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殺戮奇術集団・匂宮雑技団コミュの自作・番外編(フィクション)を創ろう!

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まぁ、とは言っても・・・?
ねぇ・・・ちょっとそんな文才は僕には有りません!
高校の頃なら小説を書いてましたが・・・

・・・と、言うことで、戯言シリーズを使っての
オリジナルストーリーを展開していこうと思います・・・
つまりは、まったくの出鱈目!こんな話が有れば良いな〜という
ストーリーを書いていきます。

悪しからず・・・

いつ書くかは不明です(汗)
気が向いたら更新していきます・・・

コメント(20)

「ったく・・・淘汰(とうた)のヤロウ・・・勝手に一人で突っ走りやがって。」

深夜二時、誰も居ない公園に零れる独り言・・・
その男は、背丈は180cm位で細身、ニット帽を被り、皮ジャンを
羽織り、手には黒い手袋をしている。

「くそっ!・・・自分一人でどうにかなる相手じゃねぇのは
あいつ自身が一番知ってる筈なのに・・・」

愚痴る男はタバコを取り出し火をつけた。
フゥ〜っと紫煙を吐き、タバコを投げ捨て時計を見る。
彼は決してヘビースモーカーでは無い、ほんの一口だけ、一口だけ
肺に煙を送り込むだけで十分なのだ。何度か同じ愚痴を繰り返した後、彼はポケットから携帯電話を取り出し11ケタの数字を素早く
打ち込みコールを待つ。
3コールの後、声が聞こえた。

「俺だ。淘汰が一人で突っ走りやがった。探しては見たが何処にもいやがらねぇ。あいつマジで殺されるぞ。」

電話の主がクスクスと笑った。

「仕方が有りませんねぇ・・・分かりました。今から援軍を
寄越しますよ。零崎が相手では簡単に死ぬことが・・・
出来ますからね。クスクス・・・」

「笑い事じゃねぇっつーの!」

「すみませんねぇ、気分を害したなら謝りますよ?」

「本気で謝る気はねぇだろ?!けっ!その語尾を延ばすのは胸クソ悪りぃからやめろ!それより援軍ってのは何人だ?」

「二人です、が飛びっきりの二人を用意してますからご安心を。」

「・・・使えるんだろうな?」

「えぇ勿論・・・私の名に掛けて損はさせませんよ?」

「ふん・・・分かった、早く送ってくれ。場所は○×公園だ。」

「分かりました・・・それでは御武運を・・・」

電話を切り、彼は又タバコを取り出す。
肺に煙を送り込み吐き出す、そしてタバコを投げ捨てる。
顔は強面だが実は可愛いモノが大好きな人間で、
子犬や子猫を見ると駆け寄って抱き上げようとする。が、
小動物にはそうは思われないらしい。その怖い顔を見るなり
子犬も子猫も一目散で逃げていく、
という事が何度も有り、彼にとっては精神的に参ってしまうのだ。

彼の名前は「墓森舞太」(はかもり・まいた)

「待ってろよ・・・淘汰、死ぬんじゃねぇぞ・・・」







続く・・・?
のかな?
Yes!墓森ルート、フラグは自分で立てるべし!

近々第2話を考え中・・・
「殺戮講座」----------それが、彼女に付けられた二つ名だった。

彼女の前では全てが計算で、総てが数字であり、凡てが式だった。
物事の事象は全部、計算でカタをつけ、型に嵌め、押し込み、
全てを解決してきた。理論で異論を排除し、論理で道義を否定し、
己だけの公式を組み立て、確立し、導き、求め、
思案し、思考し、私案し、私考し、確実に勝利を収めてきた。
しかし、唯の一度、たった一度、敗北を喫した事がある・・・
相手は足首まで届くストレートの長髪が異様に綺麗な少女だった。
その娘は「策師」と呼ばれその世界の人間には名が通り、
恐れられていた。「策師」は一度も彼女と直接戦闘をせず、
彼女を敗北に追いやった。彼女の中で全てが壊れていき、
何もする事が出来なかった。同じ「策」を労する者同士・・・
計算や策、略や対策で遅れをとる筈は無いと思っていた・・・
寧ろ自分の方が数段上だと自負していた・・・
しかし・・・負けた・・・完膚無き迄に・・・叩き潰された。
蹂躙された。彼女にとってそれは屈辱だった。
「策師」は自分の手足となるモノを使い、戦っていた。
「策師」の頭の中では既に戦闘は終わっており、勝利を収める
絵が完成していた・・・

膝を突き、息も絶え絶えな彼女に「策師」が言った言葉・・・
意外だった。
敗北を喫した事よりも、自分で負けを認めた事よりも・・・
数倍も驚いた。
恨みから信仰へ、怨恨から栄光へ。
今の彼女が或るのはその一言のおかげだった。
其の日から研鑽を積み、血の滲む様な修練をし、
二つ名が通るまでに成っていた。

決して曲げず、決して折れず、己の意志と意地を貫き通す・・・
それが彼女の、彼女なりのポリシーだった。

「殺戮講座」筆村訊子(ふでむら・とうこ)
それが彼女の名前である。









「でも、ホントに無茶するねぇ〜淘汰は・・・
舞太の静止も聞かずに一人で追いかけちゃうなんてさ。」

「想定の範囲内よ・・・」

携帯ゲーム機で遊びながら喋る女の子は、特に気にも止める様子も
無く、「ふーん」と呟いた。

蒼いF430スパイダーに乗る二人組・・・
運転している女は髪が矢鱈に長く吊り目がちな女だった。
助手席に座り、あいも変わらず携帯ゲーム機に御執心な様子の少女
は茶髪のセミロングで眼鏡をかけていた。

「そろそろ着くわ・・・ゲームは止めておきなさい。」

「えぇ〜!今、メガッさ良いとこ何だよ!?」

「セーブ出来るでしょ?それに我儘言ってる場合じゃないのよ?」

「ぶぅ〜・・・じゃあ、さ、今からマジンガーZが攻撃するんだけどさ、それが当たる確立が何%か当てたら止めるよ?」

「人の話を全く聞かないのね・・・分かったわ・・・LVは?」

「43」

「選択武器は?」

「ロケットパンチ」

「攻撃対象は?」

「三連星のオルテガ」

「・・・なら43%ね。でも・・・攻撃は当たるわ」

ゲーム機を持った少女は「えー?ホントにぃ?」と言うと
ピコピコ、とボタンを押した。
ドット音が聞こえ、

「・・・わぉ・・・ホントだ・・・」

「簡単な計算よ・・・」

渋々女の子は電源を切り、仕度に取り掛かる。

「まったく・・・手間のかかる人たちだわ・・・」

「殺戮講座」筆村訊子は呟いた・・・
○×公園は昼間などは人気が多く、子供たちが遊ぶ憩いの場と
なったり主婦や学生、会社員などもこの公園で昼食を取ったりと
結構市民に愛されている公園だった。
しかし今は深夜二時過ぎ・・・幾ら市民に愛されている公園だからといってこんな時間に人がいるのは不自然なことだった。
その公園に、さらに不釣合いな二人組みが公園の前に車を止める。
そして二人は車の中からゴソゴソと探り何かを取り出す。

