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妄想の館へょぅこそ>(・∀・)ノコミュの狙撃手?〜?(Europe−Carrie)

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耳に何か詰まった発射音がした。
同時に、アスファルトに薬莢の微かな落ちる音が聞こえた。
***
ベンチに座り、少女に拳銃を突きつけた白人系の男に交渉人が話しかけているが、応じる様子が無い。
ただ緊迫した空気の中で何事かを喚き散らし、遠巻きに取り囲んでいる警官達に脅しを掛けていた。
しかし……その手から突然、拳銃が音もなく弾かれ、男は一瞬、何が起こったのか判らないようだった。
それが合図だったかのように、警官達は一斉に男に飛び掛かった。
一人の警官が少女を抱きかかえ、現場から遠くに止めてある救急車へと駆け込み、男はアスファルトに叩き付けられるように取り押さえられ、手錠が掛けられた。
その光景を、ベンチから見えない位置に伏せていたケイ・J・ウィルは、ようやくスコープから顔を上げた。
「ケイ、良くやった……ご苦労。撤収に掛かれ!」
イン・カムから、隊長のねぎらいと共に命令の声が聞こえた。
「……了解。撤収します」
サイレンサー付き狙撃銃のスコープ・キャップを閉じながら、ケイは無感情に応答すると、手早く装具を確認し、足早に人員輸送装甲車に戻った。
***
署に帰り、報告書をパソコンに打ち込んでいるケイに、コーヒー・カップを二つ手にした同僚のミッキー・リコルドが声を掛けた。
が、ケイは無表情にモニターから眼を逸らさず、キーを叩いていた。
その様子に、少しため息混じりにミッキーはカップをデスクに置いた。
「コーヒーありがとう…」
相変わらずモニターから眼を離さずに、ケイは礼を言った。
だが、どこか取っ付きづらい雰囲気が読み取れる声だった。
「あ、いやぁ〜。その……どう致しまして。お疲れさん。所で……今日の現場、やはり何というか……」
しどろもどろに応えるミッキーに対して、ケイは気にする様子もなく、言葉を続けた。
「何?」
「あ!、いやぁ……そのぅ……」
口籠もるミッキー。
その態度を気に掛ける様子もなく、プリントアウトした報告書をクリップで留めながら、デスクから立ち上がったケイは、署長室に向かってしまった。
***
帰宅時間になると、所轄の当直勤務者以外は慌ただしく帰宅していく。
ケイも私服に着替えると足早に署の玄関に向かった。
「ケイ!」
慌てて呼びかけてきた声に、ケイは振り向いた。
使い古した黒のトレンチ・コート姿のミッキーが、肩で息をしていた。
「?……どうした?」
「ハァハァ、悪いね、急に呼び止めて」
「何か用?」
相変わらずな口調だ。だがミッキーは意を決したように声を吐き出した。
「今日、時間空いている?」
突然の言葉に、ケイは驚かれるとミッキーは思っていた。しかしケイは相変わらず態度を変える様子は無い。だが……。
「時間?…飲みのお誘いかしら?。ありがとう……でもごめんなさい。私はお酒は飲まない主義なの。でも……どうして?」
「いや、いいんだ……呼び止めてごめん。それじゃ……」
「食事だったら、付き合おうか?夕食まだでしょ?」
「え?……あ、じゃ、旨い店知っているんだ。俺の行きつけだけど……」
「いいわよ」
「……!」
ケイの意外な言葉と微笑みに、嬉しさを隠さずにミッキーは喜んだ。
誘いにの言葉に「断られるかも知れない」そう思っていたからだった。
だがケイは意外にも誘いに乗ってくれた。
日頃の彼女からでは、想像できないことだったからだ。
ミッキーの喜び方を見て、ケイは少々苦笑していた。
***
レストランに入り、店奥右側のテーブルに、向かい合う形で二人は席に着いた。
程なくして、カウンター・レディーが注文を聞きに来て、ミッキーはランチを頼んだ。
店は会社帰りの客で混んでいた。談笑しながら酒を酌み交わす者がほとんどで、賑やかなそのものだった。
「どう?この料理?。なかなかイケるでしょ?」
嬉しそうに言うミッキーにケイは相づちをした。
***
「所で……」
食事が終わり、コーヒーカップを皿に置きながら、不意にケイがミッキーに声を掛けた。
「ん!?何?」
「なぜ私を食事に誘ったの?」
「なぜって……その、何と言うかな……。何時も思っていたんだけど……」
「思っていたこと?」
「そう……なんて言うのかな?……君は何だか……仕事以外、ワザと人を避けているように思えてならなかったんだが?」
「……」
「あ!気を悪くしたら謝るよ。ごめん……」
押し黙ったケイの様子に、慌ててミッキーは謝罪した。
「……ありがとう、気に掛けてくれて……」
「え!あ!?……どう致しまして!!」
ケイの普段の行動からは考えられない言葉に、ミッキーしどろもどろになって答えてしまった。
「でも……まぁ…いいわ。さて、帰ろうか」
「あ……うん……。じゃ送るよ」
席を立ったケイに、何か言い出し掛けたミッキーだったが、押し黙り、同時に席を立った。
***
「今日はありがとう。ごちそうさま。お休み」
「あ!いやぁ〜どう致しまして。じゃお休み」
ケイのマンション前に車を止め、彼女がマンションに入っていく後ろ姿を見ながら、ミッキーはため息をついた。
「あぁ……またタイミング逃しちまったなぁ」
頭をぼりぼりと掻きながら、コートのポケットから小さなプレゼント箱を取り出してため息をついてから、また元に戻して、ミッキーはアクセルを踏み込んだ。
***
マンションの扉を閉めると、ケイは部屋の明かりを点けた。
部屋の家具、寝具などの配置は、質素かつシンプルそのもので、とても二十代の女性が住む雰囲気が感じられない。
と言うより、生活感「らしき」物が感じられないのだ。
ただ「必要最低限度の生活用品」が整然と味気なく並び、後は「実践的かつ戦闘的な」部屋と言った感じを受けた。
部屋の中央にはトレーニング器具が無造作に置かれ、その周りにはバーベルなどが転がっている。
ただ……その「実践的かつ戦闘的な」部屋の中で、唯一違った物があった。
ベット右側に配置されたキャビネットの上に、写真立てと一輪の花が置かれていた。
部屋の雰囲気にそぐわないその写真に写るのは、十代の頃のケイと兄ジョニー・J・ウィルが笑って映っている。
「ただいま……兄さん」
ケイはジャケットを壁掛けに吊し、ベットに近づくとぽつりと呟いた。
その言葉はどこか寂しげだった。
***
あれからどれくらいが経っただろうか?。
悪い夢でも見ていた感覚だった。
灼熱のジャングルと砲声と叫び声……。
どれほど時が経っても、あの時の『感覚』は忘れなれなかった。否、忘れようが無かった……。

