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心の中の樹を抱く、花を愛ずるコミュの樹の詩人 谷川俊太郎さんの詩を鑑賞しあおう

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大好きな樹と空の詩人、谷川俊太郎さんの詩をお互い紹介しあったり
鑑賞しませんか?

コメント(2)

春に           谷川俊太郎
 
この気もちはなんだろう
目に見えないエネルギーの流れが
大地からあしのうらを伝わって
ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
声にならないさけびとなってこみあげる
この気もちはなんだろう
枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく
よろこびだ しかしかなしみでもある
いらだちだ しかもやすらぎがある
あこがれだ そしていかりがかくれている
心のダムにせきとめられ
よどみ渦まきせめぎあい
いまあふれようとする
この気もちはなんだろう
あの空のあの青に手をひたしたい
まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい
あしたとあさってが一度にくるといい
ぼくはもどかしい
地平線のかなたヘと歩きつづけたい
そのくせこの草の上でじっとしていたい
大声でだれかを呼びたい
そのくせひとりで黙っていたい
この気もちはなんだろう
谷川俊太郎

絶望していると君は言う
だが君は生きている
絶望が終点でないと
君のいのちは知っているから

絶望とは
裸の生の現実に傷つくこと
世界が錯綜する欲望の網の目に
囚われていると納得すること

絶望からしか
本当の現実は見えない
本当の希望は生まれない
君は今出発点に立っている

谷川俊太郎
12月の詩

朝日新聞朝刊

2012年12月4日より

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