訊子が取り出したものは三角定規とコンパス、そうとしか表現が見つからない程そっくりな物だったが、只サイズが異常で
小・中学校等で数学の時間に使う巨大な物であり、さらに、
その三角定規を構成している物は刃物で三辺ともに、
研ぎ澄まされ鈍い光を放っていた。
コンパスは、その巨大さを除けば普通だったが本来、芯を入れる
部位にはピボットとなる針と同じものが付いていた。
もう一人の少女が取り出した物は巨大な折りたたみの鎌だった。
サイズと呼ばれるタイプであろう。その矮躯には不釣合いな程に
巨大な物であった。

「あれ?訊子、物差と分度器は使わないの?」

「あまり持ち過ぎるのは動きが制限される、今回は最小限の装備で行く事にするわ・・・まぁコレは持っていくけど。」

と、小さな筒を指差す。

「そっか。まぁ訊子の装備に心配は無いけどね。」

「さて・・・電話があって17分・・・舞太さんが痺れを切らす前に行きましょう。」

「そだね。」

深夜二時十九分、月明かりに照らされた二人の得物は鈍く光り、
反射し二人の顔を映し出していた。



公園に入り暫らく歩いたところで一つの影が見えた。

「何だ、援軍ってのは訊子か・・・ん?あと一人は何処だ?」

「お待たせしました。でも、何だ、とは酷い言様ですね。
私、期待されてませんか?」

「いや、そうゆう訳じゃあねぇんだが・・・それより、
二人来るって聞いたんだが、何かの間違いか?」

「いえ、ちゃんと二人ですよ?」

そう言うと訊子の影からひょこっと顔を出す少女。

「おぉ!シロクマじゃねぇーか!」

猛ダッシュで駆け寄る舞太。

「ちょっ・・・」

あわわわっと慌てながら手を前に出しぶんぶん振り、
「ちょっと待って」と言い終わる前に抱きかかえられる少女。

「あはははっ!!久しぶりだなシロクマ!」

「しっ、シロクマってゆーな!ってゆーか恐いよ!」

「何が?」

「顔だよ!!」

半泣き状態で叫ぶシロクマと呼ばれた少女。

「舞太さん、降ろしてあげて下さい。恐がってますから。」

「そうか?」

やや不服気味に少女を降ろす舞太だったが、まだ抱き足りないと
名残惜しそうに少女を見ていた。

「うぅ〜舞太の顔恐すぎ!何とかならないの?!」

「んな事言われても・・・元からこの顔だしな〜」

「舞太は強くて優しいから好きだけどさ、その顔は許容出来ないよ!」

「おぉ!俺が好きか?!」

そう言って又、少女を抱きかかえる舞太。

「にぎゃ〜!!」

「降ろしてあげて下さい。」

「はいはい。」

「そんな事より舞太さん、状況は?」

半ば呆れた顔で舞太に状況を尋ねる訊子。本来ならばこういった
任務は避けてきたが今回は仕方なく引き受けたが・・・
やっぱり止めておけば良かった、と内心、本気で思っていた。

「っとま〜そんな感じだ。さっさと探さねぇとヤバイ事になる。
だから二人とも、協力してくれ。」

「言われずとも。」

「舞太の頼みだもんね、断る理由は無いよ。」

「良し!んじゃま〜行くか!訊子!シロクマ!」

「シロクマってゆーな!」
熊代真白(くましろ・ましろ)

身体的特徴及び性格

小さい、五月蝿い、でも態度はデカイ、
ゲーマー、その性格と言動を除けば可愛い。
身長は約143cm、体重は32kg、年齢は恐らく13〜14歳。
そして・・・強い。
得意な武器はサイズ。
あの古槍頭巾、作。「天帝裂虜」(ていてんさくりょ)
遠心力を利用してのダイナミックな攻撃を基盤とし、
柄の部分を使った小技も使用して
ミドルレンジまでの敵は確実に殺傷する。
二つ名は「血雨日和」(ちさめびより)。
彼女の攻撃の後は血の雨が降る事からきている。







「舞太ってさー、誰かに似てるって思ってたらアレだった。」

「何だよ?」

「ドラグノフ。」

「・・・?」

「・・・・・・」

因みに「・・・・・・」は訊子である。

「誰だそりゃ?」

「ドラグノフはねぇ〜ゲームの・・・」

「あーはいはい、ゲームのキャラクターか。」

女の子の台詞に被せる様に舞太は台詞を吐く。

「真白、ゲームのやり過ぎよ。」

「ったく、ホントにゲーマーだな。シロクマは。」

「シロクマってゆーなー!」

「はいはい。」

「舞太さん、探すにしても、この状況は困難では?
行く先を知らないのは致命的です。」

「相手は零崎だ、そんな事は百も承知。だから敢えて、
淘汰を追わない。」

「?・・・どうゆう意味ですか?」

「淘汰が零崎の連中と殺しあって生きていられる保証は零だ。
まだ、戦闘が始まっていない事を祈るだけ。そして、淘汰を
追うんじゃなくて零崎を探す。そうすれば自動的に淘汰の所まで
牽引してくれるだろう。」

「うっわー、メガッさ安直じゃない?」

「確立としては63%弱・・・低くはないです、が、
零崎を追うにしても、その零崎は何処にいるかが・・・」

「それは心配ねぇ。淘汰が何処にいるかは知らねぇが
零崎が何処にいるかは分かってるからな。」

「何か策でも?」

「策、と言う程でもないさ。」

そんな会話をしつつ、三人は公園を後にする。
誰もいなくなった公園・・・否、人の気配はまだ有った。
あの三人に気取られず、存在していた人間。
気配を無くし、外景に溶け込む、そんな事を出来る人間。
しかも・・・一人ではない、二人いた。

「さて、と。追うの?」

「取り敢えずは、と言ったところだね。」

そう言うと二つの影は姿を消した。
深夜の二時半、やたら大きな影と、中くらいの影、そして、
やたら小さな影。
その三つの影は、まるで携帯電話のアンテナ表示のように
綺麗に階段状になっていた。

