばされるのも見えた!

  

    く・・・   くそーーーー!!


   そのまま アタシのハリヤーに近づく黒点の正体が分かり、アタシの怒りが噴出する!


 
    「 オマエ  今度は アタシの手で ブっ殺されてーのか!! 」


 アタシは思わずハンドルを握り締め大声で怒鳴ってしまった・・・
 バックミラーに映った黒いビッグスクーターに跨る一つ目ブラック野郎の姿に向かって。
ライドグライダー・ブラック その32   やれば出来る。




「アティ   アティ    あんまり アツクなっちゃマズいですよ。
   ドクター・トモロウとケイイチくんを助けるのが第一目的ですからね!」

  インカムから奈良沢師匠の声。

オレが イキオイで「ライダー・ジェット・シン」を バイクごと ぶっ飛ばした直後に、お師匠様はお咎(とが)めを授けてくださった。

「ダイジョーブだよ。   とにかくオニャンコクラブ全員ぶっ殺しゃ解決するぜ!

    黙ってラーメンでも食ってろ!」 オレは素直にお師匠様に返答をお返しした。

「アティもなるべく無事に帰ってきてくださいね。
          今度はボク直々に身体の破損箇所を修理して
               ついでに そのクチにファスナーも付けてあげますから。」  



さっきヤラレタ腹と胸の大穴は塞がってないが、体力的にはベイビー号をかっ飛ばすことでエネルギーチャージができた。
 まあ、電解液の40%以上を失ってしまったので、長時間ベイビー号から離れた活動が出来ないのがマイナスポイントだが、残りはハリアーの姉ちゃんドライバーだけだ。
 さっきみたいな不意打ちがなければ 簡単にカタがつく。


 オレはさらにスロットルを開き、仲間たちの捕らわれた黒いハリヤーに追いついた。


「ヘイ、彼女!   美人には、オレからコイツをプレゼントしてやるぜ!」


ベイビー号はハリヤーの真後ろに付いた。
オレはハンドルから両手を離し、手のひらを広げたまま、肘を曲げ、右の腰の辺りで両方の手首の内側を密着させた。

「カ」

   オレとベイビー号のエネルギーを両手に集中させる。
   

    「 め       は 」 

          

       「   メ      ・・・」

           両手を目の前に移動、エネルギーのトリガーをはずす。  


                 「はああああ!」
                                      
   バビビビビ!  
          オレの両腕に刺激が走る。     
                  白い閃光弾を発射。     おもしれー  やれば出来る。

    アニメとちがってオレの撃ったかめはめ波は丸い玉ではなく、プラズマタイプの光線だったが、見事にハリヤーの助手席側のバックミラーを吹き飛ばした。
  相手は大きくハンドルをフラつかせて、猛スピードのまま、蛇行する。  


「気に入ったみたいだから モウ一発。    
          
             てじなー    ニャ!」  

        バヂヂヂ!
    
           次に発射したビームは ハリヤーの車体の真下に入り込み
          フラッシュしたあと、火花を散らした。 
           
          電子制御を破壊すれば一発だ。
          クルマは一度 大きく揺れ、みるみる速度を落としだした。

   すかさずオレは 目の前のハリアーを追い抜き、
    車が停止する直前の位置にベイビー号を停車させた。

    のろのろと不能になったハリアーが停まる。

  ハリアーの運転席には人影が無く、後部席にドクターとケイイチが乗せられているのが見えた。
 
 
 突然、リアゲートが開くと白い獣の影が現れ、クルマのルーフに飛び乗った。 
 
女の形態は さっき見たよりも獣化が進み、顔面もかなりヒトの面影がなくなっている。


  「もう一度会えて よかったぜ。 ネエチャン。
  さあ  ベビーシッターはクビだ。    ウチのお子様たちをおとなしく返せ。

   オメエは ハラワタ抜いたあと サンリオショップに可愛く陳列してやるぜ!」


  白い体毛を逆立てながら威嚇する化け猫に向かって、一つ目のマスクの中からウインクをくれてやった。


ライドグライダー・ブラック その33     いくぞ! ナーちゃん




「コノクソバカヤロシニゾコナイ!
  ドテッパラニアイタ アナンナカニ アタイノ爪 ツッコンデ
     ソノママ カラダヲ ウラガエシニシテヤル!!!」

   と いうような感じの言葉を 化け猫ネエチャンが おっしゃった。

「こら  ネコメ女   かかって来い!
     早くしねーと コッチから引きズリ下ろしに行って
   オメーの ションベンクセー砂場ん中にそのアタマ突っ込んで シャンプーしてやるぞ!」
 

