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小説を書いて読んで楽しもうッ!コミュの壮絶ッ!タカvs琥潤!!『後編』

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…シーン……


余りの光量に目を覆っていた琥潤だったが、徐々に消えていく光に漸く目が慣れ、
前を見る事が出来る。
そして彼女が見た光景は、衣服がボロボロに破れ、
両腕をダラーンと垂らしたタカの変わり果てた姿だった。
…不思議な事にあれだけ集まっていた気が今は嘘の様に消え、その片鱗さえも感じられない。
しかもタカはダラしなく口を開き、瞳も虚ろで何処を見ているか判らない有様だった。


「タカ君ッ!大丈夫ッ!?…ハッ!?」


今度は彼女が目を疑う番だった、
今まで目の前に居た筈のタカが、忽然【こつぜん】と姿を消したのである。

刹那ッ!

琥潤は背後に言葉には表せない凄まじい殺気を感じ、逃げる様に前方へ飛び退いた。


シュバッ!


そして彼女が振り向いた先に見たモノは…、
未だ虚ろな目をしたタカが、切り裂いた琥潤の衣服を握って立っている姿だった…。
彼の指に背中を大きく切り裂かれ、琥潤の白い肌が露になる。
しかも先程の攻撃を完全には避け損ねたのか、背中には幾筋かの線が赤く滲み出ていた。


「(クッ…まさかコレ程とは…少し彼の事を甘く見過ぎていた様ね…。)」


タカの事を『所詮は人間』と軽視していた自分を戒め、彼女は本気を出す。
両手足に付けていた闘気抑制リストを外し、内なる莫大な量の闘気を開放する。
すると琥潤の四肢が薄く炎を纏った様に朱に染まり、薄っすらと地面から陽炎が立っていた…。
その気を彼も感じ取ったのか、立ち尽くすタカにも変化が現れた。
今までダラーンと垂れていた手が小刻みに震え、牙を剥く様に指が強張り、
唇の端から涎が滴り落ちる。
そして標的を見据える瞳は爛々【らんらん】と獣の如く輝き、
大きく開いた口からは、大地を震わす野獣の様な咆哮【ほうこう】が挙がった。


「ウギャガァァァアァァッァァァーーッッ!!」


バッッ!シュダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!


最早 人間の限界を超えた速度で琥潤に迫るタカ。
迎え撃つ彼女は右拳を軽く握り、左拳を自分の正中線中央で軽く広げ、変わり果てた彼を待った。


「(…恐らくさっきタカ君が使った技は、己の理性を消し飛ばす事に依って、
  潜在能力の中にある超人的パワーを引き出すモノと見たわ…全く厄介な技を使ってくれたわね。
  下手をすれば殺人鬼になるかもしれないって言うのに…いえ、このままでは彼の命すら危ないわ。
  やっぱり気絶させるしか方法は無いわね…でも簡単には遣らせてもらえないかな…?
  チョット彼の事をからかい過ぎちゃったか…。
  さて…一丁遣りますかッ!覚悟してネ?タカ君ッ!)」


呼吸を大きく吸い込み気を深く練る…タカとの距離は約5m…。
琥潤は両拳を引くと彼 目掛けて常人では捕らえきれない速度で、光り輝く気を連発で発射した。


シュガガガガガガガガガガガガガッッ!!


しかしタカはソレら全てを紙一重でかわすと、地を這うような姿勢から下段の居合抜きを放つ。


シュォンッ!


「チッ!」


忌々しい舌打ちを残し彼女は後方へ逃れると、着地と同時に前方へ飛んで間合いを詰め、
上体を起こそうとしている彼の脇腹目掛けて、炎気を纏う後ろ回し蹴りを繰り出した。


シャッッ!ザクッゥ!!