「えーっ・・・と・・・次は右か。」

「・・・・・・」

「ねぇ、ゲームしてるの?」

「次は・・・あーっくそっ!止まれっつーの!」

「・・・・・・」

「ねぇってば!ゲーム?」

「あぁ?ちげーよ。」

「なーんだ。」

「お!?止まったか・・・って・・・森の中かよ。」

「・・・あの、舞太さん。さっきから何を?」

「あ?あぁ、発信機を追ってるんだよ。」

「発信機ですか?」

「そう言ったろ?耳でも悪いのか?」

「悪くありません。ちょっと待ってください、
発信機を追ってるという事は、その対象がいる訳ですよね?」

「その通り。」

「誰を追ってるんですか?」

「零崎。」

「・・・居場所が分かると言っていたのはそれの事ですか。」

「まぁな。」

「なぜ淘汰に付けなかったのですか?淘汰に付けていれば
私達を呼ぶことなくお一人で処理できたでしょうに。」

「淘汰に付ける暇が無かったんだよ。」

「そんな事より、ほれ、零崎の居場所はココみたいだぜ?」

適当にあしらわれてちょっと不機嫌に成りながらも、
舞太の指差した方向に目をやる訊子。
そこは小高い丘から山に続く山道で、只でさえ暗いのに
山の中は一層闇が深くなっていた。

「んじゃま、行くか。零崎の足も遅くなってるし、
今なら捕らえられると思うぜ。」

「暗いねぇ〜・・・ねぇ舞太、んとね・・・
舞太の裾、掴んでて・・・良いかな?」

「何だよ?怖いのか?」

「・・・っ!!五月蝿いなぁ!怖くないよ!ただ暗いだけだよ!」

「暗いのが怖いんだろ?」

「・・・・・・ぅ・・・」

「・・・舞太さん、苛めないであげて下さい。
これでも真白はまだ、13歳なんですから。」

「一番苛めたい年頃だな。」

「ぅ〜〜〜・・・」

「はいはい、分かったよ。ったく・・・離すなよ?」

「!うん!」

呆れた顔でため息を吐き、訊子は「やれやれ」と呟いた。
「っしっかし・・・ホント、暗いな・・・」

真っ暗な森の中を三つの影が奥へと進んで行く。
真っ暗なのだから影と云う表現は些か不自然なのだが、
それでも影と言う表現が最適であった。

「そう云えば・・・零崎を追っているのは分かりますが・・・
どの零崎なのですか?」

「うん、それは私も気になるところだね。」

「誰だと思う?」

「その質問を質問で返すのは止めて下さい。
あまり気持ちの良いものでは有りません。・・・ですが・・・
私が知っている中での零崎ならば・・・
《シームレスバイアス》、《マインドレンデル》、《ぺリルポイント》、《ボルトキープ》
位なものでしょうか。その中でも有名なのは
《シームレスバイアス》と《マインドレンデル》ですから・・・」

「まぁその中の一人だ。」

「・・・まぁ・・・恐らくは彼だと思いますが・・・なるべく遇いたくは無いですね・・・」

「・・・そんな事言うなよ。もう直ぐだぜ?」

その言葉に訊子と真白に緊張が走る。
天帝裂虜と舞太の服の裾をぎゅっと握り締め、辺りを窺う真白。
直ぐに行動がとれるように姿勢を屈めて舞太の後ろに付く訊子。

「おやおや・・・誰かと思えば・・・」

突然聞こえた声の方向に目を遣る三人。
発信機の指していた方向とはまったく逆の位置から声をかけられ
三人とも行動がワンテンポ遅くなる。
それでも、その声の主は動く気配は無くそこに存在していた。
そこには暗くて良く分からないが月明かりに照らされて、
ぼうっと浮かぶ細長い影が在った。
長身でそれ以上に長い手足、オールバックに眼鏡、
さらにはスーツという平凡な、在り来りで普通過ぎる格好をした
男がそこには立っていた。
しかし、今は深夜・・・そんな時間にスーツ姿で、
しかもこんな森の中で一人で居る。
不自然という以外の形容詞は見つからなかった。

「・・・やはり・・・《マインドレンデル》の方ですか・・・」

苦虫を潰したような顔をしてそんな事を言う訊子。

「よぉ・・・零崎・・・久しぶりだな・・・」

「久しぶり、と言う程時間は経過してないけど・・・
それより、何故・・・君がここに居るのか不思議だ。」

「あぁ?俺の弟がてめぇを追っかけてった筈だ。どうした?」

「・・・あぁ〜彼ですか・・・うん、ウフフ。彼は中々でしたよ?
私も少々てこずりました。」

「・・・殺したのか?」

「いや、そんな事はしていない。私は一賊の中でも一番の平和主義者ですよ?彼は唯、しつこかったから撒いて来ただけですよ。
殺せば早いところですが・・・そんな暇は無くてね・・・
私にも用事が有りましたから。」

「・・・っつー事は生きてるんだな?なら・・・良いさ。」

「弟思いな良い兄のようだね・・・君は。」

「ふんっ」

「弟の話しか出てこないで・・・私の話は出ない・・・と言うことは、私が君たちと戦闘する必要は無い、という事かな?」

「・・・そう考えて頂いて結構です。私たちが彼方に挑んだところで・・・勝算は有りません・・・ただ・・・三人同時なら別ですが・・・」

「ウフフ・・・三人同時、ねぇ。」

「何が可笑しいのですか?」

半ば苛立った口調で言葉を発する訊子。

「三人同時・・・私には五人にしか見えないのは気のせいかな?」

「?何を言っている?」

「その表情からすると・・・第三者か・・・ウフフ・・・
隠れてないで出てきたらどうだい?お二人さん?私にはとっくに
ばれているのだから!」

そう大きな声で双織が言うと後方、舞太達のさらに15mは後ろ
そこから足音が聞こえてきた。

「流石だね。零崎は・・・」

「ホント、流石、サスガ。」

二つの影はそんな事を言いながら近づいてくる。
驚愕しているのは三人、舞太、訊子、真白だけであり、
一方の双織はと言うと・・・

「こんな事をしている場合ではないのに・・・ウフフ・・・」

半ば諦め状態の表情で笑っていた・・・
クスクス、と笑いながら出てくる二人組・・・
一人は女の子であろう、ベリーショートの銀髪に
服はバスケット選手が着ている様なノースリーブのユニフォーム。
しかしサイズは一回り小さいのか体にピッチリと張り付き、
その体の細さを強調していた。ズボンは七分丈のハーフパンツだが
上着のユニフォームとは別の物だったが違和感は無く、似合っていた。
もう一人は男の子か、髪はセミロングで肩まであり、
一見すると女の子に見えなくも無い、それ程の美少年だった。
隣の女の子とは対照的に少年は、
黒のロングTシャツにGパンという在り来たりな格好をしていた。

「ばれるとは思わなかったな。」

「ホントホント、それに何か殺し合わないみたいだし・・・」

こいつ等は敵だ、舞太は思考する。
絶対的に敵だ・・・こいつ等は招かれざる客、
この舞台に居るべきではない存在、
俺達と零崎が殺し合う事を望んでいた・・・理由はわからない、が、
敵であることは明白だ。