  「!!ウルサイ!!!!」     今度はハッキリ言葉が聞こえた。
       と 同時に ルーフの上から跳ね上がり ベイビー号のオレに飛び掛ってきた。

 

 オレは ベイビー号のシートを踏み台にして跳躍する。
   空中ですれ違いざまに 化けネコの鋭い爪がオレのレザーウェアの肩を裂いた。
   
 
  「いくぞ! ナーちゃん」 着地寸前に奈良沢にラブコールする。

 
 「がってん」    奈良沢選手の返事とともに オレはベイビー号とシンクロモードを再開した。
  オレのエネルギーの消耗を 少しでも長く引き伸ばさなくてはならない。   

  
   空中でネコたんにチップを貼り付けた。 
 
   メイドバイ奈良沢専用の超小型GPSチップで
 奈良沢専用モニターからネコたんの位置が把握してベイビー号の頭脳に転送できちゃうんだ  だそうだ。
   でも  ガッテンは ねーだろw  ばーか


 ビ      ビッ      

             ビ      ビビッ

        ベイビー号から離れたオレは エネルギー消費を抑えながら
    モンスターに向かって 小さな電撃を放ち続ける・・・カモフラージュだ。 

   動きの早いネコたんは 身をくねらせて 予想どうりオレの電撃を避け続ける。

    
   足元を狙った電撃に ジャンプするネコ女・・  そして

  ブンっ☆☆
 
        地面に降り立ったネコたんに ベイビー号からビックリ光線の贈り物。
  
 「 ギアア!!! 」
   着地した途端に 片腕を撃ち抜かれたモンスターが悲鳴を上げる。
    オレの方にメンチ垂れてる暇 ねーだろ  バケモノ!


 ブン    ブン        ブンッ 

     ベイビー号が速射を始めた。
  
    奈良沢専用GPSシステムが ベイビー号の射程を援護する。
   モンスターが飛び跳ね、のた打ち回り、オレからの電撃を避けようとするたびに、別方向のベイビー号のビームが命中するのだ。
    
  「 ギ   ギ   ぎああ    ギャ  ああ!」  
  
 オレの電撃が罠だとわかったころには ネコたんの体には UVビームでいくつもの銃傷ができていた。
  

    

  「ハハハハ  
         これで オマエも 最期だ!

                      ラストダンスに バケネコのタンゴ でも 踊ってくれ!」


オレはジャケットの中から十手スタイルの放電バーを取り出し右手に握り、体内に残っているエネルギーを右手首に貯留しだしていた。

金属のバーから一直線に発射されるエネルギーが貫けば、あのバケモノも今度こそ一気に昇天だ。


   
   右手のトリガーを外した。
     電流が放電バーに流れ出す。
       敵に向かって突き出したバーが白色に目映く輝く。
     

発射する瞬間、

「じゃあ   ダーリン


     これで   さよならだっチャ。」


  と いうオレの独り言が聞こえるハズがないのに

     目の前のネコ女が   なぜだか

                     ・・・笑った。。。?
ライドグライダー・ブラック その34   またしても 吹っ飛ばされる



なんだ  コイツ?  気味悪ぃ・・

      ネコたんの意味不明の微笑みの理由が解った。


オレの右手から放電バーに伝わったエネルギーが放出される瞬間、またもや不意打ちが!


   オレの後頭部と背中に激突する塊のような何か・・
          衝撃で吹っ飛ばされ、宙に浮いたオレは 思い切り顔面から地面に突っ込んだ。


   一時的に頭の中が 消去される。


  倒れたオレは本能的に次の攻撃に備えて 腕の力で立ち上がる。
 マスクの中の視界は ほとんどノイズばかりで何も見えない。
  システムの損傷が大きい。
   腕や腹の傷が酷く痛む。
    戦闘時の『無痛モード』もエラーしたようだ。

 オレはその場を逃げようと 意識して足に力を入れる。

    フラフラだ…     ベ    ベイビー号 は
                           どこだ??


        落ち着け    視力が回復するまで 感を働かせるんだ。

    
   不意に オレの横の空気が 大きく動いた。
 
    「ヤバイ!」  危険を察知して身をかがめる。

       ブン!    オレの頭上を何かデカイものがかすった。

     しかし、次の攻撃は しゃがんだオレのボディの横を直撃!