「クァッ!」


だがその隙こそ、タカの罠だった。

彼は自ら脇を開け、ソコを狙ってきた彼女の蹴りに合わせて伏龍を抜き、
刀の刃で琥潤の攻撃を受け、逆にその力を利用して攻撃に転じたのである…。


プシャァ、ドクドクドクドク……


彼女の右アキレス腱辺りから夥しい【おびただしい】量の血が噴出し、闘技場に染み込んでいく…、
自分の放った蹴りの威力が災いして、琥潤の傷はかなり深く致命傷とも言えた。
ソコに臥龍を抜いたタカがニ刀を交差させ、悪鬼の様な形相を浮かべた侭、猛然と走り寄って来る。
琥潤は痛む右足を庇うのを捨て、後方へ飛び退き距離を置く。
そして最悪の事態も考慮しながら、彼を仕留める算段を練っていた。


「(不味いわね…まさかこんな深手を負うなんて予想もして無かったわ…。
  やっぱり『あの技』を使うしかないのかしら…でもこの足で時間を稼げるかどうか…、
  ……タカ君?…もし…もし間違えて殺しちゃったら…その時は……ゴメンね…。)」


暴れ狂うタカを見据え、琥潤が最後の覚悟をキメた頃、気絶していたプヨの方でも変化が起きていた。
テラスでは姿こそ見えないが、何処からか女の艶っぽい声が辺りに木霊している…。


「ン…ンンン…あんっ…タカぁ…そんなトコ…触っちゃ駄目ぇ…。
 …んふふ…駄目だって……………駄目だってツッってんだろオラァッッ!?」


ガバッ!……キョロキョロ…


顔に掛けて在ったカーディガンを勢い良く引っ剥がし、憤怒の形相で起き上がったプヨ…、
今しがた起こっていた事が夢だと判ると、急に余所々しくなり忙しなく【せわしなく】周囲を見渡した。


「(…だっ、誰も居ないわね…ほっ……ん?なんでブラインドの魔法がかかってるの?ま、いっか…。
  ……ソレにしても変な夢…何でタカに、まだお風呂にも入っていない状態で…アソ…)」


シュボンンッ!!


例え夢だと判っても恋愛レベルが『ときめきメ○リアル』クラスのプヨには、少々刺激が強かったらしく、毎度御馴染み顔から豪炎を噴き上げ、指をちょんちょんと合わせながらモジモジしてしまう。


「(でもちゃんとお風呂に入った後で、ちゃんとエスコートしてくれて、ちゃんと柔らかいベッドに、
  ちゃんとお姫様だっこで運んでくれて、ちゃんと優しく『愛してるよ』って言ってくれたら…。
  はふぅ〜〜〜〜〜〜〜ぅ♪)」


理想は妄想を産み、暴走を爆走させてしまう…最早プヨの頭の中は『大変な事』になっていた…。
………が、ふと何故気絶していたのかを思い出すと、まるで信号機の様にプヨの表情が変わる。


「(…そうよ…ジュンに嗾けられて【けしかけられて】タカを連れてきたんだっけ…?
  そしてジュンの姿を見付けた途端…アレ?…駄目…思い出せない…う〜ん…?)」


どうやら琥潤の姿を発見した時『ヒューズ』が飛んでしまい、一種のオーバーロードを起こしたらしく、
プヨの頭の中にはシールドに顔面から激突した事は、綺麗サッパリ消え去っていた…。
そんな事を考えていると、闘技場の方から凄まじい気を二つ感じ、思考を中断せざるを得ない。
しかも二つとも良く知った気で、一つは琥潤、もう一つはタカの気だった。


「(ッ!!一体何が起こっているのッ!?…何か嫌な予感がするわ…行ってみようッ!)」


ココで考えていても始まらない…プヨは事の真相を突き止めるべく、闘技場へ急いだ…。


タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ…


琥潤 同様壁抜けを使い闘技場へ向かう最中、何故だか胸の奥が不安で潰れそうになる。
そして漸く彼女が辿り付いた闘技場では、タカと琥潤が激しい死闘を繰り広げている所だった…。
しかも琥潤は負傷したらしく、右足からドクドクと滝の様に血を流している。
一瞬 怯むモノのプヨはグッと堪え、二人に向かって大声で叫んだ。