ならば――――――――

「ウフフ・・・どうやら君達は間違いを犯したようだ・・・
本来出て来るべきでは無かった筈だ、恐らく・・・君たちの任務は偵察
存在がばれては意味を成さない・・・もし、もしもだ、ばれたとしても
直ぐに逃げるべきだった、あの距離なら逃げ延びれるはずだ・・・
いや、絶対に逃げ延びれる・・・私は別としてこの三人に
気付かれずに尾行できたのだから・・・
言ってる意味が・・・分かるかな?」

「成程」

そう言ったのは訊子だった。
しかし、訊子がその台詞を言い終わる前に行動を起こしていた者が居た。
それは、地を蹴り、空を切り、草花を薙ぎ払いながら一直線に、
無駄のまったく無い動きで・・・二人組に突進していた。
距離は約15m、この距離を縮めるのに大した時間は要らなかった。
瞬きほどの・・・ほんの一瞬、反射運動に近いスピードで距離を縮め、
二人組の男女に牙を剥いていた。
2人とも、この行動に全く対処出来なかった。
出来たとしてもそれは、今から為される行為を止める事は出来なかっただろう。精々、欠損から損傷に移行するだけで、
使い物に為らなくなるのは避けられない事態だった。
狙った獲物は銀髪の少女、そして、その牙は少女の右足に食らい衝き
あっという間に少女の膝下は宙を舞っていた。そして、
まるで達磨落としの様に斬りかかられた方向へ倒れようとするが、
それは許されなかった。その牙の持ち主は斬り飛ばすと同時に少女の
背後に回り、前のめりに倒れそうになる少女を背後から右の太腿に
喰らい衝いていた。
又、宙を舞う少女の破片、今度は背後からの衝撃で後ろに倒れようとするが、
それもまた叶わず、攻撃と同時に少女の正面に立ち、胸から下を
斬り飛ばす。上半身だけになった少女は重力に従い落下しようとするが、
それでも落下せず、斬られた断面の方向から、つまりは胸から下、
下から上の方向へ縦に斬り飛ばされ、宙を舞い、
落下してくる二つの塊は四つに、四つが八つに増え・・・落下は終了した。
斬り飛ばした時に撒き散らした血液や臓物が辺りを赤く染め、
雨が降ったようになっていた。

「良い雨だね・・・ちょっと量が少ないけど。」

左手を少し上げこの雨の感触を掌に感じ、けらけらと笑いながら
もう一人の少年を見る少女。

「真白、彼には手を出しては駄目よ。」

「分かってるよぅ。尋問、拷問は一人居れば十分なんだよね?」

「あ〜あぁ、シロクマァ〜何で女の子の方を殺しちまうんだよ〜
可愛かったのによ〜もったいねぇ〜」

「舞太さん、今はそんな事を言ってる場合では有りません。」

「・・・見事だね・・・そうか・・・成程、その大鎌・・・
君が血雨日和(グラスホッパー)か・・・」

スーツの内ポケットからタバコを取り出し火を点ける双織。
深く吸い込み煙を吐きながら真白を一瞥し、
舞太を見て、流れるように訊子を見やる。

「さて・・・そこの美少年、あなたはもう戻ることは出来ません。
失敗を重ねて今に至っている訳ですからね・・・おや?
どうやら訳が分からない、という顔をしていますね。
《マインドレンデル》が言った訳、そして、私が言った訳・・・
どうせあなたはここで終わり、教えて差し上げましょう。」

訊子は凡てに於いて冷静沈着に行動を進めるが、一方的な会話、
つまりは自分だけが喋り、解説をしたりするのが悪い癖だった。
それは戦闘にも反映され、その最中でも一度口を開き、講習が始まれば
終わるまで他の人間は口を開く事すら出来なかった。

「な・・・一体・・・」

呆然と立ち尽くす少年に訊子は更に語りかける。

「《マインドレンデル》が言ったようにあなた達は、二つの失敗を
犯したのです。一つ目は《マインドレンデル》に見つかった時
この場所から逃げずに出て来てしまった事、本来なら敵を眼前にし
逃げずに出て来た事を誉めるのですが・・・今回は誉められる事では
ありません。その行為に及んだ原因が二つ目の失敗、
自分達の過大評価、私達の過小評価、私達に見付からずに尾行出来た事は
凄い事です。でも、尾行能力や隠密能力の高さと戦闘能力の高さは
比例しません。あなた達は、
私達が気付いてない=自分達より格下、というプロのプレイヤーにとって
有るまじき行為をしてしまった。故に・・・今の現状・・・
この状況はもうどうしようもなく、どうしようもない。
絶対的で決定的、徹底的に絶望的・・・さぁ吐きなさい。
何故私達を尾行していたのかを、そして誰の差し金なのかを。」
「ちょっと待った。」

口を開いたのは双織の方だった。

「・・・今、貴方には話し掛けてはいないのですが・・・」

自分が話しを展開している時に横から話を遮られるのを
特に嫌う訊子は双織がタイムをかけたのに苛立っていた。
いつもなら、話の腰を折った者をすぐに怒鳴るはずなのだが
流石に双織を前にしてはそれは無かった、抑えているようだ。
顔を見れば眉を少し上げて口を引き攣らせている。
それは舞太も真白もよく知っていて、訊子が饒舌になった時は
文字通り暗黙の了解で黙るようにしている。
それは、以前に酷い目に遭った事が在るからだ。
舞太の場合、靴に画鋲を入れられ、
真白の場合、大好きな苺のショートケーキを食べられた。
大してダメージは無いように見えるが、この二人には絶大だった。
靴に画鋲を入れられた舞太の方は三日間、
口も聞いてくれなかったので、仲直りも出来ず、
一週間後にようやく仲直りできた。
真白の方はひたすら謝る真白を見かねて、
訊子の方から、もういい、
という許しが出たので仲直りが出来たのだ。

「ウフフ・・・、心配しなくてもいいよ、直に終わるから。
待ったを掛けた理由は一つ、唯の一つだ。
単純明快で簡単に解決できる、私としては・・・
聞いてくれると嬉しいんだが。」

既に返答は決まっている筈なのに少し考え込むような振りをして
首を左に10度程傾けて沈黙する。
この考え込むような振りはあの髪の綺麗な彼女を真似していた。
それを知る人は真白しかいなかったが、真白は大して気にはしていなかった。

「・・・良いでしょう、聞きましょう。」

「それは良かった、嬉しいよ。では早速だ、
私にはこれから話される内容に附いては興味が無い、
と言うよりは意味が無いと思うのだよ。
故に私はもう、この場から離れたいと思うわけだ。
これからの話は君達だけでやってくれないかな?」

以外だった、舞太も訊子も目を丸くして驚いた。
真白の方は意味が分かっていないらしく、
頭の上にクエスチョンマークが三つほど出ていた。

「ちょっ、ちょっと!待ってください!どういう事ですか?!
貴方は今の現状を分かっているのですか?!
ここに居る美男子は、私達と、貴方が殺し合う事を
望んでいたんですよ?!それを、興味が無い、意味が無い、
で片付けるのは可笑しいのでは?!」