             またしても 吹っ飛ばされる。

        今度は腕で頭部を庇って地面との衝突を避けた。


  ガルルルルルルルル   ハア   ハアァ    ハァア   獣くさい息が匂う。


   「ヤッチマエ    ブっ殺せ    ソイツ」   


    ゴアアアアああッ       化け猫オンナが嗾(けしか)け、
                     オレには姿が見えないモンスターは
                      咆哮でそれに答える。

      盲目のオレの脳に怪物の雄たけびが響き渡る・・・猛烈な吐き気がする。


 「アティ、ベイビー号のカメラからの画像をそっちに飛ばします。
   まったく見えないよりも かなりマシです。
     やりにくいけど、 とにかく  がんばって!」

   奈良沢師匠の思いやりと投げやりのMIXされた言葉が聞こえ、
  オレのモニターに再び映像が戻った。

  オレは今、ベイビー号の正面の位置で 怪物と対峙していた。
 映像には 全身を青い毛で覆われた巨大なネコ科の怪物が2本足で立ち、大きな金属の塊を片手に持ったまま オレを見下ろしている。

 ヤツの片手にあるのは・・・ 金色のスクーター:スズキGEMMAの残骸だった。



 グオアアアアアアアアア!!!

       青い怪獣は200キロのスクーターを持ち上げる。


   ドガン!!

         振り下ろされる凶器を後ずさりで避ける。
          オレの目の前の空気がカマイタチのように裂けた感じがした。
        その風圧だけでも オレのボロボロのボディには結構コタエる。

       そして
          避けるタイミングばかりでなく 右左のポジションがまったく分かりにくい・・

       それはそのはずだ。   
    ベイビー号からのモニター映像は ゲーセンの『ストリートファイター?』並の映像だ。


           オレは今、奥行きの無い2次元世界の中で
              3次元のモンスターと戦おうとしているのだった。
 
ライドグライダー・ブラック その35     ちょーマジで ブッコロス




ベイビー号のモニター画面では   向かって 右がオレ    左が青ネコくん


   青ネコくんは 187センチのオレよりもデカく、
   逆立った体毛のお陰で 見た感じは2メートルを余裕で超えていそうだった。
    まあ  猫背だからあんまりアテにはならないが。。

 GEMMAのシャーシ部分がネコくんの手に握られ、さっき オレはコイツでド突かれたのだなと
  わかる。

 おにゅーのバイク ぶっ壊されたもんで かなりアタマに来てんだニャー っつーかんじか。



オレの視力にダメージがあることに まだ気付いていないらしく ヤツは まだ 出方を窺いながら 裂けた口からキバを覗かせて威嚇し続けている。

オレは 省エネモードで右手をフラッシュさせていた。
 エネルギー切れを悟られたくないからだ。


「シン!   コイツかなりヘバッてるよ。   飛び道具だけ気をつければイチコロだよ!」

 ったく 要らん事を言うブスネコだ   クソ!
            いつの間にかハリアーの向こう側に隠れてやがる。
            位置が測定できても、ベイビー号の射程外だ。
            放電バーもどこかにふっ飛んでっちまったから、
            お楽しみの電撃ショーもご馳走してやれない。


モニターの中で 青ネコが高く飛び上がった。
      バイクの破片を振り上げている。

    画面は横方向の平面だ!
             ヤツの飛行線が分からない!!
     チキショ!   ヤケクソダ!

    
       バシ  バシっ
   
            オレは 頭上に右手を上げ フラッシュを放つ・・・ヤツの目を射るためだ。

  
  低く伏せながら ヤマ勘で 左に移動。
  モニターでは、飛来した青ネコが オレの真後ろに着地。 バイクのシャーシをスイングする。


  ギャアああ!   
   右肩を砕かれ吹っ飛ばされるオレ・・・  アタマに当たらなかったのは幸いか??
   
 続けざまにオレの顔面を狙って ヤツの振り下ろす凶器がかすった。


   「が   がんばれ   アティ!

        大丈夫か??」      奈良沢!   オマエ  マジか?心配してるのか?
                            その結果、そのセリフか?!


   「なんとかしろ!   このメーラン野郎!!
                       コッチは 奇跡的によけてんだゾ!」


  「もすこし奇跡を起こし続けてください!   応援してますから。」
                           おめー ちょーマジで ブッコロス!