サム・ウエルズはそんなことを思いながら、コンビニエンス・ストアのドアーを開いた。
夜十時過ぎの店内はまばらで、レジに立つ男の店員が暇そうにしている。

それを横目に、サムは陳列棚脇の冷蔵庫からビールを一つ取り出した。
よく冷えたビールを小脇に抱えながら、雑誌を二、三冊パラパラと読んでいると、一人の男が店内に入って来るのが見えた。
男の様子に、サムは自分が持っている『感覚』が何かを知らせていることに気が付いた。
あの『戦場』で覚えた『感覚』が……。

それが当たった。
「手を挙げろ!。金をよこせ!」
男は恫喝しながら、拳銃を向け、店員を脅した。
店員は一瞬、驚き、次にその表情は凍り付いた。
「何してる。早くしろ!」
男は拳銃を店員にさらに近づけながら、脅した。

途端――。

店内に一発の銃声が轟いた。

その音に男と店員は驚いた。
「……銃を下ろせ。その場に伏せろ。聞こえたか?」
サムはジャゲットの懐に隠していたショットガンの次弾を装填しながら、冷静に呟いた。
男は後ろに振り向きざま拳銃を向けた。
だが、一瞬横っ面を殴られ、床に倒れると、男の鼻面にショットガンの銃口が突きつけられていた。
「手を焼かせるな。それとも……腹にどでかい穴を明けなければならないか?」
突きつけながら、淡々としかし、冷徹にサムは言った。
男の顔からみるみる血の気が引いて行くのが見て取れた。

男を拘束して、立ち上がらせると、サムはビール一缶と雑誌をレジに置いた。
「警察に連絡してくれ。それと……これはお代だ。釣りはいらん」
そう一言言うと、店員が震える手でレジを済ませると、サムに袋を手渡した。
「ありがとう」
サムは礼を言うと、男に歩くように雑誌で頭を叩くとストアを後にした。
***
男を警察官に引き渡すと、サムは書類にサインをした。
「いつもありがとな、サム」
担当の警察官に礼を言われると、サムは薄く笑った。
「いつものことだろう?。しかし、もう少しどうにかならんか……。あういう奴を取り締まるのはお前さん達の仕事だろ?。今時分、強盗までやらなければならないほど、食うのに困る訳でもないだろうに……」
「まぁ何だ……。そういう奴はいつもいるだろう。いつものことだ」
「そうか……」
サムはため息混じりに答えた。
「また来る」
素っ気無くサムは言うと、手続きが済むのを見計らって出口に向かった。
「また頼むよ」
サムの後ろ姿に声を変えると、サムは片手を上げて出口に向かった。

続く。

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