「人の話はよく聞く事を薦めるよ、訊子ちゃん・・・
君達は興味が有るのだろう、だったら聞けば良いじゃないか、
彼に。私には興味が無い、もっと簡単に言えば、
零崎には関係が無いのだよ。話がどうなっていようがね、
零崎には全く関係が無いのだよ。ゼロだ。」

「!!・・・そんな事・・・」

「止めとけ、訊子。零崎にはまともな話は通用しねぇーよ。
おい、零崎、話は分かった。
もういいぜ、何処へなりと行ってくれ。」

「ウフフ、それは良かった。では失礼させてもらうよ。」

そう言うと双織は森の奥へと向かって行った。
だが、突然立ち止まって、今思い出したかのように、

「あ、そうそう、墓森君、君の弟さんか・・・あれは良いな。
中々楽しめたよ。正直、撒くのに苦労した。
うちの愚弟と会わせたら・・・ウフフ・・・面白いかもね。
あ、弟ってのはね、今、私が探してる奴なんだが、
見たこと有るかな?特徴は・・・」

「零崎、今はあんたの話を聞く暇は無いんだ。
悪いが消えるならさっさと消えてくれないか?」

「・・・それは失礼。ウフフ、では本当に消えるとしよう。」

そう言って今度こそ双織は森の中へと消えていった。

「虫のいい奴だ、自分の話は聞いてもらいたいとは・・・」

そう言うと舞太は訊子に目配せをした。

「・・・話の腰が折れてしまいましたが・・・戻しましょう。」

そう言って訊子は未だに呆然としている美少年に歩み寄った。






序章・了。


     ◇     ◇      ◇      ◇

第一章・殺し名

今の俺の現状は言うならば最悪でも傑作でもない、最低だった。
可笑しいじゃないか!?何で俺がこんな目に遭ってんだよ!
突っ込み所満載過ぎて言葉が出ない位最低だった。
例えるならプリンを買ってきて食べようとしたら、
全部カスタードだった、みたいな・・・カラメル無えじゃん!
動物園に行ったら全部、犬と猫だった、みたいな・・・
確かに動物だけど!
あー、もう、例えも稚拙なヤツしか浮かばねぇよ。
とにかく最低だ!あちらこちらから血が出ていて殴られ過ぎて
腹も痛い・・・幸い骨はやられてないのが唯一の救いだった。
まったく、生まれて17年間、ここまでボコボコになったのは初めてだ。
・・・クソッ・・・立場が逆だっつーの!
コイツ、人を苛めるのが趣味な危ない奴なのか?
そんな奴はうちの家族だけで十分だっつーの!・・・赤の他人まで
そんな奇行や奇癖、悪趣味を持ってるのかと思うと死にたくなる。
・・・死にたくないけど・・・
あークソ!血が出過ぎて頭がフラフラしてきた。
男はふぅ、と息を吐いて立ち上がった。

「おい・・・お前、誰だよ?」

「言う必要は無い・・・」

「あっそう・・・」

けっ・・・すかしやがって・・・確かに・・・
見た目は、まぁ・・・カッコいいさ・・・
否定はしねぇよ・・・俺は自分より上は素直に認めるさ。
それこそ本気だ、それを僻んでぎゃあぎゃあ言うような奴は
死んだ方が良い!あぁ、是非死んでくれ。

「でもな・・・これは・・・認めねぇ・・・」

「?・・・何がでもなのかは知らないが・・・お前はココで死ぬ。
本来ならば、この俺がわざわざ手を下すまでも無かったのだが。
・・・仕方が無い・・・」

かー・・・カッコいい上に自信過剰かよ!調子に乗ってますな。
人間ってのは謙虚に生きなきゃ駄目なんだぜ?
それを教えてやりてぇぜ。
本来ならばこの俺がわざわざ、だってよ!何様だよ!
ったく・・・マジムカツク!・・・
・・・あ?・・・まて・・・まてまて・・・
まてまてまてまて!!どういう事だ!?おい?!

「さて終わりだ、墓森淘汰。お前の為に一句詠んでやろう。」

いらねぇよ。
                     ◇登場人物紹介◇


墓森舞太               ・・・虐殺師

墓森淘汰               ・・・虐殺師

筆村訊子               ・・・傭兵

熊代真白               ・・・少女

絵鏡ロア               ・・・社長
 
闇口社                ・・・暗殺者

御法ちさき              ・・・殺し屋

御法あさき              ・・・殺し屋

零崎双識               ・・・殺人鬼
 
匂宮理澄               ・・・名探偵

匂宮出夢               ・・・殺し屋

薄野綴                ・・・始末番

天吹いろは              ・・・掃除人

石凪苗畄               ・・・死神

甘草了                ・・・操槍術師

揺籠かもめ              ・・・医者

否舐依子               ・・・大工

東雲出雲               ・・・舞妓

戦楔誉稀               ・・・住職

妖屋敷番               ・・・解体屋

花鳥風月               ・・・詩人

時宮時空               ・・・操想術師

時宮時代               ・・・操想術師

蔵宇部櫛葉              ・・・???
足は・・・動く・・・
手は・・・動く・・・
神経回路は・・・問題無し・・・
腹部の鈍痛は・・・多少有り・・・か・・・

頭の中でそんな事を考えながら目の前に立つ男を睨む。
彼にとってこれは、この事象は、今起こっている状況は、
危機以外の何物でもなかった。
時間は夜中の三時過ぎ、助けを呼ぼうにも人は居ない、
寧ろこのような状況で助けは呼べないだろう、
一般人の助けは此処では要らない、返って邪魔になるだけだろう、
そういう存在なのだ、彼等にとっての境界線はそこだ。

「取り敢えず・・・ピンチなんだよなぁ」

そんな事を呟きながら淘汰はフラフラの体を自身で支える。
そして、行動に移る。
迅速、俊敏、とまではいかないまでも素早い行動、
あのフラフラの状態からは考えられない程の速さ。
しかし、あくまでそれはフラフラの状態からの行動だ、
通常の速さと比べればやはりそれは劣ってしまう、
それゆえ相手の男の対処は先手を取れる。
右から来る蹴りを受け流し上体を反転、その反動で回し蹴りを
淘汰の後頭部に叩き込む。
鈍い音が鳴り、淘汰は6m程吹き飛ばされる。

「・・・懲りないな・・・いい加減諦めろ。」

男はそう言うと淘汰に近づき胸座を掴み起こし持ち上げる。
服が首に食い込み締め上げられた状態になり息が荒くなる。

「へ・・・一句詠んでくれるんじゃなかったっけ?」

その言葉を聞くと男は2秒程考え淘汰を締め上げている手を放す。

「さぁ・・・聞かせてくれよ・・・この俺に聞かせる句ってヤツを・・・
恐らくこれが最後の言葉になるんだろう?
だったら良い句を詠みやがれよ・・・」

男はその言葉を聞くと唯でさえ喋らない所が喋らなくなった。
眼を閉じ考えているようだ。
男の趣味は俳句を詠む事だった。
しかしそれは唯の趣味であったのだが自分では俳人だと、
詩人だと思っていた。自称、詩人だった。