「何ヤッテるのッ!?今 直ぐそんなこと止めてッッ!!一体どうしたのよジュンッ!?タカッ!?」


彼女の声にハッと振り向いた琥潤だったが、その隙に付け込んでタカが容赦無い斬激を放ち、
上から下から最早プヨには見えない速度で、タカが琥潤を切り刻む…。
対する彼女は致命傷は上手く避けているモノの、全ては交わし切れず、血飛沫を上げ逃げているが、
だが彼女も何か狙っているらしく、その瞳は獲物を見付けた鷹の如く、
鋭い眼差しをタカに向けていた。
しかし何も知らないプヨは暴走するタカを止めるべく、闘技場の中に入ってくるが、
その間にもタカは琥潤を斬り続け、息の根を止めようとしている。
やがて避けていた彼女もソコで力尽きたのか、ガクンと片膝をつき、
攻撃を出す前に崩れ落ちてしまう。
その姿を見たタカは最後の一太刀を浴びせ様と、腰を最大限に捻り、
恰もバネの如く反動をつけ、瀕死の琥潤にトドメの一撃を放った。


「やめてぇええぇエェェッッ!!!」


バッッ!


琥潤は我 目を疑った…。

刃が彼女に当たる寸前にプヨが横から両手を広げ、
涙を流しながら無防備に飛び込んでくるではないか。

刹那ッ!

琥潤は時間が凍りつくのを感じた…。
又、自分の失態で愛する人が目の前で死ぬ…。
二度と同じ過ちを冒すまいと、彼女は最後の力を振り絞って、
今まで溜めていた気を解き放とうと試みたが、
右足のダメージが等々骨まで達してしまい、琥潤の気持ちとは裏腹に立ち上がる事が出来ない…。
ゆっくり…ゆっくりと…まるでスローモーションの様に、プヨの首筋へタカの刀が近づいていく…。
琥潤は止める事の出来ない惨劇を間の辺りにして、
情けない自分に涙を流し、声の限り彼女の名を叫んだ。


「プヨォォオオォォーーーーッッ!!!」


………………………………シーン……


無限とも言える静寂の中、音も無く佇む三人…だがしかし死神が喜ぶ悲劇の幕は上がらかった…。
なんと信じられない事に、タカの凶刃はプヨの首の皮一枚斬っただけで踏み止まっており、
内から突き破って出てくる何かを耐える様に、震え苦しんでいる。
そして彼は未だ狂暴な瞳の侭 辛うじて声を絞り出し、琥潤に向かって切なげに懇願した。


「こ、琥潤殿…頼む…せ、拙者を…殺し…殺して…く…ウグオォオオォォオッ!!」


絶叫と共にタカの身体から、血管を突き破って血液が噴出し、目の前に居たプヨの顔に降り注ぐ…。
ソレを見た琥潤はもう一度気力を振り絞り立ち上がると、タカの額目掛けて渾身の掌底を放った。


ドゴォッッッ!!ピカァァァァァァッッ!!!


彼女の掌は寸分の狂いも無くタカの額中央に当たり、今まで溜めていた気を一気に放出させる。
するとタカ達を中心に目映い光が闘技場内を満たし、
瞬時にして何も見えない真っ白な世界を創りあげた。
……やがて光が収まり、漸く目が慣れるてくると、
プヨの瞳には意識を失って琥潤の肩に抱えられている、タカがの姿が映った。


「い、いや……た、タカ…タカッ?…死んじゃいや……いやぁぁあぁああぁッッ!」


「…落ち着きなさい…タカ君は死んじゃ…いないわ…気…を失っているだけよ…。」


肩でハァハァと荒い息をしながら、タカの体を地面に横たわらせ、
彼女も其処で力尽きたのか、ペタンと座り込みそのまま俯いてしまう。
琥潤は先程の戦いを振り返り、何故タカがあの様な危険な技を使ったのか考えていた。


「(もしもの時は、拙者を殺してくだされ…。)」


彼が最後に言った言葉が頭の中をグルグルと回るが、考えても一向答えは出て来ない。
考える事に疲れた彼女はゴロンと寝転がると、取り敢えず落ち着いたプヨの方を見た。
タカの事を心配して涙を流す彼女を見ていると、心の中に罪悪感が生まれていたたまれなくなる…。
暫く何か思案していた琥潤だったが上体だけ起こすと、未だ泣き続けるプヨを傍らに呼んだ。


「プヨ…ちょっとコッチに来てくれないかしら…全部説明するから…。」


「…え?」


…………数十分後


パシィィッッ!