    再び ジャンプする青ネコ・・  オレは無様に転げ周って避けるしかない
     
   

   「おい  変態!  映像から何とかしてアイツとの距離を割り出せ!
 
         一か八か    もーちょっとだけ   ボクチャン がんばっちゃうから。」


 
 エネルギーが本気で残り少ない。
 このままでは いずれにしろヤラレる。
 焼け糞のオレは 最後の作戦を奈良沢に提案した。
   
                      
ライドグライダー・ブラック  その36   オレのセクハラは続くぜぇ



オレのオーダー通り、奈良沢専用PCは、
 オレと青猫兄ちゃんとの距離関係をはじき出し、
 数値をベイビー号のカメラ映像に重ねてマスクの中に映し出した。

アオは なかなかよく動きやがる。
    それに合わせて測定値が次々反応して相手の左右の位置を数字で知らせる。

 数値を見ながらの状態はメンドクセーけど これでアイツの移動データが2次元ではなくなる。
   

 細かい攻撃やフェイントを繰り返されるが さっきほどの無様な逃げ腰を見せる必要はなくなった・・・  これからがオレの反撃だ。
  お腹を空かせた子猫ちゃんに愛情たっぷりオレから極上モンプチのプレゼントだ。
  
眼前の青猫が次の攻撃を仕掛けようとする。
オレは両方の拳を顔の前でクロスさせて間合いをとった。


 シャッ       青い腕と黒い爪が宙を切る。

   XYの距離データの数値が一瞬で変化・・・バッチリだ。

  スレスレで避けるオレを ヤツの返す腕が再び襲う。

     直感と根性で避け続ける。


 自分のエナジー残量を見ると泣けそうになるので、神経をなるべく距離データに集中した。

 もう1発来いよ! ・・・ ネコちゃん
 
 サイドスクロールの画像を見ながら呟くと
相手は一度引き下がるフリをしつつ、再び鋭い爪を猛スピードでオレに向かって突き出した。

 ガゥ!

  
 タイミングを合わせてオレはハリアーに向かってジャンプする。

  腕から着地して地面を回転しながらハリヤーの車体の下に向かって右手から電撃を放出
       
          バ  
              ババ 
                         バジっ


 

  「アう!!」      ラッキー 仔猫ちゃんに当たったぜ。

     

  同時に左手は飛び掛る青猫にフラッシュ
 
           一瞬でいい  目潰しが出来れば・・・



    オレの標的は バカ猫ネエチャンの方だ。
    アイツの隠れているハリアーの陰に向かってロングジャンプで飛び掛る。



    バゴッ!!  

  オレの体がハリアーのルーフに飛び乗ると不意を突かれたネコ女が引きつってクルマの陰から飛び出す。


 「ゴオオオラアアアアアアア!!!!!」  



  叫ぶオレの声に身が固まったネコ女。




  ビ     ビシ      ビビ!

  
  「  ギャ !!   ああ!!!!」 
    
   射程内に飛び出したネコ女の体をベイビー号のビームが貫いた。



 「うがるうう!!!!」  オレの背後で青猫の唸りが響く。
             単細胞のブチギレた叫びだ。





  エナジー 残り 6.2%   ありえねーー



   でも  

         オレのセクハラは続くぜぇ
                   コネコちゃん!!

 
      飛び掛る青猫を振りほどき、
         傷つきよろけるメス猫に飛びつく。
  
           

  「がふゥ  ・・・
         ギ   ギショウ・・ 」
      オレに羽交い絞めにされたネコ女が吐息を漏らした。



  「わりーな。 
   オレはニャンコと愛のないお色気はニガテなんだ。
 
     オメーらは そっちで仲良く乳繰り合ってろ!」
   
    オレは メス猫の体を掴みなおし、
   怒りでボディが1.5倍に膨れ上がった青猫に向かって放り投げた。



  バビビ   
       ビビ

                   ビビィッ




  空中のメス猫を受け止めた青猫の体に打ち込まれるビーム。


 2匹の獣たちの血飛沫が朝日に照らされる地面に飛び散る。



  ざまあ
 
            見ヤガレ





           エナジー 0.4%
 
          

           そして 
            崩れ落ちるオレの視界からも
            すべての映像が消えていった。

    
                        

    

    
               
             
『ライドグライダー・ブラック   第2章』   完



第3章 につづく。

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