「良し・・・詠んでやろう・・・」

淘汰は眼を瞑る。
それは死への恐怖からの行動ではない。
ただ、死ぬ間際に見る映像が目の前に立つ訳の分からない男と
いうのが気に入らなかった、
それなら眼を閉じて何も見ない方がマシだったからだ。
男が口を開いて10秒程の沈黙。
そして、淘汰の耳に音が、最後の音が流れ込んでくる。
「その必要は・・・有りません事よ。」

まるで、アニメや漫画の様な登場だった。
恐らくは演出、それも過剰気味の。
ザッ、ザッ、と砂を踏む足音が真夜中の公園に広がる。
淘汰を締め上げる男は声のした方向に振り向く。
淘汰にとって最後になる筈だった声は別の人間の声に阻まれ、
ある意味最後の言葉となる。
男は声のした方向、右後ろをじっと凝視する、しかし人影は無い。
その代り位置的には男の左後ろから、二つの影が現れる。

「どうやら・・・私達が探した方が早かったみたいですね。」

クスクス、と笑いながら二つの影が近づいて来て
徐々に輪郭がはっきりしてくる。
そして、さっき声のした方向つまりは右後ろから又声がする。
しかし今度は声だけではなくそこからも二つの影が現れる。

「まったく意味が有りません事ね。」

最初にした声と同じ、同質の声が聞こえてくると淘汰は直感する。
あぁ・・・やっぱりか・・・この二つの声・・・
聞いたことがある・・・
幾度となく聞いた、あの不愉快な声達だ。

「○×公園に戻ってたんですね、探す手間が省けて此方としては
楽なのですが・・・」

やはりその声の持ち主はクスクス、と笑いながら近づいてくる。
併せて四つ、淘汰の前に立つ男の背後から姿を見せる。
淘汰にとっては確認するまでも無く分かりきっている存在。
この四つの影はそれぞれ単体では見た事など一回も無い。
必ず、最低でも二人で存在する。
淘汰から見て左前、最初に声のした方向にある二つの影、
これらは二つで一つ、二つが一つの生命体。
どちらか一方が欠けていては存在しない生物。
そして右前、淘汰にとっては一番不愉快な声の持ち主
この声の持ち主と共にある影は絶対的な主従の組み合わせ。
声の持ち主が主、そして傍で待つのが従者。
そうでなければならない存在、そうでなければならない宿命、
そうであるしかない家系。

「元気そうで何よりです、淘汰さん。大変心配しましたよ。」

主の名前は絵鏡ロア、四神一鏡の一角であり財力の要。

「・・・あぁ、お蔭様でな・・・」

心にも無い台詞を吐くロアを流して淘汰は
もう一方の二人組みを見る。

「お元気そうで何よりです事。」

「ふん、そのまま殺されてしまえば良かったんだ。」

「うるせぇ。シスコン野郎。」

「っ!な!きっ!貴様!!殺す!今殺す!」

シスコン呼ばわりされた男は手に持った錫杖を投擲しようとする。
しかし隣にいる女が口を開きその動きは止められる。

「駄目です事よ、あさき・・・私達は彼を助けに来たのですから。」

「ですが姉様!」

「あさき・・・」

「・・・分かりました・・・」

「クスクス・・・仲がよろしいのは良い事ですが、内輪揉めは
その辺にして、そこの十分怪しい殿方・・・貴方にはこの場を
退場して頂きたいので、消えてくれませんか?」

そう言いながらロアは男の方に体を向ける。

「怪しいのはお互い様だが・・・しかし・・・
殺し名が一人、それに準ずる者が二人も追加されては・・・
勝ち目も低いな・・・」

男は淘汰を横目で見て、その後ロアの方向に向き直る。

「逃げられると思っているのか?」

言葉を発したのはまだ一言も喋っていなかった従者の男だった。
身長は170cmを少し超えたところか、髪は短く整髪されており
脱色しているのか少し白い色になっている。
体格は細身だが頼り無さはまったく無い、それは服の上からでも
筋肉がガッチリしているのが良く分かるからだ。
上下共にワインレッドのスーツで身を纏いその姿には
まったくと言って良い程似合わないモノを手に持っていた。

「社さん?私の目の前で何をするつもりですか?
まさかとは思いますが・・・ゴミを出すつもりでは無いでしょうね?
分かっていると思いますが、私は世界で二番目にゴミが嫌いです。
此処でゴミを出すようならば貴方は、ハッキリ言って要りません。
・・・ですが賢い貴方なら分かるでしょう?私が一番嫌いなものが貴方には分かるように、この場をどうするかという事は・・・」

「承知。」

ロアの言葉に間髪入れず、社と呼ばれた男は半身下がる。
その行為を当り前のように見て、怪しい呼ばわりした男を再度見る。

「まぁ、そういう事です。ですからそこの変態さん。
さっさと逃げておしまいなさい。私達が見えなくなっても
出来る限り全力で逃げる事をお勧めします。
私の視界に入らなければどうなっても良いのですから・・・」

ロアのその言葉を聞くと、男は踵を返し淘汰の横を通り抜け
走り去っていった。

「さて・・・邪魔者は居なくなりました。
淘汰さん?説明してもらって宜しいですか?何故貴方が舞太さんと
一緒ではなく先程の変態さんと一緒に居たかを・・・」
やはりクスクスと笑いながら淘汰に話を振るロア。
しかし、目が一切笑っていない、表情だけが笑った形を作っている
だけで心が、感情がまったく篭っていないその表情。
淘汰は悟る、その表情に怒りが少し入っていることを。
とは言っても、其れすらも表に出さないので不気味。
こういうタイプは笑顔で人を殺せる、そんなタイプだ。

「・・・説明も何も兄貴とはぐれただけなんだぜ?それで、
公園に戻って来る途中でさっきの野郎に、いきなり仕掛けられたから応戦してただけだ。」

「ふむ・・・いきなり・・・ですか・・・其れは又・・・
あちらは私達の事を少なからず、知っているようでしたし・・・
面倒くさい事に成らなければ一番良かったのですが・・・
何やら起こりそうな気がしますねぇ・・・クスクス・・・
まぁ何はともあれ、舞太さんは零崎と接触している筈ですから
貴方が生きている事はもう知っているでしょう。
取り敢えずは舞太さんに連絡をとらなければいけませんね。
こういうのは事務的で機械的なので好きではありませんが・・・
仕方ありません、私自らする程の事でもなければほっといても
解決、というより風化して何事も無かったように終わりそうですが・・・そうもいかなくなりそうですし・・・」