頬を打つ乾いた音が、闘技場に木霊した。
真っ赤に泣き腫らした瞳で端からも判るくらい、怒りを露にしたプヨが琥潤を殴ったのだ。
殴られた彼女は俯いたまま、ボソッとプヨに聞こえる程度の声で何か呟く。


「…ごめんね…プヨ。」


『プヨが怒るのも当たり前だ』…そう心の中で思いながら彼女は深く反省する琥潤、
だがプヨの怒った理由は其処では無かった。


「馬鹿ッ!ジュンの大馬鹿ッ!もし貴方が死んじゃったらどうするのよッ!?
 今回は二人とも生きてたから良かったモノの、どっちかが居なくなったら…、
 …残された私の身にもなってよねッ!?……ジュンのバカァぁあぁっ〜ふわぁァアッアァんッ!」


ガバッギュゥッ!


号泣しながら彼女の胸に顔を埋め、本気で泣きじゃくるプヨ…、
琥潤は自分の冒した愚考を心底恥じる。
プヨの髪を優しくソッと撫でながら、妹をあやす様に背中をポンポンと叩き、もう一度彼女に謝った。


「本当にゴメンね…もぅしないから…。」


そしてそのまま抱き合い、暫し時間が過ぎる…、
…やがて琥潤の体力が回復した頃、今まで気を失っていたタカが意識を取り戻し、
うっすらと目を開けた。


「ん…どうやら拙者…生きているようでござるな…フゥ…いらぬ世話をおかけ申した…。」


「タカッ!!!」「タカ君ッ!?」


同時に彼の名を呼んだがプヨの反応はシュー○ッハよりも早く、残像を残して彼に抱きついた。
そして一頻り【ひとしきり】彼の胸で泣くと少しだけ離れ、
タカの顎に狙いを定めると、渾身の力を込めて、
内角からエグる様に『ローリングエルボー』を叩き込んだ。


ズッガァァァァァシュッッ!!


「この馬鹿チンッ!!何であんな事をしたのッ!?もし死んじゃったらどうすんのよッエェッ!?」


ユッサッユッサッブンッブンッ!


先程、琥潤に言った台詞と何処となく似ているが、
どちらかと言うと怒り部分が全面的に前に出ており、
その証拠にプヨはタカの胸座【むなぐら】を掴み、力任せに揺すっている…。
しかしタカは、されるが侭 何故か一言も口を訊こうとはしない…、
そんな光景を見るに見兼ねた琥潤がプヨの肩を叩き、今の状況を教えてあげた。


「…プヨ…タカ君、堕ちてるわよ…。」


「え”ッ!?」


パッ…ズッ…ズルルルルル…ポテ…


彼女が掴んでいた衣服を離すと、タカはプヨに保たれ掛かる様に倒れてくる。
…『やっちゃった…』と目で語る彼女に溜め息をつくと、琥潤はプヨに笑いかけた。


「プッ…アハハハハッ!ほら、今の内に彼をベッドに運んであげなさい
 私との戦いで相当マイッテル筈だから…………ちゃんと『ゴム』は付けるのよ?」


ボシュンッ!ガバッ!


又もや顔から炎を上げ、凄い勢いでタカを担ぐと、
無言の侭プヨは猛スピードで自分の寝室へ飛んでいった。
その様子を一部始終見ていた琥潤はクスリと笑うと、足の癒り具合を確かめゆっくりと立ち上がる。
そして去っていったタカの事を思い出し、再び溜め息をつくと独り言を洩らした。


「ふぅ…タカ君をからかうのは、もぅ止めた方がいいわね…命が幾つ有っても足り無いわ…。」


カツコツカツコツ…


冗談とも本気とも取れる言葉を残し、彼女も静まり返った闘技場を後にした…。

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