「あ?どうやって兄貴に連絡とるんだよ?
どこにいるかもわからねぇのによぉ?待つのか?」

「そんな無意味な時間を無意味に消費するつもりはありませんよ。
生憎私には文明の利器である携帯電話という物を持っています。」

そう言うとロアは、携帯電話を取り出しゆっくりとボタンを押す。
コール音が五回、そして相手が電話を取った。

                    第一章・了

    ◇     ◇     ◇       ◇

第二章・侵入(進入)

私には目的が無かった。目的を見出せなかった。
そんな事は私には許されなかった。只、存在するだけで
存在価値など無く、只、生きているだけで生への実感を感じた事は
一度たりとも無かった。自分がどういった存在かは知ってはいたが
それだけだ、あとは何も知らない、それだけは良く知っていた。
十分すぎるくらいに・・・
それでも私には存在理由が、存在意義が無かった。
その時、私に許されていた行為は、食事、睡眠、排泄といった
単純な三つの行為だけだった。
そして私が持っていた感情は虚無感と絶望感だけだった。
この二つの感情が交互に私に襲い掛かり、眠れない日もあった。
幾度死にたいと思ったか・・・
しかしそれすら許される筈も無く、無意味な時間を消費していた。
そして私が六つの誕生日を迎えた日、今まで通り祝われる事は
無いと思っていた。しかし祖父が、助けてくれた。
祖父が私の所に来てくれてこう言ったのを覚えている。

運命は変える事は出来ぬ。しかし修正は効くものだ。
お前には運命よりも大きな宿命が在る。
宿命は誰も手出しは出来ん。宿命に誓いを立て生きろ。

、と・・・その意味は当時の私には分からなかったが、
その日を境に生活が変わった。
書物を読まされ読み書きを教わり、教育らしい事を初めて受けた。
苦痛では無かった、今までの生活より何倍も有意義な事だった。
私は貪るように本を読み漁り勉学に励んだ、最高だった。
こんな生活なら、この生活が続くなら構わないと思っていた。
だが・・・あっけなくその至福の日々は終わりを告げた。
その時の私は十歳、又あの三つの行動しか許されない生活に戻った。
祖父が死んだ・・・そして私の生活を縛っていた元凶が戻ってきた。
父だ・・・父は独裁的な思考の持ち主でたとえ自分の子供であろうが実権を握られるのが嫌だったのだろう。
私が成長すれば自動的に権力は私の物になる、しかしそれは
知識や思考能力を踏まえた上でだ。
私にそんな知識が無ければ権力が私に渡る筈も無く、
其れを目論んでの行為だったのだろう・・・
祖父はそれを悟って私を助けに来たのだと思った。
しかし・・・もう祖父は居ない。
だが私は祖父の意思を告ぐことを誓っていた。
宿命・・・そう、宿命だ。
私に宿る大きな運命、宿命という大きな流れに運命は在る。
運命は修正すれば良い、多少の変更は効くものだ。
そして当時の私には新たに感情が三つ追加されていた。
野心、悲哀、殺意だった。
流石に十歳とも成れば体も少なからず出来上がってきていて
知識も祖父のおかげで付いていた。
だから、監視の目や父の目を盗んでは書庫に忍び込み知識を蓄えていた。
この生活の中で牢に打ち込まれていなかった事は幸いだった。
そして私は待った。忍耐を学びその時を待った。
そして・・・

・・・チチハシンダ・・・

自動的に実権は私の下に回ってきた。
何故ならその時私の家族は皆死んでいたからだ・・・
誰一人としてこの世には居なかった・・・
皆、土の下だった。
そして、私はこの家系の力に驚愕した。
この力を私一人でつかえると思うと・・・奮えた。
そして私は一つの結果を出す為にこの力を使うことを決意した。
それは私が思った最初の願いだった。
それを達成できるのなら・・・・・・・・・
自らで考え、自身の意思で出した答え。
いや・・・答えはまだ出ていない・・・
あくまでこれは過程だ、目的を達成させる為のプロセス。
第一段階だ・・・
私はココから歩き出した・・・
目的を果たす為の第一歩をココに刻む。
第一段階はココから始まる。
     ◇     ◇       ◇      ◇

「こんのっ!ド阿呆がっ!!」

そんな怒声が夜明け前の公園にキンキンと響き、其の後ゴツッという鈍い音。
状況としては、兄が弟を叱っているという簡単なモノだった。

「痛ぇ!だから、ちゃんと反省してるって、兄貴ぃ!」

「まったく!この愚弟が!迷惑かけんじゃねぇ!心配すんだろうが!」

まだ殴り足りないのか、拳を振り上げる態度をとる舞太。
しかし、振り上げるだけで殴りはしなかった。

「はいはい、そこまで・・・仲が良いのは分かりましたから。
今はそんな事してる場合では無いでしょう?一応、舞太さんが
仰っていた話と私達の状況を合わせると大体見えてきました。」

そういうとロアは舞太に同行していた訊子と真白を見る。
それを感じ取ったのか訊子と真白はロアの下まで歩いていき、

「現状は話の通りです。」

と、一言、言うだけだった。

「さて、では進めましょう。こんな所で立ち止まっていても意味は
有りません。私は屋敷に戻ります・・・が・・・舞太さん?
貴方方は・・・どうしますか?」

ロアの言葉を受けて舞太が口を開く。
怒りはある程度収まったのか、眉間の皺がちょっととれている。
元から強面である舞太は、そこから怒ると凶悪的な顔に
変わってしまうので真白はいつも目を瞑っている。
昔、舞太が真白を怒った時に、真白はその顔を見て気絶した事が有った。
それ以来、舞太は真白の前では、と言うより自分が可愛いと思う
対象に対してはなるべく普段の顔でいるように心掛けている。
舞太なりの精一杯の努力だった。

「あぁ・・・俺達はこの馬鹿を襲った奴を追ってみる。ちとばかし
気になるしな・・・零崎の事もあるし。」

「そうですか・・・分かりました・・・では健闘を祈ってます。
それでは、私達は帰りますので。」

そう言うと六人は公園の出口へ向かおうとする。
六人?

「おっ!おい!待てよ!訊子!真白!何でお前等まで帰んだよ!」

その声を聞くと訊子と真白は振り返り言う。

「私達の任務は淘汰さんを助ける事、でした。その淘汰さんが
無事に此処に居るので私達の任務は終了。
実際には私達が出る必要など無かったのですが・・・」

「ま、そう言う事だよ、舞太。私としては付いて行ってあげなくも無いけど・・・」

「そこまでは面倒見切れません。まぁロアさんが付いて行けと言うなら・・・別ですが・・・」

「おーい、マジかよ!?お前等いつからそんな事務的な人間に
なっちまったんだよ?人情味が無ぇぞ?」

訊子と真白の言葉に半ば呆れ顔の舞太はそんな言葉を吐く。
その言葉を聞いてロアが口を開き、

「あら?寂しいのですか?んー・・・困りましたねー・・・
私は一人一日一回しか任務は出さないようにしていますし・・・
困りましたねぇ・・・クスクス・・・んー・・・」

そう言うとロアは腕を組み暫し思考する、あくまでフリをする。
実際は何も考えていないのだ、いつも思いつき。
それをこの面子は知っている・・・
だから・・・・・・
次に何を言うのか想像出来ない、その恐怖は皆知っている。
訊子と真白も思いつきで援軍に出されていたのだから。
そして、再度ロアが口を開く。

「そうだ・・・こうしましょう・・・えぇ、これが良いです。
ちさき、あさき、お二人がサポートしてあげなさい。」

その言葉にちさきは、そうきたか、と言う顔。
一方あさきは・・・何と言うか・・・怒っている・・・

「ちょっ!待ってください!絵鏡さん!俺達、墓森とは
犬猿の仲っすよ!?何で!?」

「止めなさい、あさき、見苦しいわよ。・・・分かりました。
その任務、お受けいたします。」

「ちょ!?姉様!?何を!」

「あさき?」

「!・・・うぅ・・・わ・・・分かりました・・・」

「あさき・・・私達が墓森と仲が悪いのでは無くて、
あなたが淘汰さんと仲が悪いだけでしょう?
それを理由に任務を反故する事は出来ません。
それに・・・・・・
私達は誰の御蔭で生きていられると思っているのですか?
そんな恩を仇で返すような弟に育てた覚えは私は有りません。」

静かだが、しっかりとした口調で言い放つ。
その顔からは想像も出来ないほど信念に溢れた言葉。

「話は決まりました。舞太さん?宜しいですね?」

「・・・あぁ・・・別に、構わない。淘汰の方は俺が言えばいいからな。」

クスクスと笑い声、ロアは楽しそうに笑う。

「良いですねぇ・・・こういうの・・・青春ですか?
・・・クスクス、結構結構・・・では・・・
御法姉弟、宜しく頼みますよ。」

そう言って今度は訊子、真白、社を引き連れて帰ろうとする。
しかし、今度は意外な人物が歩みを止め舞太の所まで向かってくる。

「・・・情報を一つだけやろう・・・
・・・お前の弟、淘汰を襲った奴の名前・・・
花鳥風月(かとり・ふづき)と言う・・・奴はあの時宮の僕だ・・・」

話し掛けてきたのは社だった。
意外な人物からのコンタクトに墓森兄弟も、御法姉弟も驚いている。

「・・・何でそんな事教えるんだ?」

情報をくれた社に舞太は訝しそうに言う。

「・・・この距離ならば主には声は届かない・・・
主はこの件をどうでも良い事と言っていたが・・・俺には気懸かりだ。
主の敵と成り得る者は全て排除する・・・時宮も例外ではない。
舞太・・・我が主の為・・・この件を綺麗に処理しろ。」

「・・・嫌だね。何でロアの為にやらなきゃならねぇんだよ!
言っとくがこれは弟の復讐の為だ!勘違いすんなよ!」

「・・・ふん・・・それでも・・・お前がここで動けば、
結果的に主の利益になる・・・お前が我が主に忠誠を誓っていなくとも、
主のアドバンテージが上がれば良い・・・精々頑張る事だ・・・」

そう言うと社はスーツを翻し主の下へ、絵鏡ロアの下へ戻っていく。

「けっ!あの野郎・・・・・・まぁ・・・良いか・・・
情報が手に入っただけでもよしとするか・・・」

公園に残されたのは--------------------
墓森舞太、墓森淘汰、墓森兄弟。
御法ちさき、御法あさき、御法姉弟。
この四名が残され・・・・・・
まだ知ることの無い惨劇を見る事になる・・・
「--------------で、何であんたが時宮の居場所を知ってんだ?」

今は高速道路の上、時速150?で疾走するバッザ・バルケッタの上に、人が4人。
かなり所では無く、殆ど原型を留めていないバッザ・バルケッタ。
本来は二人乗りだが乗車しているのは4人である。
ど真ん中から叩き切って拡張、接合したのだろう、
形はバッザ・バルケッタだがサイズがおかしい。
車の持ち主は御法ちさき(みのり・ちさき)であり、
運転しているのも御法ちさき。
悪趣味と言うべきなのだろうか、それでも最近は
車を切って拡張するという者も増えているらしい。
しかし、よりにもよってバッザである。
オープンカーの魅力がまったく感じられない代物になってしまっている。
これでは只のボンネットの無い車・・・
しかし当人は大層気に入っているようで、車内には色んなオプションが付いていた。
MD/CDのカーステレオにカーナビ、いったい何に使うのか知れない
簡易パトランプ、そして・・・・・・・・ぬいぐるみ。
あさきも舞太に負けず劣らずの可愛い物好きだった。
しかし対象物はぬいぐるみ、今一番のお気に入りはグルーミー。
あのダークでポップな感じ良いとか・・・
弟のあさきはそんな姉を、それでも尊敬していた。
そしてサイドシートに腰を下ろしているのは、その弟のあさき。
後部座席には墓森兄弟が憮然とした表情で存在していた。
弟の淘汰の方は些か不満の表情が強く一人でイライラと爪を弾いては
舌打ちばかりをしていた。
質問した方、兄の舞太は相変わらずの憮然とした表情で
バックミラーに映るあさきの顔を見ている。

「理由は簡単です事よ。私達、御法は匂宮分家・・・
つまりは時宮とは対極の位置何です事よ?」

「んな事聞いてんじゃねぇよ。分家だからって、対極だからと言って
居場所を知ってる理由にはならねぇんだよ。それに奴等は呪い名だろ?
尚更居場所なんて知ってる奴は少ない筈なんだ。」

「そう、少ないわ・・・その数少ない人物って事で話は終わりません事?」

「・・・・・・ふん、分かった・・・そういう事にしておこう。」

車内は沈黙に包まれ車のエンジン音、風切り音しか響かない。
あさきの言う、時宮の屋敷に向かう為に車は走っている。
どこに向かっているかは御法姉弟しかしらない-----------

「所で淘汰・・・てめぇマインドレンデルの野郎とやったらしいが・・・どうだったんだ?その辺聞かせろよ。
あいつはお前の事をてこずったって言ってたが・・・」

「あぁ・・・兄貴、あいつ強ぇぜ。流石零崎って感じだった・・・」

そう言うと淘汰は空を見上げる・・・
もう夜が明けて時間は六時過ぎ・・・
昨日の戦闘を振り返るように淘汰は口を開く・・・

  
 
久々に読んだらシロクマが舞台から消えてるorz
スマソ・・・今は彼女は舞台から降りてもらいました・・・

というか同人活動で手一杯なんでこっちを書いていけるかどうか・・・(苦藁)
確かにw
まあ、気が向いたときにでいいよ(^^)


もしくは同人のほうに似たキャラを作る。。。とかww
多少考えている・・・名前だけ貰おうかな、とか・・・
候補は出てるんで、あと主人公は女の子に決定しましたから(藁)

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